tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

経常黒字大幅減の読み方

2014年02月10日 16時41分45秒 | 経済
経常黒字大幅減の読み方
 万年経常黒字の日本ですが、このところ黒字幅の縮小が目立つようです。
 昨年の経常収支の黒字は3.3兆円だそうですから、確かに大きく減少しています。比較可能な1985年以降で最低を記録したとのことです。

 経常収支はご承知のように、貿易収支と、外国との所得収支、サービス収支などの合計で、その縮小の主因は、貿易収支の赤字が大きくなったことだそうです。

 貿易赤字増加の原因は原発が止まっていて火力発電が中心になり、燃料輸入費がかさみ、しかも円安になってその分輸入価格が高くなったことが大きく、さらに、中国からのスマホの輸入などが増えたのも一因だそうです。一方輸出の方はというと、円安になった割にあまり増えていないからと説明されています。

 かつて2回の石油危機で、原油価格が4倍と3倍になった時でさえ、貿易赤字はこんなに続きませんでしたから、真の原因は日本の貿易構造の変化、経済構造そのものの変化にあると考えなければならないでしょう。

 数字を見れば、輸入は15.4パーセントの伸び、輸出は9パーセントしか増えていません。その結果、貿易収支は10.6兆円の赤字です。加えて、サービス収支も赤字幅の縮小は見られますが、常に赤字です。
 それでも経常収支が黒字になっているのは、所得収支が16兆円を超える大幅黒字になっているからで、日本経済は、外貨は輸出で稼ぐのではなく対外投資で稼ぐという姿がくっきりです。
 
 最近はメイドインジャパンではなくて、メイドバイジャパンなどと言われますが、円高に苦しんだ20年の間に、日本企業のビヘイビアは、国内生産より海外生産という方向へ大きくシフトし、この所の20~25円の円安でも、国内回帰はなかなか進まないようです。
 その結果は当然のことながら、遅々とした国内の雇用改善ということでしょう。

 しかし、考えてみればどうでしょうか、2005~2010年ごろの様な、年間15兆円から、20兆円の経常黒字を計上し、アメリカの国債を年間20兆円も買って、円は絶対安全通貨と認識され、「円買い→円高」でGDPの縮小を繰り返すような経済より、現状はよほど良いのではないでしょうか。

 黒田式異次元金融緩和で実現した円安が、ある程度維持できているのも、海外投機資本の一部が、日本の経常収支の縮小を横目で見て、円の下値を試したりしながら、いつかは円売りを仕掛けてまた大儲けしようと考えているからかもしれません。

 政府も金融当局もアカデミアもマスコミも、この経常黒字の縮小傾向を、いかに政策的に論じ活用するかに知恵を絞る時が来ているのではないでしょうか。