田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

2012.10.【違いのわかる映画館】vol.25 新橋文化劇場(2014.8.閉館)

2019-07-19 12:49:07 | 違いのわかる映画館

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『リバー・ランズ・スルー・イット』

2019-07-19 09:16:14 | 映画いろいろ
『リバー・ランズ・スルー・イット』(92)(1993.11.18.みゆき座)

   

 舞台は1910~20年代。美しいモンタナの自然を背景に、厳格な父と2人の息子の絆と確執を、フライフィッシングを通して詩情豊かに描く。ロバート・レッドフォード監督作。
 
 アメリカでは、父から息子へ伝えるべきものが三つあるという。それは野球(キャッチボール)、釣り、キャンプでの火の起こし方らしい。そうなると、親子の釣りがメインで描かれるこの映画は、野球の『フィールド・オブ・ドリームス』(89)ならぬ、釣りの“リバー・オブ・ドリームス”になり得たはずなのだが、この映画は、そこに宗教や兄弟の葛藤を加えてしまったものだから、ストレートな感動作とはならなかった。言い換えれば、『フィールド・オブ・ドリームス』が描いたような夢よりも、現実の切なさの方が浮かんでくるような話になっていたのである。
 
 また、弟の方に、一種破滅的な、夭折の資格のある人物像が与えられ、演じたブラッド・ピットが監督レッドフォードの若き日にそっくりだったところに、この映画に対するレッドフォードのスタンスが如実に表れていた気がした。その弟に比べると、生き永らえてしまった真面目な兄(クレイグ・シェイファー)の方が劣って見えてしまうのだ。だから、長男として生まれ育った自分から見ると、『エデンの東』(55)もそうだが、どうして映画で描かれる兄弟像は弟有利になってしまうのか、と感じて素直に入り込めないところがあった。
 
 加えて、最近のアメリカ映画にしては、珍しくスローなテンポで淡々と進んでいくものだから、何だか小津安二郎の映画を見ているような気になった。知らぬ間に、すっかりアクション主体の映画のテンポに慣らされてしまったのか、と思ったら、どうやらそうでもないらしい。
 
 例えば、レナード・マルティンの『Movie Guide』には、「美しい映画だが、ペースがゆっくりで、情緒が深過ぎて、ちょっと眠くなる」と書かれており、評価も二つ星半とあまり高くない。してみると、この映画を見て、何だか困ってしまったのはオレだけではないようなのだ。
 
 ところで、この映画でピットが演じた美男で破滅的な弟の姿を見ながら、最近変死してしまったリバー・フェニックスのことが思い出された。彼もまた危うい美しさを感じさせながら、若くして半ば破滅的に散ってしまったからである。だが、それとは対照的に、ニューシネマの時代からしぶとく生き残り、渋みのある役を手に入れた父親役のトム・スリットの姿を見ると、細く長く活躍する役者の存在もまた魅力的であることにも気づくのである。
 
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2012.9.【違いのわかる映画館】vol.24 銀座テアトルシネマ(2013.5.閉館)

2019-07-19 06:13:43 | 違いのわかる映画館

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