八日市:護国を代表する建物の一つ「本芳我(はが)家」。木蝋(もくろう)の生産で財をなした『芳我弥三右衛門』が明治22年(1889)に建てたもので、漆喰塗籠の重厚な建物は、町並みの中でも圧倒的な存在感を放っています。
門の外から拝見した敷地内の様子・・・どこまで続くんだろうと思うほど奥行きが広く、それらを覆うように手入れの行き届いた緑が葉を茂らせています。
建物内部は非公開となっていますが外観の見学は可能との事、さて何所から見ていけばよいのか、上下左右、何所を見てもため息の出そうな誂えばかり。それに加えての規模の大きさ、どう画像に収めれば良いのか・・・
主屋に隣接する浅黄色の土蔵には、当時の商標「旭鶴」の鏝絵が今も往時をしっかりと物語っています。
「鏝絵」の商標が登場しましたが、本芳我家主屋には、それはそれは見事な鶴の鏝絵があるのです。朱に彩色された松の枝、生い茂る木々の間で大きく羽を広げるのは、白い翼を大きく広げて羽ばたこうとする「鶴」。
反対側の棟木の懸魚には、東の守り神とされる「雲龍」。鱗の部分にほんの少し加えられた緑と、口中の朱が漆喰の龍に命を吹き込んでいるようです。
本芳我家の代表的景観として紹介される鏝絵ですが、海鼠が美しい漆喰壁の随所にも、精巧で緻密な鏝絵の数々が見られます。二階角の漆喰柱と桟柱には、左右それぞれに一対の鶴と亀。
能の作品にも登場する「鶴亀」、天下泰平、国家の長久を祈念し、祝福するという内容ですが、ここではさしずめ「家内安全、商売繁盛」を祈念してでしょうか。
互いに向き合う鶴亀の間には、波間にあって一際白く輝く「芳我家の家紋:丸に片喰」。
白漆喰の壁を一段と引き立てるのは、黒と白の対照が美しい「海鼠壁(なまこかべ)」。
「火に弱い木蝋」を主力商品とした芳我家にとって、最も恐れなければならなかったのは「火」。建物の随所に飾られる漆喰鏝絵には、火防の呪いとされる「亀・波」が随所に施されています。
地味で目立ちませんが、塗り込めの格子窓の枠にも、美しい流紋の鏝絵が見られます。
一箇所でこれだけのものを見せていただけるなんて、そんなに多くありません。まるで取り憑かれたようにデジカメを向け続ける二人・・・まさに至福の一語です😃😃
1990年9月11日、「芳我家住宅」は国重要文化財に指定されました。
訪問日:2011年6月13日