競馬には幾千の物語があり、主人公も競走馬、騎手、調教師(厩舎)、馬主、そして自分、時に入れ替わり、自分が競馬とかかわり続ける限り、延々と続く。
そんな中で、自分にとって、かけがえのない物語がトウカイテイオーとの出会いだ。はじまりはその父、シンボリルドルフであり、正直、好きな馬ではなかった。あまりにも強く、そして完璧すぎたのだ。しかし、その息子、トウカイテイオーは強さこそ父譲りではあったが、フィジカル面で弱さがあり、そして、そこから立ち直るドラマを何度も見せてくれた。大レース勝つたびにガラスの脚を幾度も痛め、そのたびに復活し、最後は奇跡の復活で感動のドラマを締めくくった。
種牡馬になってからは、産駒のトウカイポイントとヤマニンシュクルがGⅠを勝ったものの、現役時代の栄光にふさわしい結果を残せなかった。それでも、天に昇ってからもその血は細々と続いている。
孫のレーベンスティールが、秋の天皇賞に出走する。テイオーは天皇賞で勝つことはならなかったが、あくまでも故障との巡りあわせで、本来の調子なら父と同じように間違いなく勝っていたはずだ。
レーベンスティールは父リアルスティール、母父トウカイテイオー。リアルスティールは現役時代はドゥラメンテのライバルで、種牡馬になってからもライバル関係にある。戦績はドゥラメンテが圧倒しているが、ここ数年、リアルスティール産駒の活躍が本格化してきただけに、産駒初の盾制覇が大いに期待されている。
昨年のセントライト記念でソールオリエンスを撃破し、俄然、脚光を浴びたが、暮れの香港遠征で惨敗し、そのダメージは相当なもので、年が明けて5月の復帰戦、新潟大賞典でも完敗する。しかし、その1カ月後、エプソムCでやっと復活を果たす。夏を乗り切り、秋初戦オールカマーではルメールの手綱で圧巻の勝利を収めた。
そして待ちに待った秋の天皇賞、GⅠ馬が揃う中でルメール人気もあり前売り3番人気。不振の8枠ではあるが、強い馬は勝つチャンスはある。随分と前ではあるがシンボリクリスエスが勝っているし、メジロマックイーンだって失格になったが1着でゴールしている。名手ルメールなら、克服するはずだ。
天皇賞に無縁だったトウカイテイオー、その孫レーベンスティールが、祖父の無念を晴らす時が来た。と同時に父リアルスティールがライバルに肩を並べるチャンスが巡ってきた。