tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

「日銀短観」年度末にかけ景気停滞を予測

2024年12月13日 20時10分23秒 | 経営

今日、日本銀行から「全国企業短期経済観測」の12月現在の状況が発表になりました。

国内情勢も、国際情勢も多事多端の中ですが、企業経営の方は、ここまで何とか無難にという所でしょう。

ただし内外情勢位の不安定という事もあるのでしょうか企業は、大企業、中堅企業、中小企業ともに、製造業も非製造業もこの秋がピークで年度末にかけて不安があるといった見方のようです。

これには、為替レートの先行きも関係してくるでしょう。アメリカ、日本の金融政策の動きも含めてある程度の円高の予想が一般的のようですが、短観での調査企業の円レートの判断は2024年度の上期、下期ともに144円台ですから、現在の151円というのが一時的な円安という見方のようです。

という事は、現状の為替レートでは多少の余裕があるという事でしょうか。輸入関連産業の方は、マイナスの影響がある事になりますが、それは後述の非製造業の方の落ち込み幅が大きいという事につながるようです。

調査の総括に当たる製造業、非製造業の規模別の業況判断について一覧表にしてみました。

数字はDIで、{良い」企業の%から「悪い」企業の%を引いたもの(「どちらとも言えない」は除く)で、良い企業の方が多ければプラスです。

景気状況を代表するとも言われる製造業大企業の業況判断を見ますと、9月期から今回の12月期が13から14と上昇ですが、ここがピークで年度末は13と前期並みに下降気味という見方のようです。

このブログでは9月期の時は「企業は強気」と書きましたが、日銀の政策金利引き上げが、遅れることを読み込んでいたのでしょうか。

業種別には、木材・木製品や鉄鋼が12月調査でマイナスになっていますが、非鉄金属、機械関係は汎用機械の29を始め総じて好調という状況です。

ただし、年度末にかけては大方の予想は減速で、自動車の今期の8から次期は11への改善が目立つ程度です。

 非製造業は全体的に、春から夏への絶好調が緩やかに減速に入って来ています

大企業は9月期の34から12月期33、年度末には28と減速予想ですが、中堅中小は、より早い減速を予想しています。

業種別では、値上げのピークを過ぎた小売りが、9月期の28から今12月期は13低下ですが、年度末にかけ建てては18への改善を予想といった動きが目だち、超好調だった宿泊飲食サービスが9月期から順に52-40-37とインバウンドの盛況にもかかわらず減速予想になっています。

来年に入ってメリカではトランプ大統領の就任があり、あのお方の行動には予想外のことが多いので、企業も予想困難という条件も考慮の要がありそうです。

収益予想や設備投資にも共通の様相が見られますが、人手不足につては、深刻な状況が継続と見ています。


「カネのかかる政治」をやめよう

2024年12月12日 14時35分11秒 | 政治

政治とは一体何でしょうか。解りやすく言えば、国や地方自治体が、その国民や住民にとってより良いものになるように考え、計画し、実行して、国民や住民の生活や文化の向上を実現する事でしょう。

政治は、企業経営とよく似ています。企業経営はより大きい利益を上げるための活動といった考え方もありましたが、今はCSR=「企業の社会的責任」という意識が一般的になり、利益を追求するだけのものではないと考えられています。

日本ではもともと、多くの企業の「社是・社訓」にあるように社会に、企業は貢献するという意識が明確で、近江商人は、売手、買手、世間の三方の満足、渋沢栄一は『論語と算盤』など、社会全体の為という考え方が一般的でした。

こうなると、政治も、企業経営も基本的には共通の考え方に立つという事になります。

現実の場でもそれが実証されているようで、会社の業績は経営者の資質・能力に大きく依存するというのは世の常識でしょう。

これを日本の政治に当てはめてみれば、前回指摘しましたように、1970年代までの日本国の経営は良かったが、その後の経営は失敗続きといった実態が見えてきます。

そうした中で、近年になって、常識のように言われるのが「政治にはカネがかかる」という言葉です。しかし、これは本当に常識でしょうか。

確かに、日本国の経営、地方自治体の経営にはカネが掛かります。しかし、そのカネはすべて税金やと社会保険料という形で法的に国民の負担として確保されているのです。

そしてその負担は,国民に迷惑を掛けないようにと、国家予算にしても、地方自治体の予算にしても、なるべく抑制し節約すべしというのが「常識」なのです。

では「政治にはカネがかかる」という常識は、何なのでしょうか。ここでいう「政治」は政治本来の活動ではありません。政治家のグループである政党の運営費なのです。

勿論、政党にもその運営のための経費は必要です。国も国民もそれは認め、国家予算の中から政党交付金を支出しています。

本来であれば、サラリーマンが給与の範囲で暮らすように、その範囲でやりくりすべきでしょう。しかし、それでは足りないとい所から「政治にはカネがかかる」という言葉が作られたようです。

確かに、選挙民に「わが党の方針や活動を知ってほしい」と 思えば経費は必要でしょう。ですから、それに対しては、個人献金が認められているのです。

但し、個人献金は、選挙の一票と同じように、個人が、その政党の活動を評価してのことでしょう。

ですから当然、政党は自分たちの働き、その成果の周知に努め、議会における活動などを選挙民に知らせ、それが選挙民と政治家の活動との相互理解の促進に役立つというメリットもあるのです。

政治献金は、政党や政治家の国民・住民への貢献を周知し、その評価が、個人献金に繋がるという所に意味があるのです。

草の根民主主義という民主主義の本来の形から、民主主義のあるべき姿を考えれば「政治にはカネがかかる」などと言う言葉は生まれてこないはずです。

この意味不明の言葉は、民主主義を金の力で汚そうという邪な欲望が「言葉」として現れた結果と理解すべきでしょう。


親の代より豊かになれない国の将来は?

2024年12月11日 15時31分10秒 | 文化社会

もうかなり長いことになりますが、若い世代から「我われは親の代より豊かになれそうにない」という言葉を聞くようになりました。

こんな言葉を聞くたびに、「そんな事はないよ、真面目に働いていれば時代は進んでいるのだから」などと励ましているのですが、なかなか「そうですね、もう少し頑張ってみましょう」などという返事は返って来ません。

先ず言われるのは「だって、昔は毎年給料が上がったと聞くけど、今は給料も上がらないし、大体、年金が今の水準よりずっと下がりそうですよね」などと言われると「その辺は解らないけど、だんだん良くなるんじゃ・・・」あとはムニャムニャです。

情けないけれど、33年ぶりの大幅賃上げでも実質賃金は上がらない、年金はマクロ経済スライドで経済は成長しないから上がらないというのが現実です。

「お前らが頑張って働かないからだ」とハッパを掛ければいいのかもしれませんが、それも無責任でしょう。

どうしてこんな事になったのかと振り返れば、やっぱり、日本という国の経営を担当する経営者が、段々駄目になったという事に落ち着きそうです。

その経営者の中核は「自由民主党」でしょう。その自由民主党は、戦後から1970年代ぐらい迄は随分と確りやって来ていたのです。

歴史を辿ってみれば、1980年代あたりから、日本を経営する政治家のグループが「唐様で書く三代目」になって来たのではないでしょうか。

廃墟からの復興に熱意を燃やす世代から、世界第2の経済大国になり、対米外交が難しくなる頃に、それまでの経済成長の実績に胡坐とはいかないまでも、気楽に腰掛け、アメリカに追随することが成功の道といった自律・自立の覇気が薄れる雰囲気が出て来たように感じられるところです。

アメリカにしてみれば日本の急成長、後には中国の成長ですが、後発国の追い上げは大変気になるところです。

その国が、友好国で、追随に甘んじるのであればそれなりの便宜も図りつつ飼いならす、対抗国であれば徹底して抑え込むというのが自然の感覚でしょう。

これは、覇権国としてはごく自然な行動で、特に、アメリカのように、世界の危機を救ってきたといった自負心と栄光の過去を持てば、その維持は国民感情として定着することになるのでしょう。

そして日本は、というより自民党は政権党として友好国の立場を選び、それによって政権党としての永続を方針とすることになったのでしょう。

そのための決定的ともいえる主張点は「核の傘」という事だったのでしょう。

世界唯一の被爆国でありながら核禁条約に参加してないという奇妙な現実もそこから来ているということになるのでしょう。

一国が国民の意を戴して、自らの国民の選ぶ道を歩むという姿勢が明確にならない限り、国民の望む経済成長、子の代は親の代より確実に豊かになるといった、その国独自の行動は採れないのではないでしょうか。

自民党政権の政策の言葉は立派に並んでも、その上には、大きな核の傘かガラスの天井が存在しているようです。


経団連、富裕層への課税強化を提言

2024年12月10日 11時42分37秒 | 文化社会

経団連の十倉会長は、賃金問題についても積極的な発言をされ、このブログでも注目してきましたが、来年5月任期を終えるという事で、総纏めという事でしょうか「2040年を見据えた『公正・公平で持続可能な経済・社会』の実現に向けた提言」を経団連として発表しています。

日本に、改めて分厚い中間層を創り出すという視点で<Future Design 2040 「成長と分配の好循環」>と題して、税・社会保障の問題から環境・エネルギー問題、地域経済につては広域行政の問題などなど、広範に論じています。

その中でも特に注目したのは「全世代型社会保障」という視点で、基本的な考え方として、社会保障負担が重すぎる現状から考えて、社会保障負担を減らし、その分を税金でカバーするという、大きな観点があるようだという事です。

今の臨時国会で問題なっている103万円、106万円、130万円といった「壁」の問題も社会保障問題と大きく関係しています。

社会保障負担から税負担に負担の仕方を変えて行くという考え方は、今の日本の現状から考えれば、やはり検討すべき大事な問題だという感じがするわけです。

経団連の提言には消費税(=付加価値税)の視点も入っています。ヨーロッパ諸国の方式でいえば、社会保障の財源は付加価値税が中心という考え方が基本になるのかもしれません。

勿論、税・社会保険料の合計である「国民負担率」は、高齢化が進み、加えて少子化という、具体的な数字でいえば「合計特殊出生率」の低下という条件の下では、上がらざるを得ないのは当然で、ヨーロッパ諸国も特に少子化では長く苦労している国も多いわけです。 

勿論そのせいで、ヨーロッパ諸国では付加価値税が高いのですが、同時に、所得税の最高税率も高いのです。

例えばスウェーデンの個人所得税の最高税率は57%です。日本と比べてみれば良く解りますが日本は現在45%です。

こうした諸点にかんがみ、経団連は、所得税の累進税率の引き上げ、55%程度を提言しています。そして更にそれに加え、資産への税負担も示唆しています。

経団連は大企業中心の企業に支えられ、役員などは殆んど大企業の経営者であることを考えれば、思い切った提言かもしれません。

考えてみれば、長期の低成長経済の中で、日本も、このところ急速に格差社会化しているようです。経団連がこの点に注目しているとすれば、日本の財界にも新しい風という所でしょうか。

嘗て、高度成長時代には、日本の個人所得税の最高税率は80%程度だったと記憶しますが、そうして分厚い中間層を作って来ていた日本の過去を見れば、日本には本来格差社会はなじまないという考え方も受け入れられるのではないかと思うところです。

いずれにしても、経団連が、富裕層負担で社会保障負担軽減という考え方を打ち出したという事は、これからの日本社会に一石を投じるのではないでしょうか。

期待して、社会の反応を見たいと思う所です。


12月8日、やっぱり忘れてはいけない日

2024年12月09日 13時23分24秒 | 文化社会

昨日は12月8日でした。8月15日と共に忘れてはいけない日です。

昭和16年(1941年)12月8日は、日本は太平洋戦争(当時は大東亜戦争)を始めた日、そして、昭和20年(1945年)8月15日は、その戦争の敗戦の日です。

この3年半ほどの戦争は、日本の歴史を決定的に変えることになりました。この戦争を契機に日本は「戦争をする国」から「戦争をしない国」になったのです。

この戦争の最終段階、アメリカが2発の原子爆弾(原爆)を広島と長崎に投下し、日本は世界で最初の原爆「被爆国」になりました。

原爆は、その人類殺傷能力の巨大さと、放射能汚染の影響から、人類絶滅の可能性を持つ所謂「最終兵器」となり、核兵器禁止の世界的活動に発展し今に至っています。

アメリカが日本に原爆を投下したことの可否については、今なお議論のあるところですが、日本はその直後に敗戦を認め、その結果として、最終的に「戦争をしない国」になることを宣言したのです。

今も、世界では戦争が続いています。戦争を終わらせようという気持ちは世界人類が持っています。しかし、戦争は、一旦始まると、やめるのは容易ではないのです。

戦争を終わらせることが容易でなければ、戦争を始めなければいいのです。その意味では戦争を始めた日は、戦争が終わった日よりも重要なのではないでしょうか。

はっきり言って、当事者としての人間が戦争を始めなければ、戦争はなくなるのです。

ならば、戦争の始まった日についての記憶、その時の意識、なぜ、戦争になってしまったのか真因を、人類は本気で研究しなければならないのではないでしょうか。

今年の8月15日前後には、戦争の惨禍を語り継ごう、それが再び戦争を繰り返さないための大事なことだという意識のキャンペーンがマスコミも巻き込み、大きな動きとして、人類社会から戦争をなくそう、日本は絶対戦争をしないようにしようという意思を表明しています。

確かのこれは大変重要なことで、人類が戦争という誤りを犯さないために、日本が再び戦争をしないために、今後も続けなければならない重要な継続的活動でしょう。

しかし、それと同時に、日本は、何故あのような無謀な戦争を始めたのか、誰が、どう考える事で始めてしまったのか、避けることが出来たのではなかったのかといった事を明確にすることは大事です。

海軍は反対だったが、陸軍が押し切ったとか、多少の情報はありますが決定的な情報は、多くの国民は知りません。

考えてみれば、今半分冗談、半分真面目で「新しい戦前」という言葉が言われます。

不戦を掲げた憲法を持ちながら、現実は、アメリカの都合で戦争に巻き込まれる可能性があるというのです。

国民の多くは誰がどう意思決定をしてそういう事になっているのか知りません。マスコミも責任者の追及はしません。

戦争を起こさないことが大事という意識は、どこまで徹底しているのでしょうか。

今年も巡ってきた12月8日に、気になっている日本の現状も含め、戦争は始めないことが大事という現実問題をあえて書いた次第です。


低い賃金上昇か、高い物価上昇か・・?

2024年12月07日 15時04分18秒 | 経済

2024年10月の実質賃金は対前年同月比0.0%という事でした。

昨日発表された総務省の「家計調査」では、二人以上勤労者世帯の実収入は、前年同月比で0.3%の上昇でした。これは、世帯主以外の世帯員の収入が寄与したからです。

この春、今春闘の賃上げ率は、政労使それぞれの集計でも33年ぶりの大幅上昇という事で、みな喜んだはずです。 

にも拘らず、賃金が消費者物価の上昇に食われてしまって1年前に比べても上がっていないというのは何故でしょうか。

この場合原因は大きく2つでしょう。1つは、賃金の上昇不足ということになるのでしょう。もう一つは物価が上がり過ぎたからということになるのでしょう。

多分、現実は、その両方が原因だ、というのが正解なのでしょうが、問題は、どちらが、あるいは、何が主因かという事になるのでしょう。

原因が解らなければ、対策・改善策も考えようがないという事で、ここではそのあたりを少し見てみたいと思います。

賃金について考えますと、6月、7月はボーナスが昨年比大幅に増えたので、実質賃金はプラスになり、25か月続いた実質賃金マイナスは終わったと言われました。しかし8、9、10、月になるとゼロ、マイナスです。12月のボーナスがどうかですが、ボーナスを入れた年度間の数字がプラスであれば、年度間では実質賃金はプラスになり、賃金総額の引き上げの効果はあったということになるのでしょう。

物価の方を考えてみますと、値上げの原因は、輸入原料の値段が上がった、それと、人件費が上がったが2大要因でしょう。もう1つ、値上げを吸収する要因として生産性の向上があります。生産性が上がった分は物価は上がりません。

たしかに輸入物価は円安で上がり気味ですし企業物価も年率3%程度上昇と強含みです。それに加えて、10月の消費者物価指数上昇の大きな原因にコメの値上がりがあります。総務省の「消費者物価指数」では10月の対前年2.3%上昇のなかの「食料」の寄与分1.01の太宗はコメの60.3%の値上がりのようです。

 

米の値上がりがなければ、この所の実質賃金はプラスになっている可能性が大きいと見てもいいのではないでしょうか。

コメの値段は勿論マーケットで決まるのですが、その背後には、政府の減反政策を背景にした、コメの生産を増やさず、結果的にコメの生産性も上げないという、今日の世界で日本のコメがもてはやされるという環境変化に反応しない鈍感な農政があることは明らかです。

さらには、ガソリンが値上がりしにように、政府が赤字国債で補助金を出すことが、燃費の悪いガソリン車が減らない原因になっていることなども含め、国の政策自体にも問題点は沢山あるようです。

国民が、物事を、広く長期的視点で見ることも、消費者物価の上昇を下げるという効果もあることに思いを致す必要もありそうです。

<追記>

総務省の10月の消費者物価指数の上昇は、総合、生鮮食品を除く総合、生鮮とエネルギーを除く総合」がともに2.3%です。

厚労省が実質賃金に算出に使うのは「持ち家の帰属家賃を除く総合」で、これは上昇率が2.6%です。現金給与総額の上昇率も2.6%ですから、実質賃金上昇率は0.0%ですが、通常使われている「総合」は2.3%ですから10月は0.3%のプラスになります。

(詳細は先月のブログ参照)


10月「平均消費性向」、前年比-3.7%

2024年12月06日 15時05分14秒 | 経済

今日、総務省統計局より2024年10月の家計調査が発表になりました。

この所,改めて、家計の節約マインドが強調されるようになっているので、心配になり、さっそく説明の最後にある2人以上勤労者世帯の平均消費性向を見ました。

悪い予感はバッチリで、下のグラフの通り、67.6%、昨年10月の71.3%に比して3.7ポイントのマイナスという大幅下げです。

                                                       資料:総務省「家計調査」

関連する数字を見ますと、世帯主収入は2.8%の増で、消費者物価の上昇をやっとカバーし、実質0.3%の上昇とぎりぎりプラスりです。配偶者の収入、他の世帯員の収入等も加えて家計の実収入(名目)としては3.7%の増加です。 

可処分所得(手取り)は、非消費支出の-0.4%があって4.6%(名目)の増加ですが、消費支出の方は-0.9%と減少、その結果が上記の平均消費性向の低下となっているわけです。

グラフでご覧のように、年初は上がり始めたかと思われた平均消費性向が5月以降はずっと前年同月比でマイナスです。

多分、家計は、賃上げムードも出て来たし、物価も安定してきたから少し消費を増やしてもいいかなとは考えずに、ボーナスが増えて少し貯金ができたが、ボーナスがない8月になったら、33年ぶりの大幅賃上げの結果もがそんなに大きいものではなく、消費者物価の上昇に食われてしまっているようだから、やっぱり節約した方がいい様だ、という判断に傾いたのではないでしょうか。

政府・日銀は物価が安定してきたと言っていますが、卵や魚介類など生鮮食品の値上がりもあり、さらには端境期で日本人の主食のコメが足りないなどと言っているうちに新米の価格が6割も上がっているのです。それでも農水省は知らん顔、これではやはり「生活防衛」が必要という事になるでしょう。

長い眼で見ても、家計は余り消費を増やす気にはならない状態が相変わらずという事のようです。ご参考までに、この2年間の家計調査の月々の消費支出(実額)の推移(実額、名目値)を2人以上世帯と、2人以上勤労者世帯について表にしました。

              資料:上に同じ     

本当にほとんど増えていないというのが、家計の消費行動という事のようです。

収入はそれなりに増えても、消費は増やさない(結果は平均消費性向の低下)というこの所の日本の家計に定着した習慣が変わらない限り、消費不振による日本経済の低成長は続くでしょう。

その原因解明も、脱出策の構想も政府には出来ていないような気がします。


「賃金引き上げ」は与野党一致のようですが

2024年12月05日 14時27分19秒 | 労働問題

今日の国会の議論を聞いていましても、「賃金を上げなければならない」、「特に中小企業の賃金引き上げが必要」といった意見については、与党の野党もみんな賛成ということのようです。

法律制度を伴う細かな点については、国会で議論する事が必要でしょうから、「103万円の壁」というだけではなくて、制度を変えて、同じ賃金でも、手取り(可処分所得=消費性向を計算する際の分母)が増えるようにするのは、具体的に法律制度をどう変えなければならないかといった問題は、国会で、きちんと詰めなければなりません。

これは数兆円というコストのかかる問題ですから、政府が身銭を切ってやるのでなければ、税制改正が必要です。

与野党もこの点では、方向は一致しているようですから、十分に熟議して、合理的な一致点を見出してほしいと思っています。

勿論、この問題は、早速問題になっている中央と地方の問題を始めとして、より本質的な問題としては、所得税制の累進税率をどうするかという問題を含むでしょう。

嘗ての日本のよう極端ともいえる累進税率に帰ることは考えられないとしても、与党の中にも、富裕税といった構想もあるようです。何が富裕かという問題は、多分大議論になるでしょうが。

こうした発想はすべて、基本的にはこの所の日本の格差社会化が、与野党共に掲げている安定した中間所得層の拡大という目標を達成困難にしているので、何とかしなければという意識に根差すものでしょう。 

思いが共通であれば、与党も、自分たちが壊してきた、この30余年の日本を何とか再建しようと謙虚に考えることもできるでしょう。

勿論、政治が直接手を下せることは、こうした法律制度の整備に限られていることも事実でしょう。

今日の国会の議論などを聞いていますと、賃上げ、特に中小企業の賃上げといった言葉が次々と出て来ます。しかし、本来、政府には賃上げ能力なく、それは労使の専権事項です。

現実には、労働サイドには立憲民主党は連合と関係がありますし、国民民主党は電力労組などとの関係があります。自民党はというと関係は経団連という企業サイドですから、政治献金も賃上げもとは言いにくいでしょうし、政治献金はやめても賃上げをとは言わないでしょうから、政権与党の権限である補助金や給付金を非課税世帯などへのバラマキを言います。これは結局、国民からの借金で将来の国民負担です。

補助金や給付金は、結果的には正常な経済活動を狂わせる弊害の方が大きいのですが、政権は、身銭を切るわけではないので、好んでとる方法です。

こうした三角関係か四角関係か解らない背景の中で、共に、中間所得層の拡大という共通目的を追求するのが今国会なのでしょう。

本当に大事なのは、労使が中間所得層の拡大をしやすくするような国際、国内の環境整備に成功するかですから、ここは自己都合はすべて二の次にして、本気で日本経済・社会の再建に集中してほしいと思っています。


企業・団体献金は「さっぱりと」廃止を

2024年12月04日 14時41分33秒 | 政治

今国会で、片付けようと言っていた政治資金問題は、片付けないで持ち越しにして、だらだらと理屈をこねあうようにしたいというのが自民党の意向のようです。

かつて自民党もさっぱりと禁止をしましょうという事で結論を出したはずです。その代わりという事で政党交付金も決めて、それでるやる覚悟を決めたのでしょう。

その時の覚悟は何処へ行ったのでしょか。今回は、いつまでも未練がましく、国民の多くが反対というのにだらだらとしています。

国民の多くが反対という事を陰でやっていて、それがばれて裏金の逆効果で与党過半数割れになったのです。

民主主義の中ですから、国民の多くの意を戴して「さっぱり」やめて、スクラッチの選挙で出直しするという気概は今の自民党にはないのでしょうか。

もともと、一度さっぱり、きっぱりやめたものを陰でこそこそつ復活させて、これが次第に巨額になって、批判が多くなったら「政治はカネがかかる」という言葉を作って、庶民には解らない政治の世界のブラックボックスの存在も「仕方がない事なのですよ」と国民に思わせて今に至っているのです。

そして、いつ、どうして、さっぱりやめたものを復活させてのですかという理由は誰も知らなくて、復活して来ていたからそれで良いと思っていたという人ばかりが自民党の国会議員という事になっているのです。 

国民にしてみれば、政治は大事ですから「カネがかかる」と言われれば「そうかな」と思うかもしれませんが、良く考えれば、日本経済の運営に必要な金は、国民負担率で計算されているように税金と社会保険料で払い済みなのです。

それ以外に必要なのは、政党の運営費でしょう。

今の日本では、政党の運営費も政党交付金という事で国家予算から出ているのです。それも自分たちが「国民の意見」を聞いて決めたものです。

そんなものは最低賃金の様なもので、それでは次の選挙に勝てないと、自分で稼ぐ必要を感じれば、実績を上げて寄付を集める。それもいいでしょう。しかし、寄付が認められるのは、選挙と同じで、国民個人々々なのです。法人に投票権はありません。民主主義は「個人」がベースなのです。

企業や団体は、必ずしもそのメンバー個人の政治的意見を代表しているとは言えないのですから当然です。「寄付より給料を」という人も多いでしょう。

そうしたすべてを承知で、企業・団体献金を復活させ、30余年の政策失敗による経済低迷(業績評価マイナス)の中でも、自党の票田涵養に成功して政権を維持してきた自民党の実態が見えてしまった結果が現状という事でしょう。

ならば、「いわゆる政治資金問題」、就中、企業・団体献金問題を、かつての自民党の決断に戻さなければ、日本の政治も、社会も経済も良くならないと自覚し、思い切って「さっぱりと」国会で決定すべき時ではないでしょうか。


政府はマイナカードで何をしたいのか

2024年12月03日 13時16分56秒 | 政治

マイナ保険証が一般化するという事で、紙の健康保険証の発行がやめなりました。

ナイナンバーカードを持っていない人もまだ2割ほどいるようです。紙の健康保険証はまだ1年程使えることになったようですが、マイナカードに健康保険証を登録してないは、早く登録してくださいという事です。

わたくしも登録しましたが結構面倒でした。この登録では、地方自治体の現場などで沢山のトラブルがあって大変だったようです。

登録はしましたが、病院に読み取り装置がないので使い道がないというのが長い間つづきした。

その間、種々の届などで市役所に何度か行きましたが、書類提出の際マイナンバーカードをお持ちくださいという事で持っていきました。市役所の受付には、マイナカードの読み取り装置はありません。届ける書類にマイナンバーは書き込んであります。

マイナンバーカードを見せてくださいというのでお見せして照合しました。代理人で行ったときは代理人の署名捺印をした書類を持っていきましたが「マイナンバーカードをお持ちですか」と言われて、持っていると言いましたら、それも見せて下さいと言われました。

「ちょっとそれ、両方お貸しください。コピーを取りますから」という事で並べてコピーしたものを見せてくれて、これで結構です、お返ししますということになりました。マイナカードを使うと随分手続きが面倒になるなと感じました。多分、お役所の方のマイナカード対応システムが出来ていないのでしょう。

病院の場合は、そんな事をやっていたら、患者の大迷惑ですから、早く端末読み取り装置を普及しなければという事だったのでしょうこの夏ごろから各診療所調剤薬局などにも装置が増えてどこも置いてあるようになりました。

所がだれも使っていないのです。受け付けでは紙の保険証と診察券を受け取って1秒か2秒でOKです。

という事であえて使わないでいましたが、暇そうなときにこれ使ってもいいですか、どうぞお使いくださいという事でカードを絵の通りに入れたら顔認証か暗所番号の選択になっているので、精度が良いと言われる顔認証にして、3つほどの質問に答えて、診察券を渡して完了でした。

「どちらがご都合がいいですか」「どちらでも結構です」でした。しかし、今に至るカードリーダーを使っている人はほとんど見かけません。

先日は調剤薬局で「これ使うと何かいいことありますか」と聞きましたら、「お客さんには特にないでしょう。うちの方は記録を見ることはできますが、あまり見ることはありません」といった後で「お持ちですか」と言うので「持ってます」と言うと「それなら入れてください。「こちらの都合ですが「利用をふやせ」と言われてますんで」という事でした。

今後は、身障者手帳も、運転免許も、マイナカードに入るそうです。読み取り装置の準備はどうなるのでしょうか。

国民には何のメリットがあるのか解らないという事は、日本の行政システムがデジタル化していないからでしょう。(いつまでカードをコピーしてFAXで送るのですか?)

行政システムの方、つまり受け皿を準備してからマイナカードをお使い下さいというのが順でしょう。

というより運転免許証も身障者手帳も、みんな政府がデータを持っているのです。マイナカードへの登録はお役所の中で完了できるのです。

そして、全部できたら「こんな国民に都合のいい社会なりますという設計図を示して、国民の賛同を得ることがデジタル省の役目でしょう。


企業経営の動き、そろそろ転機か

2024年12月02日 15時41分46秒 | 経営

昨年から今年にかけて、日本の企業経営は、結構元気でした。

コロナが終息し、地域戦争が収まらないという問題はあります。アメリカとヨーロッパが共に急激なインフレになり、アメリカ、EU共にその沈静化に、もう少し苦慮するようです。そんな中で、日本には、また違った政策が必要でしょう。

大事なことは、マネーマーケットは、金利差の変化や為替レートの動きで、いろいろな動きをするでしょう。しかし、基本は実体経済を、しっかり見続けることでしょう。

日本の場合は、賃上げの低さもあって,経済活性化がなかなか実現しないのですが、異常な円安に繰り返し振れるという事情もあって、輸出産業中心にかなりの収益への効果もあったようで、この所、好決算が続く産業も見られました。

ところで、企業経営の統計で速報的なものは、企業の景況について、企業自身の判断を集計する日本銀行の「全国企業短期経済観測」と、財務省の「法人企業統計季報」で、こちらは四半期ごとの企業の財務諸表の集計ですから、日銀の「短観」には遅れますが、早期に企業経営の実態を伝えてくれるものです。

今日発表になったのは、財務省「法人企業統計季報」の今年の7-9月期で、この所、企業経営面でも何か転機の気配がするような感じがしていますので、取り上げてみました。

上のグラフを見て頂きますと、先ず売上高については変化幅はあまり大きくありません。年に数%で一応伸びてはいますが、伸び率は徐々に減っているようです。

営業収支は1年前ごろは極めて順調で、その後も伸び率は2桁維持で、為替レートは乱高下でも一応順調で、原油価格や円レートがどの期にどう響いたかは解りませんが、7-9月期に至り、食料品や金属・機械などにもマイナスの業種が増え、「石油・石炭」の不振がさらに響き営業利益急落となってしまっています。

経常収支は通常は営業収支に沿った動きでしょうが、為替変動が大きいこの所の状況から経常利益レベルの損益に影響が厳しくなっているようです。

-8月の政策金利引き上げに絡んで、思惑の円高もありましたが、円高の影響が大きかったのでしょうか1-9月期には、製造業は全体として15%もの対前年減少という状態で、非製造業の増益で埋めて、ようやく全産業ではマイナス3.3%の減少で留まったというところです。

非製造業の場合は価格転嫁がやり易く、製造業では難しいという事があるといった気配は窺われるのですが、国内景気は製造業の影響が大きいと言われます。問題は今後の日米金利の動き、特に日銀の金融正常化への意思を考えれば、今後の円高への動きは当分止まらないのではないでしょうか。

2年ほど前までは110円程度の円レートでやって来ていた日本の製造業ですから、本気になれば、まだまだ円高抵抗力はあると考えられますが、それでもそれなりの努力を日本経済、日本製造業に強いるでしょう。

トランプのアメリカがいかなる政策をとるのかは解りませんが、多分日本が得するような政策は取らないでしょうから、やっぱり日本自身が頑張るよしないかなと思うところです。