自殺志願の若者ウィリアム(アナイリン・バーナード)は、殺し屋のレスリー(トム・ウィルキンソン)と、1週間以内に暗殺してもらう契約を結ぶ。ところがウィリアムの前にキュートな女性エリー(フレイア・メイバー)が現れて…。
この映画の、自殺志願者が美女と出会って生きたくなる、という皮肉な設定は、例えば、フィリップ・ド・ブロカの『カトマンズの男』(65)、山田洋次の『九ちゃんのでっかい夢』(67)、アキ・カウリスマキの『コントラクト・キラー』(90)、マイク・ファン・ディムの『素敵なサプライズ ブリュッセルの奇妙な代理店』(15)などと同じであり、橋の上で自殺志願者と出会うという出だしは落語の「文七元結」にも通じるものがあるなど、決して珍しいものではない。いわば、ブラックユーモアを含んだシチュエーションコメディとしては一つの典型だともいえる。
ただ、この映画の新味は“殺す側”にもドラマを持たせて二重構造とした点だ。ウィルキンソンが暗殺件数のノルマ達成に悩む、殺し屋なのに愛すべきおっさんを巧みに演じて映画に説得力を与えている。監督・脚本のトム・エドモンズは、この映画が長編デビュー作とのことだが、今後に期待を抱かせるような、小品の佳作に仕上げていたと言えるだろう。
『素敵なサプライズ ブリュッセルの奇妙な代理店』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/cb7f2ddc679cea4a14ebd383e7629dd1
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