『文学界』8月号に、村上春樹氏の連作短編『ウィズ・ザ・ビートルズ With the Beatles』と『ヤクルト・スワローズ詩集』が載っていた。
自分は、氏の本の熱心な読者ではないが、ビートルズと野球となれば無視はできない。どちらも自伝的な要素を感じさせるものだったが、特に後者は、弱いチームを好きになってしまった自分自身への自虐とも誇りともとれる屈折した表現が面白かったし、自分も一番多く訪れているであろう球場は神宮なので、うなずけるところも多かった。ここで長嶋茂雄が通算2000本目の安打を浅野啓司から打った瞬間も見たのだ。
さて、氏とデーブ・ヒルトンのかかわりは知っていたが、名外野手だったジョン・スコットが出てきたのは懐かしかった。読みながら、豊田泰光の打撃練習は凄味があったなあ、1970年代初頭のアトムズには確か赤坂と溜池という選手がいたなあ、外野席はまだ芝生だったよなあ、中学校の近くにピッチャーの井原慎一郎が住んでいてサインをもらったなあ、弟がスワローズのファンクラブに入っていたなあ、応援団長はペンキ屋の岡田さんだった、高校時代の悪友のSがスワローズの熱狂的なファンだった、などとヤクルト球団を巡る脈略のないことを思い出したりもした。皆、遠い昔のことだ。
デーブ・ヒルトンについて
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/66020ed9ad4ead1bbd13b3b9887754de