関心空域 ━━ す⊃ぽんはむの日記

元「関心空間」の日記(引っ越し後バージョン)です♪

📺ドラマレビュー📺 文明崩壊前夜の極秘ワクチン開発計画を描くSFサスペンス『パッセージ』:シリーズ1で完結。

2020年05月19日 | 日記

注意】 全体の流れのみ大筋バラしてます。ネタばれ→興醒めに思われる人は以下↓↓↓ を読まないでください!!
 
 
 
 
 
FOXの日本サイトでは「少女おっさんの異色バディー物」ドラマだと説明してる。

ま、そうも言えなくはないが、とかくバディー物なんてーと「凸凹コンビが繰り出す~」的な枕文句が付きがちなように、たいていはコメディーか、随所にコミカルな要素を敷き詰めた作品だ。かたや当シリーズ……どっちかってとシリアス基調な「重た~い話」なので、自分的にはバディー物ドラマだと説明されても💧 ピンと来ない

で。

本シリーズはファーストシリーズの1本限りで、あっさり打ち切りとなった。いまどきシリーズ1だけで潰(つい)える作品など珍しくもないせいか、作品自体は全10話で無理くり完結させている。そう編集することで、DVDの売上やオンデマンド配信収益にまで響かないよう、セーフティネットが施してあるワケだ。

なので細部の鑑賞後レビューに入る前に、大まかに本作の見どころを上げるなら第一に・・・・
日本では「まだ なじみの薄いおっさん男優: マーク=ポール・ゴスラー」を堪能してみるドラマ

ではないか、って気がする。

このおっさん、俳優駆け出しの頃は80年代トム・クルーズばりの甘~ぁいマスクで売ってたのに、結婚したら急に顔周りから肥え太って頬肉が付いた。さらには離婚後、頬髯も生やし始めたんで(トムはトムでも)トム・ハンクス系の「おっさん顔」に豹変しちまった この10年で別人だ。

でもま、逆に言えばクリス・プラット似にも❔寄ったワケで今、一番イケてる「おっさん顔」と言えなくも💧 ねーわな。

他のキャストだと、『エクソシスト』シーズン1で悪魔に憑かれる娘の姉役だったブリアンヌ・ハウイー【画像↓中央】。米国のドラマ系交流サイトとかを覗くと、彼女が演じた吸血娘「ショーナ・バブコック」嬢にカルトちっくな人気が集まってたようだ。


女ジョーカーばりに暗く哀しく苦ぁ~い過去を持つ…ゆえに狡猾ネアカな傲慢キャラにレボリューした娘、ってキャラは最近よくあるパターン。だからなのか、基本バッドエンドな完結を迎える本作のなかで唯一、彼女にとってだけは ハッピーエンド❕❔みたいなラストシーンが「わざわざ追加」されてたり~。「そのシーン、ここで必要❔❔」って自分はツッコミ入れたけどww

ひょっとしたら、彼女に関しちゃ後日談がスピンアウト・ドラマ化されても() 驚かないぜ。せいぜい、ヴァンパイア界におけるハーレイ・クインみたいな役どころで暴れ回ってほしいもんだ。

さ。 今「ヴァンパイア」ってワードが出てきたんで、本編の概要を説明しとこう。

まず、本ドラマは米国ベストセラー小説 のTVドラマ化。 3部作(トリロジー)からなる怪奇スリラー長編の、第1作目にあたる。

内容は、原始コウモリに秘められたウィルスで兵士の身体能力を強化しようと目論んだ軍事機関が研究中、試験接種を受けた被験者がヴァンパイアと化してしまい、凶暴さを制御できず外部に漏出。またたくまに世界じゅうへと吸血種族が増殖した結果、文明が滅んでしまう。その中で、ウィルスに感染しても自身で発症を抑えられる「特異形質な少女」がひとり、人類社会の復興をかけて荒廃した闇の世界に戦いをを挑んでゆく……といったお話。

ローティーンで感染したため、「何百年と少女のままの孤高のヒロイン戦士」ってところが、今までのポストアポカリプス作品とは違う。たしかに、映像化したらスクリーン映えしそうな題材ぢゃないか。


1作目の『The Passage』では このうち、少女がなぜ若くして感染し、人類のために戦う道を選んだのか。そもそもなぜ文明社会は滅んだのか❔ といった前段が描かれる。

つーワケで、まだ文明が栄えてる2019年時点を軸にしてTVドラマ版は進行する。

さらに相当、小説とドラマでは前提を変えてくる。吸血ウイルスを研究してるのは軍事機関でなく、パンデミック寸前に置かれた「謎の感染病」の猛威から米国を救うべく極秘に創設された《NOAH計画》なるプロジェクト機関。感染病は南米に始まり、アフリカに飛び火。今や中国全土に蔓延しはじめ、十分にパンデミックと呼べる状況まで悪化していた。致死率は極めて高く、発症すると12時間で死亡する凄まじさ。

第2話では、北京に近い北朝鮮に感染が拡がれば、医療環境が整ってない地域だから「ひとたまりもない」だろう、と危惧する会話シーンも登場する。


米国オンエア当時は「コロナ騒動のコの字」も起きてなかったから、こんな漠然と「狂暴な感染症は経済的に貧しい地域で始まり、やがて中国を介して欧米先進国に拡がる」なんて拡散イメージを浮かべてたんだろう。細菌研究施設なのに、隔離房病棟でマスクしないのは当たり前。医療研究者の行動描写に、消毒やら手洗い洗浄に明け暮れる日常シーンの挿入が皆無など、現時点から見たらずいぶんリアル感に欠ける。

まあ、この吸血種に変異した際の「特異症状」ってやつもビミョウだ。健常者から見ると、彼らは等しく言葉を失い、全身に血管が浮き出て瞳は黄ばみ輝く。生き血を吸う攻撃時以外は、無表情に突っ立つか座り込むだけ……のように見える。

が、そう映ってる間にも吸血種同士では、精神世界に仮想現実を介在させて自由に(どんな距離や時間を越えても)行き交い、言葉を交わし「現実さながらに濃厚な"社会"生活を営んで」るのだ。感染者Aの過去の記憶の中にさえ感染者Bが現われ、記憶の空間で(現在のAとBとしての)会話を取り交わしてるのだから❕ ヤヤこしい。

シリーズ序盤における登場人物の相関図(FOX公式サイトより)
※敵味方の構図は、最終的にこれとは大きく変わる。

そこまでは超常科学の範囲内で許容できるとしても、輪をかけて面倒くさいのは・・・・次の点。

すなわち、彼ら吸血種の「精神バイパスを通じた社会交流」は、例外的に非感染者が相手でも(吸血種の側さえ望めば)行えるケースがある、ってことだ💧 実際には健常者の前に突然、同じく健常者だった頃の姿を保ったままの(現在の)感染者の幻影が登場し、幻想空間の中で言葉を交わしたり触れあったりする場面がドラマ中ちょくちょく挿し挟まる。

んもー、めんどくせえええ❕❕ww

んで、その「例外ケース」の定義が直球オカルト💀なんだな。ズバリ感染者が、感染する前にセックスしてた相手。もしくは、その相手が(さらに感染者とは)別にセックスしたことのある相手。この、どちらかに該当する健常者(=人間)の前には、ところ構わず幻影となって(感染前の姿を借りた)ヴァンパイアどもが自由に現われ出でてきちゃう❕❔ のだ。性交=血の契り、って💧 どんだけ中世ちっくな原理じゃい

この愛憎ドロドロ&ぐちゃぐちゃな修羅場🔥の嵐を「おもしれー🎵」と楽しめた人、さらに原作本の世界に心酔してなかった人には、本シリーズは概ね好評を博した。けど一方、そのどっちでもなかった人は途中で鑑賞をリタイヤしてった。

リアルタイムな全米視聴人口は初回プレミア500万人台から始まり、エピソードを追うごとにズルズル下降。

全米放映(および録画鑑賞)視聴率の推移

リアルタイム視聴「500万人」というスタートは、かの『ウォーキング・デッド』ですら最初はそうだったからその数ごときでキャンセルの理由にはならない。要は、そのラインを死守してくれりゃいーのだが、右下がりキープ💧 ってな実にイタかった。

『ウォーキング・デッド』全米視聴者人口の推移

起死回生。 起承転結の「転」を期した"テコ入れ"エピソードは第8話だったが、(前話に比して)視聴人口を💦ちょびっと挽回させるだけ。400万ラインにさえ遠く及ばない大惨敗に帰した。この時点でFOXチャンネルは、制作総指揮のリドリー・スコット御大に『シーズン・ワンで完結させろ=さっさと文明を滅亡させろ❕』…との号令を下したのだろう、と思われる。

それが証拠に、つづく第9話(←すでに最終編集を終えていて、今さら修正の効かないエピソードだった)では、応急のワクチンが間一髪で完成。CDCに送り届ければ当分、パンデミックを遅らせられる……的な「光明が見えるエンディング」で終わってる。

それが"お上"の号令ひとつ。

第10話のたった1回分で あっちゅー間に状況は暗転。人類社会は救えない。ヒロインの少女以外の全登場人物が「パンデミック終息失敗の末に、どんなラストを迎えたか❔」なんて末路のかけらさえ何ひとつ語られないまま、ただただ『怒涛のラストシーン』で幕を綴じるんである。

南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏。ヒロインの"遥かなる未来"に幸(さち)と光あれ…



◆  ◆  ◆  ◆  ◆



尻切れトンボな結果に終わったこともあってか、総じて制作指揮の「リドリー・スコット色」は、あんまし出てるとは言い難かった。

以前にも実弟トニー・スコット(2012年 自死)と組んだミニTVシリーズ『アンドロメダ・ストレイン』で感染症サスペンスを手掛けたり、映画『エイリアン:コヴェナント』では従来のエイリアン像に「空気感染みたいに寄生する」要素を加えたりと、SFサスペンス・クリエイターとしては「常に押さえときたい題材」という思惑にも取れんことはない。

けど今回の場合、むしろスコット監督らしさは代表作『ブレードランナー』で発揮されたような、原作小説の雰囲気からインスパイアされて、独自色の濃いストーリーを浮かび上がらせる……その制作手法にこそ見られたような。だからこそ結果、アメリカ観衆からの評価は「原作を逸脱しやがって❕」と味噌クソにけなす人、「いやいや意外に面白かった🎵」と評価する原作は読んでない人、の両極端に割れたんだろうよ。うん。
=了=


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