HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

SC業態+日本製が出す答えは。

2015-06-10 07:16:49 | Weblog
 ビームスがSC向け業態として2012年から展開する「ビーミング・ライフストアbyビームス」が、この秋から日本製の「ビーミング・ベスト・ベーシック」を発売するという。

 振り返ると、都市部展開がメーンだったセレクトショップがSC向け業態を開発した草分けは、ユナイテッドアローズの「ユナイテッドアローズ・グリーンレーベル・リラクシング(GLR)」だろう。

 20代でユナイテッドアローズで買い物していた客層が結婚して家庭をもち、独身のときほど自由に買い物できなくなったが、引き続きUAテイストのファッションは楽しみしたい。そんなニーズにフォーカスしたのが、GLRだった。

 仕入れが中心となるUAに対し、GLRはOEMやODM中心のオリジナルでまとめたSPA型セレクトで、価格帯もファミリーが買いやすい値ごろ感のあるゾーンでまとめていた。

 初期の頃の品揃えはトラディッショナルだけでなく、ストリートやモードのエッセンスが入ったデザインアイテムも投入。店舗は百貨店やSCにあったので、UAよりも入りやすく、買いやすかった。

 筆者もストリート寄りを何度か購入し、その中にはベトナム製だが10年以上穿いているパンツもある。SCで1本買って帰る途中に大人買いの虫が動き出し、そのまま百貨店のショップに寄ってもう1本発注したほどだ。

 SPA化したとは言え、さすがユナイテッドアローズ。マーケットをしっかり確保する企画力は侮れないなと、当時はずいぶん感心したものだ。近年とは大違いである。

 そんなUAに遅れること10年あまり。ビームスもようやく重い腰を上げたのか、あるいはデベロッパー側のたっての願いを聞き入れたのか、SC業態に乗り出した。それがビーミング・ライフストアだ。

 ターゲットはGLRとほぼ重なるだろう。お客側の購入目的も共通するはずである。ビームスとて、20代メーンだったお客が世代交代する中、30代、40代を置き去りにするわけにはいかない。経営戦略上、捕捉したいのは当然だ。

 特にここ数年、都市部のビームス業態を見た感想では、ヤングの集客に窮しているように感じていた。いくらセレクトの雄と言えど、マーケットの変化には逆らえない。

 とすれば、ブランド力を駆使して「在庫処分価格」で集客するアウトレットに舵を切ったのは、致し方なかったのかもしれない。ただ、それが「専用品」販売にまで及んだことでネットを中心に流布されてしまい、ブランド力の低下を生んだのは誤算だったと思う。

 ならば、最初から生産コストを下げたオリジナルで価格勝負する、SC業態の方がはるかに顧客の信頼を損なわなかったのではないだろうか。

 むしろ、ビームスほどのブランド力をもつ企業が、 SCがマーケットを掘り起こした随分後に、ビーミング・ライフストアを開発したのは、遅きに失したと言わざるを得ない。

 マーケット開拓の遅れを、今度は「メイド・イン・ジャパン」で取り戻そうという思惑だろうが、果たしてうまく行くのだろうか。

 ビーミング・ライフストアは、出店から3年で既存店が21店舗にも増えた点を見ると、一定の評価は得ていると思う。ただ、SCマーケットはどんどん裾野が広がりつつあり、ビームスコアのお客だけ狙うのでは限界があるのかもしれない。

 ユニクロがあれだけSCでも集客できているのは、やはりある程度のマスを意識したMDやプライスゾーンを実現しているからだ。

 個店のレディス業態の中には、SCとは言え専門店系アパレルのセレクティングで、顧客を捉まえているところもある。SC=チープをいうイメージを逆手にとって、上質な商品を好むマーケットを掘り起こしたところもある。

 ならば、ビームスとてSCの集客力や市場を生かして、ビームスを知らない層にもアプローチしていく。そのカギが日本製のビーミング・ベスト・ベーシックということになるのだろうか。

 では、今秋発売のそれに、お客はどんな印象を受けるのだろうか。アイテムの写真を見る限り、アメカジの定番デザインをSCというグレードに合わせてオリジナル化したと見受けられる。

 チノパンならディッキーズ、トレーナーならチャンピオン。そんなブランドをビームスオリジナルに焼き直したという感覚だろうか。そこに他のSC業態ではまず見られない「メイドジャパン」の付加価値を付けることで、競争力を持たせようという狙いだろう。

 商品についてはまだ発売前だし、顧客ひとりひとりの期待や思いを聞いたわけではないので、あくまで憶測の域は出ない。だが、ビームスファンならだいたい想像できるだろうから、こんな意見になるのかもしれない。

 「日本製だから、安心して購入できる」「ユニクロほかのSPAまでは落としたくない。この辺の価格帯なら許容の範囲」「ビームスの世界観を維持していることが重要。価格はあくまで選択肢の一つ」「SC業態にしては、価格が高かずぎ」etc.

 ざっとこんな感じだろうか。個人的な意見とすれば、海外生産より1~2割高く設定するということだが、それはメイド・イン・ジャパンのコストが乗るわけである。割高だからと言って、外国製よりクオリティが特別に高くなるわけでもないだろう。

 その辺の微妙なところは商品ができてみないと、何とも言えない。

 だから、ビームスファンはある程度、納得して購入するかもしれないが、ユニクロやグローバルワークなどで購入し、満足しているお客まで呼び込めるかと言えば、難しいかもしれない。

 アイテムはカットソー、シャツ、ボトムでも、キレカジ系だろうから、むしろITやマスコミなど「ビジカジ」のマーケットを捕捉する方が確実かもしれない。完全なカジュアルダウンしたアイテムなら、SCにはいくらもあるからである。

 既存の出店先が「ららぽーと」や「イクスピアリ」といった都心に近いSCを選んで出店しているところを見ても、なおさらだ。つまり、完全郊外のリージョナルSCでは、マーケット的にターゲットをセグメントしづらいと思う。

 だから、攻略する市場は都市部に近い「アバーバン立地」。都市に近い方が人口集積も高いし、ビジカジを必要とする客層は多いだろうからである。地方に住むお客はネットで購入するしかないようだ。

 わが街福岡にはまだ出店されていない。完全郊外のSCはイオンモールやゆめタウンだから、まずないだろう。

 ただ、福岡市は支店都市で人口150万人を突破した。ビジカジのマーケットは十分に存在する。これまでの展開が都市型SCに限定されることを考えると、可能性としてはキャナルシティ博多か、来年開業のマルイ博多か。リバーウォーク北九州がギリギリで合格だろうか。

 JR九州が駅ビルのアミュプラザを2012年の博多駅に続き、今年は大分駅にも開業した。ここには「ビームス業態」が定番でリーシングされている。ファミリー向け業態のため、JR側はほしいコンテンツの一つには違いないが、カニバリゼーションを考えると、出店は難しい。

 既存店がクローズドモール中心ということを考えると、中央区六本松の九州大学跡地で計画が進むCSCも無理と思われる。東区の人工島がお台場のようにようになれば別だが、まず期待できない。

 商品がデビューしたら東京出張時にでも、見て着てみたいと思う。という落としどころで、今回は締めることにしよう。
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