明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(282)すべては一人の歩みから(えりあさんの初パレードの感想)

2011年10月04日 16時00分00秒 | 明日に向けて(251)~(300)
守田です。(20111004 16:00)

ブログのコメントを通じて知り合った、「えりあ」さんのブログ「えりあ城」に
彼女が初めて脱原発集会&パレードに赴いた感想が載っていて、読んでいて、
なんだかとてもいいなと思い、転載させていただくことにしました。彼女のブロ
グには、たくさんの写真も載っていて、もっと雰囲気が伝わってきますが、あえ
てここでは文字だけで読んで、彼女の体験を追体験していただけるといいなと
思います。

僕が初めてデモにいったのは、もう30年以上も前のこと。でもそのときの様子は
今でもよく覚えています。なにせ見るもの、聞くものすべて珍しかった。それに
歩いていて、何とも言えない解放感があった。今でもきっと同じなんだろうなと
思います。

311から今日まで、もう何回ものデモ・ウォーク・パレードがありましたが、その
たびに、初めて参加したという方と会いました。そのたびに僕は、原発事故という
重い、息苦しい、深刻な事故の中にありながらも、確実に新しい可能性が生まれつ
つあるなあと感じてきました。そうです。すべては私たち一人、一人の、小さな歩み
から始まっていくのです。それが大きくなって、世の中の向かうところが変わって
いく。そう思います。

その意味で、えりあさんの初めてのパレード体験を、これまで何度も歩いてきた人、
最近、初めて歩いた人、次にデビューしようとしている人、そしてまだ迷って
いる人、歩くのはちょっとと思っている人、などなど、みなさんでシェアしたいなと
思います。

以下、どうぞお読みください。

******************************

6万人の脱原発集会&パレードに参加したよ。
http://ladyeria.seesaa.net/article/226874190.html

デモって今まで参加したことないから、どうなんだろ?って思ってた。
原発は反対って、福島の事故をみて、強烈に思って、毎日情報集めて、
本読んで、ブログやツイッターでは最近その事ばかりの私でしたが、
デモはちょっと苦手と思ってたんだ。
まず、集団が苦手だし、デモの様子とかをみると、反原発っていっても
いろんな考えの人がいるし、逮捕されたらやだし・・・とか。

でも、ネイティブアメリカンの人がデモをする意味って
歩くことは祈りで、瞑想で、学びだって、知って
そうだよな、と腑におちた。
歩く事も走ることも、踊ることも歌うことも、一緒だよなって。

周りがどうでも、自分は自分の表現として歩けばいいよな、
だいたい、原発村が巨大なんだから、大勢でのアピール大事だよな、
とやる気になる・・・。

で、行きましたよ。


当日になって、最近知り合いになったギタリストの友人に一緒にいこーって。
彼のブログ、原発関連多いです。いろいろデモに行ったり、署名活動も
されてるようで、彼の言葉で語られる言葉は共感もてます。デモの様子も
UPされてるのでみてね!

安部玲さんのブログ⇒http://ameblo.jp/aberei/


千駄ヶ谷の駅に着いた。めちゃすごい人・・・。でも、なんか嬉しい。
ただの人ごみではなく、同志だからだ。
改札を出ると、沢山ののぼりが・・・あがるわ。


で、ほどなくして、友人と落ち合い、集会場へと向かったのですが、人が
溢れていて、あまりの暑さに皆でちょっと苦しくなってきて、ひとまず休憩。
あとから、you tube で演説は聞きました。(笑)
熱気と歓声は聞こえたけど、演説ほとんど聞こえなかった~

演説皆さん、素晴らしいね~きいてね。
http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/1231

またお友達登場。お手製、脱原発ユタンポ。(ウォッシュボード?)


初めて会った人ばかりだけど、みんなユニークできさくな人達!
出会えてうれしーわー


パレードがはじまったよ。先頭は福島から着た人達や、東京に避難してる福島
出身の方々。
白いのぼりが光ってました。

その後ろに我々続く・・・
「福島を返せ~」
「日常を返せ~」
「福島の子供に笑顔を~」
「自主避難にも補償を~」等のコールが。


小さな子もがんばってたよ。


「原発はんたーい」
「海・川・山を守ろう」
「子供たちを守ろう」

声にしながら、練り歩いたよ。3~4キロかな。
途中、歩道や横断歩道の上からも応援してくれる人もいたり。
拍手や声援が暖かい。


私はこの、ドイツの脱原発パレードに使われていた旗を振っていたんだ。
海外メディアに特にアピールしたら、手を振ってくれてたよ。

デモに参加して、よかった。
デモ常連さんから聞くと、かなり平和なデモだったみたい。
逮捕者も聞いてないし・・・。
デモは祈りだ、その意味が分かったよ。
皆で練り歩くこと、口に出すこと、表現すること、
人と繋がること、
歴史のうねりを感じる事。

普段なかなか大声では言えない
原発反対~っていうのはすっきりするね。
(まだまだ、無関心なひとが多いよね・・・・)

原発のない社会を望みます。
一つの事故で、どれだけの人が故郷を奪われ、
どれだけの自然が汚れただろう。
そして、それは今後も続くんだ・・・。
こんな愚かな事は終わりにしよう。

声をあげよう。
普通の市民が声をあげていかないと、国は変わらないんだ。

今回は6万人の人が行動した。
もっと多くの人が、きっと全国から意思を共にした。
広げていこう。

さよなら原発1000万人署名 まだの方は署名してね。
http://sayonara-nukes.org/shomei/

私の母も、署名活動頑張っていて、大江健三郎さんのファンでもあるから、
デモ行ってきたよ!ってメールしたら

「凄い人が集まったのね。広がるといいわね。
明日は山梨にぶどう狩りに行ってきます。 来月は栗狩りで小布施に行きます」

だって~(笑) 果物狩りに今は夢中のようです・・・。


*************************

追伸:
ツイッターで私がつぶやいたこと

「原発反対とか、子供を守ろうとか、皆で声をあげ、練りあるきながら、
祈ってました。この要求って、人として、スゴイ当たり前のことだよなぁ。
渋谷の街でポカンとデモ行進をみてた若者達・・・彼等にも気付いてほしい」

に対してコメントを頂きました。

「一緒にどう?」って誘えたらすごいです。参加したくても無理な私の分まで
がんばって!

と。お身体の具合が悪いようで、デモなどは無理みたいです。


いろいろ考えました。
人って自分がこう、と納得しない限り、動かないと思う。
(私がそうだから・・・)
だから、私は発信してるけど、判断するのは各人だから、
それ以上の何かを求めすぎないように、基本的にしてるんだけど、
このようなコメントを頂いたことで、行動できる人は、
今以上に進化して行動すればいいのかな、と思った。

そんな事を気付かせて頂きありがとうございました!!

皆さんお疲れ様でした!!

まだまだがんばりましょ!!!


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明日に向けて(281)小さき花・市民の放射能測定室(仙台) 11月に開設

2011年10月04日 09時30分00秒 | 明日に向けて(251)~(300)
守田です。(20111004 09:30)

僕はこれまで2回にわたって、被災地を訪問しました。その2回とも最後に
立ち寄ったのが、宮城県南部の有機農家の方たちのところでした。特に
2回目の訪問では、有機農家の方たちが集って、2か所で市民放射線測定室
を立ち上げることを耳にし、ぜひその話を聞かせて欲しいと思って取材して
きました。記事にするまでに少々時間がかかってしまいましたが、その
ご報告、2回にわけてしたいと思います。

第1回目は、仙台市太白区の石森農園での放射能測定室の立ち上げのお話
です。正確な名称は「小さき花・市民の放射能測定室」です。立ち上げの
中心は、石森農園を経営する石森秀彦さん。石森さんはこの近辺の山林の
地主さんですが、石森さんのお祖父さんの代のときに、戦後農地解放で、
農場はすべて「小作」だった方にあけ渡し、農地以外の山が残りました。

石森さんは1960年生まれ。早生まれで学年は僕と同じです。1980年代に
東京農業大学を出て有機農業を志し、農地以外に残った山林に手を付
けました。たった一人で木を切り開いて開墾。新しい農地を作りだし、
有機菜園を築きあげたのです。石森さんは、この農地は有史以来一度も
化学物質が入ったことのない農地だと胸をはります。

しかしそこに放射線物質が降ってしまった。石森さんの悔しさ、悲しさには
とても深いものがある。しかし石森さんはただ頭を垂れているだけでは
ありませんでした。有機野菜の販売を通じて、人々の安心で安全な暮らしに
寄与しようとしてきた石森さんは、自ら放射線測定室を立ち上げ、作物を
はじめ、海産物や母乳、尿など、ありとあらゆるものを測ろうとしています。

とにかく何がどれぐらい危険なのかを知らないと前に進めないと石森さんは
考えています。人々にも危険の指標を得られる手立て持ってもらい、そうした
中で、石森さんは新たな営農の道を探ろうとしています。そんな石森さんと
山と森の中に開いた農地を歩き、収穫した玉ねぎ(1キログラム20ベクレルの
汚染あり)の前で立ち話をしたり、部屋の中でお茶を飲みながら話した記録が
以下のものです。

*****************

小さき花 市民の放射能測定室をめぐって

-立ち上げるのはいつですか?どのような主旨で立ち上げるのですか?

まず次のような案内とお願いを出しているのでみて下さい。

*****

小さき花 市民の放射能測定室(仙台)義援金のお願い

一番小さき人 こまっている人 必要としている人のための放射能測定室
です。条件を考慮して測定する順番、料金(0円~5000円)を決め、迅速に
測定します。

もう震災から5カ月もたっているのに、原発は収束せず放射能は安定供給
されているあり様です。私の住んでいる仙台の家畑は、原発から85kmの
地点にあり、家から2kmのところで育った小松菜から4月2日、3737ベクレルの
セシウムが検出されました。(フランスACRO測定)
宮城県は当初、放射線を測定せずに安全宣言を出しました。その後、5月18日、
農場の土壌より57230ベクレル/平方メートル、7月9日、生茶579ベクレル、
きのこ345ベクレルのセシウムが検出されました。

県内の有機農業、自然農法を行っている人たち、そして私も、自分の土地で
できる作物が安全なのかがわからず、自信を持って野菜を育て、提供すること
ができないことから、やむを得ず今年の野菜の出荷、配達を、中止する決断を
しました。

原発事故後の私達、子供達は、一体何を食べ、何を飲み、そしてどの場所
なら安全なのかを、ずっと知りたいと思い続けてきました。しかし、国も
自治体も、私たちに何も答えてはくれません。
そこで、気仙沼の復興支援を行いながら放射能への不安を強く感じている
友人のオータム達と一緒に、自分達で測定を始めることを決断しました。

現在、みんなで放射線測定室を作るべく、集めた資金が110万円になり、
それを頭金に放射能測定機269万円を発注、購入しました。
ドイツ製 berthold technologies社ガンマスペクトルメーターLB2045
(核種がわかり、1ベクレル/kgから測定できる)は、10月に納品されます。
(*守田注 この機械については現在、購入契約を再検討中)

本当にぶしつけで申し訳ありませんが、宮城県の有機自然農法家、漁師、
こどもを持つお母さん方など、未来を見据えた生活を送っている方々は、
本当の現状がわからず、日々に大きな不安を抱え見えないストレスと戦って
います。とても困り、悩み、疲れています。  

NOを知る為でなく、不安を抱える方々が、安全を見つけ安心して日々を
送ることができるように、安心して子育てをしていけるように、それが、
放射能測定室で提供したいことです。
みなさんの知恵とちから、援助をお願い致します。

追記
なるべくスタッフは震災で仕事をなくした人にお願いし、もし義援金が余る
場合は、もうひとつ測定室を作るか、他の測定室と連携をとりより多くの
不安を抱える方々を支援していきたいと思います。
*NPO法人ハートアンドホープは私の話を聞いてもらい、
測定室を作るのに義援金の受け入れ先として協力していただきました。

<義援金受付口座>
小さき花 市民の放射能測定室(仙台)
ゆうちょ銀行 総合口座 18110-25981911
八一八店(店コード818)
口座番号 2598191
代表者  石森秀彦

特定非営利活動法人 ハートアンドホープ
七十七銀行 大河原支店(店コード 802)
普通 5450594
理事 高橋信生

*****

ここにも書いたけれど10月の終わりか、11月に機械が来ることになって
いて、それを待って本格的に立ち上げることになる。小さな人、一番困って
いる人のための放射能測定室として立ち上げたい。なるべく自由に動ける
ように、大きな団体ではできないことをやろうと思う。

測定にあたっては、相手の側の条件を考慮し、測定する順番を決めていく。
料金も0円から5000円。本当に困っている人にはただで行いたい。最悪、お金
がないから計れないと言う事はなくしたい。大きなところでは対応できない
ことを迅速にやっていくような組織を作ろうと思う。そこが「小さき花・
市民の」という主旨になる。コンセプトがないとも言われるのだが、なる
べく規則を決めずに柔軟に対応できるようにしたい。


-どんな機械を使い、どのように測るのでしょうか。

機械は、LB2045というもので、ドイツのベルトール社製のものにしようと
考えてきた。ドイツで買うと160万円だが、日本だと260万円だとのこと。
ドイツで買うと、ドイツ国内しか保障されないので、100万円のプラスは
仕方がないと思う。

この値段で1ベクレルから検出できる。他の機械では10ベクレルまでという
ものもあるが、ドイツでは成人の許容値を8ベクレルとしている。それを
考えて、1ベクレルから測れるものでないとだめだと思った。
もちろんもっと本格的なものからすれば、これも簡易の機械だと聞いている。
でも目安にはなる。それが大事だと思う。

ただ、今、この機械には具合が悪そうだという情報もある。購入予定をキャン
セルしたところもあるらしい。でもすでに買って使っているところもあって、
それほど悪くないという意見もあり、まだ話がよく分からない。それでどう
するか検討しているところ。機械を変える場合は、立ち上げが少し遅くなる
かもしれない。とにかくできるだけ検出限界が低いものにしたい。


大事なのはクロスチェックをすることだと思う。行政が測ったものを市民の側
で測る。行政はいいものを持っているので、それできちんと測るように、
チェックを行いたい。行政の中でもいい人がいるのだから、その人がうまく
やれるようにもなって欲しい。

福島でも測定室が立ち上がっている。有機農業の人たちがやっていて、そうした
ところと連携しようと思っている。9月か10月に同じ機械が入る予定だった。
でもここもこの機械を考え直したみたいだ。そんなことも含めて、一緒
に学んで、歩んでいければと思っている。

とにかくいっぱいデータがあればいいと思う。測定室はあちこちに立ちあがる
のが良い。なるべく色々な人が色々な方法でやった方が、生態系と同じで、
多様性があって、やればやるほど正しいデータが出て、安定すると思う。

場所は取りあえずはこの農場のそばに作りたい。移動できる状況にあれば、
3ヶ月に一度は海岸にもまわりたいが、移動できるかどうかまだ分からない。
魚は鮮度が大事なので、そうしたい。

測れる核種は30種類で1検体に20分かかる。1日20検体検討。前後の調整や
報告書作成などを考えるとまる1日でこれぐらいだと思う。出せるところからは
それなりにお金をもらいたい。

まだ専属で測る人は決まっていないが、スタッフはなるべく震災で仕事を
無くした人にしたい思う。ニーズが多ければ24時間稼働にしたい。そうしたら
3人は生活できるのではないか。

この測定室では、この野菜は危険だとかいうことは言わない。それは持ち込んだ
人に自分で決めてもらう。あくまでそのための基礎データとしての数値を出す
ことを目的にする。

今、大きな会社に持ち込むと、液体・土壌・水はだいたい15000円。野菜だけ
だと7000円で測っている。これを5000円以下でやるのは、安すぎかなとも思う
がまあいいと思う。

例えば家庭菜園などでも不安で悲しんでいる人がいると思う。営農してないので
お金もないだろう。このまま続けてもいいのかどうか悩みがつきないと思う。
そんなとき測る事は一つの目安になるし、そういう場合はできるだけ安くやりたい。
そういう主旨であることを知ってもらって、できる人にはカンパも含めて出して
欲しいと思っている。

とくに子どもがいて、おっぱいを飲ませている人が一番不安だと思う。
これはおっぱいも測れるし、おしっこも測れる。
母乳を心配して測定もしているネットワークの人達とも結びつきたい。
ただし尿までにしたい。大きい方や、死んだペットを測ってくれとかは
困る・・・。


-石森農園について教えて下さい。今後の営農の展望をどう考えていますか?

うちの山は宮城県の名取市と村田市の境にある。仙台の一番南になる。
この辺の土壌を測ると、もっと南の丸森町や、角田市よりも高い放射線値が
でている。どこを調べても高い。

営農の展望については、土壌の値を測ると3センチで1150ベクレルになる。
それ以下は減る。なので土地を削るしかないと思う。
有機農業をやってきた人の中には、腐植が放射線を吸着しているから、
削らないでなんとかと考える人もいるが、自分はそれは難しいと思う。
(注 腐植 落ち葉などの有機物が堆積し、栄養分が形成されたできた
土のこと。腐葉土とも言う)

営農としては削ってできることは確実だ。でも住むとなると、畑だけでは
なくて住環境全体を考えないとダメだ。食べるものが汚染されなくても、
住むところは汚染されている。ここら辺はグレーゾーンで、福島なら移住が
必要だと思うけれど、空間線量が2マイクロシーベルト(毎時)前後だと
どうかと思ってしまう。

とりあえずはいろいろと実験したいと思っている。うちは雑木林だから、
全部それを切って腐葉土をはげば大丈夫じゃないか。その実験をしてみたい。
とりあえず野菜を作るところは土をはがないとだめだと思う。

土壌を測った際には、5センチまでと、3センチまでと、表土の3つを測った。
表土の汚染値は高い。3センチでも丸森町よりも高い。空間線量は丸森町の方
が高いのだけれど。ホットスポットで放射能が降ってしまったのだと思う。
でもそのときのものを取り除けば、追加はないはずだ。

ここには農地はなかった。1985年に木を伐って、土を削って、有史以来
汚染物質が入ったことのない土壌に、化学物質を一切いれないで農地を
開拓してやってきた。木を自分で抜いてやった。なのに、また土地を削ら
なければいけない。痛恨だ。

農家は蓄積だ。一からはじめるとクワも鎌もトラクターも買わないといけない。
すごい資金がいる。今、自分はトラクターは使わないでやっているけれど。

もっと重要なのは開墾した農地は、表土をはいでしまうから、肥料がないことだ。
普通、農業をやっている人が何で成り立っているかというと、何十年、何百年と
培ってきた表土があるからだ。だから本当は表土をはぎたくない。誰だって
そう思うと思う。

自分は30年ここでやってきて、普通の農家が持っているようなものをやっと
手にしてきた。それをはがせば元のもくあみだ。でもそれをやる以外に道は
ないと思う。

一番、よい肥料になるのは、草を刈って土地に梳き込むことだけれど、それも
できなくなる。肥料もどこか別の土地から持ってこなくてはいけない。九州
とか北海道から。それももの凄い負担だ。なるべく他からの肥料に頼らない
ために、うちは草をいっぱい刈って、梳き込んでやるつもりだったのに、
それができなくなってしまった。

それでもまだうちが良かったのは土地を混ぜていないことだ。不耕起で
やってきたから。土地を撹拌していない。不耕起の良いところだ。
すでに土地を起してしまった人は、放射能が深いところまで混ざってしまって
いる。自分は土を混ぜたくないので、草をなるべく生やして、すっかり原発の
事故がとまったときに、いっきに草を刈って、土をはがそうと思っている。
まだ原発はカバーもされていない。今やったら、次が来てしまうかもしれない
から、その後に考えたい。

テレビを観ていても、一回はいだ表土でもまた汚染値があがったりしている。
何しろ元が止まってない。一度やってまたとなったら、表土がなくなって
しまってどうともならない。
データをみると3センチぐらいはげばいいと思う。ユンボは使わずに手でやった
方がいいかもしれない。混ざってはいけないから。


-有機農家を支えたいという声の中で、野菜を買い支えようという意見もあります。
どう感じていますか。

有機農業をやっている人、支援している人の多くは、うちの野菜を食べる
から送ってくれと言ってくれた。気持ちはとてもありがたい。でも正直、
「そんなのやめてくれ」と思った。食べない方がいいに決まっている。
気持ちは嬉しいのだけれど、その考えでいくと、自分たちを支えるために、
みんなで汚染されたものを食べようとなってしまう。それには危険を感じる。

自分は初めから、自分の畑の野菜を食べなかった。放射能が怖いからではない。
生きるための努力を放棄することが嫌だと思ったからだ。それに自分は何が
あっても加害者になりたくない。だから初めから自分の畑の野菜を食べ
なかったし、出荷もしなかった。

あの時思ったのは、あと2,3ヶ月したら野菜の汚染度が分かるわけで、その
ときに安全なら食べたり、配達すればいい。それまで待てばいいということ
だった。それで野菜を食べている有機農家の仲間にも「なんでみんな食べ
てんの」言ってしまった。癇に障ってしまって、よくなかったかなと思う。


-今回の原発事故による被害についてどう思いますか。

自分は30年も原発に反対してきたのに、こんな目にあうのはあんまりだと
思う。しかも「技術が確立してないからとめて欲しい」とか、「核のゴミを
捨てる場所がないでしょう?それはどうなの」と聞いただけなのに、警察が
周りにきたりした。友達も反原発の声を上げたら、親のところに警察がきて
自然食屋をやめさせられたこともあった。そんなことまであったけど、反対
の声は下げなかった。そんな自分が山を切り拓いて作った農地が汚染されて
しまった。

本当に筋を通すなら、どう考えたって、1ミリシーベルトだろうが何だろうが、
ちょっとでも降り積もったものは補償しなければいけないと思う。
本当はそうなのに、なんで汚染度がこれぐらいだから補償するとか、これぐら
いだから除染するとか決まってしまうのか。

もともと原発に反対していて、しかもいらないものが勝手に東電から廃棄され
たのだから、ゴミを畑に廃棄されたのだから、捨てた人がそれを撤去しなけれ
ばならないのが当たり前だ。なんでそれがこういうことになってしまうのか。

生産者は誰もそこを言わない。あきらめているから。でも本来なら少し
でも放射能が積もったところは、全部、補償しなければいけないはずだ。
そこが分からないし、納得できない。どこで誰が勝手に線を決めたのか。

このことが当たり前になってしまって、本当のことを言わなくなって
しまった。すでに決まったことが当たり前になりすぎてしまった。誰もが疑問
を持たなくなった。東電が嘘ばかり言うので、ああ、またウソだろと、怒ら
なくなってきてしまった。それと同じで、最初に交渉しなければいけないこと
をみんな言わなくなってしまった。これではいけないと思う。今からでも
東電にゴミを全部撤去しなさい、できないのなら全部補償しなさいと言わなく
ては。

うちら有機農家は、もともと農薬を使わない、化学肥料を使わないものを
有機農業といいますといって勝手に宣言してやってきた。その後に、国が有機
農業の基準を作った。でも何が有機で安全なのかという基準はもともとこっち
が考えて作ったものだ。だから今回も放射能について、うちらが考えた安全の
基準を越えているから安全ではない、出荷しないから補償しろということは
本当はいえるはずだ。もともと有機農業はそうやってきたのだから。

それに牛が食べてはいけないような草ができてるのに、人間がそこの野菜を
食べるというのはどう考えてもおかしい。確かに牧草の場合、乾燥しているも
のを食べるからベクレル数はあがるけれども、だからといって、牧草だけ
汚染されて、そこらへんに生えているほかのものが汚染されていないと
いうことはない。

だから自分は測定器を買って、いろいろと調べたいと思う。根っこに放射能が
どれぐらいあるのか、それより茎にいくのかとか。植物によっても移行率が
ぜんぜん違う。それらを知りたい。

コメについて、この辺は、1キログラム500ベクレルという数字はまずでないと
思う。出るのはチェルノブイリの管理区域にあたる汚染地域で、そこでも出る
か出ないかだろう。水田で5000ベクレルの土壌汚染というとかなり高い。
逆に言えば、出ない数字として1キログラム500ベクレルを設定したのだと思う。
何が安全かなど考えられていない。

この状態を何とか考えるために、小さいものだけれど、放射能測定室を作って
歩んでいきたいと思う。みなさんに支援していただると幸いです。

-ありがとうございました。















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