HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

事業目的と企画との大きな矛盾。

2013-01-24 12:26:41 | Weblog
 3月初頭から約1ヵ月にわたり、福岡都市部のファッション、飲食、理美容の店舗を対象に、共同販促のキャンペーンを行うF.W.F(ファッションウィーク福岡)。その参加企業及び店舗の大筋が発表された(http://fwf.jp/_resource/img/individual/teaser/FWF_PRESS_0116.pdf)。
 昨年、このコラムで問題点を指摘したが、12月中旬から行われたキャンペーンへの勧誘活動では、その“やり方”に不満や憤りを感じたところは少なく無い。
 実際に参加する企業や店舗も、「天神や博多駅とその周辺」というエリア設定通りになった。しかし、資金を拠出する行政や福岡商工会議所に影響力をもつ大手流通やデベロッパーもあり、エリアから遠く離れたショッピングセンターも参加できるなど、いろんな利害が渦巻いているように映る。
 以下で、参加企業、店舗、その他の思惑と企画内容との矛盾点をあげてみる。

スローガンと参加環境に見る矛盾

 まず、1月15日現在の参加状況を見ると大方の予想通り、都市部の商業施設、商店街はほぼ参加する。 岩田屋や博多阪急などの百貨店をはじめ、福岡パルコ、アミュプラザ博多といったファッションビル、天神地下街、新天町などの商店街と、地場ファッションの小売りで名が通った企業、団体は全社である。
 当然、これらは自社や振興組合がガイドブックやwebサイトの「有料枠」の媒体料を負担するわけで、テナントは地場企業、大手セレクトやナショナルチェーンを問わずキャンペーンの恩恵を受けることになる。
 昨年、同じJフロントリテイリング入りを果たした大丸福岡天神店と福岡パルコは、すでにカードのポイント互換などで共同販促を行っている。それが今回は期間限定ながら、競合店である岩田屋三越、ヴィオロなどともスタンプラリーで、ともに販促を行う。
 メリットは旅行や商品券、商品のプレゼントで、値引きにつながるポイント互換はないものの、今回は「競合ではなく共生せざるを得ない」ということになる。



 一方、一般専門店の参加状況は100店にも満たず芳しく無い。企画では“無償”でガイドブックやwebサイトに掲載してもらえることになっていた。対象業種もファッションだけでなく、飲食や理美容まで広げていたが、ほとんどがファッションで飲食1店、理美容4店という惨憺たる状況。
 キャンペーン効果を高めるために企画サイドが狙った異業種混合も、当てが外れる結果となった。 ただ、福岡アジアファッション拠点推進会議そのものの存在が明確ではなく、告知方法も限定されている。発足から5年もかけた事業活動がFACo(福岡アジアコレクション)というタレント興行のみに注力しすぎた点で、企画運営委員会、実務に当たるトータルプロデューサーの責任は重大と言わざるを得ない。
 まあ、今回のキャンペーンにしても、推進会議の委託を受けた代理店が12月中旬頃から、推進会議がもつ名簿を頼りに「勧誘=有料枠の営業」にも出向いている。だが、この代理店とて制作会社に毛が生えたくらいのレベルで、地場ファッション業界に精通しているわけではない。本来ならエリア内の店舗をローラー作戦で営業すべきだろうが、どだい無理な話しである。

大手優遇、中小零細冷遇の矛盾

 尤も、「来店客への特典(セールやプレゼントなど)をご用意ください」「積極的にアピールしたい店舗向けの有料プランもございます」といったあまりに配慮を欠く企画では、参加する気にならないというのが中小零細店の本音ではないだろうか。
 現に代理店から営業を受けたという企業、店舗からは、「企画の主旨がきちんと伝わらない」「投資対効果がわかりづらい」「有料枠の営業がみえみえ」「公金の使い方がおかしい」「代理店の担当者が約束の時間に来なかった」などといった話も伝わってきている。
 しかも、フタタやフカヤといったファッション専門店、ホラヤ、モリトモなどのミセスショップ、地場の有名小売業が企業としても単独店舗としても参加していない。
 天神や博多駅に「大バコ」を構える百貨店やファッションビルのテナントであれば、大手セレクトやナショナルチェーンでも恩恵を受ける一方、地場の路面店、中小零細店には何のメリットも無い。これも「福岡全体で盛り上げよう」なんてものが、所詮お題目に過ぎないということを指し示す。

 一方で、参加企業にはイオン九州、ダイエーといった大手流通、福岡地所や京阪流通システムズといった地場・中央のデベロッパーも顔を揃える。それゆえ、キャンペーンに参加する大バコは天神、博多駅だけに限らない。そこから数キロも離れた「イオンモール」や「ショッパーズマリーナタウンモール専門店街」、「ホークスタウン」、「マリノアシティ」や「木の葉モール」などのショッピングセンターもある。
 これらは大手企業だから、推進会議が真っ先にリストアップ、「仁義を切る」のは当然だろう。販促費だって潤沢だし、ガイドブックやwebサイトの有料枠を確保することも吝かではない。
 しかし、天神や博多駅とは、マーケットも客層も商品構成も違う。双方エリアの回遊性は難しいから、スタンプラリーは自店のみで完結する可能性が高い。このケースでも中心部とこれら郊外SCとの間にはたくさんの店舗があるわけで、それらが何の恩恵も受けられないのは、福岡全体で盛り上げようというスローガンと明らかに矛盾する。



ファッション系学校が多いのに、1校に偏る矛盾

 さらにキャンペーンのプレスリリースをざっと見ただけではわからない、利害関係者の思惑にも切り込んでみよう。参加店舗に「FACo×ROUTE80」というのがある。表向きは福岡アジアコレクションとイオングループのコラボブランドで、2010年の3月からイオン九州各店で販売されている。
 ファッション業界的に詳しく説明すれば、店舗というハコではなく、イオンというGMSのファッションフロアに「コーナー」を設け、サイン表示と量販店的なマネキンや什器で展開されているに過ぎない。
 しかし、実際はFACoと言っても企画デザインにあたっているのは、企画運営委員長のY氏が校長を務める大村美容ファッション専門学校の学生である。推進会議の発足主旨では「福岡にはファッション関連の勉強をする学校が多い」ということで、行政や商工会議所は事業に多額の公金を拠出し、支援を始めた。
 ところが、ふたを開けてみると1校のみ、しかも企画運営委員長というポストにある人間の学校に有利に働き、他校は全く蚊帳の外である。発足主旨に照らし合わせれば、オープンにしていろんな学校、学生の参加を募るのが公職にある人間の務めではないのだろうか。この点にも大いなる矛盾を感じる。



 逆に見ると、ROUTE80に課題は少なく無い。このブランドはイオングループがGMS改革、専門店化の一環で、衣料品のSPA化を進めた「トップバリュコレクション」の一つ。ヤング向けジーニングカジュアルのカテゴリーで、これがイオン九州のエリアだけはFACoとコラボしたのである。
 トップバリュは当初計画では、2008年から3年後をめどに350店、売上高600億円、営業利益率10%を目指したが、昨年唯一開業したイオンモール福津を入れても、計画には遠く及ばない。逆にイオンサイドでは事業縮小や撤退という話もあると聞く。当然、FACo×ROUTE80も含まれるのは想像に難く無い。
 言い換えれば、都市部、郊外に国内外の有力SPAがひしめく中で、どれほどイオンのファッションが通じるかということ。ヤングの客層を考えても、いくらイベントやタレントで販促を仕掛けたところで、SCまで買いに行くとは考えにくい。都市部にはトレンドやヤングマインドを押さえたブランドがいくつもある。 まして専門学校生の企画レベルで、郊外マーケットでヤングを開拓しようと考える方が無謀というものだ。

無計画な媒体戦略で、メディア露出を叫ぶ矛盾
 
 今回のF.W.F(ファッションウィーク福岡)は、期間限定ということで新規の制作会社が携わり、そこが事務局も兼ねている。キャンペーンのロゴマークやカラリングは見ての通りだ。
 情報発信の媒体は推進会議のサイト、3年前に福岡県が資金を出し、推進会議が業者選定にあたったファッションビジネス情報発信の「ファッションサイト福岡」(https://fashionsitefukuoka.jp/ja/tp/tp010)。さらにRKB毎日放送のサイト内のFACoのページと、多数ある。
 だが、それぞれが制作業者、デザイナーが違うため、クリエイティブセンス、デザインテイストが異なり、情報発信の統一性を欠く。これでは推進会議そのもののコンセプトを確立できないし、ブランド化なんてものが、かけ声で終わっている。
 中でも、 ファッションサイト福岡は「2700万円」の公金を使っときながら、 ディレクションは全くなされておらず、 コンテンツは薄っぺらで、ファッション情報機能というレベルには遠く及ばない。webデザインも「これがプロの仕事か」というレベルだ。単年度事業のため、全く活用されていないのが実情である。
 業者はプログラムに時間と労力をかけたと言い訳しているようだが、何ならMdN Design Interactiveの客観的評価を受けたらどうかと思うくらいである。
 


 せっかくなら、今回はこのサイトを使っても、良かったはずだ。 しかし、別の業者が携わっている。こうした無計画な媒体戦略、クリエイティビティの一貫性の無さにも、企画運営委員会の稚拙さ、凡庸さが表れている。
 その背景には一部の関係者の利害のみが優先され、地場ファッション業界の振興は単なる口実に過ぎないことが垣間見える。今回のキャンペーンがどれほどの販促につながるかも懐疑的だ。終了後に企画運営委員会が発表するデータを、客観的かつ詳細に分析しなければならないと思う。
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