みちしるべの伝説

音楽と希望は刑務所でも奪えない。

古道具 中野商店

2005年06月18日 | 
お気に入り、川上弘美さんの新作「古道具 中野商店」ようやく図書館の予約が回ってきた。
相変わらず、川上さんの古風な雰囲気の独特な文体は健在。「センセイの鞄」と同じくらい好きかな。

生きることが今一つ下手っぴいな主人公「菅沼ひとみ」ともう一人「たけお」の恋愛を軸に、ちょっと癖のある古道具屋の人たちとの間に持ち上がる、ありそうだけど、やっぱりちょっと変な、心温まる話でありました。

川上さんの手にかかると「エクセル」や「ピーシー」などの新しい言葉もなんとなく、柔らかな響きの古くからの日本語に聞こえるくるのが、不思議。古道具的に感じられるが不思議。主人公「菅沼ひとみ」、ぽつんと寂しいようで、温かいようで、応援したいキャラクター。
最後の一文、
 「新しくあけたワインの瓶が、茶碗のふちにあたって、かりん、と澄んだ音をたてた。」
とあるように、新しいもの(=ワイン)と古いもの(=茶碗)が、うまく混ざって、「かりん」と素敵な音が響いてくる、そんな味わいの物語。読後感も、なかなかよろし。派手さとか、ドラマチックとかでは無くて、野原にポツポツ咲いている、心温まるタンポポ?のような風景が広がります。

川上さん、日本語の使い方が、本当にうまいと思う。川上さんに手折られ、また編み込まれた、やわらかな言葉の世界、お楽しみあれ。

こんな言葉たちが登場していた
・悠揚せまらざる  ・あこぎ  ・店主端倪すべからず  ・さても  ・ちんまりと
・へどもど   ・滂沱の涙   ・剣突く  ・くさされる  ・うっちゃる  ・じくじ
・ちんちろりん  ・のらくら
コメント
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