守田です。(20111006 23:30)
福島第一原発の現場から、作業をされている方が亡くなったという発表がなされ
ました。記事はとても短い。読売新聞発表のものを、全文、引用します。
***
福島原発作業員が死亡・・・体調不良、事故後3人目
読売新聞2011年10月6日19時33分
東京電力は、体調不良で病院に5日運ばれた福島第一原発の50歳代の男性作業員
が6日朝、死亡したと発表した。
男性は下請け企業に所属。8月8日から、福島第一原発で汚染水処理用のタンクの
設置作業などに従事していた。累積の放射線被曝(ひばく)量は2・02ミリ・シー
ベルト。東電は、被曝は死因に無関係とみている。同原発での作業員の死亡は、
事故発生後3人目。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20111006-OYT1T01085.htm
***
何よりもまず、亡くなられた方のご冥福を祈りたいと思いますが、同時に沸き上
がってくるのは、放射線被曝の影響は本当にないのだろうか?という疑問です。
またこの発表では死因が明らかではありません。そのため、「明日に向けて」の
タイトルで、「体調不良?」としましたが、疑問に思うことが多い発表です。
実は何の偶然か、この記事を読む前に、たまたま立ち寄り先で貸していただいた
『福島原発でいま起きている本当のこと』というブックレットに目を通していま
した。福島第一原発・元主任指導員の、淺川凌さんが書かれたものです。2011年
9月15日に第1刷が出たばかりのもの。宝島社の発行です。
その冒頭にあるのが「原発という『地獄の職場』」という一文です。「現場の真
実1」「汚染されているところでご飯食ってんだから・・・」というタイトルが
ついている。さらに小見出しに「サウナ状態のうえ息をするだけで消耗」と書か
れていて、原発サイトでの作業の過酷さが書かれています。
ポイントは放射線防護服を着なければいけないことにある。淺川さんは、立ち入り
禁止区域に一時帰宅する人の姿をテレビで見た人が多いだろうがそれとは全然、
違うと強調しています。作業員は放射性物質がしみ込んでくることを避けるために、
あの上に耐水性のあるカッパを着ており、服の中が完全サウナ状態なのだそうです。
さらにマスクがかなり苦しいそうです。マスクには吸う側と吐く側に弁がついて
いるのだそうですが、その開閉にけっこう力が居るという。つまり「呼吸するだ
けで消耗する」のだそうです。亡くなられた作業員の方も、8月8日から、真夏の
炎天下で、そのスタイルで働かれていたのでしょう。
淺川さんは、さらに東電が下請け作業員を人として扱わず、過酷な環境での過酷な
作業を押し付けている実態をも怒りをこめて暴露しています。その中で出て来るの
が、汚染された環境の中で食事を採らされている方がもらした「汚染されたところ
で飯食ってんだから」という言葉です。
さて、ここで問題にしたいのは、その状態でおよそ2カ月の間に2ミリシーベルト
被曝したことがどのように影響したかです。これが外部被曝だったのか内部被曝
だったのかによっても、相当に事情が変わりますが、かりに外部被曝だけだった
としても、強い影響があったのではないだろうか。
なぜなら現場作業そのものが、大変過酷で、この方や、作業されている労働者の
体調が悪化し、免疫力が低下していたことが十分に予想されるからです。そして
そのようなときに、放射線は人体に対してより大きなダメージを与えます。体調
不良による死というより、体調不良のもとでの被曝による死が起こりうる。
こう考える論拠は、これまでも紹介してきたジェイ・M・グールドの著作、
『死にいたる虚構 国家による低線量放射線の隠蔽』の中に、チェルノブイリ事故
による放射能の世界各地への飛散のあとに、免疫力が弱っているあらゆる層の
人々の死亡率が増加したことが紹介されているからです。ポイントを引用します。
「1986年夏にきわだって増加したのは、乳幼児、感染性疾患をもつ若年成人、高齢
者の死亡であった。これらの人たちには免疫系が相対的に脆弱であるという共通点
がある。そこに免疫障害を起こす原因が加われば病気やストレスに対しての抵抗を
妨害することになる。免疫機能が低下している高齢者はそれまでに既に病気の状態
といえるので、チェルノブイリの放射能は免疫系の抵抗力を一層、弱体化させたで
あろう」
「酔いをさませるほど驚かせる統計は、これまでになく死亡率を増加させた若年成
人の場合であろう。肺炎、感染性疾患、特にエイズ関連疾患による著しい死亡率増
加は1986年5月にピークとなり、ついで夏期に続くが、この背景には免疫障害がある
と思われる。」(同書p12~13)
こうした過去の例から考えられるのは、原発サイトにおける過酷な労働が、免疫力を
低下させており、そこに放射線被曝が重なることにより、より免疫力が低下し、体が
衰弱し、何らかの死因につらなっていったのではないか。放射線による急性症状では
ないにしても、被曝も影響した死だったのではないかということです。
これらを考えると、今、働いている方たちのことがさらに心配になります。低線量の放
射線が、晩発性のガンを引き起こしうるだけでなく、免疫系にダメージを与え、あら
ゆる死亡要因を強めてきたことが明らかにされないと、さらに犠牲者が増えるのではな
いか。いや今でも確実に免疫力の複合的要因によるダウンが起こっているはずです。
原発サイト内で作業されていた方の死が、わずか数行の新聞発表で「終わって」しまう
ことを許さずに、さらにウォッチを続けていきたいと思います。
福島第一原発の現場から、作業をされている方が亡くなったという発表がなされ
ました。記事はとても短い。読売新聞発表のものを、全文、引用します。
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福島原発作業員が死亡・・・体調不良、事故後3人目
読売新聞2011年10月6日19時33分
東京電力は、体調不良で病院に5日運ばれた福島第一原発の50歳代の男性作業員
が6日朝、死亡したと発表した。
男性は下請け企業に所属。8月8日から、福島第一原発で汚染水処理用のタンクの
設置作業などに従事していた。累積の放射線被曝(ひばく)量は2・02ミリ・シー
ベルト。東電は、被曝は死因に無関係とみている。同原発での作業員の死亡は、
事故発生後3人目。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20111006-OYT1T01085.htm
***
何よりもまず、亡くなられた方のご冥福を祈りたいと思いますが、同時に沸き上
がってくるのは、放射線被曝の影響は本当にないのだろうか?という疑問です。
またこの発表では死因が明らかではありません。そのため、「明日に向けて」の
タイトルで、「体調不良?」としましたが、疑問に思うことが多い発表です。
実は何の偶然か、この記事を読む前に、たまたま立ち寄り先で貸していただいた
『福島原発でいま起きている本当のこと』というブックレットに目を通していま
した。福島第一原発・元主任指導員の、淺川凌さんが書かれたものです。2011年
9月15日に第1刷が出たばかりのもの。宝島社の発行です。
その冒頭にあるのが「原発という『地獄の職場』」という一文です。「現場の真
実1」「汚染されているところでご飯食ってんだから・・・」というタイトルが
ついている。さらに小見出しに「サウナ状態のうえ息をするだけで消耗」と書か
れていて、原発サイトでの作業の過酷さが書かれています。
ポイントは放射線防護服を着なければいけないことにある。淺川さんは、立ち入り
禁止区域に一時帰宅する人の姿をテレビで見た人が多いだろうがそれとは全然、
違うと強調しています。作業員は放射性物質がしみ込んでくることを避けるために、
あの上に耐水性のあるカッパを着ており、服の中が完全サウナ状態なのだそうです。
さらにマスクがかなり苦しいそうです。マスクには吸う側と吐く側に弁がついて
いるのだそうですが、その開閉にけっこう力が居るという。つまり「呼吸するだ
けで消耗する」のだそうです。亡くなられた作業員の方も、8月8日から、真夏の
炎天下で、そのスタイルで働かれていたのでしょう。
淺川さんは、さらに東電が下請け作業員を人として扱わず、過酷な環境での過酷な
作業を押し付けている実態をも怒りをこめて暴露しています。その中で出て来るの
が、汚染された環境の中で食事を採らされている方がもらした「汚染されたところ
で飯食ってんだから」という言葉です。
さて、ここで問題にしたいのは、その状態でおよそ2カ月の間に2ミリシーベルト
被曝したことがどのように影響したかです。これが外部被曝だったのか内部被曝
だったのかによっても、相当に事情が変わりますが、かりに外部被曝だけだった
としても、強い影響があったのではないだろうか。
なぜなら現場作業そのものが、大変過酷で、この方や、作業されている労働者の
体調が悪化し、免疫力が低下していたことが十分に予想されるからです。そして
そのようなときに、放射線は人体に対してより大きなダメージを与えます。体調
不良による死というより、体調不良のもとでの被曝による死が起こりうる。
こう考える論拠は、これまでも紹介してきたジェイ・M・グールドの著作、
『死にいたる虚構 国家による低線量放射線の隠蔽』の中に、チェルノブイリ事故
による放射能の世界各地への飛散のあとに、免疫力が弱っているあらゆる層の
人々の死亡率が増加したことが紹介されているからです。ポイントを引用します。
「1986年夏にきわだって増加したのは、乳幼児、感染性疾患をもつ若年成人、高齢
者の死亡であった。これらの人たちには免疫系が相対的に脆弱であるという共通点
がある。そこに免疫障害を起こす原因が加われば病気やストレスに対しての抵抗を
妨害することになる。免疫機能が低下している高齢者はそれまでに既に病気の状態
といえるので、チェルノブイリの放射能は免疫系の抵抗力を一層、弱体化させたで
あろう」
「酔いをさませるほど驚かせる統計は、これまでになく死亡率を増加させた若年成
人の場合であろう。肺炎、感染性疾患、特にエイズ関連疾患による著しい死亡率増
加は1986年5月にピークとなり、ついで夏期に続くが、この背景には免疫障害がある
と思われる。」(同書p12~13)
こうした過去の例から考えられるのは、原発サイトにおける過酷な労働が、免疫力を
低下させており、そこに放射線被曝が重なることにより、より免疫力が低下し、体が
衰弱し、何らかの死因につらなっていったのではないか。放射線による急性症状では
ないにしても、被曝も影響した死だったのではないかということです。
これらを考えると、今、働いている方たちのことがさらに心配になります。低線量の放
射線が、晩発性のガンを引き起こしうるだけでなく、免疫系にダメージを与え、あら
ゆる死亡要因を強めてきたことが明らかにされないと、さらに犠牲者が増えるのではな
いか。いや今でも確実に免疫力の複合的要因によるダウンが起こっているはずです。
原発サイト内で作業されていた方の死が、わずか数行の新聞発表で「終わって」しまう
ことを許さずに、さらにウォッチを続けていきたいと思います。