tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

3か月楽しめる百日紅の花

2024年08月14日 14時15分13秒 | 環境

明日は8月15日、太平洋戦争の終結、日本の敗戦、玉音放送・・・。日本が、日本人が世紀の大転換をするきっかけの記念日です。79年前の8月15日は、晴れて暑い日でした。あの日も戦災を免れた日本の町や村には百日紅(さるすべり)花が咲いていたでしょう。

我が家の狭い庭にも、東側のフェンス際に百日紅の木があります。矮性の種類です。初代はゴマダラカミキリにやられて枯れました。

二代目も初代と同様、フェンスの高さ辺りで芯を止めました。毎年そこから新芽が何本も出て、その先に紅桃色の花が房状に咲きます。

百日紅と漢字で書いて「さるすべり」と読むことからも知られますように、幹はつるつるで、花は7月、8月、9月と3か月、次々と蕾が出て咲き続けてくれます。

今年の花は、房が重くて垂れ下がるような咲き方ではなく、しっかり伸びて、伸びた先から先へと花が咲いていくような様子です。

今は暑い盛り8月のど真ん中、百日紅の花の時期(7月から9月)の前後も入れてまさに100日のちょうど真ん中に当たります。

そロソロ写真を撮っておこうと思っていましたが、明日、明後日は台風7号の接近で雨になりそうという天気予報なので、今日は朝から薄曇りでしたが写真を撮っておくことにしました。

ごらんのとおり、フェンスの高さ程の所から何本も今年の枝が出て、その先に次々に蕾が鈴成りになり、紅桃色の花が咲いていきます。

知らぬ間に何かのつるが伸びて絡まっていますが、花を散らさないようにそのままという手入れの悪さも歳のせいとお許しください。

些かアップにすると、こんな感じで、次々と蕾の出てくる感じもわかります。

最後に、この房状になっている花の集積の1輪、1輪はどうなっているのか見てみますと黄色な雄蕊を中心に小さな、しゃれた形にちじれた花弁がそれを取り巻いていました。

今、雷が鳴ったようです。今日の午後は驟雨でしょうか。

明日、明後日、台風が来れば、今日咲いている花は傷んでしまうでしょうが、また晴天になれば、その先に元気に咲いてくれるでしょう。

花が終わって、今年伸びた枝はみんな伐り取るときは、もう10月ということになるのでしょう。


日本経済はこれでいいのか

2024年08月13日 17時31分29秒 | 経済

日銀の政策金利の0.25%への引き上げが、マネーゲーマーたちの憶測から憶測を呼び、日本のマネー・サプライが日本発のマネー・サプライズを引き起こすことになったようですが、やっと何とか落ち着いてきました。

コストの安い日本のマネーを調達してリターンのいい外国で運用するという通称キャリー・トレードが、あまりにも広く行われていたのですが、その規模は把握されていなかったようです。

0.25%というのは、相変わらず世界最低の資金調達コストでないかと思いますが、それが更に高くなり、しかも金利の引き上げは円高につながりますから、調達金利コストが上がって、しかも返済の時には円高だという事になっては、レバレッジを効かせた信用取引は大変なことになるでしょう。

日銀が、日本経済の事情もありますから、そんなに急に金利引き上げなどしませんよといっただけで、状態は元に戻りつつあります。

この間、テレビには「専門家」ということで「ストラテジスト」とか「アナリスト」とか「トレーダー」などという難しい名前の方々が登場し、いろいろと解説をされましたが、ほとんどが金利やお金の流れの話で、実態経済とは関係のないことばかりでした。

やっぱり、経済と金融というのは、関係はあっても全く違う分野になってしまっていて、金融の分野の人たちは、お金の流れを読む達人で、お金がうまく自分のところに流れて来るように考えることが仕事なのだなという思いを強くしました。

これは本来の経済活動ではないですね。経済というのは「経世済民」の略で、世の中の動きをマネジメントして、人々の暮らしが豊かになるようにする」という事ですから「付加価値」つまり人々の生活に役立つ財やサービスの生産を増やすことが基本です。

マネーゲーマーのやっていることは、「経済活動」で増えた付加価値を買うことが出来るお金をいかに自分の所に沢山来るように、お金の流れをうまく利用する方法を考えるということになるのでしょう。

ところが今は政府から始まって、経済問題といえば、どうすればお金がたくさん入って来るかということが「経済問題」の主要な課題で、付加価値(GDP)は年1%でも増えればそれで良いというような事になっているようです。

日銀のおかげ様か、時間が解決したあのか、その両方なのか、それはよく解りませんが、マネーの世界の混乱も一応落ち着いてきたようです。

然し、「ああこれで良かった」ではないはずです。6月にはボーナスが増えたお蔭で、実質賃金がプラスになりました、しかし7月以降はまたマイナスになるという見方も多いようです。これはマネーゲームでは解決しません。

GDPは、実体経済が順調に動かなければ増えないのです。そのために、いま日本は何をしなければならないのか、政府が国民から借金をして定額減税や補助金といったバラマキをやっても効果のないことは経験済みです。

混乱が静まったところで、裏金のマネーゲームではない、本当の経済政策を政府も考え、労使も33年ぶりの高い賃上げ率だと満足せずに、もっともっと頭を使い、汗をかく事が必要なのではないでしょうか。


<月曜随想>報復の応酬か和解か、その原点

2024年08月12日 17時06分47秒 | 文化社会

ハマスが積年の圧迫に耐えかねて暴発、イスラエルを攻撃しました。イスラエルの報復は異常に執拗で、「ハマスの殲滅」という言葉さえ聞こえ、ガザは戦禍の地獄の様相です。

更にイスラエルはハマスのリーダーをイラン国内で、無人機で爆殺しました。イランはこの暴挙を主権に関わるものと怒り、報復を宣言しました。  

日本もかつて新興国だったころ、列強の禁油政策などに対抗、国運を賭ける気で太平洋戦争を引き起こしました。結果は世界で唯一の被爆国にもなり、主要都市はすべて廃墟と化し、膨大な民間人の死者を出しての敗戦でした。

あれから今年で79年ですが、その間日本からは報復という言葉も、原爆投下に対する恨みの発言もありません。

原爆投下に対しては、投下国アメリカの大統領と日本の被爆者代表が、「世紀の和解」をしているのです。

そして今、日本はこれからも戦争をしないという平和憲法を掲げ、世界を平和にしようと呼びかけているのです。

多くの国が戦争を経験しています。もし戦争をした国が、たとえ負けても、それを恨みや報復の形で記憶するのではなく、戦争は勝っても負けても、破壊と殺戮の経験でしかない、もうそんな事はやめようと思えば、戦争はなくなるのです。

そう考えてみますと、日本に出来たことが、なぜ広く一般的にならないか、という問題が残ります。

日本は特殊な国で、一般的には日本のようなことはできないし、そんな屈辱的なことはやる気もない、というのが世界の常識なのでしょうか。

われわれ日本人は、特殊でしょか。「過ぎたことは水に流して」という考え方は今は未来志向と言われ尊重されています。日本人が特殊なら、なぜ?

この問題は長い間いろいろと考えていました。

日本については、縄文1万何千年の間、多様な過去とDNAを持つ人間集団が日本列島という閉ざされた、しかし恵まれた自然環境の中で、平和共存して混血し、あたかも純血種のような日本人になったという経験が基底にあり、人間はみんな同じ様であると考えるようです。

もっと昔の話ですが、10万年ほど前、アフリカを出て、ユーラシア大陸に拡散していった現生人類(ホモサピエンス)は、現生人類でない旧人類が先住民として生活している所にいわば入植したのです。ヨーロッパ地域にはネアンデルタール人が、その東にはデニソワ人がいました。

ネアンデルタール人は2万年ほど前までは生存していたといわれますが、すべて絶滅しています。問題は原住民と入植者の関係です。

かつては現生人類は旧人とは交雑しなかったといわれていましたが、いまはDNAの研究から、交雑したことが解っています。しかし、彼らは現生人類に滅ぼされたのではなく、生きる力が弱く、次第に絶滅したという説が主流です。

しかし、40万年ほども前からヨーロッパに住み着いていたネアンデルタール人が、現生人類がアフリカを出てヨーロッパに拡散しはじめてから僅か何万年かで絶滅してという事は、対立や争いがあり、現生人類がその知能の高さをもって、彼等旧人の絶滅を速めたと考える方が自然でしょう。

次は千数百年ほど前の話です。現生人類は、アフリカを出て、何万年かで南アメリカの南端まで広がったといわれますが、その後ヨーロッパで高度な文明を築いた人たちは、改めてアメリカ大陸を発見し、そこに入植しました。しかしそこにはすでに同じ現生人類ですが、文明の発達の遅れた先住民がいたのです。インディアン、インディオです。そこで何が起こったかは誰もが知っています。

次は戦後の話です。戦後イスラエルという国が建設されました。そこはパレスチナと言われえる土地で、アラブ人主体の先住民がいました。多分史上最後の先住者と入植者の問題という事になるのでしょう。

それ以上は書きませんが、先住民と入植者という問題はいつの世でも大変厳しいようです。

日本列島には先住民はいませんでした。入植者がいなかったとも言えます。そうした葛藤のなかった日本人は、葛藤に縛られない、対等で平和な考え方に行き着いたのかもしれません。

まだまだ答えに到達しませんが、こんな要素も、人間や、国の行動に関係があるようにも思われます。


春闘賃上げ率・賃金水準上昇率と日本経済

2024年08月09日 14時38分27秒 | 経済

日銀の政策金利引き上げでマネーゲーマーたちはそれぞれの反応を見せ、円レートも、日経平均も予想以上の乱高下です。やっと、昨日、今日になって何とか落ち着いてきたようですが、迷惑なものです。

日銀の植田総裁も、マネーゲーマーに掻き回されないように慎重に発言されていましたが、次の利上げにも触れたことで「日銀タカ派に」などと書かれ、副総裁が出て打ち消すことでバランスを取ったようです。経緯は解りませんが、絶妙のコンビネーションプレーかもしれません。

9月にアメリカのFRBが金利引き下げをするかは解りませんが、アメリカにはアメリカの事情があるでしょうから、マネーゲームはアメリカに任せて、日本のやるべきことは、民間の消費需要を健全に拡大させて、日本経済自体の成長経済への回復に注力することでしょう。

という事で、もう一度、消費需要の源泉である賃金の動きについて、ここ数年の数字を見てみました。

      資料:厚労省資料、春闘、毎勤統計

春闘賃上げ率は、企業のそれぞれの従業員の所定内賃金が4月にどれだけ上がるかという数字の平均ですから定期昇給も入っています。平均賃金は、賃金の高い人が定年で辞めて、賃金の安い新入社員が入ってきた結果の平均賃金水準ですから定期昇給分は通常相殺されてしまいます。

という事で春闘賃上げ率に比べると、平均賃金(毎月勤労統計の名目賃金指数)の上昇率は低くなります。もちろん消費需要の水準に影響するのは平均賃金の方ですから、民間消費水準との関係では此方が重要です。

上図で見ますと、所定内賃金の上昇は、春闘賃上げ率の半分程度です、ただし、所定内賃金のほかに、残業代も在りますし、ボーナスもあります。

今年の6月に25か月続いた実質賃金の低下がストップしたのは、ボーナスが大幅に伸びたからでした。

もう一つ、重要な資料があります。家計調査です。このところ家計調査の2人以上勤労者世帯の家計収入はずっと毎月勤労統計の賃金指数の上昇率を下回っていましたが、この5月、6月と大幅上昇に転換しているのです。

6月で見ますと、対前年比で、世帯全体の実収入6.5%世帯主定期収入6.2%、配偶者収入9.8%といった増加です。(家計調査は小・零細企業従業員も含みます)

毎月勤労統計と家計調査の平均賃金上昇率の逆転の理由は不明ですが、賃金の分布構造などに何か変化があるような気もしないでもありません。

上のグラフに見るように春闘賃上げ率とともに平均賃金が高まり、それが家計消費に反映されれば(これはまだ確認されませんが)日本経済の姿も多少は変わって来るのではないかと考えられます。

こうした動きは円レートや日経平均といったマネーの世界とは違う実体経済(本当の経済)の動きです。実体経済が確りすれば、マネー経済はいずれそれにサヤ寄せするのです。

日本の実体経済の変化は上のグラフの上昇率が順調に伸びていくことから始まるのではないかと思っています。


「のうぜんかずら」と「甘草」妍を競う

2024年08月08日 14時08分59秒 | 環境

我が家の狭い庭の東の端には毎年ご紹介する「おおむらさき」がありますが、その隣に「のうぜんかずら」があります。幹は剪定できる範囲のところで止めて、毎年そこから何本もの花枝が出て、たれ下がり、左右交互に蕾がついて上から順に花が開き、下の方の花が咲くころに、花が落ちるのも上から順で、最後は一番下の花が2、3輪頑張っているのも健気です。

晴天で暑いとよく咲くのですが、雨が続くと蕾はポロポロと落ちてしまうのが残念です。

今年は初夏の暑い日に花枝がぐんぐん伸びて楽しみにしていたところ、豪雨型梅雨で殆んど蕾が落ちてしまい残念な年と思っていました。

ところが7月下旬から晴天と酷暑で残った先端近くの蕾が元気になり開き始めて、これはよかったと思った途端、三多摩にも集中豪雨で蕾はほぼ壊滅状態になりました。

今年はこれで終わりか、伸びた枝もそろそろ伐ろうかと思っていました。ところがそう思って見ますと最後の2,3輪が頑張っている枝があります。そのうえ、そのあたりが少しにぎやかになっているのです。

歳のせいで眼も悪くなっているので、老眼鏡を外し、カーテンを開けてよく見ますと、のうぜんかずらの花と同じような色の花が咲いています。

甘草が咲きだしたのか。こんな所まで甘草の根が伸びて来たのかとびっくりしました。

この辺りは元々蛍の上陸地で、石で囲って藪にしてあります。季節によって、ばいも、しらゆきげし、つりがねずいせん、はなにらなどが毎年陣取り合戦をしているところですが、甘草は、毎年オオムラサキの根元、雨水タンクの塀際に咲いていたので、あまり元気のなかった甘草がここまで出て来たとは気づいていませんでした。

のうぜんかずらの花と甘草の花は黄・橙・に赤みもかかるというところで、花の形は違っても、老眼鏡をかけたまま見れば、みんなだいだいいろの塊にみえてしまいます。

よく見ればのうぜんかずらは平たい花弁、甘草はスカシユリのような細長い花弁、せっかく一緒に咲いているので、しっかり 見たよと言えるように、接写もしてみました。

二つの原爆忌に挟まれた日ですが、偶々庭に咲く花をのんびりと見られるのも、日本が平和な国になったからと、つくずく思うところです。


実質賃金連続低下25か月でストップ

2024年08月07日 14時49分51秒 | 経済

昨日、厚生労働省から2024年6月の毎月勤労統計が発表になりました。

マスコミを賑わせた25か月連続の、実質賃金の対前年度月比低下のあと、26か月はあるかという事でしたが、26か月には成らなかったという事になりました。

今年の春闘賃上げ率は5%を超え33年ぶりの大幅賃上げといわれました。その成果は如何にと注目を集めたところですが、現実は今後に問題を残しながら、一応、2024年5月をもって連続低下の記録は終わり、26か月にはならなかったという事に

なりました。

数字を見ますと

毎月勤労統計の2024年6月の賃金指数の対前年同月上昇率は

・賃金給与総額      4.5%

・決まって支給する給与  2.3%

・特別に支払われた給与  7.6%

という事になっています。

消費者物価指数は、「総合」が2.8%の上昇、「持ち家の帰属家賃と除く総合」(注)が3.3%の上昇です。 

このブログでは、7月12日の「実質賃金の上昇に必要な条件は?」で見てきましたように実質賃金は「現金給与総額」を取り、消費者物価指数は「総合」を使っていますので、それに従えば

・4.5%-2.8=1.7%(正確には1.045/1.033≒1.0165)という事で実質賃金は1.7%上昇したことになります。

一方、決まって支給する給与(所定内賃金+残業代等)で見ますと

・2.3%-2.8%=-0.5%(同1.023/1.028≒0.995)という事で0.5%のマイナスという事になります。

結局、6月はボーナス月で、ボーナスが7.6%も伸びたのでボーナスの入っている現金給与総額で見ればマイナス脱出という事です。

ボーナスは年2回です。これまでも6月と12月はボーナス月でしたがボーナスの伸びがそれほど大きくなかったので総額人件費で見てもマイナスでしたが今回はプラスになったという事です。これで実質賃金低下の連続記録は25か月で終わりました。

それでは「良かったですね」と言えるかといいますと、そうはいかないだろうという可能性が大きいのです。6月もボーナスを別にすれば0.5%のマイナスでした。7月からはボーナスがない月になります。それでもプラス維持のためには、賃金が上がるか消費者物価の上昇率が下がるかですが、その可能性はそれほど大きくありません。

結論を言えば、やはりもう少し(2~3%)高い賃上げが必要だったということのようです。(連合と経団連で相談してほしいですねぇ・・・)

 

(注)「持ち家の帰属家賃と除く総合」:消費者物価指数は、自宅に住んでいる人もその家を借りていて家賃を払っていると仮定した場合の家賃も含んで計算しています。「持ち家の帰属家賃と除く総合」では、実生活では払っていないその仮定の分は除いた方が現実の支出と動きを反映するという考え方で計算したものです。

こちらを使って実質賃金の計算をしているケースもありますが、結果はもう少し厳しくなります。


2024年6月平均消費性向の低下をどう見る

2024年08月06日 13時38分29秒 | 経済

今日は広島の原爆忌です。平和公園の石に刻まれた「過ちは繰り返しませんから」という約束はまだ果たされていません。

2024年6月分の家計調査が今日発表になりました。2人以上の勤労者世帯の平均消費性向を見ました。昨年6月の41.1%から、36.9%へと4.2ポイントの大幅低下です。

このブログでは、日本経済の不振の最大の原因は、個人消費の不振にあるのだから、まずは消費性向を上げて消費を増やし景気を良くすれば、賃上げも活気づいて個人消費の活発化による景気の回復に役立つという視点から、消費性性向を上げようと言ってきました。

家計調査の平均消費性向を見ますと2022年は割合高い月が続き、2022年の経済成長率は実質1.5%でまずますでしたが23年、24年と1%を切るか切らないかといった事になりそうです。

一方、昨年からは賃金を上げなければ消費は増えないという意見が強くなって今年の賃上げは33年ぶりの高さになりました。

これで消費が増えるだろうと見ていましたが、賃金が上がった今年の5月、6月と今度は平均消費性向が下がっているのです。

平均消費性向の推移(二人以上勤労者世帯、%)

                 資料:総務省「家計調査」  

折角賃金が増えても、消費性向が低くなったのでは消費は増えません。一体どうなっているのだろうかというのが当面する問題です。

二人以上全世帯の消費支出の動向を実質対前年同月増加率で見ますと2022は前年より3%前後高い月が多く23年は前年より2%ほど低い月が多く、今年に入ってゼロ近傍に浮上です。これではあまり景気押上げ要因にはなりません。

しかしその中の勤労者世帯だけを見ますと5月、6月と名目では6%前後、消費者物価上昇を除いた実収入で5月3.0%、6月3.1%の上昇です。

6月の家計収入の中身を見ますと名目では世帯主収入はボーナスの増加もあり7%増、配偶者の収入が9.8%増で、平均消費性向の計算の分母になる可処分所得は名目で12.1%、実質で8.5%も増えています。 

所が消費支出の伸びは名目でわずか0.6%(実質では2.6%のマイナス)です。その結果の平均消費性向の低下なのです。

今年の春闘の賃上げ率が5%を超えたといっても平均賃金の上昇は2~3%でしょう。個人の賃金と、家計の収入は違いますが、勤労者世帯で見る限り、5月以降の収入の増加は顕著です、その割に、消費支出を増やしていないというのは、この世帯収入の増加が今後も安定して続くか見通しが難しいという事でしょうか。

ならば、企業に要請されるのは、従業員に雇用の安定、賃金上昇の継続といった安心感を持たせることでしょう。労働組合のナショナルセンターである連合の役割も大きいでしょう。

折しも株の暴落が起きましたが、日本の実体経済は、労使が頑張ればこれからはよくなるという環境の中にあるといえるでしょう。

家計収入の安定した増加が続き、家計が安心して消費に向かうという状態で、平均消費性向が上昇してきたとき、日本経済は長く続いた消費不況から本当に脱出という事になるのでしょう。


<月曜随想>自然と不自然:人間の感覚

2024年08月05日 15時31分15秒 | 文化社会

このブログでは「自然」ということばをよく使うと思っています。

特に意識して使うというわけではありませんが、物事をスムーズに描写したいと思うと自然に「自然」という言葉を使ってしまうようです。

そんなことで、なぜそういう事になるのか考えてみようと思った次第です。

生れは山梨県甲府市で、昔から山紫水明を謳う土地です。小学校6年の7月6日夜甲府市は空襲で焼け野原になりました。子供心にも、一夜の空襲で我が家も含め一面焼け野原になった光景は、自然とは真反対の不自然極まりない光景でした。

甲府盆地は四方を山に囲まれ東の笛吹川、西の釜無川、県南で合流して富士川と、何処も山紫水明の地です。

甲府盆地と言わず、日本はどこに行っても殆んどが山紫水明の地ですから、そうした中で日本人は緑と水と人間の生命につい繊細な感覚を身につけてきたのかもしれません。

日本は今でも国土の7割が森林という事で、フィンランドとともに稀有な森林比率を持つ国ですが、自然環境に強い影響を受ける人間にとって、自然との関わりを大事にする本能的な性向を持つ日本人の心の原点かもしれません。

ところで日本人はもちろん、30万年ほど前にアフリカで生まれ、その一部が10万年ほど前にアフリカを出て世界に広まった現生人類は、基本的に46億年の地球の進化の歴史の結果として,現在地球上に存在しているという事でしょう。

多分宇宙の塵から始まり鉱物の生成、水を得、無生物の世界に有機物が発生し植物が生まれ葉緑素の作る酸素で呼吸する原生動物が生まれ、それが進化して現生人類になったのでしょう。

その進化の過程では、多様な突然変異が起き、その大部分は失敗で、ごく一部が種の保存に成功して、出来上がってきているのが現在の生態系なのです。

現生人類はその進化、成功した突然変異の累積の結果として現時点での進化の頂点にいるのです。

エリッヒ・ヤンツは「自己組織化する宇宙」と言いましたが、宇宙が意識を持つかどうかは別として、地球の生態系の進化も、存続に成功した突然変異の結果と考えれば、その頂点にいる現生人類の体内の組織のあらゆる部分にそのメカニズムは組み込まれているはずです。

そしてそれこそが、人間そのもの、そして地球上の生態系の織りなしている「自然」なのでしょう。

つまり今生きている自然は、そのまま生態系の存続、種の保存のための在り方そのものなのでしょう。その頂点にある人間は高度の思考能力まで持つに至りました。

ならば、脳を含め人間の体の組織が「自然」だと受け取る感覚こそが、人間をここまで進化させた原因の集積で、それが、人間に「自然だ」と判断させるという事でではないでしょうか。

逆に、人間に「自然でない(不自然)」と感じさせるものは、人間の進化の過程にそぐわないもの(事)と判断されたという事になるのでしょう。

難しいことがあったら、素直な自然の感覚に従って「自然か不自然か」判断すれば、多分間違いは少なくなるのではないかと思うところです。


五輪と戦争の並行状態、人類の叡智の退化

2024年08月04日 14時50分53秒 | 文化社会

ウクライナとパレスチナという地球上の2か所で悲惨な戦争が続く中、ローマ・オリンピックは世界中の熱狂を盛り上げながら、開幕し、進展しています。

マスコミも、オリンピックについての報道が圧倒的に多くなり、この間は戦争のニュースめっきり少なくなっています。

オリンピックの間は停戦しようという提案はありました。これは、かつて古代オリンピックの間は停戦をしたという古代ギリシャ人の知恵にちなんだものです。

しかしその提案は殆んど顧みられることもなく戦争は継続されています。人間の叡智は退化しているのでしょうか。

報道の量が少なくなったとはいえ、現地では何も変わらず悲惨な状態が続いっているのでしょう。

そして戦争に直接拘わらない国の人々は、やはり、オリンピックの方に熱狂するのです。(私自身も含めてです)

勿論それを批判することはできないでしょう。人間は、悲惨な戦争は嫌いなのです。勝っても負けても、更にその上を目指すという健全なスポーツの祭典の方が、人間性に合致しているからです。

人間は向上志向を持っています。その発現の形態として、「競い」と「争い」があるのでしょう。そして人間は本来「競い」の方を善きものとし、「争い」については否定的なのです。 

しかし、時に人間の得た知識、置かれた環境条件が人間の本来の意識を歪めるこがあり、その時、「競い」に対し「争い」を優先するといった人間性の本来を逸脱する意識や行動が生れるのでしょう。

前回は「8月上旬は憂鬱な日々」と書きましたが、今年の場合は例年の憂鬱に加えて、人間の殺戮と環境や文化の破壊を「人間の手」で行うという戦争が、地球上に現存し、オリンピックと同時に日夜継続していることが、(私も含め)多くの人の心を憂鬱つにしているのではないでしょうか。


8月の前半は毎年憂鬱な日が続く

2024年08月02日 14時38分59秒 | 文化社会

8月の前半は毎年憂鬱な日が続く

日銀は十分な配慮をもって、実体経済にもマネーの世界にも、余計なトラブルを起こさずに、日本の金融政策の変更に方向転換しようと努力をしたのでしょう。

しかしその思いは果たせずに、マネーの世界は先の見えないような混乱に陥っているようです。

マネーゲーマーたちのそれぞれの思惑が成功するか失敗するかは、また、それぞれでしょう。

日本にとっての本当の問題は、日銀が新しい方向を打ち出した政策を生かし低迷を続けてきた日本の実体経済を健全な方向に進むように政府、金融業界はもちろん、産業界労使も真剣に、協力して取り組むことでしょう。

ところで、今日「8月前半は憂鬱な日々」とかきましたが、これは、株式市場の暴落とは関係ありません。

本来8月と言えば夏休み。 行楽、お盆の帰郷といった、暑いけれども楽しみも満載といった月なのです。

しかし、日本では、8月といえば、6日は広島、9日は長崎に原爆が投下された日なのです。 世界史に残る惨劇を経験した日本、日本人にとってはこの現実は心の傷としていつまでも残るのです。

憂鬱というのはその心の傷のことだけではありません。 人類はその悲惨な経験を持ちながら、相変わらず戦争を続け、核弾頭の蓄積をやめず、核の使用も辞せずと相手国を威圧するといた行動を続けていることです。

そして驚くべきは、あの戦争の惨禍を経験し、世界唯一の被爆国である日本の政府が、平和憲法を掲げながら、集団的自衛権の名のもとに戦争をする国に向けて動き出し、核禁止条約に不参加の態度をとり続けていることです。

過去の悲惨な経験から何も学んでいないような政府を持つことは、国民にとっては最大の問題なのです。

こうしたことの進展はこの10年ほどで大きく変化しました。 かつては田中角栄総理が「戦争を知らない世代が政治の中枢になったときは危うい」と指摘していますが、今はまさにその世代なのです。

このブログでも、かつて「人の噂も75日、戦争の記憶も75年」などと冗談めかして書きましたが、今やそれが現実になっているのです。

表題にも書きました「8月前半」というのは1945年8月15日、日本は、それまでの戦争の時代を卒業、平和国家への時代に入ったからです。

「終戦の詔勅」で敗戦を知った我々多くの国民は、それから一転して平和の時代に生きることになり、その大きな落差、人間の生と死を分ける落差を知り、平和憲法を是としたのです。

戦争を知らない世代とはこの落差の経験を持たない世代という事でしょう。 この落差を知れば、通常の人間は、本能的に平和を求めるでしょう。

今、ウクライナで、パレスチナで戦争が行われています。 悲惨な戦争の状況は映像経験であっても正常な心の持ち主には、実体験と同じほどに戦争の現実を伝えていると思います。

しかし一部には、それが伝わらない人がいるようです。 おそらく、人類社会に無関心な人、さらには特定の(多分歪んだ)意識、信条を持っている人などでしょう。

今、日本を戦争をする国に引っ張って行こうといている人たちに、出来得れば、たとえ戦争を経験しなくても、多様な情報経験から学び、優れた感受性や洞察力で、戦争より平和という人類の願いを体感してほしいと願っています。 夏休みを存分に楽しむためにも。


決断の日銀、逡巡のFRB、日本の選択は?

2024年08月01日 13時46分51秒 | 経済

このところ日米の金利問題ばかり書いていますが、日米として、いずれやらなければならに問題についての今後を考えれば、整理しておかなければならない事だと考えているからです。   

いずれ踏み切らなければならない異次元緩和からの明確な脱出に日銀は舵を切りました。

FRBは、ヨーロッパの動きを横目に政策金利の引き下げには動きませんでした。しかしパウエル議長の発言では、9月の利下げを示唆することは忘れず、アメリカのマネーマーケットでは、まずは株価上昇、そして日米金利差の縮小を予測する円高方向への動きにつながったようです。

世界のマネー・ゲーマーたちはこれをビジネスチャンスに生かそうと手ぐすね引いて待っていたのでしょう。

その中で日銀は、今回、思い切って「まだ」を「もう」にしたようです。もちろんすでに0.1%を許容していた短期金利を0.25%に引き上げたという、いわば瀬踏み的なもので,実体経済に格別に大きな対応を強いるようなものではありません。

植田総裁の記者会見でも、そのあたりの配慮は十分に読み取れるところでしょう。それでも結果は円レート149円台、日経平均は今朝から1000円を越える大巾下げです。

マネーマーケットは、その習性から値幅の動きを大きくしビジネスチャンスの拡大を狙うのですが、それに引き換え、実体経済の動きは、これからの方向感覚が見え、新たな動きの芽が出始めるかどうかにかかっています。

日本では、これまで円安が進んで消費者物価が上がり、実質賃金の低下が続くと心配されていました。149円台という円高がどこで落ち着くかにもよりますが、その円高で消費者物価の上昇が縮小、実質賃金の下落が止まるかどうか、それが消費需要の拡大、経済成長の加速するという連鎖が望まれるところです。

植田総裁は、日銀の持つ多様な資料の分析では、その方向に進むことが見えてきているといった説明をされましたが、多分まだ時間がかかるでしょう。

その前に政府のエネルギー関連の補助金で人為的に引き下げられる公共料金の消費者物価指数引下げへの反映(一時的なもの)が先に現れてきそうです。

量的緩和の是正、日銀のB/S調整、国債買い入れの減額も、2年先に半減でしょうか、実体経済に過度な影響を与えないように配慮する姿勢は十分理解できるところです。

その意味で、方向は明確に、改革は穏やかにという金融政策に望まれるところへの慎重な配慮にはさすがと思われるものがあります。

今日の株価暴落をもたらした円高にしても、「日銀短観」の調査企業の平均では年度下半期の円レートは141円と予測され、現実に今回の円安が始まる前の円レートは109円だったと記憶します。マネーゲームに翻弄されない経営が必要です。

最後の一つ言いたいのは、金融の役割は重要ですが、金融に出来ない事もあるという事です。生産活動そのものもそうですが、賃金決定もそうなのです。

金融政策で賃上げし易い環境を作ることはできますが、賃上げをすることは出来ません。

日銀が金融の正常化に踏み出した今、賃金決定の正常化に向かって、「日本の労使」が動きだすことが、日本経済の残された課題になってきたようです。