tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

資源価格の高騰と円高

2010年09月15日 13時10分45秒 | 国際経済
資源価格の高騰と円高
 中国は、世界のレアアースの90パーセントを供給しているといわれます。その中国が、今年に入ってレアアースの大幅な輸出削減を打ち出しました。その結果、ネオジムをはじめ、レアアースの価格は軒並み高騰、関連業界は大変な状態と報道されています。

 折しも、一方では円高が進行、口先介入もたやすく見破られて、$1=¥82台まで来ました。今日は介入で少し戻しましたが、単独介入でどこまで出来るのか、予断を許しません。
 資源価格が上がったら、円高で多少対抗できるといった理屈も成り立ちますが、資源価格の高騰と円高と比べたら、円高の方が圧倒的に恐ろしいようです。

 資源価格の高騰は、世界の富(実質GDP)が、資源の消費国から資源の生産国へ移転するという効果を持つもので、これはかつてのオイルショックの結果、広く知られることになりました。

 ところで、ここではっきり認識しておくべきことは、原油が高騰しても、レアアースが高騰しても、こうした資源価格の上昇は世界の消費者・消費産業に共通だという事です。たとえ産出国の企業でも、使うときは通常、国際価格で買うことになります。
 
 さらに、過去の経験から見れば、日本の場合は資源高騰に対抗する2つの得意技を持っているようです。
1つは、海外インフレを国内インフレに転嫁しない ための労使をはじめとした社会的ノーハウ
2つは、価格の高騰した資源を節約するための技術開発力や社会的適応力です。

 1つ目は、第1次オイルショックの後の失敗に学んで第2次オイルショックを賢明な対応で乗り切ったことで実証されています。対応に失敗 してスタグフレーションに苦しむ欧米を尻目に「ジャパナズナンバーワン」と言われました。
2つ目は、オイルショック後の省エネの徹底のように、対応する技術を徹底的に追及する真面目さです。すでにネオジムの使用量を数分の1にする技術開発に向かっている企業もあります。
 資源価格の高騰は、世界共通の問題で、日本は、他国より優れた対応力を発揮して、ピンチをチャンスに変えてきた経験済みの問題です。

 一方、円高は、日本だけが差別的に不利になり、他国はその分有利になるもので、対応策は企業のコストダウンに任されてしまっているのが現状で、日本経済社会に大きなマイナスをもたらしている全く未解決の問題です。

 今、日本が真剣に、しかも早急に対応策を考えなければならない問題は、円高にいかに対応するかという「社会的」あるいは「経済政策的」な技術開発でしょう。政府か、学者か、官僚か、労使組織か、・・・・・、日本人の知恵が問われています。