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普天間県内移設の必要性否定 沖大大学院講座で本紙記者ら
2010年5月9日 09時50分
米軍普天間飛行場の移設問題をテーマに、沖縄大学大学院講座が8日、同大学で開かれた。
佐藤学沖縄国際大教授は「在沖海兵隊は戦略的な意味を持たないが、米軍再編は軍事的必要性からではなく、海兵隊の生き残り、組織防衛の側面から進められている」と指摘。「全国メディアは現状維持を望む官僚の影響を強く受けている。知日派とされる一部の米国関係者の声ばかり取り上げ日米関係の危機とあおっているが、今こそ冷静な議論が必要だ」と呼び掛けた。
沖縄タイムス社の屋良朝博論説兼編集委員は同飛行場の兵力や、グアムやフィリピンなどをローテーション移動する海兵隊の訓練形態を説明。「紛争の際、先行的に攻撃を行うのは空軍。しかも数万人規模の兵力投入が必要だ。普天間のヘリで移動できるのは最大でも700人程度で抑止力にはなり得ず、沖縄に基地を置く必要もない」と報告。同中部支社の渡辺豪編集部長は「子どもや孫の代まで影響を受ける。アメリカと約束したからといって鳩山由紀夫首相は5月末の結論にこだわる必要はない。国民の無関心と振興策という、びほう策で沖縄に基地を押し込めることを繰り返させてはいけない」と訴えた。
同講座は地域主権と自治の在り方を考えようと県内の大学教授や自治体職員、議員らが参加している。
◇
鳩山首相が、海兵隊の抑止力について己の無知をバカ正直に国民の前に曝け出して以来、沖縄紙が動揺し始めた。
念のためこの歴史的迷言を改めて記しておく。
【(昨年「最低でも県外」と発言した際)私は、海兵隊が必ずしも抑止力として沖縄に存在しなければならない理由にはならないと思っていた。ただ、学ぶにつけ、沖縄に存在する米軍全体の中で海兵隊は抑止力が維持できるという思いに至った。(認識が)浅かったと言われればその通りかもしれない。(仲井真知事に対して)】
沖縄紙が動揺する理由は、これまで首相が「沖縄の思いを重く受け止める」とか、「最低でも県外」ともっともらしく発言していたことすべてが首相の無知が生み出した幻想であるということになるからだ。
いくら無知で現実離れしているとは言え、いやしくも一国の首相が「沖縄の海兵隊には抑止力がある」と認めたのだ。 これまで「海兵隊の抑止力は幻想」(沖縄タイムス)というキャンペーンで県民を扇動してきた沖縄紙が動揺しないはずはない。
このまま首相発言を拱手傍観していたら、これまでの「海兵隊不要論」が一気に崩壊してしまう。
首相発言に対する沖縄紙の反撃キャンペーンの一環が上記記事の講演会だ。
沖縄タイムスの軍事オタク・屋良朝博記者を投入して反論しているようだが、記事の「紛争の際、先行的に攻撃を行うのは空軍。しかも数万人規模の兵力投入が必要だ。普天間のヘリで移動できるのは最大でも700人程度で抑止力にはなり得ず、沖縄に基地を置く必要もない」を読んだだけで良く理解が出来ない。
つまり700人の海兵隊の移動では抑止力にならないのなら、何人の移動なら抑止力になるのかの説明はない。
屋良記者はこれまでの講演会では「抑止力にならない700人の海兵隊」の根拠をこう説明している。
「普天間基地にはCH-46中型ヘリが23機あります。CH-46は乗組員が3人で、輸送できる兵員は25人です。掛け算をすると輸送人員は575人です。CH-53大型ヘリは4機しかありません。乗組員は2人で、輸送できる兵員は37人、総員は148人です。この2つの機種を合わせて、700人程度です。」
ところが、記事には出ていないが、実際は「700人+1100人」の海兵隊が移動できると説明し、「2000人弱の輸送能力しかない普天間基地をどうするのかで、14年間も議論をしている」として今度は約3倍の輸送力があっても、やはり抑止力はないと主張しているのである。
その根拠を次のように説明しているが、こうなると軍事オタクの自慢話のようなもので、数字を挙げて煙に巻いているだけで、海兵隊不要論の説明にはなっていない。
《また米軍再編では岩国基地に移転することになる、KC-130空中給油機が12機あります。この機は兵員も輸送することができて92人です。掛け算すると1100人です。ヘリと飛行機を合わせて約1800人ですね。普天間基地の兵員輸送能力は2000人弱なのです。その2000人弱の輸送能力しかない普天間基地をどうするのかで、14年間も議論をしているのです。この他にも攻撃ヘリや連絡ヘリ、セスナ機がありますが、これらは輸送能力には関係ありません。
海兵隊は名前の通り、海の兵隊です。船に乗って移動します。》
挙句の果てには、「海兵隊は名前の通り、海の兵隊です。船に乗って移動します。」と、まるで海兵隊は空の移動はしてはいけないような説明で、海兵隊不要論の結論付けをしているが、海兵隊の創立当時はともかく、台湾有事をにらむ沖縄の海兵隊が有事に駆けつけるのには「船に乗って」よりも機動性のある「ヘリに乗って」のほうが有利に決まっている。 勿論その時は制空権(領空権)確保のため空軍(嘉手納基地)と連係するのは言うまでもない。
さらに彼は「沖縄海兵隊不要論」の根拠として次の「事実」を挙げている。
(1)沖縄の海兵隊は沖縄戦時には沖縄には存在しなかった
(2)元々在日海兵隊は山梨県と岐阜県に駐留していた
(3)1955年に初めて沖縄に移動した
これらの「事実」を得意げに披露し、それをもって沖縄の「地理的優位性」を否定するというから極めて粗雑な「海兵隊不要論」である。
だが海兵隊が沖縄に新たに駐留した1955年という年代の東アジアの緊張状態を考えれば、逆に沖縄の「地理的優位性」が浮かび上がってくるから皮肉である。
先ず1949年に中華民人民共和国が成立し、1950年には朝戦争が勃発し、中国と米国はこれに介入することになるが1953年の休戦の頃から、中国の国内の権力闘争も一段落し、台湾(中華民国)併合のため台湾海峡に注目し始める。
東アジアの日中の緊張の舞台が朝鮮半島から、台湾海峡にシフトすることになる。
そして朝鮮戦争に代わり台湾海峡危機が米軍の当面の関心事になり、1950年代から1960年代にかけて中国(中華人民共和国)と中華民国(台湾)の間での軍事的緊張が高まったことは歴史的事実である。
台湾海峡の危機は、3度にわたり緊張が高まったがアメリカの介入などにより全面戦争に発展することはなかった。
さらに東西冷戦の終結により、我が国の「仮想敵国」も旧ソ連(ロシア)から中国にシフトすることになり、経済破綻寸前の北朝鮮より、経済力の発展とともに軍事力増強を続けている中国が太平洋の出口として狙う沖縄近海の争奪戦が日米同盟の最重要課題になっているのである。
屋良記者が、元々沖縄に駐留していなかった米海兵隊が在日米軍基地縮小の動きに乗って、駐留の必要のない沖縄に押し付けられたという「海兵隊不要論」は、
実は丁度その頃勃発した台湾海峡危機に備え最も地政学的優位に位置する沖縄へ必要があって駐留したのである。 この一連の米海兵隊の動きは軍事専門家でもない筆者でも容易に理解できることである。
米海兵隊が岐阜、山梨から沖縄に移動した1955年当時、10代の少年として沖縄に在住していた筆者は、海兵隊というより「マリン兵」という名で耳に馴染んでいたし、「海兵隊は犯罪者集団」といった地元紙の刷り込みを受けて育った。
その一方「キーストーン」という名を街の至るところで目にし、「キーストーン貿易」とか「キーストーンフィルム」といった会社名に使われていたが、それが「太平洋のの要石(KEYSTON)」を意味することを知るのは、かなり後になってからである。
このように沖縄は過去も現在も戦略的に優位な位置にあり、幸か不幸か中国にとっても日米同盟にとっても「キーストーン」であり続けているのである。
沖縄紙の「海兵隊不要論」は地政学的には朝鮮有事と台湾有事の両方の場合に、型通り触れているが、朝鮮有事には比較的詳しく言及しても台湾有事についてはほとんどスルー状態である。
例えば7日付け沖縄タイムス社説「[「普天間」大迷走]民主党に骨はないのか 」でも、この通り。
《首相は朝鮮半島と台湾海峡を念頭に置いているはずだが、沖縄の海兵隊は長崎県佐世保を母港とする海軍艦船で移動する。朝鮮半島をにらむのであれば、九州中北部で海兵隊の全機能を集約するほうが合理的だ。台湾へ向かうにも起点はやはり長崎にならざるを得ない。九州中北部だけでなく、自衛隊演習場を抱える本州など候補地はいくらでもあるではないか。》
◆
「海兵隊不要論」の中で、
「海兵隊は殴りこみ部隊だから防御は不得意で抑止力はない」という説のほかにもうひとつ、
上記社説にもある「海兵隊の任務は米国民間人の救出であるから抑止力にはならない」という説がある、。
これら二つの説がお互いに矛盾するおかしさはさておいても、米国軍隊が有事の際に自国民の救出を最優先順位にするのは当然のことであり、そもそも日米同盟そのものも自国に有利な事項を最優先に考えて締結しているわけであり、
それが自国に何の利益ももたらさず、ただ負担に過ぎないと判断したら即刻破棄されるのは火を見るより明らかである。
「海兵隊は自国民救出云々」は「海兵隊不要」には、何の説明にもなっていない。
【追記】
在日海兵隊の是非論議や在日米軍基地の是非論議でテレビ芸者達も騒々しくなってきたようだが、
元々自国の安全を他国に守ってもらうのが不自然であり、当日記の主張は米軍基地の抑止力を論ずるならば憲法改正、防衛予算の増強、さらには非核三原則の撤廃等々にまで論議すべきだということである。
そうなれば海兵隊どころか米軍基地の国外撤去は自動的に行われることになり、メデタシ、メデタシである。
その際、自衛隊が国防軍に昇格し米軍に取って代わって沖縄各地に配備されることは言うまでもない。
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