空野雑報

ソマリア中心のアフリカニュース翻訳・紹介がメイン(だった)。南アジア関係ニュースも時折。なお青字は引用。

講読課題に便利そう

2020-06-14 00:14:07 | ノート
 作家ならではの、というべきか、扇情的で装飾過多で、その勇み足については「お行儀のよい知識人」としては「黒人の抱く怒りを正当に表現した魂の叫びである」と弁護することになるだろうところまで用意された、大変教育的な記事。これの分析を課題に出してもいいな! とっても面白い。

 突っ込みどころは多数あるが、まあ。

東洋経済 黒人記者が語る「抗議デモ」と「人種主義」 知らないうちに、死んでるのかもしれません 2020/06/11 12:40 バイエ・マクニール : 作家

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さて、この種の悲劇が何度もくり返されたとしましょう。「恐ろしいけど、よくあること」になったとします。そうなったらきっとあなたも火炎瓶を作り、投げ始めるでしょう。そうならないなら、パンツの中をチェックして、それかレントゲンを撮った方がいいです。

知らないうちに、去勢手術を受けているかもしれません


 ここまで堂々とジェンダー論に正面から喧嘩を売る文章もなかなか書きづらい昨今である。
 
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個人的に言うと、「抗議デモや暴動、略奪をする理由がわからない」という人に会うと、ぼくはその人は嘘をついていて分からないフリをしているか、魂を去勢されてしまったのではないか、と思ってしまいます。

それどころか彼らは、知らないうちに死んでるのかもしれない、と


 うんまあ、僕は『さァいまこそ立ち上がれ、私が敵だと指名した、奴をつぶすために立ち上がれ! この声に応えぬ者は腐れ差別者野郎であるから私は敵と指名してやるぞ!』という声に勢いよく同意するより、「明日のメシの心配をする黒人のおばちゃん」(いうても、私のほうが年上かもしれないが)に同情する気配が強いので、まあ「女々しい」魂なんでしょうな。おいシスター、とりあえずこの買い置きパスタ1kgをもってけ、などと声をかけることを優先したい私は、たぶん、去勢されてるんでしょう。とりあえず、そうした「雄々しさ」には冷たい態度を取りがちですね。

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黒人のアメリカ人は、真のアメリカを本当に知っている唯一のアメリカ人です。星条旗の赤は、ぼくたちが流した血です

あなたがぼくたちから聞く話は、リアルです。ぼくたちが話すのを聞く時、あなたはアメリカの本当の話を聞いています

 真実を特権的に所有しているという宣言はフツー危うい。

 以降の理屈は目新しいものではなく、植民地支配に対する旧植民地人からの告発の声、の変奏曲であって―まあなあ、肌の黒い国家元首を得た後のアメリカ合衆国がそうそう言えたものじゃないんじゃないかなあ。オバマを新時代の画期としてしまったほうが楽な気がする。そうでなければ、例えば朝鮮半島人の恨みつらみは、日本をいっぺん植民地支配してみないと晴らせない―みたいな話になるだろうし、されたらされたでやり返さないとこっちも収まらんだろう。

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法による抑制と均衡の正義が裁判所で満たされないことが続けば、残された道はストリートの正義しかありません」条件節部分が正なら主文もそうだろう―ところが条件節部分、裁判所での極めて負けが込みそうな・込んできたようなところで戦い続けてきたからこその栄光のアメリカ合衆国であるということも疑いない。裁判所で負けても世論で巻き返したりとかしてきたんじゃない? だから任意に即座のタイミングでストリート闘争に出るのは、必ずしも推奨されない。

ストリートの正義はきれいごとではありません。保証します」、だから可能な限り避けるべきなわけですが。闘争場所に選ばれなかった場所の金持ちたちはおおむね無傷だし、闘争場所に選ばれちゃった地域の住民にとっては生活基盤が破壊されて大変な難が生じるし。

人々は白人たちを軽蔑します。その人たちが白人の特権に気づいていても、いなくても。黒人の友だちがいようが、全米黒人地位向上協会に寄付していようが、“Black Lives Matter”のバッジを買っていようが、ぼくらには関係ありません」、これだと白人存在に対する決別宣言になっちゃって、つまり『白人であれば軽蔑の対象である』という白人差別のスターターになっちゃう。

人の心があれば、絶え間なく続く黒人に対する犯罪に嫌悪感を持ち、悲しみに暮れ、激怒するはずです。そうしないのなら、軽蔑に値します。そんな嫌悪感、悲しみ、激しい怒りがあっても、同じ人間として黒人を助ける行動をとらないのであれば、その人も黒人の首に膝を押し付けているのと同じです」、そしてそのまま破壊活動が続けば、路線バスが壊されちゃって明日、働きに行けなくなっちゃった黒人のおばちゃんの生活が困っちゃう。きっとこのおばちゃんも、同じ黒人であるという属性のゆえに、BLM運動に邁進せねばならぬ―ということなのだろうが、このおばちゃん(とその子供たち?)の生活のために、BLM運動は何を用意してくれるのか―と問われることになろう。

 彼女はこう言うかもしれない、私たちは破壊活動家たちを「軽蔑します。心なく利益を手にするばかりで、ぼくらの」日々の稼ぎの手段は「取るが、ぼくらの子供たちが、妻や夫が、友だちが、ぼくら自身が殺され、路上に転がっていても、助けてはくれないのならです」。

日本よ、自分の心臓が動いているのか確認してください。
知らないうちに、死んでるのかもしれません


 こんな晴れがましい席でしゃべる権利を持てず、デモに参加することもできないような田舎に住んで、コロナ騒ぎで失職しもし、明日のご飯の心配をしながらいるような、そんな黒人労働者たちの救済を願う心臓なら動いているので、私としては人道上、問題ないように思う。
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