tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

日本製鉄-USスチール問題を憂う

2025年01月06日 15時22分46秒 | 経営

新春早々日米間に厄介な問題が1つ追加される事になったようです。バイデン大統領が、日本製鉄のUSスチール買収問題について、買収阻止の命令を出したのです。

昨年、この問題が昨年「双方の経営陣は合意」と報じられた時には、バイデン大統領は、民間企業同士の問題で、発言はしないという姿勢でした。本来、こうした民間企業同士の問題に、政府は介入しないのが一般的な対応でしょう。

嘗て、バブルの時代に、日本企業がニューヨークのど真ん中、ニューヨーク市民の娯楽の中心でもあるロックフェラー・センターを買収したことがありました。

しかし、アメリカからは何の反応もありませんでした。

今回の日本製鉄のUSスチール買収でも、アメリカの政府筋のどこからも、異論を差し挟むような声は聞かれませんでした。

反対意見があったのはUSW:アメリカ鉄鋼労組からでした。USWの立場からすれば、本格的な再建策が取られたら当然雇用確保労働条件など心配でしょう。

一方日本製鉄の方は、日本の企業ですから、雇用を大事にすることは重視していて、心配ないようにそのための資金も提供するという方針を明らかにしてUSWに理解を求めています。

所が、大統領選候補であるトランプさんが「買収反対」を打ち出したのです。

トランプさんは本来、アメリカへの資本流入大歓迎という立場のはずで、ソフトバンクグループの孫正義さんが、アメリカに半導体関連の投資をすると発言し、トランプさんは大歓迎の報道もありました。

日本製鉄の買収金額が2兆円で、さらに、USWその他のへの配慮で数千億円の支出になるでしょう。

恐らく反対理由はUSスチールという企業が、かつてアメリカの栄光を背負った「世界のトップ企業」ですから、「アメリカを再び偉大に」といっているのに、

そのUSスチールが「日本の企業に買収される」などという事があってはならない、アメリカの名誉の問題という「思い入れ」でしょう。

そのトランプさんがもうすぐ大統領に就任するのです。バイデンさんはこの買収問題はトランプさんに任せると心配だから自分が決めておいた府がいいと考えて今回の「命令」でしょう。

日本製鉄は買収が成立しない場合6500億円の賠償を支払う事になっているというのですがアメリカ政府の都合で不成立の場合も支払うのでしょうか。

日本製鉄は買収成立を諦めず、訴訟も視野にと言っていますが、私企業と政府が絡んだ問題です。アメリカには、弁護士が「輸出したいほどいる」と言われます。難しい訴訟の問題で、訴訟費用も莫大になりそうです。 

この三つ巴、四つ巴の問題がトランプ政権になっての日米関係にいかなる影響を与えるか、皆目わかりませんが、両国とも、私企業同士の合意した問題が日米関係にいかなる影響を与えるのか、いずれにしてもこれ以上憂うべき問題とならないことを願うばかりです。