田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

ETV特集「キャメラマンMIYAGAWAの奇跡」

2018-12-10 19:00:14 | 映画いろいろ
 今4K復元が進む、映画撮影者・宮川一夫の作品の軌跡を追ったドキュメンタリーを見た。昔『キャメラマン一代』という彼の自伝を興味深く読んだ。



 戦前は稲垣浩の『無法松の一生』(43)、戦後は大映で溝口健二(『雨月物語』(53)『山椒大夫』(54)『近松物語』(54)など)や、市川崑(『炎上』(58)『鍵』(59)『ぼんち』(60)『おとうと』(60)など)と組み、多彩なプログラムピクチャーやシリーズものも手掛け、五社協定のために本来は組めなかったはずの黒澤明(『羅生門』(50)『用心棒』(61))や小津安二郎(『浮草』(59))とも仕事ができた人。ある意味、幸福なカメラマンだったと言えるだろう。

 『無法松の一生』のオーバーラップ、『羅生門』の太陽、『雨月物語』の濃霧、『炎上』の金箔、『おとうと』の銀残しなど、宮川が日本映画の撮影史上に残した足跡は計り知れないものがあると、改めて感じさせられた。
 
 中でも、小津安二郎唯一の大映作品である『浮草』についての大林宣彦の証言が面白かった。

 この映画は、中村鴈治郎、杉村春子、京マチ子、若尾文子、川口浩、笠智衆、脇に三井弘次、田中春男、潮万太郎と、小津映画の常連と大映の俳優たちが絡む面白さや、歌舞伎の重鎮、鴈治郎が旅役者を演じる皮肉に加えて、宮川の赤を際立たせるカメラワークや、通常の小津映画には見られないカメラアングルが新鮮な、異色作だと思っていた。

 ところが、大林によると、宮川は自分が出過ぎて小津の世界を壊したのではないか、と盛んに気にしていたらしいのだ。なるほど、この映画の魅力は違和感にあったのか…。
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『成功の甘き香り』

2018-12-10 07:45:35 | 1950年代小型パンフレット

『成功の甘き香り』(57)(1997.6.3.)



 『マダムと泥棒』(55)以来、2本目のアレクサンダー・マッケンドリック監督作を見る。今回はニューヨークのジャーナリズム界の醜い裏側を暴露した硬質の社会派劇。題材の類似や、ロケ撮影の多用などから、ロバート・ワイズ監督作品に近いものがあるのでは、と感じた。

 こうした題材をプロデュースしたバート・ランカスターのプロデューサーとしての手腕はたいしたものだが、テーマを超えて、しがない情報屋を力演したトニー・カーティスと、裏で糸を引く有名コラムニストのランカスターの演技合戦になってしまったところが残念な気がした。

 また、40年という時代差を考えれば仕方がないことなのだが、コラムニストの、妹への異常な近親愛が描き切れていないため、冷酷無比な彼が、妹に固執し、弱みをみせる点に違和感が残った。

バート・ランカスターのプロフィール↓


トニー・カーティスのプロフィール↓

パンフレット(57・外国映画出版社)の主な内容
解説/この映画の監督アレクサンダ・マッケンドッリク/コラムニストとプレスエージェント(門田勲)/物語/主演者のメモ バート・ランカスター、トニイ・カーティス/人気バンド・チコ・ハミルトン楽団登場/新星スーザン・ハリス、マーティ・ミルナー、サム・レヴィン、ジェフ・ドンネル、バーバラ・ニコルズ

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【ほぼ週刊映画コラム】『パッドマン 5億人の女性を救った男』『暁に祈れ』

2018-12-08 16:39:20 | ほぼ週刊映画コラム
エンタメOVOに連載中の
『ほぼ週刊映画コラム』

今週は

実話を基にしたアジア映画
『パッドマン 5億人の女性を救った男』『暁に祈れ』



詳細はこちら↓
https://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/column/week-movie-c/1172703
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『DESTINY 鎌倉ものがたり』

2018-12-08 10:49:08 | 映画いろいろ
 テレビで『DESTINY 鎌倉ものがたり』をやっていた。公開からもう1年たったのかと思うと感慨深いものがあった。



1年前に書いた【ほぼ週刊映画コラム】『DESTINY 鎌倉ものがたり』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/c1d02b056247284d42b5301a6160edd6
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『サハラ戦車隊』

2018-12-08 09:13:40 | 1950年代小型パンフレット

『サハラ戦車隊』(43)(1987.2.8.)

 第二次世界大戦中の北アフリカ戦線に従軍するアメリカ戦車部隊を描く。監督はゾルタン・コルダ。少人数隊大人数の戦い、戦死した者たちの扱い方など、『七人の侍』(54)は、多少なりともこの映画から影響を受けてはいないだろうか。



 この映画が製作されたのは第二次大戦真っただ中の1943年。それなのに、戦争を敵味方共通の悲劇として、虚しい行為として見せる心、砂漠での見事な撮影という物心両面でのこの余裕はどうだ、という感じがした。戦後40年あまりがたった今でもそう思うのだから、これを終戦直後に見せられた当時の日本人の心情はいかばかりであったろうとも考えさせられた。

 とは言え、この映画で歴戦の鬼軍曹を演じたハンフリー・ボガートが、後年の『ケイン号の叛乱』(54)では、神経症の船長を演じたように、アメリカも戦争には勝ったが、深い傷を受けたことも、こうした映画を通して知らされた気もする。

パンフレット(51・新世界出版社(NIKKATSU WEEKLY))の主な内容
解説/梗概/米国戦争映画の傑作「サハラ戦車隊」(桑山栄治)/監督ゾルタン・コルダ

コメント (2)
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【コラム】樹木希林とは何者であったのか「自己演出の達人」貫く 転載

2018-12-07 18:55:06 | 映画の森
樹木希林とは何者であったのか「自己演出の達人」貫く



共同通信のニュースサイトに転載。
https://www.kyodo.co.jp/national-culture/2018-12-07_1956855/
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ジャック・レモンを2本『女房の殺し方教えます』『お熱いのがお好き』

2018-12-07 06:50:41 | 1950年代小型パンフレット

 『女房の殺し方教えます』(64)(1986.5.19.銀座文化)

 独身主義の漫画家スタンリー(ジャック・レモン)は、酔った勢いで知り合ったばかりのイタリア人女性(ビルナ・リージ)と結婚する。だが、結婚生活のストレスがたまったスタンリーは、執事(テリー・トーマス)と共に、妻を殺す漫画の話を考え始めるが…。監督はリチャード・クワイン。



 ジャック・レモン自身は喜劇俳優と呼ばれることを嫌っているという。それ故か、近年は主にシリアスな役柄を演じ(それはそれでうまいのだが)、この映画のようなコミカルな役は演じなくなっている。

 俳優という職業は、さまざまな役柄がこなせてこそのものだとは分かっているのだが、ジャック・レモンという名前から浮かぶイメージは、どうしても、このクワイン(『媚薬』(58)もある)やビリー・ワイルダーと組んで撮った、コミカルとペーソスを併せ持ったキャラクターということになる。

 レモンのコメディ演技は、もちろんチャップリンらの体を使ったものとは違うし、かといってウディ・アレンほどの癖やくさみもない。彼特特の味と言ってもいいだろう。その味を捨ててしまうのはいかにも惜しい気がするのだが、もはやワイルダーやクワインは映画を撮っていないのだから、レモン自らが役柄を広げていくのは当たり前のことなのだ。

 例えば、ジョン・フォード亡き後のジョン・ウェイン、黒澤明と別れた後の三船敏郎、ジョン・スタージェスとスティーブ・マックィーン、岡本喜八と佐藤允など…、一人の監督との絆が深過ぎた俳優が一人になると恵まれないことが多い。その点、ジャック・レモンは頭のいい人なのだろう。

テリー・トーマスについては
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/a9af692fdd18315a2dedc7542ced6c88

『女房の殺し方教えます』パンフレット(65・大阪映画実業社)の主な内容
解説/リチャード・クワイン、ジョージ・アクセルロッド/物語/プロダクション・ニュース/スター・メモ、ジャック・レモン、ベルナ・リージ、テリー・トーマス、クレア・トレバー、エディ―・メイホフ

 『お熱いのがお好き』(59)(1986.6.5.銀座文化)



 何度見てもこの映画の素晴らしさにはうならされてしまう。マリリン・モンローのかわいらしさを生かし切ったのは、『七年目の浮気』(55)も含めて、やはりワイルダーだけだったのかもしれないと思わされる。

 今回の新たな発見は、シドニー・ボラックの『トッツィー』(82)の原点は、まさしくこの映画ではないのかということ。この映画のジャック・レモンとトニー・カーティスの女装なくして、果たしてダスティン・ホフマンの女装などあり得たのだろうか。

『お熱いのがお好き』パンフレット(59・松竹事業部(Shochiku Picadilly NO10.))の主な内容
かいせつ/ものがたり/ワイルダーは、おふざけが好き「お熱いのがお好き」からのノート(淀川長治)/想い出の名画・ビリーワイルダー監督作品集/ジャック・レモン、トニー・カーティス、ジョー・E・ブラウン、ジョージ・ラフト、マリリン・モンロー/こぼれ話/ワイルダー監督の自信

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『クリード 炎の宿敵』

2018-12-06 11:10:23 | 新作映画を見てみた
 前作『クリード チャンプを継ぐ男』(15)で新章に突入した「ロッキー」シリーズ。前作のアポロの息子アドニス・クリード(マイケル・B・ジョーダン)に続いて、今回は『ロッキー4 炎の友情』(85)のロシア人ボクサー、イワン・ドラゴ(ドルフ・ラングレン)と息子のビクターが登場。親子二代、息子同士の宿命の戦いが描かれる。



 プロデューサー兼トレーナー役で助演するシルベスター・スタローンのカードの切り方は、もはや何でもありでルール無用の様相を呈している。今回は、ドラゴ親子もさることながら、彼らを捨てた女役で、何と元妻のブリジッド・ニールセンまで出てきたのには驚いた。

 監督はライアン・クーグラーに代わって、新人のスティーブン・ケイプルJrが起用されたが、ボクシングを通した家族の話として、あるいは見る側が望む通りに展開する予定調和の話として、達者な演出の腕前を披露する。

 ラングレンが「この映画の主要なテーマの一つは時間の経過だ。スタローンの人生とロッキーの人生、私の人生とイワンの人生には通じるものがある」と語るように、最初の『ロッキー』(76)から40数年、『ロッキー4』からも30年、という時の流れが、見る側にとっても、この映画を感慨深いものにしている。

 例えば、アドニスが一度ロッキーから離反するシーンは、ミッキー(バージェス・メレディス)とロッキーのそれと重なるし、前作にも増してビル・コンティ作曲のオリジナルの音楽が流れることも、涙腺を刺激する。

『クリード チャンプを継ぐ男』↓
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/2bf9be7203bc09bf89bbebec27dbe1fa
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『いつも上天気』

2018-12-06 06:57:06 | 1950年代小型パンフレット

『いつも上天気』(55)(2006.6.21.)

 スタンリー・ドーネン&ジーン・ケリーの共同監督によるミュージカル。



 いつもは明るいケリーの映画だが、これはちょっと苦い。戦争から一緒に復員した3人組が10年後に再会するが、違う人生を歩んだ彼らはもはや昔のような仲良しには戻れないという話だからだ。

 もっとも、そこにケリーとシド・チャリシーの恋をからめ、『雨に唄えば』(52)の雨同様に、ケリーがローラースケートを履いて歌い踊り、恋の喜びを表現する圧巻の場面がちゃんと用意されてはいる。

 それにしても『IT'S ALWAYS FAIR WEATHER』を『いつも上天気』とは、よくこの邦題を付けたものだと感心する。確かに人生は、この映画のように“いつも上天気”とはいきません。

 ジーン・ケリーのプロフィール↓

パンフレット(55・外国映画社(フォレン・ピクチャー・ニュース))の主な内容は
かいせつ・物語・スター・メモ(ジーン・ケリー、ダン・デイリー、シド・シャリッシ)監督スタンリイ・ドネン・各誌の批評

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レッツエンジョイ東京「2019年お正月映画特集」

2018-12-05 11:21:28 | レッツエンジョイ東京

年末恒例の、ぐるなび レッツエンジョイ東京「2019年お正月映画特集」が公開に。



ラインアップは

【お正月映画BIG3!】
『パッドマン 5億人の女性を救った男』
『アリー/ スター誕生』
『シュガー・ラッシュ:オンライン』

【ポジティブに生きよう!】
『アイ・フィール・プリティ! 人生最高のハプニング』
『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』

【S・F(少し不思議)な物語】
『メアリーの総て』
『ふたつの昨日と僕の未来』


https://www.enjoytokyo.jp/feature/newyear/movie/

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