『沈黙の戦艦』(92)(1993.12.)
最後の航海に出たアメリカ海軍の戦艦ミズーリがテロリスト一味(ゲーリー・ビジー、トミー・リー・ジョーンズら)に占拠される。海軍特殊部隊の元指揮官で、今はコック長を務めるライバック(スティーブン・セガール)が単身彼らに立ち向かう。
アンドリュー・デイビス監督の『逃亡者』(93)が傑作で、その前の『パッケージ/暴かれた陰謀 』(89)もなかなか面白かったし…と思い、その2作の間に撮られた同じくデイビス監督によるこの映画を見てみた。3作の共通点は、主役を食う活躍を見せる脇役ジョーンズの存在だった。特に、この映画の外見は、ストーンズのキース・リチャーズをほうふつとさせて面白い。
さて、この船上を舞台にした切れのいいハードアクション劇を先に作られたら、同じく船上が舞台となる予定だったという『ダイ・ハード3』の製作が延期になったのも分かる気がするし、アクション映画にこだわるアンドリュー・デイビスの一貫性も感じられた。
惜しむらくは、セガールがあまりにも強過ぎて、『ダイ・ハード』のブルース・ウィリスのような意外性が生み出す面白さがなかった点だが、AV女優がいきなり戦士になり、間抜けなテロリストに慌てふためく軍部、そんな中で、唯一人冷静で事を解決してしまう主人公といった内容は、ほとんどコミックの世界なのだから、それに対して理屈をこねても仕方がない、という気もするのだ。
【今の一言】この後で作られた『ダイ・ハード3』(95)は、『ダイ・ハード』(88)の高層ビル、『ダイ・ハード2』(90)の空港に代わって、ニューヨーク全体を舞台としたが、成功作とはいえない出来だった。また“船上ダイ・ハード”の脚本は書き直されて『スピード2』(97)として映画化されたが、こちらの出来も良くなかった。
トミー・リー・ジョーンズについて
https://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/column/49768
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