大江健三郎の「九条を文学の言葉として」と題した講演に魅せられた
「新潮社純文学書き下ろし特別作品」の一冊に、大江健三郎の『個人的な体験』が加えられたのは、1964(昭和39)年だ。私はその後に頃発刊されていた「純文学書き下ろし特別作品」は、発行される都度全て購入して読んでものだ。それ以前のものは、古本屋で購入して揃えた。
その『個人的な体験』に感動して、大江健三郎の著作は揃えるべく古書店巡りをした。神田の古本屋街も歩いた。愛媛にある大江の実家にも行った。そして今では、「大江健三郎全作品(第Ⅰ期、第Ⅱ期)」や「大江健三郎小説(全9巻)」なども揃えるなど、ほぼ全著作がそろっている。
その大江健三郎の講演を最初に聴いたのは、まだ20代の半ば。岡山市民会館で「文藝春秋社主催の講演会」た。午後にあったので仕事をお休みして行った記憶があり、テープレコーダで録音もした。今では許されないことだ。原水禁大会で講演すると聞けば、ヒロシマまでカメラ片手に行ったりもした。
そんな大江健三郎だが、その後何度か講演を聴く機会を得ている。講演を聞く度に、笑いを取るなどして、文章とは違ってとても聞きやすくなっている。
そんな大江健三郎が、今年の4月9日に「鎌倉・九条の会」が主催した『憲法のつどい2011 井上ひさしの言葉を心にきざんで』で、講演している。その講演録が、岩波ブックレット『取り返しのつかないものを、取り返すために 大震災と井上ひさし』(7月発行)と題されて出版されている。
その中に、大江健三郎の「九条を文学の言葉として」として、収録されている。この講演の中で、大江は「井上さんは、『難しいことをやさしく』と言うでしょう。私は、机の前に座ると『やさしいことを難しく』書くんです」と語って、笑いも取っている。
そして大江健三郎は子どもの頃に、お母さんに「憲法がいい。九条というところがいい。九条の『希求する』がいい」と言ったエピソードも紹介している。
それにしても、大江健三郎がこの講演の中で、井上ひさしや井上ひさしの著作『父と暮らせば』について語っている。興奮するほどに感動した。
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