一度手放してしまった懐かしい本を見付けた。
献辞されている“老ターザン氏”なる人からの数通の手紙(新聞紙上での連載中に、ある読者が筆者に向けて書いたもの)の面白さもあって一気に読んでしまった。こういう無名の映画ファンの声をもっと広げていけば、先の“プレストン・スタージェス馬鹿(某大学の先生様)”のような暴論に対する反発の声も高まると思う。
立川談志が和田誠との対談でこんなことを語っていた。「~無名でこういうこと言うやついないかね。俺は一介の自転車屋のおやじだけど、こんなに映画観てるっていうやつ。~そういう人に聞きたいね。~書いたものに対して、よく分かってくれた、というのは1%で、99%は俺の映画論というのがあるはずだよ。それを読みたいね」と。
以上は、初めてこの本を読んだ1994年7月時のメモ。25年後の今は映画評論家はほぼ死滅し、逆にインターネットがあるから、無名の人々の映画に対する声も広がったが、中には誹謗中傷やヒステリックな文章も多い。自由に語ることにはそれなりの責任や、相手に対する気遣いも必要だと思うのだが…。
この本は、1979年から83年にかけてテレビで放送された映画について、筆者が書いた短評をまとめたもの。紹介されているのは、自分も同じ時にテレビで見た映画ばかりなので、読み直すと懐かしさが込み上げてきた。