「普通の日々が幸せ」、「フォーエバー」を立ち上げた金子さんの言葉の重み
「普通にしているときが幸せです。朝、四人がテーブルにそろったとき、夜、また家族四人がそろったとき。何をする、というのではない、普通の日々が幸せだったと思えるようになったことが、私のいまの幸せです」。
あるフォーラムに参加して際に、フロアーからの「いま、金子さんがしていて楽しいことは何ですか? 充実していると思うのはどんなときですか?」という質問に対する金子明美さんの答えだ。
昨日取り上げた『ガン患者、お金との闘い』(岩波書店刊)の中の一節だ。金子さんは「患者会フォーエバー」を立ち上げられた。そしてその会員の方々と、ガン患者の経済的負担の軽減を訴え続けられた。
金子さんの抗ガン剤治療には、一回6万円(月24万円)を必要とする。高額療養費補助で三ヶ月後に一部は帰ってくるものの、三ヶ月分72円が必要となる。
私は昨年の岡山大学病院入院の際に、「健康保険限度額適用認定書」(一年間有効)を交付していただき、医療費の支払いの際には「立て替え払い」の必要はなかった。それは通院にも適用されると安易に考えていた。が、しかし、それは入院の場合にのみ適用だった。
一方、金子さんのお宅は転居・転職したこともあり、パートナー(夫)の給与は月20万円。一方生活保護費は月19万、この場合には医療費は公費で負担される。金子さんはお子さん達のことを考え、離婚による世帯分離(生活保護受給)を選ばなかったそうだ。
「命を取るか、生活を取るか」、その判断の中で「抗ガン剤の使用を諦めた」事例も、先の本には報告されている。病気による苦しみだけでなく、生活の苦しみまで襲いかかる現実を読んでいて、心が苦しくなった。そしてまた、金子さんのお子さんを思う気持ちが痛いほど伝わってきた。涙が流れて仕方がなかった。
金子さんは、下のお子さんが生まれて6ヵ月後に余命3ヵ月と宣告され、「せめてランドセルを背負う姿をみたい」と頑張り、入学した年の翌年の1月に他界されている。心からのご冥福をお祈りするとともに、彼女が訴え続けた患者の経済的負担の軽減をのその思いを、私も共有したいと思う。と同時に、「普通の日を過ごせる」ことを、心から感謝して過ごしてゆきたいと思う。