
「芒」と書いて「すすき」と読む。このイネ科の多年草は土手や荒地などに大群落を形成する。秋の七草のひとつで、その季節の姿,特に中秋の名月にこれを供える風習は今も見られる年中行事になっている。供華として捧げた芒に月の神が降りてくると信じた名残という。
青い葉の芒を青芒と呼ぶ。そして供華として捧げられる芒の最盛期を過ぎるとやがて寒風にさらされると枯れ芒と変わる。芒の1年は人生のドラマに例える人もある。冬の枯れ芒の風情は捨てがたいと詠む人もある。
川沿いの遊歩道から見える中洲、冬枯れ芒の大群落、その近くに咲いている黄色な群れから離れて来たのか菜の花が一株咲いている。春めいた日ざしと一緒になって、早く青芒になれと囁くように揺れている。自然の巧みな演出を眺める。
そんな群落のあちらこちらから姿は見えないが小鳥の鳴き声が聞こえる。春に向けてウオーミングアップしているのだろう。冷たかった川風を心なしか暖かく感じ、春本番の近いことを予感させる。