tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

アメリカ経済再建 その4: 実体経済で見れば

2011年08月22日 11時30分45秒 | 経済
アメリカ経済再建 その4: 実体経済で見れば
 経済というのは、一言でいれば、「人間が、より豊かで快適な生活をするために、モノやサービスを生産し、それを消費者の届け、消費者が消費して満足感を味わう」という一連の活動でしょう。物理的に見れば極めて単純なことです。

 ここで一番難しいのは、生産したものを全部食べてしまわないで、来年の生産や、その生産をより効率的にするための原材料(種籾など)や道具や、より効率的な生産をするための工夫(技術革新)のために、生産したものやサービスをどのくらいを回すかです。
 言い換えれば、生産したモノやサービス(GDP)の内、どのくらいを消費し、どのくらいを将来の生産のために割愛するか(消費と投資のバランス)です。

 こんなことは、揚羽蝶の幼虫でも知っています。生活の場である柑橘類の葉をもりもり食べますが、枝の先端の芽のところは食べません。「ここが将来の食糧に育つ」と知っているからでしょう。

 ところが、恐ろしいことに、経済が貨幣経済になり、すべてが金融という袋に包まれて、間接的にしか見えなくなってくると、そのあたりのバランスが人間にも見えなくなってくるのです。

 落語にも、仲の良い夫婦が、「2つあれば1つずつ、1つなら半分ずつ、無い物は食わない」という下りがありますが、貨幣経済では、「無い物でも金を借りてきて買って食えばいい」ということになり、誰でも「そんなのは無理だよ。そんなことを続けられる訳がない」とすぐに理解しますが、アメリカは、それを出来るだけ長く続けようと、1970年代以降、ずっと努力してきているのです。

 貯金のあるうちはいいのですが、無くなると後は借金です、借金の出来るうちはいいのですが、借金が出来なくなったら破綻です。今、ここまで来たようです。
 問題は、経済がすべて「貨幣の操作」というベールに包まれていますから、実体経済がどうなったのか良く解らないし、政府も確り危険信号を出さなかったので、国民の多くが、「別に借金で生活していても、貧乏するよりいいんじゃないの」といっているうちに「茹で蛙 」寸前になってしまったのでしょう。

 実体経済から見れば、物事は極めて単純で、早期に、アメリカは、「自分たちの生産(GDP)の範囲内で消費と投資を賄う」状態(経常赤字でなくなる状態)に戻す以外に解決法はありません。
 それには、国民の心の準備が必要ですが、それを、国民に対する「対話と説得」でやるのではなく、「金融操作」でやろうとしているので、そのトバッチリで、世界中が迷惑しているというのが現状でしょう。

 思い出してみれば、アメリカが黒字国のうちは、世界経済は極めて安定していました。