tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

円高を止める具体的方法-5

2011年01月22日 10時41分19秒 | 経済
円高を止める具体的方法-5
 現状このブログでの考え方は、円高を止めるには先ず、「万年経常黒字をやめる」、つまり「GDPを使いきる 」、という事から出発しています。第一案の国債発行で経常黒字をなくすためには少なくとも15兆円くらいの国債増発が必要と述べましたが、賃上げ→消費拡大の場合も15兆円ぐらいの賃上げをして、国民がみんなそれを消費に回さなければなりません。

 現状で、雇用者報酬は年間約250兆円ですから6パーセントぐらいの賃上げをして、それを国民がみんな消費に回す、金額で言えば、1億2600万人が、平均で年間12万円、月1万円ぐらいは最低でも消費を増やせばいいことになります。

 このぐらいなら出来そうな気もしますが、サテ、企業が6パーセントの賃上げに耐えられるでしょうか。絶えられる企業もあるかも知れませんが、中小企業までみんなとなったら、多分倒産する企業が続発するでしょう。消費が増えるからといっても、「うちは輸出の下請けだから消費は関係ない」とかいろいろ事情があるでしょう。

 賃上げ分がみんな消費に向かう保証もありません。賃上げで減益や倒産が増え、雇用不安が高まれば、貯蓄に回る率は高まるでしょう。それでは所期の目的は達成されません。

 本来企業というのは、(金の)卵を産む鶏のようなものですから、鶏が元気で確り卵を産んで(経済が良くなって)欲しいのですが、鶏が弱ってしまっては元も子もなくなります。

 ですから、企業を弱らせて「後から景気が良くなるから」といっても、経済というものは、そう巧くは回りません。リーマンショックで大打撃を受けて、まだまだ病み上がりの日本企業ですから6パーセントの賃金コストアップは致命傷になる企業も多いかも知れません。

 このあたりは前回も述べましたように、連合も良く理解しているから、かつて一部組合が強く主張した「賃上げで景気回復を」と言った論調は影を潜めてしまったというのが実態だと思います。

 因みに、賃上げで景気が良くなるのであれば、世界中で不況はなくなるのでしょうが、現実には生産性を超えた賃上げは「スタグフレーション」しかもたらさないことが、ヨーロッパやアメリカの経験で実証されています。

 国債発行方式も、賃上げ方式も、副作用のほうが強くて、どうも巧くいきそうにありません。しかし、円高阻止のためには、先ずは経常黒字をなくす、つまりGDPを使いきらなくてはならないのですから、矢張り何か副作用のない、「新機軸の経済政策」を考えなければなりません。今までと同じようでは日本は、何時までたっても救われません。何か考え出さなければなりません。