田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

「わからない映画」と「偏愛映画」を5本 その4『恋の浮島』『ニーチェの馬』

2019-07-07 12:48:47 | 俺の映画友だち
 「わからない映画」の最終回。
『恋の浮島』(82)(1983.4.30.岩波ホール)

 

 最終日の最終回に滑り込みで見た。疲れた!これが映画を見終わった後の正直な一言。監督のパウロ・ローシャは、従来の映画のパターンを排除して、歌舞伎やオペラを念頭に置いてこの映画を作ったらしいので、その道に詳しい人たちが見れば、十分に理解できたのだろうか、という疑問を感じた。
 
 また、主人公のモラエスの故郷への追憶と、日本への強い思いという矛盾した考えを、時折画面に姿を見せる女神(ビーナス)によって表現している、とも取れるのだが、何しろ観念的で、遠目のカメラの長回しのシーンが続くもので、こちらにはストレートに伝わってこない。例えば、鈴木清順の『陽炎座』(81)を見た時にも、同じような感慨を持ったのだが、あの映画も歌舞伎からヒントを得たらしいので、その点ではローシャの意図は反映されていたのかもしれない。
 
 それにしても、この観念的な映画に3時間近く付き合うにはさすがに骨が折れた。チケットを買ってしまった手前、意地だけで見てしまった感も無きにしも非ず。まだまだ修行が足りません。
 
『ニーチェの馬』(11)(2011.11.18.松竹試写室)
 

 貧しい農家の父娘の生活を、モノクロ画面と長回しのカメラで執拗に描く。“カッタルベーラ”の面目躍如の一作。見始めは後悔したが、段々とペースに慣れてくる自分がいた。たびたび出てくるふかしたイモが、何だかとてもうまそうに見えてくるから不思議だ。
 
【今の一言】2012年度キネマ旬報ベスト・テン1位って、どうなのだろうか。これも分からない。
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「わからない映画」と「偏愛映画」を5本 その3 『白夜』『プロビデンス』

2019-07-07 12:13:25 | 俺の映画友だち
 「わからない映画」の続き。
『白夜』(71・ロベール・ブレッソン版)(1978.12.6.自由ヶ丘武蔵野推理劇場)
 
 
 イングマール・ベルイマンの『沈黙』(63)との2本立てという我慢大会。川に浮かぶ船々が夜景となって印象に残る。芸術祭参加作品といった感じの映画だと思ったら、実際そうだった。
 
『プロビデンス』(77)(1980.11.17.五反田TOEIシネマ)

 
 併映はブニュエル親子の『自由の幻想』(74)『赤いブーツの女』(74)。前の2作でごちゃごちゃになった頭の中は、この映画で決定的におかしくなった。というよりも疲れた。これまでアラン・レネの映画は一本も見たことがなかったし、この映画に関しても何の予備知識もなかったので、とにかく面食らった。
 
 論理的な筋立ては一切なく、一人の老人(ジョン・ギールグットがすごい!)の妄想=彼が描く小説に自分の子供たちを登場させて、憎悪、感情の亀裂、葛藤、老いの醜さなどを、次々にこれでもかとばかりに見せつける。まるで舞台劇のように登場人物が限られ、セリフもやたらと多い。その間は、暗い画面で描かれ、彼の妄想が覚めた途端に、はっとするほど明るい画面に切り替わる。
 
 そしてそれまでいがみ合っていた息子夫婦(ダーク・ボガード、エレン・バースティン)が仲良く登場し、2人の間に亀裂を生じさせていた謎の人物(デビッド・ワーナー)が老人の隠し子だと判明し…。結局は、全てが老人の自己嫌悪、妻を自殺に追い込んだと思い込み、息子に引け目を感じた結果の妄想だったのか、とこちらは一応納得する。一度見ただけでは理解に苦しむ映画だが、2度、3度と見ればこの親子愛憎劇が多少なりとも理解できたりするのだろうか。
 
【今の一言】どちらもこの後、2度と見ていない。それにしても、こんな2本立てや3本立てを平気で?見ていたのだから、我ながら、昔はタフだったなあとつくづく思う。
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「わからない映画」と「偏愛映画」を5本 その2 『2001年宇宙の旅』

2019-07-07 11:41:21 | 俺の映画友だち
 続いて「わからない映画」を5本。
『2001年宇宙の旅』(68)(1980.6.11.渋谷パンテオン)
 
 
 まず、何と言っても特撮がすごい! とても10年以上も前に作られた映画だとは思えない。人類の夜明けの類人猿は、まさか人間がメーキャップをして…などと、とにかく出だしから驚かされる。そしてヒトザルに放り投げられた骨が宇宙船になるショット、ミニチュアを使った宇宙船や宇宙ステーションの素晴らしい形態、コンピューター・ハルがもたらす恐怖、星々の姿、「スーハー」の効果音、ラストの幻想宇宙世界……。素晴らしい特撮のオンパレードのようなものだ。「美しき青きドナウ」や「ツァラトゥストラはかく語りき」を使った音楽効果も抜群。
 
 ストーリーは、実はよく分からないのだが、謎の石板を巡る、猿→人間→コンピューター→超人間といった流れを、太古の世界と未来の宇宙空間をつなげて描いたものなのか。特撮的には『スター・ウォーズ』(77)、精神的には『未知との遭遇』(77)がこの映画の流れをくんでいるのだろうか。もう一度じっくりと見てみなければならない。
 
【今の一言】とは言え、この後何度も見直し、分からないけれど大好きな映画へと転化した。まあラスト前は必ず睡魔に襲われるのだが…。
 
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「わからない映画」と「偏愛映画」を5本 その1

2019-07-07 10:55:13 | 俺の映画友だち
 映画の仲間が集う会で「わからない映画」と「偏愛映画」を5本挙げるアンケートを実施。さまざまなタイトルが飛び交う中、自分が挙げた5本、まずは「偏愛映画」を。
 
   
 
『最後の航海』(60)(1975.5.15.木曜洋画劇場)
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/7ad781bd0a11992772a4b4ce86e4bf4f
 
『Mr.ビリオン』(77)(1986.5.6.)
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/8780c2c26c656c1badd6f8e4bd29a9f3
 
『ハンター』(80)(1981.5.1.蒲田パレス座)併映は『エクスタミネーター』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/4457863a43984a43a30d50ef1ae09aa6
 
『ある日どこかで』(80)(1983.7.11.大井ロマン)併映は『バンデットQ』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/c0daf9574990b3b417ed4c1715b965ab
 
『天国に行けないパパ』(90)(1991.3.23.銀座シネパトス)
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/b2d82ee1273273e561f35aa46aacf742
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