田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『ジュリアス・シーザー』

2018-12-05 09:14:15 | 復刻シネマライブラリー

 ウィリアム・シェークスピアの戯曲に基づいて映画化。有名なジュリアス・シーザー暗殺事件の顚末を描く。チャールトン・ヘストン(アントニー)、ジェーソン・ロバーズ(ブルータス)、ジョン・ギールガッド(シーザー)、リチャード・ジョンソン(キャシアス)ら、7大スターの共演の超大作として1970年に公開された。



 40数年ぶりの再見となり、さすがに細部はすっかり忘れていたが、今回改めて見直してみて、シェークスピア劇のいかにも芝居がかった、朗々たるセリフ回しは、歌舞伎の見得や名セリフと通じるところもあり、それ故、日本人にも受け入れやすかったのではないかと思った。また、シーザーを織田信長に、ブルータスを明智光秀に、アントニーを羽柴秀吉になぞらえると妙にしっくりくるとも感じた。

 同じ原作をジョセフ・L・マンキーウィッツが映画化した53年版では、シーザーをルイス・カルハーン、アントニーをマーロン・ブランド、ブルータスをジェームズ・メイスンが演じたほか、本作でシーザーを演じたギールガッドがキャシアスを演じている。演出や俳優の違いに思いをはせながら、両作を見比べてみるのも一興だ。

チャールトン・ヘストンのプロフィールは↓


ジェーソン・ロバーズのプロフィールは↓


マーロン・ブランドののプロフィールは↓

パンフレット(53・国際出版社)の主な内容
解説/物語/監督ジョセフ・L・マンキーウィツ/此の映画の背景-ローマの英雄たち-/時代劇メモリアル/原作者ウィリアム・シェイクスピア抄伝/豪華なる主演者の顔振れマーロン・ブランド、ジェイムス・メイスン、ジョン・ギールガッド、ルイス・カルハーン、エドモンド・オブライエン
 
パンフレット(70・松竹事業開発部)の主な内容
解説/ものがたり/シェークスピア文学における「ジュリアス・シーザー」(荒川哲生)/製作ピーター・スネル、監督スチュアート・バージ/撮影余話/スター紹介/話題・話題・話題(シーザー暗殺シーン余話、シェークスピア映画は全部ヒット、映画と原作の「ジュリアス・シーザー」/スター・コーナー)
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『五つの銅貨』

2018-12-05 06:18:52 | 1950年代小型パンフレット

『五つの銅貨』(59)(1998.12.21.)

 実在のコルネット奏者レッド・ニコルズの半生を描いた音楽劇で、監督はメルビル・シェイブルソン。



 何度見ても不覚にも泣かされてしまう映画がある。この映画もそのうちの一本。

 映画自体のできは、ミュージシャンの伝記ものとしては『グレン・ミラー物語』(54)『ベニーグッドマン物語』(56)よりはちょっと落ちるし、泣かせどころも大いにくさい。しかるに、またしてもである。

 ダニー・ケイが幼い娘に歌い、ラストで妻のバーバラ・ベル・ゲデスが歌う「ファイブ・ペニーズ」に今回もやられた。

https://www.youtube.com/watch?v=vbfb2SYdSqo
https://www.youtube.com/watch?v=lr2p3E8CeRY

ダニー・ケイのプロフィール↓

パンフレット(60・東宝事業課(スカラ座No.60-2))の主な内容は
かいせつ/ものがたり/レッド・ニコルズと五つの銅貨(野口久光)/スター紹介バーバラ・ベル・ゲデス、ハリー・ガーディノ、ルイ・アームストロング、ダニー・ケイ/五つの銅貨」の話題-レッド・ニコルズの背景-(いソノてるヲ)/撮影余話(ジャズの生きた歴史レッド・ニコルズ、メルヴィル・シェイブルスンとジャック・ローズのこと)/話のタネ

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『ハーヴェイ』

2018-12-04 13:06:19 | 1950年代小型パンフレット

『ハーヴェイ』(50)(1997.7.28.)

 父の遺産で何不自由のない生活を送る未亡人(ジョセフィン・ハル)は、屋敷に同居する弟のエルウッド(ジェームズ・スチュワート)のことで悩んでいた。なぜなら彼は“ハーヴェイ”と呼ぶ大きな白ウサギを最良の友とし、他の誰にも見えないこの親友を誰彼構わず紹介しまくるからだ。姉は弟を精神病院に入れることにするが…。舞台劇の映画化で、監督は名匠ヘンリー・コスタ―。



 ジェームズ・スチュワート追悼の締めはこの映画。今までは輸入盤のレーザーディスクで我慢していたのだが、何しろ字幕なしなもので理解できない部分が多々あった。その点で、ディテールが分かる今回の字幕放送はありがたかった。

 今なら、CGで簡単にハーヴェイを登場させることができるが、それではかえって興醒めさせられる。見えないハーヴェイの相手をするスチュワートの演技が、この映画の見どころなのだから。その意味では、必ずしも映像で見せることが正解ではないのだと、改めて思い出させてくれる。

 そして、今さらながら、スチュワートの持つ、人の好さそうな、ヌーボーとした雰囲気の貴重さ(他の誰がこんな役を嫌味なく演じられるというのだ!)を知らされる一編でもある。

ジェームズ・スチュワートのプロフィール↓

パンフレット(52・国際出版社)の主な内容
解説/梗概/鑑賞講座(川地美樹) 

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『裸足の伯爵夫人』

2018-12-04 06:14:11 | 1950年代小型パンフレット

『裸足の伯爵夫人』(54)(1997.2.15.)

 ジョセフ・L・マンキウィッツ監督作では初のカラー映画で、舞台はスペイン。野性的な酒場の踊り子が、ハリウッドの映画監督によってスターに仕立て上げられる。その後、彼女を見初めたイタリアの伯爵と結婚するが、彼にはある秘密があった。やがて彼女に悲劇が訪れる。



 いきなりヒロイン・マリア(エバ・ガードナー)の葬式から始まり、後は彼女と関係のあった男たちの回想によってストーリーが展開していくのだが、同じく回想劇の『三人の妻への手紙』(49)『イヴの総て』(50)で示した、マンキーウィッツの語り口のうまさに比べると、少々くどいし、もたつくところもあった。

 とは言え、一人のシンデレラ女優に群がるプロデューサー(ウォーレン・スティーブンス)や監督(ハンフリー・ボガートが演じたこの人物は自嘲を込めたマンキーウィッツの分身か)、広報担当(エドモンド・オブライエン)といった登場人物たちの思惑を交差させることによって、映画界の裏側にある醜さや、虚像のはかなさを浮かび上がらせるという手法は、演劇界の裏側を描いた『イヴの総て』とも通じるところがある。その意味では、マンキーウィッツのシニカルで冷徹な眼差しが光っていた。

 そして、この映画の白眉は何と言ってもエバ・ガードナーの妖艶な美しさだろう。後の『大地震』(74)の老けて太った姿が、彼女との初対面になった者としては、あまりの違いを見せられてただただ驚くばかり。花の命は短くて…だなあ。

 ここで少々こじつけ遊びを。

 どちらもユダヤ系で、シナリオライターから監督になり、ストーリーテリングの巧さを発揮。回想を巧みに用い、皮肉を込めた暴露劇を得意とした、などの点で、このマンキーウィッツとビリー・ワイルダーには共通点が多い。

 例えば、ワイルダーが映画界の暗部を暴露した『サンセット大通り』(50)を撮ったのと同じ年に、マンキーウィッツは演劇界の暗部を暴露した『イヴの総て』を撮った。ワイルダーがボギーを使って『麗しのサブリナ』(54)を撮れば、マンキーウィッツは同じ年にやはりボギーを使ってこの『裸足の伯爵夫人』を撮る。

 しかも『サンセット大通り』と『裸足の伯爵夫人』は、男女の違いこそあれ、どちらも主人公の死から始まり、後は回想劇となる、という点で一致する。と、このあたりまでは互いに意識し合って映画を作っていたような節があるのだ。

 ところが、この後、マンキーウィッツはエリザベス・テイラーに肩入れし、『去年の夏突然に』(59)『クレオパトラ』(63)を経て凋落の道を歩んでしまう。

 片や、ワイルダーは『麗しのサブリナ』でオードリー・ヘプバーンと出会い、以後は、マンキーウィッツの出世作となった『幽霊と未亡人』(47)のような、男女の恋愛の機微を描く路線へと転換し、成功を収めたのだから皮肉なものだ。ちなみに、ワイルダーは1906年生まれで、マンキーウィッツは09年生まれ。年もほぼ同じである。

エバ・ガードナーのプロフィール↓

パンフレット(54・BLC映画部(S・Y PICCADILLY102))の主な内容
巨匠ジヨセフ・L・マンキイウイッツ/解説/物語/作家意欲を充実させたアメリカ映画には稀らしい大作(南部圭之介)/横紙破りの「裸足の伯爵夫人」/エヴァ・ガードナー、ハンフリー・ボガート、エドモンド・オブライエン、マリウス・ゴーリング、ウォーレン・スティーヴンス、撮影監督ジャック・カーディフ、エンツォ・スタヨーラ/空前のオリヂナル・ロマンチシズム(南部圭之助)

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『五本の指』

2018-12-03 12:09:47 | 1950年代小型パンフレット

『五本の指』(52(1997.2.7.))

 ジョセフ・L・マンキーウィッツ監督作で、第二次世界大戦下のトルコを舞台に、イギリスとドイツを手玉に取ったスパイの暗躍を描く。



 もちろん、今の目から見てしまえば、スパイの手口の安易さや、緊迫感の薄さを感じるし、マンキーウィッツが才気に走り過ぎた失敗作だとも思える。ただ、実話の映画化という点では、それなりの制約もあったのだろうと推察する。

 ところで、この映画に主演したジェームズ・メイスンは、公開当時、植草甚一氏によれば「多少マゾっけのあるいじめられ役としての評価が高かった」らしい。確かにこの映画でも、伯爵夫人(ダニエル・ダリュー)に見事に裏切られ、それを知った時の苦悩の表情が印象的だったし、ラストの高笑いも自虐的なものに映った。

 後年の『天国から来たチャンピオン』(78)『評決』(82)で見せた、余裕の演技の素がこうしたところにあったとは少々意外であった。 

ジェームズ・メイスンのプロフィール↓


ダニエル・ダリューのプロフィール↓

パンフレット(52・アメリカ映画宣伝社(American Picture News))の主な内容
解説/梗概/原作者と映画の主人公/この映画のこと(門司春兵)/この映画のスタア三人ジェイムス・メイスン、ダニエル・ダリュウ、マイケル・レニイ

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『虹を掴む男』

2018-12-02 16:24:30 | 1950年代小型パンフレット

『虹を掴む男』(47)(1996.9.2.)

 テクニカラーの美しさとダニー・ケイの芸達者ぶりが堪能できる古典映画。主人公が見る白日夢の中で、ケイがさまざまなヒーローに成り切るのが見どころだ。監督はノーマン・Z・マクロード。



 思うに、ケイの芸の見せ方は、後のジェリー・ルイス同様に、自らの芸に酔って一つのシークエンスを引っ張り過ぎるきらいがある。この映画も少々くどい。それ故か、彼の芸は、フレッド・アステアやジーン・ケリーのように、至芸や伝説としては、われわれ後追い世代には語り継がれなかったのかもしれない。

 ただ、こうした古典映画の良さは単純明快なところ。もし今作られたら、主人公の夢を精神分析したり、マザコンの部分がもっと掘り下げられたりして、ウディ・アレンの映画のような、妙なものになってしまいそうな気もする。

 テクニカラー美人と呼ばれたバージニア・メイヨだが、この映画の彼女からは少々けばけばしい印象を受けた。彼女は『死の谷』(49)のようなモノクロ映画の方が魅力的、などと言うと往年のファンに怒られそうだが…。

【今の一言】この映画は、2013年に『LIFE!』としてリメークされた。
【映画コラム】平凡な男が己の人生を変えていく姿を描いた『LIFE!』↓
https://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/column/497634

ダニー・ケイのプロフィールは↓


バージニア・メイヨのプロフィールは↓

パンフレット(50・太陽洋画ライブラリー)の主な内容
解説/梗概/この映画に主演するダニイ・ケイ

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『気まぐれ天使』

2018-12-02 08:16:33 | 1950年代小型パンフレット

『気まぐれ天使』(47)(1996.5.25.)

 赴任先の街に新しい教会を建てようとする司教(デビッド・ニーブン)は資金集めに苦労し、妻(ロレッタ・ヤング)との関係にも暗雲が立ち込める。そんな中、2人の前に謎の男(ケーリー・グラント)が現れて…。サミュエル・ゴールドウィン製作、ヘンリー・コスタ―監督の人情コメディ。



 先に見た、ゲーリー・クーパー主演、レオ・マッケリー監督の『善人サム』(48)がいま一つだったための消化不良から、同時期に作られ、同じく“クリスマスの奇跡”を描いたこの映画を見てみた。結果、多少の宗教くささはあるものの、見ながら思わず顔がほころんでしまうような、楽しさと温かさに満ちた傑作だった。

 いきなり天使役のグラントが、粋の固まりのような洗練された姿で登場し、この有り得ない話に説得力を与えて、見る者を一気に映画の中に引き込んでしまう。これを見せられると『善人サム』のクーパーが野暮な武骨者に見えてしまう。

 となると、ビリー・ワイルダーが『昼下りの情事』(57)のプレーボーイ役に、クーパーではなくグラントを望んだというのも分かる気がする。ちなみにワイルダーはこの『気まぐれ天使』のゴーストライターでもあるそうな。

 そして、このグラントに、ヤングとニーブン扮する司教夫婦が絡んでの、微妙な三角関係劇がまた見事。本来は、粋の代表であるニーブンが見せる情けない姿は、グラントが相手役だからこそ、出せる味なのである。そうした対照の妙を引き出したコスタ―の演出もまた素晴らしい。

 『素晴らしき哉、人生!』(46)『三十四丁目の奇蹟』(47)、そしてこの映画など、こうして何本も説得力のある“クリスマスの奇跡映画”を見せられると、アメリカでのクリスマスの価値を改めて知らされる思いがする。

 それにしても、『気まぐれ天使』とはいい邦題だ。松木ひろし脚本、石立鉄男主演の傑作ドラマ「気まぐれ天使」のタイトルはここから取られているのだろうか。

 【今の一言】この『気まぐれ天使』は、96年に、デンゼル・ワシントン、ホイットニー・ヒューストン主演で『天使の贈りもの』としてリメークされた。

ケーリー・グラントのプロフィールは↓


デビッド・ニーブンのプロフィールは↓


ロレッタ・ヤングのプロフィールは↓

パンフレット(51・国際出版社の主な内容
解説/物語/二人の主演スタア ケイリー・グラント、ロレッタ・ヤング(岡俊雄)/サミュエル・ゴールドウィンと云うプロデューサーは、こんな男(淀川長治)/鑑賞講座(田村幸彦)

 

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【ほぼ週刊映画コラム】2019年の正月映画を紹介

2018-12-01 17:32:20 | ほぼ週刊映画コラム
エンタメOVOに連載中の
『ほぼ週刊映画コラム』

今週は

2019年の正月映画を紹介



詳細はこちら↓
https://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/column/week-movie-c/1171879
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『第十七捕虜収容所』

2018-12-01 09:24:44 | 1950年代小型パンフレット

『第十七捕虜収容所』(53)(1994.5.13.)

 第二次世界大戦下のドイツ、米空軍の捕虜が集められた第十七捕虜収容所で、抜け目のないセフトン(ウィリアム・ホールデン)はスパイの容疑をかけられる。



 約20年ぶりに再見。今回はビリー・ワイルダーの映画にはアンチヒーローを扱ったものが多いことに気付いた。例えば『深夜の告白』(44)のフレッド・マクマレー、『失われた週末』(45)のレイ・ミランド、『サンセット大通り』(50)のウィリアム・ホールデン、『地獄の英雄』(51)のカーク・ダグラス、そしてこの映画での再びのホールデン…。みんな嫌な奴なのである。甚だアメリカンヒーローっぽくないのである。後にワイルダーは艶笑喜劇の監督に転じるが、初期は移民としてアメリカをシニカルに見詰めていたのだろうか、という気がした。

 そういえば『塀の中の懲りない面々』(87)の中で、この映画で印象的に使われていた「ジョニーが凱旋したとき」が口笛で吹かれていたことを思い出した。あの件は安部譲二の原作にあるのか、それとも監督の森崎東のアイデアだったのだろうか。 

ウィリアム・ホールデン




ビリー・ワイルダーのプロフィール↓

パンフレット(54・外国映画社(Foreign Picture News))の主な内容
解説・ストーリー・ビリイ・ウィルダーと「第十七捕虜収容所」(岡俊雄)

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