明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(292)「プルトニウムは重いから飛ばない」というのはウソ!

2011年10月13日 12時00分00秒 | 明日に向けて(251)~(300)
守田です。(20111013 12:00)

昨日、ストロンチウムが横浜で検出されたことを紹介し、その際、プルト
ニウムについて、今は45キロより遠くでは「ない」とされているが、これ
も遠くまで飛散している可能性があることについて言及しました。すると
矢ヶ崎克馬さんがわざわざ電話してきてくださって、この点について解説
して下さいました。

矢ヶ崎さんが強調されたのは、プルトニウムが重いので飛ばないというの
がまったくの嘘だということです。「どうしてこういうデタラメが言われる
のかと思っています」とも。核心点は、原発事故で放射性物質が飛散する
とき、なにもそれぞれの核種が単体で飛ぶわけではないことです。

幾つかの核種がまじりあって、塵や埃の形になり、それで飛散していく。
その場合、その塊になった塵の総量としての重さが、風の強さとも相まっ
て、飛ぶ距離を決めることになっていくわけです。重い核種から落ちて
いくのではなく、重い塊から落ちていく。

プルトニウムも他の核種と一緒になって塵や埃を形成するわけですから、
その総量が比較的軽ければ、遠くに運ばれてしまうのです。このように
塵や埃が幾つかの核種から構成されることは、チェルノブイリ事故など
でも見られたことだそうです。

・・・非常にすっきりとしました。

僕自身は、例えプルトニウムの比重が他の物質より上回っていようと、
論理上、微粒子ならば飛びうるのではないか。重いから飛ばないというの
はまやかしではないかとずっと思っていました。そのために繰り返し、
プルトニウム飛散の可能性を指摘してきました。

単純な話ですが、綿と鉄では鉄の方が比重は圧倒的に上ですが、1キロ
グラムの綿と、1グラムの鉄では、前者の方が圧倒的に重いわけです。だから
微粒子になった場合、その粒の大きさによって、重い・軽いが決まるわけで、
比重と飛散の可能性をリンクさせるのはまやかしだと感じていたのです。


また誰よりもプルトニウムの危険性を訴えてきた故高木仁三郎さんが、
著書『プルトニウムの恐怖』の中で、プルトニウムは飛散しやすいと述べ
ていたことも、ずっと頭の中に残っていました。当該個所を引用します。

「プルトニウムが体内に入る経路は、一般には呼吸を通じるか、口から飲み
込んだり食べたりするものにまじってとりこむかである。プルトニウムは、
直径1ミクロン(1000分の1ミリメートル)前後の小さな酸化プルトニウムの
かたまりとなって空中に漂いやすい。プルトニウムを用いた大気圏内核実験
の際にも、核分裂をしなかったプルトニウムは、酸化プルトニウムの微粒子
となって空中にばらまかれる。」(『プルトニウムの恐怖』岩波新書p110)

ここでは高木さんは、プルトニウムが単体であっても、空中に漂いやすい
点を指摘しています。これはアメリカで実際にあったプルトニウム製造工場
でのプルトニウム漏れ事故などをも踏まえた記述ですが、矢ヶ崎さんの
指摘に端的なごとく、原発事故の場合は、プルトニウムは他の、より軽い
核種と塵や埃を形成して運ばれるのですから、この場合の方がより飛散
しやいと言えます。そして現に80キロ圏内のわずか100か所の調査で、
45キロ地点から「発見」されたのです。

このときストロンウムは79キロ地点で発見された。だから僕は確実にその
外にもあるはずだと書きましたが、それから数日後に250キロ地点での
「発見」が報じられました。プルトニウムはどうなのか。推して知るべき
ことだと思います。ぜひとも各地で測ることが必要です。プルトニウムは
精度の高い機器でないと検出できないので、行政などに圧力をかけていく
必要があります。


同時に、これまでプルトニウムは絶対に飛散しない、住民への影響はないと
豪語してきた方たちに、最低でも謝罪を要求していくべきだと思います。
その筆頭にあげられるのは、中川恵一東大病院放射線科准教授です。
中川准教授は、3月29日にテレビに出演して、「一般市民、私たちの生活
にはどのような影響がありますか」という質問に次のように答えました。

「これはありません。まずですね、この物質は非常に重いのですね。です
からヨウ素のように飛散していくことがありません。作業者の方には影響が
あるかもしれないので、気をつけて欲しいのですが、みなさんご心配だと
思いますけれど、私が生まれた50年前、プルトニウムの量は今の1000倍
だったのですよ。原水爆核実験のせいです。今は多少増えたと言っても
かなり減っているのですね。だから心配はありません」

この回答を含む内容が、映像で見られますので、ぜひご参照ください。
中川准教授は、プルトニウムが非常に危険な物質であると指摘されている
ことにふれ、吸い込んだときの肺がんの可能性を述べていますが、食べたり
飲んだりした場合は、排泄されるから大丈夫だとも述べています。
http://www.news24.jp/articles/2011/03/29/07179697.html

中川恵一准教授のプルトニウム解説は、飯舘村からの検出という事実に
よって完全に覆されたのですから、まずは誤りを認めて真摯に謝罪すべき
です。中川准教授は「東大病院放射線科」という、一般には信頼されやすい
肩書のもとに発言しているのですから、その責任はより重いです。

同時に中川准教授による50年前にプルトニウムの量は今の1000倍だったと
いう発言がかなりデタラメであることも指摘しておきたいと思います。
中川准教授もこ番組の中で触れていることですが、核実験で使われたプルト
ニウム239の半減期は24000年です。半分になるのにそれだけかかる。それが
なぜ50年で1000分の1になるのでしょうか。

これは放射性物質の崩壊と放射線の照射という、放射線学の基礎中の基礎を
無視した発言です。意図的にデタラメを言ったのか、あるいは東大病院
放射線科の准教授が、放射線に関する基礎すら理解していないことをあら
わしています。

また食べたり飲んだりしたものは身体の外に出ていくので大丈夫だという
のも誤りです。この点についても高木さんの著書の引用を行っておきます。

「いっぽう、消化器系を通してとりこまれたプルトニウムは、むしろ可溶性
のものが問題となる。胃腸壁を通して吸収されやすく、吸収されたプルト
ニウムは主として骨に集まりやすい。これは骨のガン、とくに白血病の原因
となる。もちろん、とりこまれた部位に応じて核種のガンを誘発しうるが、
肺ガンと骨のガン(白血病)が、プルトニウムの最も恐ろしい影響である」
(『同書』p111)

中川准教授の講演会に行かれる機会のある方は、ぜひともこうした発言
への謝罪を求めるといいのではないかと思いますが、私たちは少なくとも
中川准教授の誠意ある謝罪を耳にするまでは、東大病院放射線科を全く信頼
しないことにしましょう。これは一准教授の発言の問題ではありません。
大学病院総体の問題です。明らかにとんでもない間違いを東大病院の名で
国民・住民に発信してしまったのですから、大学病院側が、謝罪と訂正を
行うべきなのです。


以上、私たちは「プルトニウムは重いから飛ばない」というウソに、もう
二度と騙されず、各地で積極的なプルトニウムの計測を始めましょう。あ
るいはそのための動きを開始しましょう。先にも述べたように、専門の
高度な機器が必要なので、そのために関係機関を動かす必要があります。
東大アイソトープ研究センターの児玉教授に、全国から検体を送って
調べていただくのもいいかもしれませんね。

ともあれこの点でもイニシアチブを取るべきは私たち市民です。いまここに
ある危機を明るみに出すことでこそ、私たちの危機回避の可能性は増します。
プルトニウムは大変危険性の高い物質ですが、けしてそれに打ちひしがれず、
腹をくくり、開き直り、覚悟を決めて、危険物質の回避のために動きましょう。
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明日に向けて(292)「福島のコメ、全域で出荷へ」・・・なぜ?

2011年10月13日 01時30分00秒 | 明日に向けて(251)~(300)
守田です。(20111013 01:30)

今夜はもう一つ情報を流します。一つは「福島のコメ、全域で出荷へ
二本松市でも基準値以下」というニュースについてです。同じタイトル
のニュースが産経ニュースから短く流れているので、全文を紹介します。

*****

福島のコメ、全域で出荷へ 二本松市でも基準値以下
産経ニュース 2011.10.12 13:20

コメの作付けが行われた福島県の全ての市町村で、一般米が収穫後の
本調査の結果、全て国の暫定基準値(1キログラム当たり500ベク
レル)を下回り、出荷可能となったことが12日、県への取材で
分かった。

県は先月23日、収穫前の予備調査で唯一、一定基準の200ベクレル
を超える500ベクレルちょうどの放射性セシウムが検出された二本
松市を「重点調査区域」に指定。本調査で調査地点を大幅に増やし、
監視を強化していた。

本調査では、500ベクレルを超えた場合、旧市町村エリアごとに出荷
が制限される仕組みになっているが、最終的に全ての検体で下回ること
が確認されたという。
http://sankei.jp.msn.com/region/news/111012/fks11101214460002-n1.htm

*****

テレビでは、このニュースを受けて、佐藤福島県知事が、嬉しそうに
「これで福島のお米の安全性が証明された」と述べているシーンが流さ
れていました。もちろん、そんなことはありません。福島のお米の放射能
含有量が、1キログラムあたり500ベクレル以下であることが証明されたに
すぎません。

この値が安全であるわけがない。ドイツが農作物などの基準としている
のは4ベクレルです。もちろん、これも安全基準値なのではありません。
全ての食材を全く取らないわけにはいかないので、やむを得ずリスクを
覚悟で認める基準値が4ベクレル以下なのです。


ところで、なぜ福島のお米の放射能汚染はすべて500ベクレル未満だった
のでしょうか。またホットスポットだった二本松ではなぜいったん500
ベクレルになったのか。あるいはそれが意味することは何なのでしょうか。

実は僕は仙台のある有機農家の方に、8月の段階で、こうした予測を聞いて
いました。「500ベクレル以上はほとんど出ないだろう」という予測です。
ほぼ正確にあっていました。その方は言っていた。「各地の土地の汚染状況
から500ベクレルは越えないことは今から見えている。つまり規制を越えた
コメがでないように設定したのが500ベクレルなのだ」と・・・。

二本松の場合は、設定条件に一番近いところにあったと思われます。そのため
いったんは500ベクレルちょうどという数字が出てしまった。しかしその後、
「監視を強化」して500ベクレル以下となった。これはどういうことでしょう?
監視の強化で汚染が薄まるはずがない。二本松の中でも、汚染の高そう
なところのコメを除外したのではないでしょうか。

ともあれこうして500ベクレルよりどれぐらい低い値なのかが分からない
コメが流出することになってしまいした。しかし選択が可能な消費者の中で
このコメを避けようとする方も多くなるでよす。そうなるとこのコメは、
外食産業や加工食品業者に流れやすい。コンビニなどのおにぎりなどにも
使われるのではないか。

その場合、これらの産業のモラルを嘆いても仕方がない。一番、悪いのは
こうした極端に甘い基準をかってに決めて、国民・住民の中に、汚染された
食物を蔓延させようとしている政府の姿勢です。スピーディーの情報を知ら
せず、人々を被曝から守らなかったこと、いや守れる自助努力の機会すら
奪ったことと、同じことが再び行われようとしている。

スピーディー情報を握りつぶした犯人も、いやそもそも、これだけの毒素を
まき散らした犯人も、ただの一人も逮捕されていないのですから、同じこと
が繰り返されるわけです。私たちは、またウソの情報で被曝させられつつあ
ります。しかも今度は、身体内部からです。


同時に、こうした構造では福島のコメ生産者も苦しい立場におかれるばかり
です。なぜなら福島産のものは買いたたかれやすくなるからです。そうでは
なく、規制をもっと強め、それを下回らないコメは、すべて東電と政府に
よって損害賠償の対象とすべきなのです。

政府が基準を甘くしているのはこのためでもある。コメが危ないという騒ぎ
を起さないことと同時に、可能な限り賠償金を払う可能性を切り縮めていく
ために、基準を甘くしているのです。この基準は同時に、どこから賠償しな
ければいけないかの基準値でもあるからです。

これらのために、汚染された食べ物が、大規模に市場に出回ってしまっている。
それが私たちの周りにある現状ですが、これを越えるためには、今からでも
基準の強化を求めていくことが大切です。同時に、この間繰り返していること
ですが、市民の側で、なんでもかんでも測定してしまうことです。

汚染された食料の蔓延の中で、子どもたちを守る態勢、私たち自身を守る
態勢を早急に作って行きましょう!




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