tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

実質賃金の上昇に必要な条件は?

2024年07月12日 14時47分46秒 | 経済

前回は、今の日本経済に必須な実質賃金の上昇について、直接の責任を持たなければならないのは「労使」であることを指摘したうえで、「プラザ合意」以降、円レートが基軸通貨国などの経済政策によって、変化することが一般的になった国際通貨情勢の中で、我が国の経済が安定成長を維持し、国民生活の安定的な向上を維持するためには、政府、日銀そして労使が十分な相互コミュニケーションを持ち、連携した政策の展開が必須であることを示唆してきたつもりです。

 今回は、この25か月連続の対前年実質賃金の低下が、日本経済の成長を大きく阻害している事を前提に、具体的にどうすれば実質賃金の反転上昇が可能になるかという条件をみて行きたいと思います。

まず掲げたのは、上は2022年1月以来の毎月勤労統計賃金総額(名目)の対前年同月上昇率と消費者物価指数の対前年同月上昇率のグラフです。下は、上の図の名目賃金と物価の差、実質賃金の推移です。

 資料:厚労省「毎月勤労時計」総務省「消費者物価指数」  

ご覧のように賃金上昇率が物価上昇率を超えていたのは2022年3月までです。以降つい先々月まで一貫して赤い柱が上回っています。下の図は、その差、実質賃金の低下そのものの推移です(2022年12月は逆ですが、これは現金給与総額を取ったせいで、「きまって支給する給与」が一般的には使われています)。  

2022年の4月から、コロナ禍で値上げできなかった食料品や生活必需品などの一斉値上げの波が起き、それが「2023年1月をピークに2023年10月まで続きました。

これは例月報告しています消費者物価指数の「生鮮とエネルギーを除く総合」いわゆるコアコアの動きで跡付けられますが、それ以降はまた上昇基調になっています。

コアコアの鎮静化は顕著ですが今の上昇は為替要因、主因は円安によるものでしょう。この円安はアメリカの高金利継続を背景に国際投機資本の動きで起きるものです。

円安対策としては、為替介入と日銀の金利引き上げですが為替介入は効果は僅少で一時的、日本は為替操作国に指定されるという不名誉に繋がります。

日銀の利上げについては借金まみれの政府が折悪しく裏金問題の取り込み中で、多分日銀も動きにくいのでしょう。政府の定額減税、補助金継続という誤った政策だけが動いているようです。

一方、賃金の動きの方を見ますと、この4月、5月と33年ぶりといわれる大幅賃上げの効果は出てきているように見えますが、よく見ると5月は昨年5月の上昇率に達していません。

結果的に円安による物価上昇の勢いには及ばず、いまだに1ポイント弱の差(実質賃金低下)があります。

5月は、総理府の「家計調査」の結果では、勤労者世帯の「勤め先収入」は順調な増加が見られますが、6月、7月のボーナス、8月以降の状況が心配されるところです。  

以上みてきましたが、最も自然の形での実質賃金黒字化と言えば、アメリカが早期に0.25%今年中に2回程度、金利を引き下げ、円安が円高方向に反転する。合わせ技で日銀がゼロ金利の完全脱出に踏み切る。消費者物価指数上昇が2%を切る。名目賃金2~3%の上昇で実質賃金は1%程度の上昇に変わる、といった予想でしょうか。

然し客観情勢としては、アメリカ政府はドル高を望んでいそうですし、日本政府は金利の引き上げはできるだけ先延ばしという意向でしょう。

労使の立場からは、連合は、最低賃金も含めて、もう少し高い賃金上昇を望んでいるのではないでしょうか。経営サイドも、満額回答をしたところも含めて経済成長率が高まるのであればボーナス増額、多少の賃金増額調整に必ずしも否定的ではないでしょう。

統計数字の動きを見ながら、出来れば外国の政策を当てにするのではなく、日本の労使、政府、日銀の判断を十分すり合わせ臨機応変の政策を取れば、日本経済の活性化はそれだけ早まるのではないでしょうか。 

労使は、ともに協力し合えば、自分たちの力で日本経済を動かせることを学ぶ良いチャンスではないでしょうか。


実質賃金上昇の必要性の検討

2024年07月11日 15時49分03秒 | 経済

昨日は改めてこれまで25か月続いてきた実質賃金水準の対前年マイナスという状態からの脱出が、日本経済の回復・正常化に必要と指摘し、そのためには、今春闘での賃上げは、33年ぶりの高水準だったとはいえ、必ずしも十分なものではなかったのではないかと指摘しました。

賃金決定というのは労使の専決事項ですから、望ましいのは労使の組織がいかなる賃金決定が今の日本に望ましいのかを検討し議論を重ね、傘下の、企業に周知し、個々の企業はそうしたマクロの情報をベースに自社の経営状況の中で最適な決定をしていくという努力でしょう。

戦後日本の労使は、それぞれに労働側は力ずくの賃上げ闘争、大幅賃上げ要求、経営側は、適正な生活水準、国際競争力維持可能な賃金コスト管理など激突、衝突を繰り返しながら、経営側の生産性基準原理、労働側の経済整合性理論と合理的な賃金決定理論に到達してきました。

しかし、1985年の「プラザ合意」で欧米から「円切り上げ」要求を受けて、そうした賃金決定基準の労使の理論は成立しなくなり、「春闘の終焉」と言われ、その後の賃金決定は,今に至る、漂流状態です。

理由は、経営側の生産性基準原理も労働側の経済整合性理論も、基本的に、固定相場制ないし為替レートの安定を前提にしたものだったからです。

結局、日本は1985年の「プラザ合意」、2008年のリーマンショックという海外発の政策的円高にさらされ、その後、日本初の円安政策である黒田バズーカによる円安、そして今回のアメリカの金利引き上げによる円安という2回の政策的円安を経験しています。

プラザ合意による円高については日本の労使は徹底した賃金水準の引き下げで対応しましたが、それにはバブル期を含め2020年まで15年を要し、その手段が賃金の低い非正規労働者の多用という形だったため、雇用構造や社会情勢に大きな歪みを残しました。

リーマンショックの円高に対しては労使打つ手も失い、結局黒田日銀の異次元金融緩和での解決を待つだけでした。

日銀の金融政策の転換で日本経済は円安(円レートの正常化)を迎えましたが、為替レートが正常状態になったにも拘わらず、日本経済は消費が伸びない消費不況に悩まされ、今に至るデフレ状態(需要不足)で殆んどゼロ成長近傍にとどまっています。

円レートが正常化して($1=120円)、「春闘の復活」は言われましたが、それは政府が賃上げを主唱する「官製春闘」で、労使は殆んど賃上げの正常化についての意見は持ちませんでした。(連合は「定昇+経済成長率」、経団連は企業の賃金支払い能力など)

今回の欧米の金利引き上げによる円安についても、「実質賃金の長期にわたる低下」という異常状態への対応のために賃上げが必要という意見はあっても、永続的な円安の中では、欧米インフレの範囲内、乃至円安による賃金コストの低下の範囲程度の賃上げが必要というような意見は労使からも、残念ながら、アカデミアや担当官庁からも聞かれませんでした。

つまり、円高については人件費抑制→コスト削減という政策目標は明確でしたが、円安になったとき、賃金引上げ→消費需要喚起という逆のサイクルが必要という現実には、労使とも、学会も関係官庁も気づかなかったという事なのでしょう。

前置きが長くなってしまいましたが、こうした立論のもとに、今年の賃上げはもう少し高くてもよかったのではないか。賃上げが足りなければ、労使は秋闘で賃上げ交渉をし、早期に日本経済の活性化に取り組んだろうかという前回の主張につながるのです。

次回は現実の統計を見ながらそのあたりを論じてみたいと思います。


消費主導の日本経済に必要なこと

2024年07月10日 15時25分54秒 | 経済

今春闘の賃上げについては連合も目指した大幅賃上げが実現したと満足のようです。経団連も主要企業の多くが満額回答を出し、中には要求を超える回答をしたところもあって、賃上げの社会的責任を果たしたと胸を張っているのではないでしょうか。

確かに賃上げ率そのものは、33年ぶりの水準などと言われ、バブル崩壊後円高不況で賃下げが必要と叫ばれた時期の水準に戻ったかもしれません。

然しそれが今年度の日本経済にとって適切な賃上げ水準だったのかという検証はやられていないようです。

直接比べることにあまり合理性はありませんが、日経平均のほうは、バブル崩壊直前の38900円を疾うに超えて42000円に近づいています。

多くの人は何か日本経済のアンバランスを感じているようですが,そこに発表になったのが、実質賃金の対前年上昇率がこの5月もマイナスで、そのマイナスは26か月連続という現実です。

毎月勤労統計の賃金指数(5人以上事業所の現金給与総額)と消費者物価指数の総合の数字を並べて見ればわかりますが、2022年1~3月は確かに現金給与総額の対前年同月上昇率が消費者物価指数の上昇率(同)を上回っています、そこに、値上げの遅れた食料品日用品の一斉値上げが起き4月以降は今年5月まで消費者物価指数上昇率が賃金上昇率を上回っています(2022年の12月は資料の取り方で、0.1ポイントのプラスという数字も出ます)。

実質賃金のマイナス幅は23年秋にピークに達し、その後縮小傾向にありますがこの5月も未だ-0.9ポイントと1%近いマイナス幅です。

今春闘で賃金も上がりましたが、円安で物価の上昇の心配も消えません。6月以降の数字がどうなるかですが実質賃金の黒字転換はそう簡単ではないでしょう。

今になって考えてみれば、労使が共に手応えあったと感じた賃金上昇も、現実の経済・物価の動きから見れば決して日本経済に適切なものではなかったようです。

折しもまた別の困った数字が出ました、内閣府からの、日本経済のGDPギャップです。今年の1-3月期の日本経済の需給ギャップが-1.0%から-1.4%に修正されたというのです。

これは潜在供給能力はあるのに、それを利用していない分が1.4%という事で、もし潜在能力を100%利用すればGDPは1.4%分増える、それだけ経済成長率も上がるという事です。

どの部分で潜在能力を使い切っていないかについてはいろいろな見方があるでしょう。しかし、経済活動や需要構造といったものは、相応の弾力性があるものですし、アベノミクス以来日本で不足しているのは消費需要だという事は明らかですから、このギャップを消費需要対応にもっていけば、消費は増え、経済成長率は高まるということになります。

そうした需要供給体制のシフトをスムーズに行っているためにも、詰まりは、日本経済がバランスの取れた経済成長の体質を取り戻すためにも必要なことは消費需要の喚起でしょう。

そしてそのために必要なことは格差の少ない賃金上昇の均霑なのです。

このブログでは合わせて平均消費性向の上昇にも注目していますが、まずは賃金上昇が家計に広く均霑することが基本でしょう。

現状では、日本の労使にその観点は欠落しているようです、円安の進展の中で、日本の賃金コストは異常に低くなり、今や生産性を考えれば途上国に匹敵するのではないでしょうか。

こうした日本経済の非常時に際し、日本の労使は、必要があれば賃金交渉はいつでも出来るぐらいの柔軟性と先見性を持って、まずは実質賃金が前年を下回るようなことは、間違いなく避けるべきという意識で、日本経済の成長路線のへの回帰を牽引する賃金水準の上昇を検討すべきではないでしょうか。

特に円高になった時の賃金抑制と同じ比重で、異常な円安に対応する賃金水準の上昇を考えるのは今や経営者団体、経営者の義務と考えるときではないかと感じるところです。

経営者にその発想がなければ、政府は補助金や定額減税で消費購買力を増やそうとするでしょう。これは日本経済を一層弱体化する愚策で、効果は限られ、日本経済、日本財政のゆがみを大きくするだけでしょう。

今こそ本格的な「政労使」対話を進める時ではないでしょうか。政府がお取込み中であるならば、労使だけでも出来るのではないでしょうか。

第一次石油危機の時の労使の頑張りを思い起こしていただくのもいいのはないかと思います。


蜂の予言「今年は大型台風か?」

2024年07月09日 13時15分47秒 | 環境

我が家にはよく蜂が巣を作ります。だいぶ前ですが山茶花の枝にぶら下げた鳥に餌をやる皿の下に蜂が小さな巣を作りだんだん大きくしていました

そんな雨風に曝される危ない所に蜂が巣を作るのだから、今年は台風は来ないだろうなどと言いながらよく見える様に少し枝を切ったりしていましたら台風より人間の接近の方が危ないと思ったのか、そのあと蜂は巣作りをやめてしまいました。作りかけの巣は、風雨にさらされて、いつしか下に落ちでしまったようでした。

去年は南側の壁の前、チューリップ用の花壇の後ろに置いてある物置兼用の窓の割れたガラスのフレームの中に巣ができていいて、剪定枝用の40ℓの燃やせるごみ用ポリ袋の箱を引っ張った途端、何匹もの蜂が飛び出し、蜂も慌てていたのか、さいわい刺されませんでしたが、驚きました。

今年は先日、花壇がニ菜園になってっミニトマトが赤くなったので採りに行きながら、蜂がいないか気を付けていましたら、いました、いました、今年は戸袋とフレームの狭い隙間の一番奥に巣を作っているのです。

拡大しましと

 

蜂にとっては人間の手も入らないような狭い隙間なら安全という事でしょう。それよりも、それを見た途端考えたのは「蜂の予言」のジンクス、蜂は安全なところを選んで巣をつくるから、こんな奥まったところに巣を作ったのは、今年は大型台風か集中豪雨化が三多摩地区を襲うかな。これは大変だ、という連想でした。 

我が家に巣を作るのは、「あしながばち」の一種でしょうか、小型の蜂です。本当にこうした蜂にも予知能力があるのかどうかは知りませんが、我が家の蜂がきっと心配性で、過剰防衛本能が働いたのだろうから、そんな台風は来ないだろうと思っていることにしています。

それより家内の心配のほうが真剣で、

「夏休みになると、今年も孫やひ孫たちが来ますよ。ミニトマトが生っていれば、取りたいとか、食べたいとかいうでしょう。それで蜂に刺されたりしたら大変ですよ。早いうちに何とかしておいてくださいよ。」という事です。

娘や孫の「お爺ちゃんどうしてくれるの」という怒った顔はそれこそ大変ですし、かといって一生懸命巣作りをしている蜂に殺虫剤のひと吹き「シュー」という残酷なこともちょっとやれないと思い悩んでいるところです。


民主主義国日本への冒涜を許すべきではない

2024年07月08日 14時41分41秒 | 文化社会

東京都知事選挙が終わりました。ここでは結果について云々するものではありません。選挙の結果は有権者の判断の結果として、民主主義の基本的なルールに基づき最大限尊重されるべきでしょう。

ただ、今回の都知事選では、一部に、都民、さらには日本国民の品位を貶め、民主主義を冒涜するような行為・行動が横行し、一部ではあるものの、都民の中に、近代国家において最も重要な社会規範ともいうべき民主主義の正確な理解が出来ていないような人たちが増えているのではないかと危惧されるような事態が起きてしまっているのです。

先に「つばさの党」と名乗る集団に、選挙妨害で司直の手が入りました。これは明らかに他の候補者の選挙活動を妨害すると判断されたからでしょう。

今回の都知事選における、理由の判然としない大量立候補、都の用意した立候補者用の立て看板の乱用といった問題は、民主主義の重要性を認識し、選挙をその基本的な活動として重視する真面目な都民にとっては殆んど理解できない行動ではないでしょうか。

民主主義というのは、人類社会の進歩発展の中で、長老やシャーマンの支配から武力による征服・王政、世襲制や独裁者の誕生など経て、現代の人類社会が行き着いた、まさに現状においてベストな政治体制という事ではないでしょうか。

そして現在、日本も民主国家である事を誇りとし、より良き民主国家の建設を目指して国民は協力すべき立場にあるはずです。

もちろん日本だけではありません。いずれの民主主義国であっても、多くの国民は真面目により良い民主主義国家の実現を目指して国民全体のために真面目に行動することが求められているのでしょう。

たとえば多くの国で、選挙ではみんな投票しましょう、「棄権は危険です」などという標語も作られ、すべての国民、有権者に呼び掛けているのです。

これは、その国や社会をより良いものにしようという真剣な努力にほかなりません。

選挙という活動は、こうした国民、都知事選であれば都民のこうした真面目な努力よって成立しているのです。

それに対して今回の都知事選で見られた多くの人の顰蹙を買うような行動は、真面目な活動であるべき選挙活動のまさに「乱用」というべき行動で、それによって起きる混乱や不信、様々なトラブルは都民の真面目であるべき選挙を冒涜するものであり、詰まりは、大切にすべき民主主義そのものを無理解の果てに冒涜し、社会の安定発展にトラブルを持ち込むものでしかないでしょう。

棄権が民主主義の市場中都合や発展対する貢献がゼロとすれば、今回の民主主義を冒涜する行動は、民主主義を破壊するマイナス点であり、民主主義の社会的ルールに対する犯罪行為ではないでしょうか。

人倫に反することが公序良俗に反する犯罪であるとすれば、民主主義の冒涜は、民主社会秩序違反という犯罪に相当すると考えるのが本来の民主主義の理念で、民主主義社会の規範であるべきでしょう。  

法整備が必要であるならば、早急に手当てし、こうした民主主義への冒涜が日本において今後も横行し、さらに拡大するようなことがないようにすることが、日本にとって、より良き民主主義国家への前進のために必要ではないかと考えるところです。


「オリンピックと戦争」「競いと争い」:人類の課題

2024年07月06日 15時37分43秒 | 文化社会

ロシアとウクライナ、パレスチナとイスラエル、2つの深刻な戦争という事態が解決いない中で、「パリ・オリンピック」が開催されます。

古代ギリシャのリンピックでは、オリンピックの期間中は戦争を中止するという取り決め があったとのことです。

普通の人間の常識で考えれば、それなら戦争なんかしないで、オリンピックで競争すればいいと考えるのではないでしょうか。

古代オリンピックはもう2000年以上も前のことですが、今21世紀の世界では、古代ギリシャのオリンピックが近代オリンピックとして復活し、4年に一度世界人類が楽しんでいるのです。

人類の文化が順調に進歩していれば、世界中が楽しむオリンピックは復活しても、同じ人間同士が殺しあう戦争などはとっくになくなっているはずだと考えて当然でしょう。

ところが2000年以上たった21世紀でも、人類はまだ戦争をしているのです。

しかもオリンピックをやっている最中ぐらい戦争をやめて、オリンピックに集中しようと考えた古代ギリシャの知恵も失われ、オリンピック中も戦争を続けようという事のようです。

この現実に関する限り人類の文化は2000年以上たっても、まったく進歩しないばかりか、退歩、劣化しているのです。

何年か前の文化の日に「争いの文化」と「競いの文化」について書きました。その後も折に触れて取り上げていますが、現生人類はその発生以来、この2つの文化(本能)を持っているようです。

しかし生物として異常に発達した脳を持つ現生人類は、その脳の活用によって「相手を倒して優位を保つ争いの文化」を否定し「互いに競って高めあう競いの文化」に則った行動をすることは十分可能なはずです。

現に社会のほとんどの分野では「競いの文化」が常識で、争いの文化が残っているのは国と国との関係に限られてきているようです。

自らを正しいとして人を殺すことは一般社会では犯罪です。それが許されるのは国と国との関係においてだけではないでしょうか。

しかも通常の国際関係の中ではそれは許されないでしょうし、一般の人々も許されるとは考えないのではないでしょうか。  

ただ偶々「独裁者」に率いられた国が独裁者の意向に忠実に「争いの文化」に従って行動しているというのが現状でしょう。

問題は絞られているのです。まずは世界の国が、独裁者をリーダーにしないこと、また独裁者を作らないことに、人類の総意として取り組むことでしょう。

担当する人類事務局は、差し当たって国連でしょうか。


5月、平均消費性向急落、要因・今後は?

2024年07月05日 16時02分46秒 | 経済

今朝。総務省統計局から家計調査の2004年5月の「家計収支編」が発表になりました。

5月、6月は新年度の賃上げが家計に反映される月なので、特に 今年は賃上げ幅が大きかったことが労使の調査でも確認されているので、特に勤労者世帯について注目したいと思っていたところです。

統計表で最初に出てくるのは2人以上の全世帯の消費動向ですが、これはマスコミの見出しのように対前年比実質マイナス1.8%で消費支出減速という状況です。

今年の1月は異常な落ち込みでしたが、2月から対前年比マイナス幅を縮小し4月には前年比実質0.5%のプラスでした。

しかし5月は名目で1.4%の伸びでしたから消費者物価指数が生鮮食品を中心2.8%も上がったので残念ながら、実質消費は前年比マイナスに転落です。

実質消費支出のマイナス1.8%に最も大きく寄与しているのは、10大費目の中の食料で0.94のマイナスです、5月には生鮮食品が大きく値上がったことも影響しているのでしょうか。

光熱・水道がマイナス0.77の寄与になっていますが、これは政府の補助金の廃止の影響が出ているものと考えられます。

増加で寄与しているのは交通・通信(+0.54)の中の自動車購入でこれは型式問題で買い急ぎがあったせいでしょうか。

いずれにしても、行政の関係で、自然の経済活動の動きが混乱させられるのは、経済分析にとっては困ったことです。

ところで、勤労者世帯はどんなことになっているのだろう、賃金は順調に上がったのかなと2人以上勤労者世帯について見てみましたら、こちらは少し状況が違いました。

5月は名目可処分所得が対前年8.8%と大幅上昇で、実質可処分取得も同5.3%の増加と賃上げのせいでしょうか予想外の大幅増加です。(配偶者の収入も増えている)

この実質可処分所得の増加が平均消費性向にどんな影響をもたらしたかと「平均消費性向」の数字を見ますと下図です。

   平均消費性向の推移(2人以上勤労世帯)

              料:総務省「家計調査」

平均消費性向は、昨年5月の90.2%から、84.7%へと大幅に下がっています。昨年の5月が些か異常で収入が減り、節約がそれに追いつかなかったという感じの90.2%だったのですが、今年は、賃金上昇率も高めで、その逆の現象のようです。

平均消費性向が上がることで消費需要が増え、消費不振の日本経済が復活するきっかけにしようというのがこのブログの主張ですが、平均消費性向が下がってしまっては消費支出は増えません。

そこでこんな計算をしてみました。去年の5月は100円の収入で90.2円使って生活した。今年の5月は108.8円の収入があった。そしてその84.7%を生活に使った。今年の5月生活に使ったのは何円でしょう? 答えは92円15銭です。

つまり、平均消費性向は下がったけれど消費支出は名目値では増えたという事です。

現実の家計を考えれば収入や可処分所得が増えたからと言ってすぐにその分を消費に回すのではなく、先を見ながら次第に増やしていくといったことでしょう。

さて、6月以降の可処分所得はどう動くのか、そして平均消費性向はどう動くか、日経平均は上がっているようですが、日本経済はどうなうのでしょう、もう少し見ていく必要がありそうです。


公的年金の2024年財政検証の「諸前提」について

2024年07月04日 17時34分48秒 | 経済

公的年金の所得代替率が50%を切らないというのが政府の方針という事で公的年金の財政収支試算が5年ごとに行われています。

今年がその年に当たるという事で、先日厚労省から社会保障審議会の年金部会の検証結果が発表になりました。

結果は4つのケースのシミュレーションの最悪の条件設定のケース(一人当たらいゼロ成)経済)以外は、50%以上の確保が可能という事で、まあ良かったという事になったようです。 

多様な条件を組み合わせてのシミュレーションですから、結果はそれなりのものになるとおもっていますが、最初から気になっていたのは「ケースの設定」のしかたでした。

   2024年年金試算の主な前提(伸び、利回り:%)

                 資料:厚労省 

岸田さんが、今後6年の経済計画を発表した際GDPの実質成長率を1%以上としていたので、このブログでも,それではちょっと低すぎるのではないですか。

もう少し国民に夢を与えるような数字を政府として出してくれないと、と書きましたが、今回の年金収支試算でも表題に書きました「諸前提」があまりにも、これからの日本経済、国民の努力を過小評価するような数字になっているので、試算結果はともかく、前提条件について、国民が「さて頑張るぞ!」という気になるようなケースも出してほしいと思ってしまいます。

という事で、政府が財政検証のために設定した諸条件の主要部分を表にしてみました。ここでは、総体的な判断基準のベースとして実質経済成長率を持ってきていますが、政府の試算では「全要素生産性」を持ってきています。

労働生産性のベースは人数ですが、全要素生産性というのは定義もいろいろあって、人間のやる気だとか、働きやすい環境とか、経営がうまいまずいとか、政府の政策の良し悪しもいれなければなりません。票の成長率の下2段はマイナスですが、全要素生産性ではプラスになっています。

勘ぐれば政府がいろいろ面倒見たが、労働力の働きがそれに応えなかったと見ているのでしょうか。前提の中で、情けないと思うのは、高成長実現ケースのGDP成長率がわずか1.6%だという事です。

成長型でも1.1%、日本人の勤勉さを持ってしても高成長が1%だというのはいかにも情けないですね。

せめて最低を1%としても成長率で2%ケース、3%ケースぐらいに置かないと、これからの日本経済は円高の時代、アベノミクスの失敗の10年から立ち直って、せめて主要国平均プラスなにがしかの水準の経済成長を達成するという意気込みでものを考える必要があるのではないでしょうか。

物価も経済成長が低ければ低いとなっていますが、これからの世界経済の中では物価は国内事情より国際経済との関係で動くでしょう。

円レートについては何も触れていないようですが、プラザ合意のよう経済外交の失敗はもう起こさないという自信があるのでしょうか。実質賃金については実質経済成長率より高めになっていますが、長期に亘ってそういう事が可能とは考えられません。

日本人は実質経済成長率の示す範囲の中で生活をしているのですから、そしてその中で社会保障費などはシェアが増えていく可性が大きいでしょう。年金についてはマクロ経済スライドがつけられても、医療費などではコロナの場合に見るように、今後もいろいろなことが起きるでしょう。

実質運用利益率については、GPIFの腕が問われているのでしょうが、日本経済の中でGPIFの実質利回りが賃金よりも高いという事は、この利回りは海外で稼ぐという事でしょうか。

国際投機資本と張り合うことは容易ではないような気がします。1%程度の実質経済成長率の中で、出来る事は限られています。

政府担当者はこれで所得代替率50%をクリアなどと国民を安心させようというのかもしれませんが、国民、つまりはGDP,国民所得の中で分け合わなければならないということは解っています。

せめて、国民の頑張りに頼らなければならない日本です。国民に安心を押し売りするより、国民に「頑張ってください。よろしくお願いします」と頼んだほうが真面目な態度ではないかと思うところです。

 

 

 

 


アメリカ経済に変調の兆し?

2024年07月03日 15時17分06秒 | 経済

コロナ不況からの回復以来、賃金インフレも経験しながらも一本調子で堅調を維持してきたアメリカ経済ですが、このところ変調の兆しが見えて来たのではないかという意見も出て来たようです。

今、アメリカ経済の先行指標としての主要な判断材料が雇用です。経済学の本来の見方では雇用というのは経済が良くなると、企業がそろそろ人を増やそうかと考えるという事で、景気の遅行指標ということになっているのです。

しかし今のアメリかでは、非農業の雇用者数をしらべて、これが増えるという事は、好況の先行指標という事になっています。

雇用を増やすのは、企業が売り上げを増やそうと考えているという事ですし、多くの企業が採用を増やしますと求人競争で賃金も上げなければなりません。

賃金を上げれば物価も上がりますし、企業にとっては物価が上がれば売り上げも増えるし、利益も増えるという見方になるのでしょう。

こうした見方になるのは、アメリカ経済が内需中心で、生産性が上がりにくい公務や医療、小売業やサービス業が経済を引っ張るという構図だからでしょいう。

日本のように、製造業が重要で、国際競争力が至上命題のような国では、まずコスト(人件費)削減、競争力強化、競争力がついたら、増産で雇用も増やすという国とは違います。

というわけで、アメリカではコロナ明けには求人競争になり、賃金も大幅に上がって、インフレ昂進、FRBが慌てて政策金利引き上げということになりました。

日本では、お蔭で円安になって、いろいろと困ったことが起きるというとばっちりを受けちます。

このアメリカの雇用に、何か翳りが出てきたのではないかという見方がこのところ出始めているようです。

というのは6月の失業率が4.0%と、5月の3.9から上昇に転じたことが一つの契機になっているようです。

アメリカのニュースの中には、雇用の現場で職探しの照会が多くなったとか、現材の仕事をやめて、新しいもっといい仕事に転職をしようという人が少なくなったといった状況が語られることが増えたといった情報聞かれるようです。

公式統計では、雇用の伸びは順調、賃金の伸びも堅調といったことのようで、FRBの政策金利引き引き下げは遅れるといった意見が一般的ですが、パウエルFRB議長が、労働市場は冷え込みつつあるという発言を(国際向けに)したこともあってか、好調な雇用情勢の継続に疑念を持つ向きも出つつあるようです。

公式に発表される統計資料で判断すべきか、現場から聞こえる声がさらにその先行指標なのか、ニュース、情報の判断は難しい所ですが、日本としては、まさに攻防両様の構えで備えをしなければならないのではないでしょうか。


アメリカの行動パターンと日本の選択

2024年07月02日 13時27分24秒 | 国際政治

アメリカで、バイデンさん、トランプさんという大統領候補のテレビでの公開討論がありました。見ていてつくづく感じたのは、これが世界の覇権国の大統領候補の討論でいいのかといった感覚でした。

トランプさんの言っていることは「インフレがアメリカを殺す」といった発言に象徴される様に、理屈も説明もなく、バイデンさんは駄目だという相手のこき下ろしが多すぎますし、バイデンさんの方は、真面目な発言が多いのですが、発言がスムーズでなかったりしたことが大失点と捉えられるといった状態で、流石アメリカの大統領候補と感じるようなものではなかったように思います。

にも拘らず、アメリカではそれでいいようで、討論が終わってみると、アメリカ中がこの討論で先行きが決まるような熱狂ぶりです。有権者自体が、あの相手を攻撃するばかりのような討論に満足していると見受けられます。

アメリカから民主主義を教わった日本の党首討論なども、揚げ足取りは多いものの、も少しまともなものでないと国民が冷めてしまうのではないでしょうか。

日本にとってのアメリカという視点で考えてみますと、こんなアメリカに寄り添っていて日本は進む道を誤るのではないかとういう危惧感がさらに強くなった感じです。

政治の面で、アメリカ行動パターンがどうだったかをし量ってみますと、トランプさん時代には、国内中心で、国際関係にトラブルを起こすようなことが多かったですし、日本にとっては集団的自衛権をOKさせています。

そしてこれはバイデンさんになっても変わりません。CSISのシミュレーションのように、台湾有事の際は日本が参戦しなければアメリカが負けるといった演出までありました。

経済的には万年赤字国のアメリカは日本の貯蓄に大きな関心を持っているようです。アメリが言い出したTPPでは、自由貿易だけは意味がないと、言い出した本人が脱退しています。日本に膨大な防衛予算を組ませ,高価な防衛装備品を大きく値上げしながら買ってもらう事も視野にあるように思われます。

防衛装備品の開発についても日本と共同開発で資金協力を求める姿勢ではないでしょうか。

東日本大震災の時に即座にアメリカの財務長官が、日本は復興のために保有するアメリカ国債を売るようなことはないと発言したことも記憶に残ります。

日本は平和憲法を持って戦後一貫して武器を持ってで人を殺傷することなく、世界の平和維持に努めてきました。

このままアメリカに協力し、行動していくことは、世界に冠たる平和国家の理念の逸脱に行きつくのではないかという懸念は日本国民に強くなっていると思います。

今、日本国民が最も憂慮しているのは台湾有事でしょう。すでに沖縄南西諸島では種々の工事が進行中のようです。

日本は平和国家として等距離外交で、歴史的にも関係の深い中国と理解と親善、経済協力を進める事が日本らしい道ではないでしょうか。    

今回のアメリカの大統領選の熱狂は、そうしたヒントを日本に与えることになったのではないでしょうか。


2024年6月度「日銀短観」は当面順調

2024年07月01日 17時31分22秒 | 経営

今日から7月、今年も半分過ぎました。そして、日銀から全国企業短期経済観測(6月調査)が発表になりました。

政府は内部のごたごたもあり、そのせいで経済運営に統一性を欠き、岸田総理だけが、定額減税、電気・ガスに補助金といったバラマキ政策に猪突猛進ですが、経済見通しは相変わらず今年度実質 1.3%の低成長の見通しが放置されています。

アメリカの利下げが遅れることで円安が進み、円レートは160円を超えて、国際投機資本は、日本の消費者物価が上がるかどうかなどにはお構いなくキャピタルゲイン獲得に邁進でしょう。

その結果のマネーゲームに翻弄される日本企業ですが、基本的には円安は日本企業には有利という事もあり、今朝発表の6月度の「短観」でも企業経営のほうは順調推移の期間が延びる気配です。

為替レートの関しては、3月度調査では今年度の円レートは先行き141円台でしたが、今回の調査では144円台になっています。

円安が続きますと、輸出産業を中心に企業な総じて順調な推移を予測します。物価は上がる可能性は強まりますが、負担は消費者に回るわけで、収益良好、消費不振と、皺寄せを受けるのは家計という事になるのです。

マスコミが「業況2期ぶりに改善」と指摘していますように景気の状況の代表指標ともいわれる製造業大企業の業況判断DI(良い企業-悪い企業数の%表示)は製造業では、下表の通り大企業は今期、来期と増加、中堅企業は増加後ほぼ高止まり、小企業も先行きマイナス脱出です。

業種別にみますとDIが20以上に繊維、窯業土石、食料品、機械類、などがあり、自動車は型式などのトラブルがあったせいか12と低めです。

非製造業のほうは、その下の表ですが、引き続き好調で、DIは30前後、中堅企業は20前後、中小企業でも10%レベルと順調です。

業種別には、大企業では、不動産、通信、情報サービス、対事業所・対個人サービスなどはDIが50前後というところです。

落ち込みの大きいのは小売業で、大企業でも30から19へ、中小企業では来期は1まで落ちると予想されています。賃金が思ったより上がらなかったのに、物価は上昇しそうということなのでしょうか。

その他の項目で見ますと、っ設備投資は相変わらず堅調、大企業中心にソフトウェア関連、研究開発への投資意欲も強いようです。政府の「科

研費」削減の中で企業の自助努力の結果でしょうか。

全体的には、円安の進行が企業を潤していることは間違いないようですが、その原因はアメリカのインフレが収まらない、FRBが金利を下げない、おかげで日本では円安進行という事です。

アメリカも大統領選挙戦の展開次第で、どうなるか解りませんが、いずれ、政策金利引き下げ、ドル安円高という動きは出てくるでしょう。

「短観」回答企業の予測今年度下半期144円台の円レートが当たるかどうかは別としても、賃上げで対処すべき消費需要政策を政府のバラマキでという不健全の経済政策では「持続的な消費拡大はとても望めないでしょう、企業の収益も最終的には堅調な消費需要で支えられなければ持続的なものにはなりえません。

政府、日銀、労使団体が協力し合ってこその日本経済ですから、「短観」の結果がまずまず良かったと喜んでいて良いのかという感じが「短観」の中身からも読み取れるような気がします。