「KyodoWeekly」6月24日号から「6月の映画」共同通信のニュースサイトに転載
https://www.kyodo.co.jp/national-culture/2019-07-16_2126583/
『暴走特急』(95)(1995.10.30.ワーナー試写室)
海軍特殊部隊出身の料理人ケイシー・ライバック(スティーブン・セガール)が乗った豪華列車グランド・コンチネンタルが、テロリスト集団に乗っ取られる。ライバックは単身ゲリラ戦を仕掛け、次々とテロリストを倒していくが…。
前作『沈黙の戦艦』(92)は、ほとんど漫画の世界だったが、それに続くこの映画は、さらに金をかけて派手にした感がある。セガール扮するライバックのスーパーマンぶりは、前作ですでに明らかだから、『ダイ・ハード』シリーズでブルース・ウィリスが演じるマクレーンのような、意外性が生み出す面白さは望むべくもない。となると、ストーリーの中でアクションがどう生かされているかが勝負の分かれ目になる。
で、007ジェームズ・ボンドも真っ青のライバックの一人舞台が展開し、時には、おいおいそこまでやるか、と思わず苦笑してしまうようなところもあった。ただ、『ダイ・ハード3』(95)を見た時にも感じたのだが、どうも例のオウム関連の事件以来、こうした大掛かりなテロ活動が、単に映画の中の出来事や、フィクションとして捉えられなくなってしまった。だから、半ばあきれながら見ていたこんな映画にも、ちゃんと時代が反映されていることに気づかされるのだ。思えば物騒な時代である。
列車パニックものと言えば、『カサンドラ・クロス』(76)が思い出されるが、あまりにも単純なこの映画を見ると、あの映画ですら傑作に思えるような錯覚に陥る。
20数年前、この映画と同時期に公開された1996年の正月映画はこんなラインアップだった。