『ボヘミアン・ラプソディー』(18)の“影の監督”デクスター・フレッチャーが、今度はエルトン・ジョンの半生を描いた。
ミュージシャンとしての天才的な才能、家族(特に父親)との確執、同性愛者としての苦悩、孤独、破天荒な私生活、仲間との友情とすれ違い、といった要素は『ボヘミアン・ラプソディー』のフレディ・マーキュリーの場合とよく似ているが、違いは、エルトンの更生施設での告白から過去にさかのぼっていく点と、エルトンの名曲をミュージカルシーンとして描いたところ。
つまりこの映画は実際のエルトンを基にした一種のファンタジーなのだ。そして、フレディ役でアカデミー賞に輝いたラミ・マレック同様、エルトンを演じたタロン・エガートンが素晴らしい。歌も全て吹き替えなしだったというからあっぱれだ。
ただ『ボヘミアン・ラプソディー』のライブエイドに匹敵するようなクライマックスがないので、無理に盛り上げようとして全体的に演出過多が目立つところが難点。とは言え、全ての曲をほぼリアルタイムで聴いた者としては、曲が作られた経緯や背景を改めて知らされて感慨深いものがあった。特に「ユア・ソング(僕の歌は君の歌)」が生み出されるシーンがいい。作詞担当のバーニー・トーピンを演じた、『リトル・ダンサー』(00)のジェイミー・ベルもなかなかいい味を出していた。