●「パナマ文書」、富裕層でなくても影響があるの?/最後のツケは私たち生活者が払う可能性も
日経ウーマンオンライン 2016年4月26日
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パナマ文書流出で世界経済に波乱の予感!?
高山:法律上問題がないのであれば、なぜこんなに問題になっているのですか?
中野:前述のパナマの法律事務所、モサック・フォンセカが、企業や個人から依頼を受け仲介役となり、税金がかからないタックス・ヘイブンに会社を作り、その会社が利益を出したことにすれば、税金がかからず、まるまる利益を手にできるわけです。
高山:確かに節税の領域を超えていますね。
中野:ただ単に税金が低いだけであれば、イギリスの金融特区だったり、アメリカの一部の州でもあったりします。タックス・ヘイブンがさらに問題なのは、他国との実質的な情報交換が行なわれていないので、税務や税制の透明性がないという点です。
高山:ちなみにパナマ文書では、世界中の著名人や有名企業が名を連ねたと聞きましたが、どんな著名人がのっていたのですか?
中野:ウラジーミル・プーチンロシア大統領、習近平中国国家主席、デービッド・キャメロンイギリス首相など、国家のトップが軒並み名を連ねています。
このように、主要各国のトップの合法的税逃れによる蓄財が顕になって、政治的ダメージが甚大となり、イギリスではキャメロン首相が窮地に立たされています。
高山:世界経済にも大きな影響がでそうですね。
中野:この影響でイギリスのEU離脱へと世論が動くとすれば、欧州のみならず世界の経済活動、並びに金融市場の動揺に直結するであろう引き金となる懸念が高まっています。もしイギリスがEU離脱となれば、欧州株売り → リスクオフ → 円高進行 → 日本株暴落&デフレ逆戻り、という日本経済への負のスパイラルにもつながりかねません。ロシアのプーチンや中国の習金平などについても、同様、世界的な波乱要因を含んでいるといえます。
結局、最後のツケは私たち生活者に
高山:今後の世界経済は波乱含みですね。
中野:そうですね。そして、パナマ文書の問題として補足すると、米国ではアップルがタックス・ヘイブンを本社としている例をはじめ、多くの大企業がこれを実行していて、むしろタックス・ヘイブン活用を是としなければ、株主・投資家から経営が糾弾されるといった風潮も定着してしまっています。これを看過したままでは、米国経済が拡大しても税収増にはつながらず、資本主義の抜本的システムが成り立たなくなってしまいます。
高山:そうなんですか。日本でもこの風潮が定着すると大変ですね。
中野:そうです。日本でもこの事象が定着したら、アメリカ同様、経済成長 → 税収増の図式が壊れます。本来払うはずの税金がタックス・ヘイブンを利用して払われずその結果、税収が少なくなります。結局そのツケは私たち生活者の税負担増と社会保障制度の劣化に直結することとなり、国民生活の窮乏化を招く結果となるのです。
高山:パナマ文書は、お金持ちのことで自分には関係ないと思っていた人も少なくないと思いますが、そう考えると、パナマ文書は私たちに大きな影響をもたらす大変な問題ですね。
中野:国家はその国の経済活動(GDP)を拡大させることで、政府も相応の所得(税収)を増大させられるという図式で、資本主義国家の仕組みが成立しているので、パナマ文書は近代資本主義制度の根幹を揺るがすほどの大きな問題提起といえるのです。 |