田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『沈黙の戦艦』アンドリュー・デイビス監督

2019-07-16 16:01:44 | 映画いろいろ
『沈黙の戦艦』(92)(1993.12.)
 
 
 最後の航海に出たアメリカ海軍の戦艦ミズーリがテロリスト一味(ゲーリー・ビジー、トミー・リー・ジョーンズら)に占拠される。海軍特殊部隊の元指揮官で、今はコック長を務めるライバック(スティーブン・セガール)が単身彼らに立ち向かう。
 
 アンドリュー・デイビス監督の『逃亡者』(93)が傑作で、その前の『パッケージ/暴かれた陰謀 』(89)もなかなか面白かったし…と思い、その2作の間に撮られた同じくデイビス監督によるこの映画を見てみた。3作の共通点は、主役を食う活躍を見せる脇役ジョーンズの存在だった。特に、この映画の外見は、ストーンズのキース・リチャーズをほうふつとさせて面白い。
 
 さて、この船上を舞台にした切れのいいハードアクション劇を先に作られたら、同じく船上が舞台となる予定だったという『ダイ・ハード3』の製作が延期になったのも分かる気がするし、アクション映画にこだわるアンドリュー・デイビスの一貫性も感じられた。
 
 惜しむらくは、セガールがあまりにも強過ぎて、『ダイ・ハード』のブルース・ウィリスのような意外性が生み出す面白さがなかった点だが、AV女優がいきなり戦士になり、間抜けなテロリストに慌てふためく軍部、そんな中で、唯一人冷静で事を解決してしまう主人公といった内容は、ほとんどコミックの世界なのだから、それに対して理屈をこねても仕方がない、という気もするのだ。
 
【今の一言】この後で作られた『ダイ・ハード3』(95)は、『ダイ・ハード』(88)の高層ビル、『ダイ・ハード2』(90)の空港に代わって、ニューヨーク全体を舞台としたが、成功作とはいえない出来だった。また“船上ダイ・ハード”の脚本は書き直されて『スピード2』(97)として映画化されたが、こちらの出来も良くなかった。
 
トミー・リー・ジョーンズについて
https://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/column/49768
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『パッケージ/暴かれた陰謀』アンドリュー・デイビス監督

2019-07-16 12:39:20 | 映画いろいろ
『パッケージ/暴かれた陰謀』(89)(1993.3.)

 

 左遷された歴戦の兵士(ジーン・ハックマン)が、米ソ間の陰謀に巻き込まれていく様を描く。この映画では、ジョン・フランケンハイマー監督の『対決』(90)同様、冷戦終結間際の軍人たちの足掻きが描かれている。
 
 今や存在しないソビエトという国、そっくりさんが登場する失脚したゴルバチョフなどに思いをはせると、この映画で描かれた米ソの醜い争いが何と空しく見えてくることか。加えて、ここ数年の間にいかに世界の情勢が急変しているのかが如実に示される。
 
 ハックマンに加えて、暗殺者役のトミー・リー・ジョーンズ、刑事役のデニス・フランツの好演も光った。
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『ALWAYS 三丁目の夕日』シリーズ

2019-07-16 08:17:58 | 映画いろいろ

『ALWAYS 三丁目の夕日』(05)(2005.11.24.品川プリンスシネマ)

 西岸良平の原作漫画は短編集のようなものだから、1本の映画としてどのようにストーリーを組み立てているのかに興味があったのだが、鈴木オートのお父ちゃん(堤真一)の性格を変え、六ちゃんを女の子(堀北真希)にするなどの脚色はあったものの、概ね原作の世界を大事にしていたので好感が持てた。とはいえ、この映画の魅力は昭和33年を再現した見事なCG(東京タワー、都電、商店街…)と小道具へのこだわり(万年筆!)と子役のうまさに負うところが大きい。特に淳之介役の須賀健太には見事にやられた。泣かされた。自分が生まれた頃の東京の風景が懐かしかった。
 
 話は変わるが、懐かしいから昔に戻りたいとは思わない。もはや自分は違う時代を生きてしまっているのだ。密度の濃い家族関係や隣人関係も全てがいいとは思わない。それはそれで煩わしかったりもするのだ。皆貧しさから脱出したいから、便利なものが欲しいから必死に働いたのだ。けれども人は失った絆や無くしたものや、捨てたものに思いをはせる。物に囲まれることだけが幸せなのかと問うたりもする。そんな矛盾を抱えながら、答えを出せないままに結局人生は流れていくのだろう。その点で、この映画のラストに映される不変の“自然の美”である夕焼けと、作られた“人工の美”である東京タワーの組み合わせは象徴的だった。どちらも美しい。
 
『ALWAYS 続・三丁目の夕日』(07)(2008.6.19.)
 
 オープニングでいきなりゴジラが現れる。特撮出身の監督、山崎貴が本当に撮りたかったのはこれだったのかもしれない。三丁目の人々の“その後”が描かれるのだが、前作ほどのインパクトがなく、間延びした印象を受けるのは、続編の宿命か。背景となる昭和30年代前半は、自分が生まれる少し前なので、懐かしくはあるのだが、本当にあの時代に帰りたいとは思わないし、また帰れるはずもない。まだ貧しく戦争を引きずったあのころが全て良かったと思うのは所詮幻想である。
 
 では、自分も含めて何故人は捨てたり失ったりしたものにノスタルジーを憶えるのだろうか。これは永遠の謎であり、人間が抱える二律背反するジレンマでもあろう。その点で、この映画で小日向文世が演じた実業家が吐く、「今は(貧乏でも)幸せだが、必ず後悔する」、「金が全てじゃない、けれども…」、というセリフは象徴的だ。まだ首都高が上にない日本橋、新幹線以前の「こだま」などまたまたCGが威力を発揮しているが、最も印象的だったのはエンドロールの8ミリ風の映像だった。
 
『ALWAYS 三丁目の夕日'64』(12)(2012.1.22.MOVIX亀有)
 
 前作『ALWAYS 続・三丁目の夕日』から約5年後の1964(昭和39)年、東京オリンピック開催の年を舞台としている。 いよいよ自分も知っている世界が舞台となった。今回は、淳之介(須賀健太)の独立、六子(堀北真希)の結婚に関する話がメインで描かれる。このシリーズを見終わって、改めて良くも悪くもオリンピックと新幹線が東京の風景を変えたのだと思った。
 
【今の一言】監督の山崎貴はこの後、『永遠の0』(13)や近々公開の『アルキメデスの大戦』といった戦争物も手掛けているが、それらも、思想云々というよりも、失われたものへのノスタルジーや、CGを駆使してそれを再現することへの興味の方が強いのだと思う。
 
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2012.2.【違いのわかる映画館】vol.17 角川シネマ有楽町

2019-07-16 06:00:13 | 違いのわかる映画館

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