田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『トロピック・サンダー/史上最低の作戦』

2019-07-03 13:47:35 | 映画いろいろ
『トロピック・サンダー/史上最低の作戦』(2008.12.3.丸ノ内ピカデリー1)

 

 東南アジアでの戦争映画の撮影現場で、本当の戦闘状態に巻き込まれながら、それとは気付かずに演技を続ける超個性的な3人のスターが繰り広げるドタバタコメディー。監督兼任のベン・スティラーに、ジャック・ブラックとロバート・ダウニー・Jrが加わるのだから、濃くて暑苦しいことこの上ないのだが、ここまで弾けてくれれば文句は言うまい。
 
 『地獄の黙示録』(79)『プラトーン』(86)といった戦争映画はもちろん、デブでハゲのプロデューサー役でゲスト出演したトム・クルーズの出演映画(『7月4日に生まれて』(89)『ザ・エージェント』(96))を、徹底的にコケにしているところが隠し味。3人の中では黒人に成り切るダウニー・Jr(カーク・ダグラスのパロディのカーク・ラザラス!)がピカイチ。アルパ・チーノなんて奴も出てくる。超おバカ映画でありながら、戦闘やアクションのシーンで手を抜いていないところがミソだ。
 
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『アラバマ物語』

2019-07-03 10:45:14 | 1950年代小型パンフレット
『アラバマ物語』(62)(1982.6.28.)
 
   
 
 1930年代、人種的偏見が根強く残るアメリカ南部で、白人女性への暴行容疑で逮捕された黒人青年の事件を担当した弁護士アティカス・フィンチの物語。当時の出来事を、成長した娘のスカウトが回想するという形式で描く。
 
 グレゴリー・ペックは、この映画でアカデミー主演男優賞を獲得しているが、いい意味で、他の映画の彼のイメージとそれほど大きく違うとは思えなかった。
 
 例えば、ジョン・ウェインが昔気質の西部男を演じ続けたように、ペックやジェームズ・スチュワートは善良で紳士的なアメリカ人を演じ続けたからだ。そこには、今の俳優のような、奇をてらった演技も、エキセントリックな演技も必要なかった。
 
 それ故、ごく平凡な演技に見えてしまいがちだが、実はこの平凡な典型を演じることこそが最も難しいのではないかと思う。その意味で、この映画のペックは『子鹿物語』(46)の父親像とも通じる温かさを感じさせてくれた。脇役のブロック・ピータースやロバート・デュバルも好演を見せる。
 
 とは言え、この映画はどこか突っ込みが足りないような気がする。例えば、最初のエピソードにおける黒人差別の問題にしても、裁判のシーンで問題の根に触れておきながら、無実なのに有罪となる黒人青年(ピータース)を殺してしまうことで、解決をつけないままで終わらせてしまった。
 
 続いての正当防衛編?でも、原題の「モノマネ鳥を殺す」の反語の「無害のものをむやみに殺してはいけない」という言葉を引用して片づけてしまった感がある。そして意外にさらりと描いているので、問題提起を感じるほどの衝撃もなかった。
 
 ただ、この映画が作られたのは今から約20年前。あの頃はこの程度の描写やセリフが観客にショックを与え、問題提起を促したのだとすれば、俺が感じたことは時の流れによって生じたものなのかもしれない。
 
【今の一言】などと、生意気にも30数年前の自分は書いているが、この映画は見るたびに好きな映画へと変化していった。それは、この映画が一種の寓話であることに気づき、その中で、本当の正義とは何かを考え、全ての問題が解決するとは限らないことを知ったからである。今では法廷を去る時のペックの姿に素直に感動する。
 
All About おすすめ映画『アラバマ物語』
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『ザ・ロック』

2019-07-03 09:33:43 | 映画いろいろ
『ザ・ロック』(96)(1997.7.30.目黒シネマ 併映は『身代金』)

   
 
 アメリカ海兵隊員の英雄が率いるテロリストと、それを制圧せんとする特殊部隊との攻防を描く。製作ジェリー・ブラッカイマー、監督マイケル・ベイ。
 
 この映画は、まずはプロデューサー兼任のショーン・コネリーが、自分を際立たせるためのしたたかさを示したものだと言える。残念ながら、ニコラス・ケイジとエド・ハリスは、横綱コネリーの露払いと太刀持ち役といった感じだ。
 
 前半はケイジとハリスにそこそこ花を持たせておいて、おもむろに登場して全てをさらってしまうコネリーは、いささかあざとく見える。しかも幽閉された元英国諜報部員とくれば、嫌でも007=ジェームズ・ボンドの影がちらつく。時折、それに引っ掛けたようなジョークも発せられるから、これは意識的な役柄なのだろう。
 
 この映画、手の込んだ伏線も張られてはいるのだが、派手なドンパチの方が目立ってしまってそれが生かされていない。特にハリスが演じた国家に対して反旗を翻す将軍の腰砕けぶりにはがっかりさせられる。だから、トータルとしては、最近流行のスピーディーなノンストップアクションの標準作という印象に落ち着いてしまうのだ。

 【今の一言】この映画のプロデューサーのジェリー・ブラッカイマーは「映画は極上の娯楽である」をモットーに、『トップガン』(86)『クリムゾン・タイド』 (95)『アルマゲドン』(98)『ブラックホーク・ダウン』(01)『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズなど、派手なアクションと、ヒット曲を使用したサウンドトラックを融合させた映画を作り続けている。同種のプロデューサーであるジョエル・シルバーとともに、『トロピック・サンダー/史上最低の作戦』(08)でトム・クルーズが演じたプロデューサー役のモデルとなったとされる。
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