HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

チェックが甘いZOZO。

2010-11-20 12:55:11 | Weblog
 百貨店がすでに時代に合わなくなったとは、前に書いた。逆に時代のニーズに合致し、百貨店の売上げを抜き去ったのが、通信販売。すでに市場規模は8兆円を超え、コンビニさえ抜きそうな勢いだ。特にインターネットや携帯電話のサイトを使った「Eコマース」の伸びは顕著で、ZOZOTOWNを運営するスタートトゥデイの躍進は目を見張るものがある。

 すでに多くのビジネス紙誌でも紹介されているが、同社はバンド活動をしてた前澤友作社長が好きな輸入レコードやCDで、カタログ販売を始めたのが起源である。商品取扱高は2005年に46億円だったが、09年度には370億円と約8倍に急上昇。今期は555億円、12年度には1000億円を目指すと発表している。
 現在でも、前澤社長自ら電話を受けて梱包し、購入者に送っていた時と同じように、「いかにセンスの良い商品を、いかにスムーズに顧客に届けるか」というポリシーは変わらない。実際、サイトづくりから物流、集客、品揃えのバランスがスムーズに回っていて、それが同社の強みであることは間違いない。
 物流会社と言えば、倉庫業、管理ビジネスで、1日中、屋内にこもってルーチンワークを行なう。そのため、イメージが暗く今日の若者には受入れられづらい。
 書籍「アマゾン・ドット・コムの光と影」には、千葉にある物流センターで働くスタッフの悲哀が綴られている。「時給900円のアルバイトたちは広大なスペースを走り回り、指示された本を探し出して抜き出す。その時間は1人1冊3分で、毎月、個人の作業成績が作られ、成績が良くないアルバイトは2カ月ごとの更新時に契約が打ち切られる…厳しいノルマとコンピューターの監視によって、アルバイトたちが一瞬たりとも気を抜くことがないよう、管理しているのである。」

 ところが、ZOZOTOWNの物流センター「ZOZOBASE」は、そんなアマゾンとは大違いだ。デザインはフェラーリの工場を模しておしゃれでカッコいい空間にこだわり、著名インテリアデザイナーに発注。照明を上げて明るくし、ラックは黒で統一。ブランドメーカーやセレクトショップのBtoCに沿った動線や商品の流れをデザインし、作業・オペレーションのカッコ良く行なえるようになっている。さらにBGMには若者が好きな曲を流すなど、徹底して若者が働きやすい職場環境を作り上げている。
 社員の平均年齢は27歳で、会員は29歳弱と近い。等身大の感覚がブランド選びから品揃え、サイトデザイン、ビジネスシステム、使い勝手にまで共通していることで、顧客を増やしているのである。
 武藤貴宣取締役は、とある雑誌のインタビューで、「(WEB)デザイナーもシステム担当者も、共にブランドやファッションに対する知識は高い。元ユーザーだったスタッフが多く、雑談をしながらでも、こういう買い方をしたらこうだった、ああだったという体験談が出てきて、それを基にシステムやデザイン担当が修正する。しかも、変えるのも社員だから、すぐに着手ができる」と、社内の一体感を語っている。

 なるほど。でも、褒めてばかりではこのコラムの体を成さないので、一つだけ評論しておこう。最近、ZOZOTOWNを見ていると、サイトのデザインで「誤字」や文章の「不統一」があることに気づく。例えば、商品説明のコピーで、使用が「私用」になっていたり、ですます調に統一するべきが「だである調」のままだったりする点だ。
 社員も会員も30歳以下の若者で、サイトの性格を考えると、そこまでは不必要なのかもしれない。でも、これが印刷が上がった「チラシ」だったらどうか。私用は明らかに誤字で、それを書いたコピーライターのミス。責任は免れない。クライアントによっては「刷り直せ」と命じるところがあるかもしれない。
 また、ファッション雑誌だったら、もらった原稿のトーンが不統一だと、必ずリライトする。それは編集者の仕事だし、編集長はチェックしなければならないのである。
 でも、ZOZOTOWNでは、WEBデザイナーもシステム担当者もそこまで気づかないまま、サイトに原稿がアップされている。社内にミスや不統一をチェックする部署がないのか、それともあまりの忙しさ、とにかく商品をアップすることに一生懸命でそこまで手が回らないのか。また、ブランドメーカーの担当者やショップのバイヤーもZOZOTOWNに任せたらそれっきりで、あとは売上げがつけばいいという感覚か。

 ファッション業界では得てして、急成長した企業は独善的になって優秀な社員が育たないことが多い。マネジメントが徹底されず現場がコントロールできなくなるからだ。ひいてはガバナンス機能の低下にもつながりかねない。
 誤字や文章の不統一を若気の至り、あるいはご愛嬌と見過ごすか、それとも明らかなミスやチェック不足と見るか。ちょっとの甘さが社内のたがを緩め、モラルハザードを生んだところは少なくない。急成長の時ほど、上に立つ人間はチェックを怠ってはならないのだ。そして、社内全体にマネジメント機能が働いてこそ、企業としてのロイヤルティは確立できるのである。
 
コメント
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