98年10月、電動車いすで横断歩道を渡る写真、それよりももっとショッキングに感じた「五体不満足」の書名は忘れられない。その著者「乙武洋匡」さんが「講演で各地を訪問しているが、地方の街がプチ東京のように感じる」と話されたのを記憶している。
プチ東京は可愛い東京でなく小さな東京という意味だ。地方の街にその地のよさよりも東京をコピーした姿が見えるということだ。街の全体を見られたわけではなかろうが、少なくとも街独特の良さを感じさせる何かが欠けていたのだろう。
最近オープンしたある商業施設。施設も若い人の華やかなで恥じらいのない服装も映像で見る「都会」のコピーだ。この街の何かを感じさせるものは見当たらなかった。合理的に造られている。
大駐車場と何時間も気兼ねなく過ごせる大きな空間は快適に創られ、そこに並ぶ商品の豊富さは、「駅前の商店街」や古くなった「アーケード街」では太刀打ちできないことは素人でも分かる。服装を恥らわない若者だけでなく、年配者の姿も多いことからもいえる。
かっての駅前商店やアーケード街の姿を復活させるにはこのプチ東京を越える力がいる。これは並大抵のことではない、コーヒーを飲みながら買物客の行きかう姿をガラス越しに見てそう感じた。
(写真:高齢者にはプチ東京に見えた商業施設)