日々のことを徒然に

地域や仲間とのふれあいの中で何かを発信出来るよう学びます

春の息吹

2019年03月22日 | 自然 季節

 芭蕉と言えば俳人の松尾芭蕉と間違えられそうだが、ここでは植物の芭蕉の話し。吉川藩時代の横山(川西を含む)錦見(現在の岩国、錦見)地区には芭蕉の姿をよく見かける。この地区に多いのは、数段に重ねる岩国寿司の仕切りに芭蕉の葉を使用したことにいわれがある、と古老に聞いている。全段が芭蕉の葉では切りづらいので、中ほどに木の板を仕切りにしていた。子どものころ我が家にもあり、寿司を作る頃には近所の人が取りに見えていた。

芭蕉の葉は、祭の幟の様に大きく瑞々しい濃緑で、春から秋まで存在感を示す大型の植物で目を見張る。それがどうだろう、冷たい風が吹き始めると、幟のような葉は葉脈に沿って裂けていく。裂けた葉もやがて枯れ落ちる。定めと言えばそれまでだが、夏場の姿を思えば哀れを感じさせる。これを破芭蕉と呼ぶが子孫を残す営みと思えば哀れも救われる。

 そんな破芭蕉が10数本一塊になって山の斜面で日を浴びている。よく見ると塊に中央近くの複数本に淡い緑色の新しい葉が覗いているのを発見した。次の世代が生まれ来ているのだ、そう思うと寒さに耐えて枯芭蕉の働きに自然の掟の不思議さを感じる。人ならあれほど枯れると枯人間にはなれない。

 芭蕉は破れ姿から別名で「庭忌草」と呼ばれ庭には植えない植物と言われた。一方で、茎から繊維を採り芭蕉布という織物にした。夏の着物や座布団地、蚊帳などにも使ったという。古くは文字を書いたともある。破芭蕉に抱かれた新葉を、引き継がれるDNAの不思議さを思いながら眺めた。昨日買った岩国寿司の仕切りは芭蕉葉が使われていた。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする