田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

2012.1.【違いのわかる映画館】vol.16 神保町 岩波ホール(2022.7.閉館)

2019-07-15 22:11:48 | 違いのわかる映画館

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『砂漠の流れ者』

2019-07-15 14:23:49 | 映画いろいろ

『砂漠の流れ者』(70)

   

 サム・ペキンパー監督作で最も好きな『砂漠の流れ者』を久しぶりに再見。

 開拓時代末期の西部。一獲千金を狙うケーブル・ホーグ(ジェイソン・ロバーズ)は、2人の仲間(L・Q・ジョーンズ、ストロザー・マーティン)に裏切られ、砂漠に置き去りにされる。だが、ホーグは偶然“泉”を見つけ、駅馬車の休憩所を始める。そこに、彼が愛する娼婦のヒルディ(ステラ・スティーブンス)やインチキ牧師(デビッド・ワーナー)が絡んでの、珍騒動が繰り広げられる。

 ところで、この映画に、スリム・ピケンズ演じる御者の相棒役で出演したマックス・イヴァンスが、撮影日誌風に書いた『ケーブル・ホーグの男たち』(原田眞人訳)という面白い本がある。

 その中で、イヴァンスはこの映画を「一人の男と大地が奏でる軽妙洒脱な調べ。水のなかった場所で水を見つけた男は、大自然の気まぐれを唯一の味方に、独力で生き延びようとする。これは、優しく愛おしい愛の歌、地球への愛、いい女(たとえ彼女が娼婦でも)への男の愛であり、土に消えていった男たちへの挽歌なのである」と評している。

 そして、どちらも西部の黄金時代に乗り遅れた男たちを描きながら、「史上最大の暴力映画(『ワイルドバンチ』(69))の後に、心温まる愛とユーモアときめ細やかな名演に彩られた映画を発表する矛盾」として、ペキンパーの“二面性”も鋭く指摘しているのが面白い。

 この映画は、どこか寓話やホラ話(トール・テール)的なものを感じさせるユーモアがある半面、変わりゆく西部と時代に乗り遅れた男の姿として、ホーグの最期が、セルジオ・レオーネ監督の『ウエスタン』(68)でロバーズが演じたシャイアンのそれと重なって見えて、切なくなるところもある。そんなところが好きだ。

『サム・ペキンパー 情熱と美学』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/96a0cab264ba3d53e14786426865d915

『ウエスタン』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/0fdc28ff511acdc17c006cb134f5ddac

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【ほぼ週刊映画コラム】『さらば愛しきアウトロー』

2019-07-15 10:53:16 | ほぼ週刊映画コラム
エンタメOVOに連載中の
『ほぼ週刊映画コラム』
今週は
ロバート・レッドフォードの俳優引退作
『さらば愛しきアウトロー』
 
 
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『逃亡者』(93)アンドリュー・デイビス監督

2019-07-15 07:35:51 | 映画いろいろ
『逃亡者』(93)(1993.12.22.丸の内ピカデリー)


 妻殺しの罪を着せられた医師リチャード・キンブル(ハリソン・フォード)が、連邦保安官補のジェラード(トミー・リー・ジョーンズ)率いる警察に追われながらも真犯人を見つけ出す。1960年代のテレビドラマを基にしている。監督アンドリュー・デイビス。
 
 「リチャード・キンブル。職業医師」のナレーションで始まるオリジナルテレビドラマから約30年ぶりの映画化である。つまり、これも最近のハリウッドのネタ不足を象徴しているのだが、今回は素直に脱帽しよう。何しろ、オリジナルのドラマが持っていた、追う者と追われる者という基本的な面白さは残しながら、捜査方法やマスコミ、あるいは黒人の描き方などの変化から、30年という時代の変化を感じさせ、ちゃんと“今の時代の映画”として甦らせていたからである。
 
 もともとテレビドラマの映画化は、よくできたドラマのスケールアップであり、面白くならない方が不思議なはずなのだが、実はそこには大きな落とし穴がある。つまり、テレビドラマは毎日や毎週、連続して放送されるものであり、言わば長丁場の勝負となる。対して、映画は約2時間という凝縮された時間内の短期決戦であり、しかもこの映画のようにオリジナルが作られてからの時間差が長ければ、時代の壁まで存在するからである。
 
 つまり、テレビドラマと映画の作り方や盛り上げ方は、本来は異なるものなのだ。実際、テレビのキンブルは4年間逃げ続けていたわけだから…。しかるに、映画のプロたちがこんな簡単なことに気付かず、結構失敗するのだが、この映画はその落とし穴を見事にクリアしていた。
 
 監督のデイビスは、ジーン・ハックマン主演の『ザ・パッケージ/暴かれた陰謀 』(89)からの密かな注目株。その力技の演出に加えて、フォードとジョーンズ(『パッケージ~』の暗殺者役も印象的)が体現した、追いつ追われつの中での、対立から和解へと変化していく関係性も面白かった。ジョーンズはデイビス監督作の『沈黙の戦艦』(92)にも出ていたから、監督のお気に入りなのだろう。
 
【今の一言】ジョーンズはこの映画でアカデミー助演賞を受賞し、大スターの仲間入りを果たした。デイビス監督には注目していたのだが、この後、思ったほどは活躍していないのが残念だ。
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