明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(817)旅の報告、食べ物の話、原子力防災の話などをします。(京都市、瀬戸内市、亀岡市)

2014年04月08日 22時00分00秒 | 講演予定一覧

守田です。(20140408 22:00)

4月15日から4月27日にかけて、京都府京都市、岡山県瀬戸内市、京都府亀岡市で講演を行います。

15日と18日は京都市左京区のキッチンハリーナにて。旅の報告に特化して行います。
ベラルーシで見てきたこと、この間、連続的に記事を上げているトルコのシノップ原発反対運動との交流について、そしてドイツでの講演のお話をします。
15日と18日に分けているのは、夜しかこれない人、午前中にしかこれない人のため。基本的には2回とも同じ話をします。どちらか都合の良い方にお越しください。


4月20日は岡山県瀬戸内市でお話します。内容は福島原発事故と被曝対策のアウトライン、食べ物の安全の話、そして旅の報告です。

この企画は、昨年末に岡山県美作市に講演で呼ばれたときに、会場に駆け付けてくれて、素晴らしい津軽三味線の演奏をしてくださった蝦名宇摩さんからご依頼をいただいて作られたものです。
蝦名さんは福島原発事故が起きたとき、埼玉県に住まわれていました。原発の爆発を見て、すぐに逃げ出さなければと決意し、娘さんや妹さん夫婦などと懸命になって埼玉を飛び出されたのだそうです。
しかもそのとき、僕がメールで発信していた原発周辺からの避難を呼びかけるメールを読み続けていてくださったのでした。まだ「明日に向けて」と題する前の「東北地方太平洋沖地震について」および「地震情報」と題したものです。
僕は前者のタイトル11本、後者のタイトルで35本の記事を配信し、3月26日からタイトルを「明日に向けて」に代えたのですが、その本当に初期のものを、西を目指して走る車の中で、読んでいてくださった。

当初、僕はメールを介した発信をしていたのですが、これが友人を介して富士山の麓に住まわれている「槇田きこり但人」さんにわたり、さらにきこりさんから多くの方に転送されていて、蝦名さんの元に届いていたのでした。
僕は美作での講演のときに初めてこのことを知りました。蝦名さんが津軽三味線の演奏を始める前のトークでおっしゃって下さったからです。ものすごく胸を打たれました。あの時、必死になって発信した内容をリアルタイムで受け取って下さっていた避難者の方と初めてお会いできたからでした。
そもそも蝦名さんはわざわざ僕に会うために三味線を抱えて美作市まで来てくださったのですが、僕がこの美作に呼んでいただけたことにも縁のつながりがありました。
僕を繰り返し呼んでくださった広島県尾道市の方たちの中の大住元美登里さんが、美作の方たちに僕を紹介してくださったのです。尾道、美作とつながった縁が、僕を蝦名さんに、瀬戸内へと結び付けてくれた。

その尾道市との縁は、肥田舜太郎さんによって結ばれました。2011年7月に僕は肥田先生宅を訪れ、インタビューをさせていただき、岩波書店の『世界』11月号に掲載させていただきました。
これを読んだ大江健三郎さんが感動してくださり、東京の集会で、「このインタビューは福島のお母さんたちが読むべきバイブルです」とおっしゃってくださったのですが、その集会に尾道の方が参加していてくださり、すぐに『世界』の記事をお仲間に回してくださったのです。
それで肥田先生を尾道に呼ぼうということになり、500名も集まる大きな集会を行われました。そのときに、僕が矢ヶ崎さんと一緒に出した岩波ブックレット『内部被曝』を取り寄せて会場で100冊も売ってくださったのです。
さらに肥田先生に続いて僕を呼んでくださって尾道での講演が実現したのですが、その後も何度も呼んで下さり、さらにその縁で福山、三原、広島市、三次市へとつながりました。何とも言えない縁の連鎖でありがたい限りです。

こうしたことを経て、今回、瀬戸内市に呼んでくださったことに対して、僕も積極的に縁をつなげていきたいと考えて、やはり何度も僕を呼んでくださっている加古川市の「脱原発播磨アクション」の方をお誘いすることにしました。
ちょうど19日に7月の企画の相談で加古川を訪れることになったので、そのまま播磨に泊めさせていただき、翌日、播磨アクションの菅野さんらと一緒に瀬戸内市に向かうことにします。
尾道の方たちにもこの20日の企画を呼び掛けようと思っています。美作のみなさんも瀬戸内に来てくださるそうです。
そうやって山陽道、中国道地域に、タテヨコのつながりが広がっていくといい。縁が結びつき、人の輪が広がり、放射線防護、脱原発の声がさらに高まっていけばいいなと思います。
その中で今一度、広島・長崎原爆を見つめ直し、捉え直し、歴史を再構築する中から、長い間歪められてきた放射線被曝の実態をただし、被曝防護の徹底化を図り、核のない世の中を力強く目指していく、その流れを強めることに寄与したいです。
そんな気持ちで、20日の瀬戸内の企画に臨みます。


4月27日は京都府亀岡市、大飯原発から30キロ圏内に入るこの町で、原子力防災について、避難の準備についてお話します。
昨日アップした「明日に向けて(816)トルコ・シノップ原発建設を止めるために(3)」の中で、まだまだ危険な状態にある福島原発の現状に対して、真正面から向き合い、広域の避難訓練を行うべきことを書きましたが、それは全国で行うべきことです。
もちろん原子力災害への防災体制を作り出してくことは、原発の再稼働を何ら容認するものではありません。福島原発事故の中の4号機の危機のように、原発は運転していなくても、大変な危機に陥ることがありうることを見据えて、防災体制をとっていくことが大切なのです。

その際、大事なことは、原子力災害に備えることは無理だ!と安易に結論付けてしまわないことだと僕は強く思っています。正確には、理想的にすべての人が難を逃れることは確かに不可能なのですが、だからといって「災害対策は不可能」と結論づけてはいけない。
そうではなく「減災」の観点に立ち、少しでも多くの人を逃れさせること、あるいは少しでも被曝を減らすための工夫を真剣になって重ねる必要があることを僕は強調したいのです。
そのことを可能な限り、地域の行政の方たちと一緒になって考え、計画を組み立てていただきたい。そうすると本当にいろいろなことが見えてきます。

何より重要なのは、避難計画をリアルに立てようとすると、誰かが人を逃がすために被曝覚悟で避難誘導などの仕事に従事しなければならないことが見えてきます。それを誰に割り振るのか、どうやって決めるのか、本当に難題です。
しかしそれを決めなければならないのが、私たちが立っている現実なのです。目の前に原発があるということはそのことを意味しているのだというリアリティを、ぜひそれぞれの地域で共有しあって欲しいのです。
同時に、それは「万が一の事態への想定」なのではなく、現に福島原発事故への対処で日々行われいてることであることに、避難計画の策定の中で、リアルに気づいていって欲しい。なぜか。私たちは今、多くの福島原発現場作業員の方たちを被曝させながら、私たちの安全を守っているのだからです。

いやそれ以前から、つまり原発が稼働し、発電をしていたときからそうなのです。原発は被曝労働なしでは動かない。原発が電気を供給しているということは、誰かが職業的に被曝しているということなのです。
本当に残念ながら、無念ながら、私たちの多くはこのリアリティを考えてくることができませんでした。そうして被曝は「原発ジプシー」と呼ばれる弱い立場で働く方たちにしわ寄せしていたのでした。しわ寄せして、被曝実態もあいまいなままに多くの働く方たちが使われてきたのでした。
すべての電力会社はそのリアリティを知っていた。人を被曝させ、それを隠し、あいまいにし、その上に利益をむさぼってきた。そのことを見過ごしてきてしまったことを私たちは今一度、深く反省する必要があります。

原子力防災への本気の取り組みは、そこまで広がる内実を有したものです。もう一度言いますが、現に原発がある以上、再稼働しなくても事故は起こりえます。だから事故に備える必要があるのです。
理想的な避難はもちろん絶対に無理。誰かが必ず被曝する。そのことを頭に入れ、では誰かを犠牲にして誰かを助けることをどう考えていくのかを私たちは語り合い、考え抜き、方法を講じていかなければならないのです。
そこまで広がる原子力防災の中で、亀岡ではさしあたって市民の側は、原発事故にいかに備えたら良いのか、備えるべきなのかをお話したいと思います。お近くの方、ぜひご参加ください。

以下、それぞれの案内を貼り付けておきます!

*****

4月15日 京都市左京区
4月18日 京都市左京区

ベラルーシ、ドイツ、トルコ訪問の旅の報告会を行います。
京都市左京区のキッチンハリーナにて。

夜の部:2014年4月15日(火曜日)夜19時〜
朝の部:2014年4月18日(金曜日)朝10時〜
※ カンパとして500円をお願いしています。

申し込みはキッチンハリーナまで。
京都市左京区田中大久保町28-6 冨田ビル
電話&FAX 075-724-3568

*****

4月20日 岡山県瀬戸内市

市民ボランティア・せとうち交流プロジェクト企画

~福島・ベラルーシ・ドイツ・トルコの現状報告~
守田敏也 講演会

子どもたちの いのちを守るために 今、私たちにできること・・

開催場所    ゆめトピア長船 (2Fリフレッシュスタジオ)
住所     〒701-4264 瀬戸内市長船町土師277番地4
       電話:0869-26-8001(代表)
        FAX:0869-26-8002
日  時   2014年4月20日(日)

開 場  PM 1:00 ~
開 演  PM 1:30 ~ PM 4:00まで

参加費  500円
定 員  100人
託児有  無料(要予約・定員/10名)

主  催  市民ボランティア・せとうち交流プロジェクト
問合せ  蝦名宇摩(090-4964-4147) kara-isa-uma@docomo.ne.jp

https://www.facebook.com/photo.php?fbid=10202537735382949&set=pcb.10202537757303497&type=1&theater

*****

4月27日 京都府亀岡市

「亀岡市の防災計画 〜まちは私たちを守ってくれるのか?〜」
とき:4月27日(日)13:30〜15:30
ところ:ガレリアかめおか2F研修室
住所 :京都府亀岡市余部町宝久保1-1
参加費:カンパ制
講師:守田敏也さん
定員:30名
当日参加も歓迎!(参加者多数の場合、事前申込者優先となります)

主催:市民まちづくり 風の会

亀岡市は大飯原発をはじめとする福井県若狭湾の原発群にも近く、もしものことが起こった場合を想定して置かなくてはならない位置にあります。
亀岡市が被災したときに、私たちは何ができるでしょう?
まちは市民を守ってくれるでしょうか?
だけど、原発から30km圏内の亀岡市は市民のための防災計画策定の義務がありません。
自分たちでできること、みんなでできること、行政に求めていくべきことを考えましょう。

https://www.facebook.com/events/1407044162889801/

以下からも申し込みができます。
http://kokucheese.com/event/index/158132/

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

明日に向けて(816)トルコ・シノップ原発建設を止めるために(3)

2014年04月07日 23時30分00秒 | 明日に向けて(801)~(900)

守田です。(20140407 23:30)

トルコでの講演禄の3回目をお届けします。
今回は破局の可能性に対して、日本に住まうものがどうすべきなのかを書きました。
危機を危機として正面から受け止め、ただちに広域の避難訓練に着手すべきなのです。こうした取り組みこそが現場を支えることにもつながります。
現場の方たちが、やっと「多くの人が自分たちのこの危機感、苦しみを受け止めてくれた」と思えるだろうからです。
これは僕が折にふれて言っていることですが、この中にしか僕は危機を凌いでいくわずかな可能性を私たちのもとにたぐりよせる方法はないと思います。
今回はトルコでの講演の内容録になっていますが、ぜひ日本のみなさんこそが、多くの場で討論していただきたい内容です。

なおトルコの友人が、原発建設予定地になっているシノップ半島の美しい写真を送ってきてくれたので掲載します。
ほとんどが僕も訪れた場で、胸が熱くなりました!
https://www.facebook.com/photo.php?fbid=10202531477826514&set=pcb.10202531522027619&type=1&theater

*****

トルコ・シノップ原発建設を止めるために(3)

7、破局に対して、どう対応すべきなのか

このあまりに恐ろしい危機を前に、本来、わたしたち日本人、日本に住む人々は何をすべきなのでしょうか。
第一に必要なのは、この危機を国内に、世界にきちんと明らかにし、危機と正面から向き合うことです。
日本の中のあらゆる資産、人材をこの原発事故の本当の収束のために投入することです。世界中に助けを求め、世界の英知を結集し、日本だけでなく世界を破局的な放射能汚染から救うために努力を傾けることです。

それを考えたとき、私たちの国はとてもではありませんが、オリンピックなどやっている場合ではないのです。そこにかける資金、資材、人材のすべてを福島原発事故の処理に注ぎ込むべきです。それは世界に対する私たちの国の絶対的義務です。
当時に私が強く主張しているのは、福島周辺だけでなく、半径250キロ圏に及ぶ地域で、広域の避難訓練を行うことです。もし大破局が起こった場合、3000万人が安全に避難することなどとても無理です。
だとしたらどうするのか。避難の優先順位などを決めておく必要があります。せめて子どもたちを、未来世代を救いたい。妊娠の可能性のある女性たちを救いたい。障がい者をはじめ、自力で逃げられない人の避難の手段を確保しておきたい。
完璧な避難はとてもできないのですが、しかし準備があれば少しでも多くの人を救うことはできます。

事故処理にあたる人々への徹底した教育も必要です。消防隊、警察官、自衛隊、工事関係者の人々は高線量地帯で働かざるを得ない。
私はいざというときに、自らの命を守るために仕事を辞める権利の確保も必要だと思っていますが、それでも誰かが放射能を浴びながら、人を助けることに従事しなければならない。
そうであれば、せめてもその方たちに少しでも被曝を軽減できる知恵を身に付けて欲しいし、それぞれの組織で被曝防護のアイテムを備蓄しておいて欲しい。いざというときのための準備にやることは本当にたくさんあるのです。

さらに私たちの国に50基もの原子炉があることを考えると、こうした訓練は全国各地で行う必要があります。
なぜか。福島原発4号機の危機が告げているように、原子炉は例え動いてなくても、燃料プールがある限り、破局的な危機を迎える可能性があるからです。それに全国で備えなければなりません。
実際私は西日本にある兵庫県の篠山市という小さな街で、原子力災害対策検討委員会の委員をしています。
日本の福井県というところに原発が20基近くも固まってあるのですが、篠山市はここから一番近いところで45キロにあります。高濃度の放射能が飛んできてしまう距離です。

このためたくさんの市の職員に私は繰り返し講習を行っていますが、その際も完璧な避難はとても無理なことを知った上で、少しでも被害者を少なくすることを訴えています。
私は「原発災害対策は人柱を建てることです」とも言っています。人柱とは古の日本が、建物の安全などを祈願するために、人を生贄にして安全を祈った残酷な行為ですが、あたかもそれと同じように誰かが被曝覚悟で人を守らなければならないのです。

私がこのようなことを強調するのは、現に今、私たちの国はたくさんの人柱を、福島に建てているからです。原発作業員の方たちが毎日、大変な量の放射線を浴びながら仕事をしています。現場はまるで放射能の泥沼のようなところです。それが原発事故の現実です。
にもかかわらず、安倍首相は、「原発はコントロールされている」と語ったわけですが、実はこの言葉で一番、傷ついたのは福島や被災地の人々とともに、現場の作業員の方たちなのです。
今、私が述べてきた福島原発の瀕死の状態は、誰よりも現場の作業員の方たちがよく知っています。いや、おそらく私以上に、現場の深刻さを知っているでしょう。では現場作業員の方たちはどのような気持ちで働いているのでしょうか。
私の友人の知人が現場で働いているのですが、朝、出勤する時に「そいじゃあ、今日も、地球を守ってくっから」と言って出かけるのだそうです。そうです。作業員の方たちが、日々、体を放射線で貫かれながら、地球を守ってくださっているのです。

しかし安倍首相が大嘘をつき、政府も東電もマスコミも、この大危機を伝えないため、現場は士気がさがるばかりです。労働条件も悪化し、給料もさがるばかり。しかも被曝のために頻繁に人が交代せざるを得ず、ベテランがほとんどいなくなってもいるといいます。
こんな状態でどうしてこの困難な仕事をやり遂げることができるでしょうか。私はこのままでは必ずどこかで破綻してしまうと思います。
これに対して、国民、住民がこぞって避難訓練を開始したらどうでしょうか。現場の方たちは、「やっと自分たちが直面している苦労を国民、住民が知ってくれた」と思うでしょう。
また悪化している労働環境にもメスが入り、作業員の方たちの被曝防護や医療援助も進むでしょう。そのことが現場を少しでもよくし、その分、危機を遠ざけうると私は思うのです。
私たちにきてしまうかもしれない巨大余震はとめられません。しかし私たちは人の心を支えることができます。そのために日本中で原発災害対策を積み上げ、避難訓練を行うことが必要です。そのことが日本を救い、世界を救う道だと私は思います。

8、漏れ続ける汚染水

安倍首相の、「原発はコントロールされている」という嘘が、いかにひどいものか、私たちを危険に陥れているものか、これでお分かりかと思いますが、続いて、「汚染水は完全にブロックされている」という嘘も批判しておきたいと思います。
図をご覧下さい。これはスイス大使館なども利用している図ですが、まずおさえておくべきところは、この福島原発サイトは、その下に地下水が大量に流れているところにあるということです。流れている量はなんと推定で1日1000トンです。
どうしてそんなところに原発を建ててしまったのかと嘆かざるを得ないのですが、実はもともとここの土地はもっと高くなっていたのです。そこに原発を建てれば、まだしも地下水は遠いいところに流れていました。
原発は冷却のために大量の水をくみあげなければなりません。その経費を削減するため東電は土地を切り崩してしまったのです。そのためこの原発は、2011年の事故の前から、地下水が吹き上げてきて困っていました。

事故後、3つの原子炉がメルトダウンしてしまったので、常に冷却水をいれ続けなければならなくなりましたが、核燃料に触れるため激しく汚染されてしまいます。
これがタービン建屋に戻ってきますが、そこに地下水が入り込み、高濃度の汚染水と混じり合い、また外に出て行って、海にまで達してしまっています。
さらに今年になって、格納容器が思ったよりも激しく破損していて、そこからも汚染水がどんどん漏れ出していることが発見されました。

3号機など、昨年の12月まで核燃料のほとんどが原子炉圧力容器の中にあると東電によって推論されてきたのですが、どうもそうではないらしい。ほとんどが下に落ちてしまい、しかも冷却水もその多くが格納容器から漏れてしまっていることもわかってきました。
こうして激しく汚染された水が海に向かっているのですが、その数は1日に400トンと言われています。東電は400トン、日本政府は300トンと言っています。
しかし私はこれはかなりいい加減な数値だと思います。もしきちんと測れていれば、このようにきりのいい数値になるはずがありません。956.5トンとかそんな数になるはずです。
要するにどれほどの地下水が流れているのかも、そのうちどれだけが核燃料による汚染に接触し、海に流れ込んでいるのかも、きちんと測れてなどいないのです。
地下水の流れが複雑で、把握しきれないからです。そのため非常に大雑把に出された数値が、1日1000トンとか400トンとかいう数字にほかならないのです。

明らかなことは、大変な量の放射能汚染水が、1日、何百トンという単位で、海に流れ込んでいるという事実です。
東電はこれを汚染水と溜め込むタンクをつくることで防ごうとしてきましたが、もともと大量の水を長期的に溜め込むためのものではないので、次々とこのタンクからも高濃度の汚染水が漏れ出してしまっています。
このため、福島原発サイトは汚染水の泥沼のようになっているのです。一体これでどうして、汚染水が完全にブロックされているなどと言えるのでしょうか。あまりにもひどいウソにほかなりません。 海は継続的に汚染され続けているのです。

実は安倍首相がオリンピック招致演説をした翌日、東京電力自身が、「完全にブロックされている」という発言を否定しました。なぜか。東電は自分の生き残りの道をかんがえることだけはとても優秀な企業です。
今、東電が処理の失敗をどれだけ明らかになっても、首相が世界に向けて大きな嘘をついてしまったので、政府が庇わなければならなくなっています。
それを承知で東電ははじめは安倍首相の発言を否定し、後になって、見解の相違はないと修正してみせたのです。これで東電は政府に対して優位に立ちました。

しかしそれで事態が何か改善されたわけではまったくありません。事実は把握でもできない大量の汚染水が海に入り続けているということにつきます。
毎日のように汚染水が海に流れ続けていることに私の胸は痛み続けています。海は世界につながっています。汚染は世界中に及ぶでしょう。とても申し訳ないことです。
しかしこの汚染水問題も、政府も東電も、福島原発の状態をまったく把握できていなことを物語ってもいます。だからこそ、明日、何が起こるかも分からないのです。そこに巨大な危機があるのです。

9、原子力村は危機を直視できない

最後に、これほどの危機があるのに、どうして日本政府が直視しようとしないのかというありうべき質問にお答えしておきたいと思います。答えはそれが原子力を推進してきたもののメンタリティーだとうことです。
彼ら彼女らはあまりに主観的で自分に都合のいいような事実しか見ようとしません。危機を直視する力に著しく欠けているのです。それが原子力発電を推進してきたコネクション=原子力村に共通の意識です。
危機を直視する勇気があるならば、スリーマイル島の事故のときに、チェルノブイリ事故の後に、世界中の原発はとまったでしょう。しかし彼ら彼女らはそうしませんでした。世界が完全に破滅してしまうまでそうでしょう。
だからこそ、今、私たちが立ち上がり、原子力の時代を終わらせなければなりません。そのために一緒に努力を重ねていきましょう。

続く 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

明日に向けて(815)トルコ・シノップ原発建設を止めるために(2)

2014年04月06日 12時00分00秒 | 明日に向けて(801)~(900)

守田です。(20140406 12:00)

トルコでの講演禄の2回目をお届けします。

美しいシノップを写した短いビデオと、シノップでの原発反対運動の写真も紹介しておきます。ぜひご覧ください。

Sinop'a dokunma!
https://www.facebook.com/photo.php?v=272193619607712

シノップでの原発建設反対運動 2013年11月、2014年1月
https://www.facebook.com/photo.php?fbid=10202511732772900&set=pcb.10202511747413266&type=1&theater

*****

トルコ・シノップ原発建設を止めるために(2)

4、福島原発は今なお瀕死の状態

さて、このような事故を起こした原子炉が今、どうなっているかです。安倍首相は「コントロールされている」と語りましたがとんでもない。ものすごく深刻な状態にあります。
まず1号機から3号機は、核燃料がメルトダウンしてしまったため、膨大な放射線が飛び出し続けています。どれぐらい強烈なのかというと、人間が近づいたらすぐに即死してしまうほどです。そのため1号機から3号機には人間が近づけないのです。
ではロボットや遠隔機材を使えばいいと思われるかと思いますし、事実、繰り返しそのようなことが試みられているのですが、放射線はロボットやさまざまな機器も容易に破壊します。すべての物質に影響するからです。
そのために決定的なことは、実は内部がどうなっているか、誰も見ることができないし、把握することができずにいるということです。
コントロールされているか、されていないかというような状態ではないのです。それ以前の状態です。そもそも内部がどうなっているかすら分からないのです。

とくにわからないのは溶け落ちた燃料がどのような状態になっているか。今、どの辺にあるかです。
圧力容器の下部に溜まっているのか。それともそこから抜け落ちて格納容器の下に溜まっているのか。さらに格納容器も突き破って、地中に潜りつつあるのか。それすらもわかりません。
ただ明らかなことは、ものすごい放射線を発しており、同時に、ものすごい熱を発し続けているということです。そのために冷却が必要で、1日に何百トンという冷却水が投入され続けています。
しかしそれがどれだけ確実に燃料にあたっているのかもわかっていない。冷却が安定的に行われているかどうかもわからない。とにかく状態が把握できていないのです。

このことが恐ろしいのは、今、1号機から3号機の中でどれほどの危機が進行しているのかもわからないということです。わかっているのは、安全だとはとても言えないということだけです。
いつどのような要因で、状態が悪化してしまうかもわからない。しかもそれをにわかに把握できないかもしれない。まるでいつ爆発するかもしれない人間に制御できない巨大爆弾があるようなものです。

一方で4号機は、核燃料が入っていなかったのでメルトダウンは起こりませんでした。しかし核燃料プールの下のフロアで爆発があったため、プールが宙吊りになっています。
東電も危険性を承知していて、下からつっかえ棒を入れていますが、どれだけの強度が出ているのかもわかりません。そもそも建設基準に沿ったプランとしては崩壊し、壊れているわけですから、これも安全だとはとても言えません。
もっとも恐ろしいのは、大地震の大きな余震がきて、建屋が崩壊してしまうことです。
いや福島原発はこれまで何百回という余震にさらされており、そのためにダメージを受けています。爆発のダメージも受けており、いつ燃料プールが壊れてしまうかもわからない。

もし何らかの要因でプールから水が抜けてしまったら、すぐに周辺の作業員は即死してしまうし、さらに燃料が溶け出して、最終的にはプールの下に穴をあけ、燃料体が落ちてしまいます。
プールの中には今もなお1300本近い燃料体が入っており、それが下に落ちたら、猛烈な放射能が大気中に出てしまうので、周辺には誰もいれなくなります。つまり福島原発のサイト全体から撤退しなければならなくなるのです。
ちなみにこの核燃料プールに事故発生時にあった核燃料の放射能総量は、セシウムだけで換算しても、広島に落とされた原爆で発生したセシウムのなんと16000倍もあります。それがすべて大気中に飛び出してきてしまうのです。破局の到来です。

5、福島原発事故が最悪化したらどうなるか。

もし事態が最悪化したらどうなるのでしょうか。実はこれには有力なシミュレーションがあります。2011年3月に、福島第一原発事故が進展しつつある中で、政府が行っていたものです。
どのようなものかというと、「福島第一原発1号機が再度の水素爆発を起こすなどして、現場での冷却などを基軸とする事故対処ができなくなり、結果的に1号機から4号機まで、次々と破たんする事態」です。
この場合、とくに4号機の燃料プールにある大量の燃料棒が大気に晒され、膨大な放射能が飛散することが予測されました。
これからの被曝を避けるため、なんと私たちの国の政府は、福島原発から半径170キロ圏を強制避難区域とせねばならないと判断していました。さらに東京を含む半径250キロ圏内が、希望者を含んだ避難区域になると想定していました。

実は私たちの国の軍隊である「自衛隊」に避難のための作戦の立案の指示が出されていました。その際の避難民の数は3000万人です。自衛隊の最高幹部は、後にある雑誌の取材に「命令を見た途端に絶望した」と述べています。
この想定の作成者は、政府に属する「原子力委員会」の近藤駿介委員長でした。このため政府内の対策チームで「近藤シナリオ」と呼ばれました。
最悪の事態を想定するようにと当時の菅首相が指示し、それに応じて作成され、2011年3月25日に政府に提出さました。これについては2011年12月に毎日新聞が報じているのでお見せします。
この「近藤シナリオ」の存在に政府関係者は大変なショックを受けました。この後に政府に呼ばれて首相補佐官に就任し、以降、事故対処にあたった民主党の馬淵澄夫議員が、このことを自著の中で触れています。以下、少し引用してみます。

「首都圏全体が避難区域となる」
「もし原子炉の一つが新たに水素爆発を起こし、冷却不能に陥ったとしよう。格納容器は破損し、中の燃料も損傷、大量の放射性物質が一気に放出される。
高線量により作業員は退避を迫られるため、これまで続けてきた注水作業を中断せざるをえない。冷却できなくなった他の原子炉でも、格納容器や燃料プールに残された燃料がやがて露出し、そこから新たに大量の放射性物質が放出される。
つまりどこか一つでも爆発が起これば、他の原子炉にも連鎖し、大規模な被害となるということだ。

シナリオで特に危険性が高いと指摘され、シミュレーションの対象となっていたのは1号機だった。
この1号機で水素爆発が起きた場合、高線量の放射性物質が放出され、人間が近づくことすらできず、全ての原子炉が冷却不能に陥る。その結果、八日目には2、3号機の格納容器も破損し、約12時間かけて放射性物質が放出される。
六日目から十四日目にかけては4号機の使用済み燃料プールの水が失われ燃料が破損、溶融し、大量の放射性物質の放出が始まる。約2か月後には、2、3号機の核燃料プールの干上がり、ここに保管されていた使用済み燃料からも放射性物質が放出される。
この場合、周辺に撒き散らされる放射性物質による被曝線量はどれほどになるのか。

最も大量の燃料を抱えているのは、4号機の使用済み燃料プールだ。
このプールに保管されている、原子炉二炉心分・1535体の燃料が溶け出ると、10キロ圏内における1週間分の内外被曝線量はなんと100ミリシーベルト、70キロ圏内でも10ミリシーベルトにも上ると推測されていた。
さらにチェルノブイリ原発事故時の土壌汚染の指標では、170キロ圏内は「強制移転」、250キロ圏内は「任意移転」を求められるレベルだった。
汚染の状況はひどく、一般の人の被曝限度である「年間1ミリシーベルト」の基準まで放射線量が下がるのに「任意移転」の場所でも約10年かかると試算されていた。
「福島第一原発から250キロ圏内」―それは首都圏がすっぽりと覆われるほどの広大な範囲だ。北は岩手・秋田、西は群馬・新潟、南は千葉や神奈川におよび、東京23区全てが含まれる。この圏内における人口は3千万人にも上った。
近藤シナリオにおける最大の衝撃はこの点にあった。」(『原発と政治のリアリズム』馬淵澄夫著 新潮社 p24~26)

日本政府は、国民・住民に当時から原発の状況はきちんと把握されているから安全だ、心配いらないと当時から繰り返し宣伝しました。多くの科学者やマスコミがこれに追従しました。
しかし政府内ではこのようなシナリオを手に対応を続けていたのです。破局寸前にありながらそれを国民にも世界にも教えなかったのです。
しかも最も大事なこと、私が強調したいのは、この破滅的な破局、チェルノブイリ事故をはるかに上回るカタストロフィーの可能性は、まだ完全に去ったわけではないということです。
とくに再度、大きな地震が来たら、この恐ろしいシナリオが実現してしまう可能性があります。私たちの国はまさに今、とんでもない大破局の瀬戸際に立っているのです。

6、危機に対する東電の対応

もちろん、東京電力とて、福島原発がこうした危機の前に立っていることを実はよく知っています。
そのため昨年から始めたのは、4号機の燃料プールから燃料を取り出して、地上のプールに移すことです。昨年11月半ばにはじまって、いままでで300体ぐらいの燃料を地上におろすことに成功しました。
私はこの作業が安全に完璧に進むことを心から願っていますが、しかし実際には大変困難な仕事です。プールの中にはガレキが散乱しているため、引き上げるときに間に挟まるとひっかかって抜けなくなってしまう可能性があります。

またさきほども述べたように、万が一、水から出てしまうと、たちまち作業員が即死してしまうほどの放射線が出てくるため作業には極度の慎重さが要求されます。しかもそれを放射線を浴びながら行わなくてはなりません。
さらに燃料を宙吊りしているときに地震に襲われて落下してしまう可能性はないか。非常に危険で辛く、不安が山済みの作業なのです。

ただし燃料プールからの燃料の抜き取りは4号機だけで終わるのではありません。ここにもっと大きな困難があります。燃料プールはすべての原子炉にあり、1号機から3号機を合わせるとやはり1500体はあるのです。
しかもこれらの原子炉はさきほども述べたように、放射線値が高すぎて人が近づくことができないのです。ロボットもすぐに壊れる。4号機はまだ人が中に入って作業ができますが、そうはいきません。
ここにある燃料プールの中の核燃料をどうやってプールから取り出して降ろすのか。おそらく東電にも算段がついてないと思います。
しかし燃料プールにある限り、倒壊の危機は続くのです。いったいこれらをどうするのか。福島原発の真の事故収束のための道には、本当に巨大な困難の山が次々と連なっているのです。

続く

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

明日に向けて(814)【再掲】トルコ・シノップ原発建設を止めるために(1)

2014年04月05日 23時30分00秒 | 明日に向けて(801)~(900)

守田です。(20140405 23:30)

このところ連続的にトルコ・シノップへの原発輸出に反対するアクションを行っていますが、ここでトルコのイスタンブールやシノップ、イズミールで僕が行った講演内容をアップしておきたいと思います。

実は2月28日にベラルーシ・ミンスクのホテルから1回目を出しています。「明日に向けて(804)トルコ・シノップ原発建設を止めるために(1)」がそれです。旅の間に続きも完成させていたのですが、その後、濃密な交流が続き、発信の時間がまったく取れなくなってしまいました。
そのため1月以上も間があいてしまったので、(1)の内容を再掲したのちに、それに続く内容を何回かに分けてアップしていきたいと思います。

なお実際の発言は、時間の制約があることと、通訳の関係でできるだけ話を短く鮮明にした方が良いと考えたため、もっと短いものになりました。
これを通訳者のプナールさんが、僕の言葉の調子も含めて完璧に訳してくださったため、非常にインパクトのある発言が実現できたのではと思っています。
それに加えて、トルコの方たちの原発問題への関心がとても強いこともあって、ずいぶんたくさんのマスコミが、この講演のことを報道してくださいました。その一つ、非常にメジャーな雑誌、ATLASに載った報道をご紹介しておきます。

http://www.kesfetmekicinbak.com/
https://www.facebook.com/photo.php?fbid=641457292575206&set=a.168717229849217.44896.168146003239673&type=1&theater

facebookの方を見ると、たった今の数字ですが、「いいね」が1080人、「シェア」が1945件に達しています!!ありがたい。もの凄い反響です!

*****

トルコ・シノップ原発建設を止めるために(1)

第一部 福島原発は今なお瀕死の状態にある。

親愛なるトルコのみなさま。
私は日本の京都という街からやってきた守田敏也といいます。ジャーナリストであり、アクティビスとです。福島第一原発事故以降、人々を放射線被曝から守るために走り回ってきました。幾度も福島に入って取材をするとともに、多くの人々をインタビューし、たくさんの記事を書いてきました。
また各地で、放射線被曝、とくに内部被曝の危険性を訴える講演を行っています。福島原発事故以降の講演回数は280回を超えますが、海外での講演は今回が初めでです。その機会がトルコで与えられたことを、私は非常に喜んでいます。

なぜかと言えば、今、私たちはシノップでの原発建設を止めるという共通の課題を負っているからです。そのためには福島原発事故の悲惨な経験、危険が去ったわけではまったくない現状を、トルコのみなさんが正確に知っていただくことが非常に大きな意味を持ちます。
そのため、私は今日の講演を待ち望んでいました。どうか話をお聞きください。

1、日本の首相は大嘘つき

わたしたち日本人とトルコのみなさんは、他の不思議な縁でも結ばれています。2020年のオリンピック開催の権利をめぐって、東京とイスタンブールが争ったからです。
ご存知のようにオリンピック開催は東京に決まりましたが、このとき私たちの国の安倍首相は大きな嘘をつきました。彼がついた嘘は3つあります。一つは福島原発がコントロールされていると言ったこと。
二つは放射能汚染水は完全にブロックされていると言ったこと。三つは現在も未来も福島原発事故による健康被害はまったくないと言ったことです。

この発言の効果もあって、オリンピック開催は東京に決まりましたが、私たち-日本で放射能の危険性と闘っている人々-は、この首相発言を強く恥じています。
福島原発の状態はとてもコントロールされているとは言えません。それどころか極めて危険な状態が続いています。こんな状態の日本には、とてもではないですが、オリンピックを開催する余裕などありません。
また東京にも放射能汚染の影響がおよんでいます。原発がまだまだ危険で、汚染もある東京に世界中から平和の祭典で人々を集めるのは許されない行為です。

私はオリンピック開催に大反対であり、即刻、返上すべきだと思っています。もしイスタンブールのみなさんが、オリンピック開催に意欲的であれば、イスタンブールにお返しすべきです。
ただしイスタンブールでもオリンピック開催のための自然破壊に反対する運動があったと聞いていますから、オリンピックそのものがもはや問い直されなければならないのかもしれません。その点はともあれ、今日は私たちの国の首相がついた大嘘を暴く形で話を進めたいと思います。
オリンピック委員会の委員たちは騙されてしまいましたが、みなさんはけして騙されないでください。

2、福島原発の構造

まず私がお伝えしたいのは、福島第一原発が今なお瀕死の状態であり、きわめて危険なあり方が続いているという事実です。福島第一原発には6基の原子炉がありますが、このうち4基が激しく壊れました。
とくに運転中だった1号機、2号機、3号機はいずれも核燃料が溶融し、メルトダウンを起こしました。スライドは東京新聞という原発のことを一番、きちんと報道している新聞に載った2014年1月現在の原子炉の様子です。

福島原発の構造をお見せします。この原発の一番内側にあるのが原子炉圧力容器と言います。通常ではこの中で核分裂反応が行われています。
圧力容器の中は水がはってあります。核分裂反応で出た膨大な熱がこの水に伝わり、蒸気が発生します。この蒸気がタービン建屋に送られてタービンを回し、その力で発電を行うわけです。このようにそもそも原子炉とは巨大な湯沸かし器でしかありません。
しかも発電に使われるのは発生した熱の三分の一、あとの三分の二は排熱として海に捨てられています。発電の仕事よりも、地球を温めている方が多いのです。

この原子炉圧力容器の周りを覆っているのが、原子炉格納容器です。この容器は通常運転の時にはなんの役割も果たしていません。格納容器の使命は、もし圧力容器内でトラブルが発生し、放射能が漏れ出してきた時に、この容器内に閉じ込めることです。放射能漏れに対する最大のガードです。
ところが福島原発事故では、この格納容器が、壊れてしまいました。そのため膨大な放射能が漏れだしたのです。その意味で、福島原発はプラントとして完全に破産しています。

3、事故はどのように起こったか

福島原発事故はどのように起こったのか。実は今もって真実は十分に解明されていません。
原子炉の中が見えないからですが、原発に批判的な科学者たちの分析で、地震によって配管が破れてしまい、原子炉の中の水が抜けてしまった可能性が強く指摘されています。つまり地震によって壊れたのだということです。

これを日本政府と東京電力は否定しています。彼らは地震のあとに起こった津波で、電源が奪われ、冷却機能が働かなくなったからだと言いはっています。しかしこれは嘘です。実際には大津波が来る前に壊れていた可能性が高いのです。
政府や東電はこの事実を認めると、日本中のすべての原発が安全基準を満たしていないことが明らかになり、再稼働の道が完全に閉ざされるので、地震の影響を否定していますが、さまざまなパラメーターが、津波が来る前に異常が発生したことを告げています。

私がこの点を強調するのは、ここトルコが日本と同じく地震大国だからです。1999年の大地震では2万人に近い方が亡くなられたとお聞きしましたが、そのようなところになおさら原発を建てるべきではないことが、福島原発事故の教訓から明らかです。

さて原子炉から水が抜けるとどうなるでしょうか。地震があったとき、原発の運転は止めることはできたのですが、内部にある核燃料は、運転が止まってからも非常に長い間、熱を発し続けます。そのために水の中に入れておくのが絶対条件なのです。何十年もです。
ところが水が抜けてしまったために、核燃料が溶け出しました。溶けて圧力容器のそこに落ちてしまうことを「メルトダウン」と言います。さらにメルトダウンした核燃料は、圧力容器の下部を溶かしてしまい、格納容器の底にと落ちていきました。このことをメルトスルーと言います。

メルトダウンするとどうなるか。ものすごい熱量が発生して、圧力容器内はたちまち大変な高圧状態になります。そのため内部にたまったものすごい濃度の放射能を含んだ蒸気が格納容器内へと噴出されました。吹き出すことで、圧力容器を爆発から守るためです。 
このとき大量の水素が発生しました。水素は格納容器の上部のフタの部分から、放射能を含みつつ、外に漏れ出して建屋の中にたまり、何らかの要因で火がついて爆発しました。これが福島原発1号機の爆発です。

同時に2号機では、内部に吹き出した放射能にまみれた水蒸気を、格納容器が押さえ込むことができなくなりました。このため格納容器の下部のどこかで爆発が起こりました。この時ものすごい量の放射能が発生し、外部に漏れ出しました。
爆発は3号機でも起こりました。この爆発を政府や東電は、1号機と同じ、水素爆発だったと言い張っていますが、爆発の規模や様子が明らかに1号機とは違っていました。もっと激しい爆発が起こったのです。
このため多くの人々が、この爆発は水素爆発ではなく、核燃料の一部が核反応をおこした「臨界爆発」だったのではないかと指摘しています。

さらに事故は4号機にも及びました。4号機は大地震があっとき定期点検中で運転をしていませんでした。核燃料も原子炉の中にはなく、燃料プールの中に入っていました。
燃料プールは、原子炉の上から燃料交換をするために原子炉建屋の高いところ、5階のフロアに作られていて、もともと構造的な危険性が指摘されていたものです。
ところがこの4号機でも爆発が起こりました。東電は3号機で発生した水素が入り込み爆発を起こしたと言っていますが、真相はわかっていません。

しかしこの爆発やそれに続く火災などが起こる中で燃料プールが冷却できず、水がどんどん減っていってしまいました。燃料がむき出しになるとものすごい放射線が飛び出すし、冷やされない部分から溶け出してしまいます。

燃料は1500体も入っていて、そのまま水が無くなると大変な状態になるところでしたが、偶然に近くにあった水が燃料プールに入り込み、干上がる寸前で事故の進行が止まりました。

これら4基の原発が次々と事故を起こすことで本当に大変な量の放射能が発生しましたが、実はその総量もいまだにはっきりとわかっていません。チェルノブイリの10分の1という説から、チェルノブイリと同等だったのではないかというさまざまな推論があります。
これらの放射能が私たちの国の民を襲ったのです。

続く

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

明日に向けて(813)民主党議員にトルコとの原子力協定反対をツイートしてください!

2014年04月04日 12時08分45秒 | 明日に向けて(801)~(900)

守田です。(20140404 12:00)

もうすぐ衆議院本会議が開かれ、原子力協定が可決されようとしています。
もう時間がありませんが、少しでも議員たちに反対の声を届けたいです。
ツイッターをおこなっている方、ご協力ください。
今後のことも見据え、参議院の議員にもアプローチしたいと思います。

以下、ツイッターでの協力を呼び掛けているFOE JAPAN 満田さんのメールを転送します。

*****

みなさま(重複失礼・拡散歓迎)

FoE Japanの満田です。
トルコの原子力協定ですが、本日の13時から(だと思います)の衆議院本会議で
採決予定です。下記からインターネットで中継がみれます。テレビでも中継され
るかもしれません。
http://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php

そのあと早々に参議院にかかると思います。

ツイッターなさっている方、ぜひ国会議員にトルコとの原子力協定に反対するよ
うにメンションを送ってください(とりわけ、内心反対らしき議員が多い民主党)。
議員によっては、本人がみているものもあります。

--------------------------------------------------
例文) XXXには各議員のツイートアカウントを入れてください。

@XXXXX トルコとの原子力協定に反対して下さい!福島原発事故が収束しておら
ず、多くの人たちが苦しんでいる中、原発輸出を進めることは許されません。ト
ルコの人たちも反対しています!

@XXXXX トルコとの原子力協定に反対を!地震国トルコに原発輸出をするのです
か? 大きな危険を押し付けることになります。 核のゴミはどうするのですか?

@XXXXX トルコとの原子力協定に反対を!国会議員として、国民の反対の声に耳
を傾けてください。シノップの美しい海と生態系を守りたいと地元の人たちも反
対しています!

@XXXXX トルコとの原子力協定に反対を!まったく審議が尽くされていません。
参考人をよんで、しっかりと審議をしてください。
--------------------------------------------------

国会議員のツイートアカウントは、ツイッターのページの検索のところで「国会
議員」「衆議院議員」とか「民主党」とか入れるとでてきます。以下にいくつか
貼り付けます。衆参まじっています。

金子洋一・民主党参議院議員(神奈川選出)認証済みアカウント
@Y_Kaneko

古川元久 (Moto Furukawa)認証済みアカウント
@Fullgen

安井美沙子(民主党・参議院議員)認証済みアカウント
@nekoyasui

蓮舫認証済みアカウント
@renho_sha

福山哲郎認証済みアカウント
@fuku_tetsu
→外交防衛委員会理事です。福山氏に対するNGOの期待はたかかったのですが、
玉虫色です。

田嶋 要 [Kaname Tajima]認証済みアカウント
@kanametajima

長妻昭認証済みアカウント
@nagatsumaakira

細野豪志認証済みアカウント
@hosono_54
→ちなみに細野氏は、もっとも強硬な原発輸出推進論者のようです。

階猛認証済みアカウント
@shinatakeshi

参議院議員 前川きよしげ認証済みアカウント
@k_maekawa

原口 一博 認証済みアカウント
@kharaguchi

藤田幸久認証済みアカウント
@yfujitaDPJ

大西健介認証済みアカウント
@oniken0024

林久美子認証済みアカウント
@kumikouki

柚木みちよし認証済みアカウント
@yunoki_m

津村啓介認証済みアカウント
@Tsumura_Keisuke

石橋みちひろ認証済みアカウント
@ishibashi2010

泉ケンタ認証済みアカウント
@office50824963

藤本祐司認証済みアカウント
@fujimoto_yuuji

広田 一認証済みアカウント
@hirota11

増子輝彦認証済みアカウント
@Mashiko_sangiin

参議院議員 榛葉賀津也 事務所認証済みアカウント
@SHIMBA_OFFICE

長島昭久認証済みアカウント
@nagashima21

森本真治認証済みアカウント
@Morimoto_Shinji

山本忠相(和歌山市議・民主党)
@tadasuke_y

藤末 健三認証済みアカウント @fujisue

梅村聡認証済みアカウント @umemura1satoshi

たけまさ公一事務所認証済みアカウント @takemasakoichi

大久保 勉認証済みアカウント @TsutomuOkubo
----------------------------------

参議院の議院運営委員会の委員長・理事たちに、参考人の招致を求めましょう。
http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/konkokkai/current/list/l0029.htm
本メールの末尾にリストを添付しています。
委員長    岩城 光英    (自民)    
http://www.iwaki-mitsuhide.jp/
【いわき事務所】 地図
 〒973-8411 福島県いわき市小島町1-8-7
 TEL:0246-27-6510 FAX:0246-27-6635
 【国会事務所】
 〒100-8962 東京都千代田区永田町2-1-1 参議院議員会館318号室
 TEL:03-3581-3111(代表)内線:50318 FAX:03-6551-0318

理事    石井 準一    (自民)    
理事    長谷川 岳    (自民)    
理事    水落 敏栄    (自民)    
理事    小見山 幸治    (民主)    
理事    前川 清成    (民主)    
理事    谷合 正明    (公明)   

<ポイント>
・トルコは地震国。
・地元の反対も強い。
・政情としても、シリアとの緊張関係からいっても、リスクが高い。
・衆議院の審議は、あまりに短く、議論がつくされていない。福島原発事故後、
はじめて政府により署名された原子力協定として、審議をつくすべき。
・国民の多くは反対している。
・原発輸出に関して、日本側の安全確認体制が、構築されていない。(以前、原
子力安全保安院が担っていたのだが、原子力規制委員会が拒否)
参考)<原発輸出>安全確認、形だけ。 経産省「国内向け」と落差
毎日新聞 12月22日(日)9時43分配信
http://blogs.yahoo.co.jp/neggy_0313/62711567.html

多くの市民が、原子力協定に反対していることをみせることは、たいへん重要だ
と思います。市民が国会に反対の声を伝えることにより、国会議員も反対しやす
くなります。
ご協力をお願いいたします。

--
満田夏花 MITSUTA Kanna <kanna.mitsuta@nifty.com>
携帯:090-6142-1807

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

明日に向けて(812)日本・トルコ、UAE原子力協定の衆議院可決に反対しよう!

2014年04月03日 23時00分00秒 | 明日に向けて(801)~(900)

守田です。(20140403 23:00)

原発輸出に向けた動きが加速化しています。
4月1日、民主党は党内に多くの反対の声があるにもかかわらず、日本からの原発輸出の前提になるトルコとUAEとの間で締結しようとしている原子力協定への賛成を決めてしまいました。
これを受けて、2日には衆議院外務委員会が開かれ、わずか5時間の審議で、自民、公明、民主の賛成多数により、この協定が可決されてしまいました。
さらに明日4日、衆議院本会議にこの問題がかけられ、自公民の圧倒的多数で可決されてしまう可能性が強まっています。

あまりに時間がありませんが、今、少しでも多くの反対の声をあげておくことが重要です。明日の可決を食い止められなくても、後々に影響を残せます。
民主党の中でも菅直人元首相をはじめ、決議に「造反」が出ると言われており、たった今、民主党執行部が、処分もちらつかせながら「造反」を食い止めようと暗躍していることが伝えられています。
これに対して私たちの側からも少しでの原発輸出反対のまっとうな声を議員たちに届けましょう。

トルコでもこの協定の国会での可決に大きな関心が集まっており、日本の民衆が反対の声を上げることへの期待が語られています。
そうしたことは僕がトルコで行ったシノップ原発に反対する講演が、トルコの多数のマスコミに繰り返し取り上げられていることにも表れています。
その一つをご紹介します。トルコの有名な雑誌、ATLASのWEBサイトのカバーページに載った、3月10日のイスタンブールでの講演に関する記事です。トップに掲載された4つの記事のうちの2番目です。ご覧ください!

ATLAS
http://www.kesfetmekicinbak.com/
https://www.facebook.com/photo.php?fbid=641457292575206&set=a.168717229849217.44896.168146003239673&type=1&theater

ちなみにFacebookの記事には、今現在で「いいね」を876人が押してくれており、シェアは1236件にも及んでいます!

続いて3月13日のイズミールでの講演に関する記事もご紹介しておきます。
http://www.emo.org.tr/genel/bizden_detay.php?kod=102064&tipi=2&sube=7#.Uz1macuKB9A

シノップ原発反対の動画(反対運動のスライドショー)もご紹介しておきます。
https://www.facebook.com/photo.php?v=306551249245&set=vb.588574245&type=2&theater

こうしたトルコの方たちの、美しいシノップを守ろうという思いに応えたい。そのために少しでも多くの反対の声を国会議員たち、とくに内部に反対者のいる民主党に届けたいです。
ではどうするのか。ますは繰り返し紹介しているものですが、民主党議員に原子力協定への反対を呼び掛けるオンライン署名がありますので、まだの方はぜひ署名をしてください。また今からでも拡散をお願いします!

トルコへの原発輸出に反対を/野党第一党としての責任を
http://goo.gl/715INO

またこの署名を呼び掛けて下さったFOE JAPANから次の行動の提案が出されているので、それを紹介します。
末尾に民主党の役員リスト、連絡先なども記載されています。可能な方、簡単なものでも良いので、原子力協定反対の声を届けて下さい。
以下、FOE JAPANから、オンライン署名に賛同していただいたみなさんにあてられたメールを転載します。

*****

トルコとの原子力協定に反対するオンライン署名にご賛同いただいた皆様

4月3日、衆議院外務委員会において、わずか5時間の審議で、自公民賛成多数により、トルコ・UAEとの原子力協定が可決されました。
4日(金)の衆議院本会議にかかる見込みです。このままでは自公民圧倒的多数の賛成で可決されてしまうでしょう。同じ可決されるにしても、ここで多くの国民が反対しているということを示していくことはたいへん重要です。

みなさまからいただいた署名やメッセージを、随時、鍵にぎると思われる国会議員に届けていますが、可能な範囲で、みなさまからも、個別に国会議員に反対の声を届けてください。
とりわけ、鍵握る民主党の議員に対する働きかけを、お願いします。
下記のページから、選挙区別の議員を調べることができます。本メールの下の方に民主党の役員の連絡先を掲載しています。
http://www.dpj.or.jp/members

もちろん、民主党だけではなく、自民党・公明党の国会議員にも可能であれば、ぜひ働きかけてください。

参考)
3日の外務委員会の審議では以下のことが議論になりました。

・トルコとの原子力協定には、放射性廃棄物に関して、「両締結国が書面により合意する場合に限り、トルコにおいて、濃縮または再処理することができる」と記されている。
みんなの党の小熊議員、共産党の笠井議員、維新の阪口議員、河野議員などがこの点を質問しました。

参考記事:原子力協定、審議紛糾も 対トルコ、再処理・地震に懸念
(朝日新聞2014年1月7日)
http://digital.asahi.com/articles/DA3S10912580.html?iref=comkiji_txt_end_s_kjid_DA3S10912580

外務省は、「日本が合意することはない。それについて、トルコに伝達」としましたが、笠井議員は、「それについては公文書になっていない」と追及。外務省側の記録を開示するように迫りましたが、外務省は外交上の信義則を理由に断りました。
・放射性廃棄物の処分方法は決まっていない。トルコは「放射性廃棄物等安全条約」を批准していない。ロシアとの協定では、ロシアが引き取ることになっているらしい。
・トルコの原子力損害賠償制度は、未構築。国内法も未整備。パリ条約などに基づき、今後、日本と同様、原子力事業者への責任集中を行うような制度をつくっていくであろう。
・トルコ・UAEとの原子力協定は、福島原発事故後、はじめて政府が署名した協定(2011年に国会で容認されたベトナムなどとの原子力協定は、3.11以前にすでに署名されていたものです)

残念ながら、多くの民主党議員が反対しているのにもかかわらず、昨日、対応を一任された「次の内閣(NC)」で、民主党として賛成することが決められてしまいました。
民主、原子力協定で賛成へ 採決時に造反者出る可能性も
http://www.asahi.com/articles/ASG415DYYG41UTFK00C.html

<ポイント>
・トルコは地震国。
・地元の反対も強い。
・政情としても、シリアなど周辺国との緊張関係からいっても、とりわけリスクが高い。
・衆議院の審議は、あまりに短く、議論がつくされていない。福島原発事故後、はじめて政府により署名された原子力協定として、審議をつくすべき。
・国民の多くは反対している。
・原発輸出に関して、日本側の安全確認体制が、構築されていない。(以前、原子力安全保安院が担っていたのだが、原子力規制委員会が拒否)

参考)<原発輸出>安全確認、形だけ。 経産省「国内向け」と落差
毎日新聞 12月22日(日)9時43分配信
http://blogs.yahoo.co.jp/neggy_0313/62711567.html

多くの市民が、原子力協定に反対していることをみせることは、たいへん重要だと思います。市民が国会に反対の声を伝えることにより、国会議員も反対しやすくなります。
ご協力をお願いいたします。

-----------------------------------------------------------
下記は鍵握ると思われる民主党の役員のリストです。

代表 海江田 万里: 
衆議院第1議員会館609号室
電話: 03-3508-7316 FAX: 03-3508-3316
Facebook https://www.facebook.com/banrikaieda
http://www.dpj.or.jp/member/155

代表代行 高木義明(長崎市)
衆議院第2議員会館401号室
電話: 03-3508-7420 FAX: 03-3503-5757

副代表 北澤俊美 (長野市)
参議院議員会館424号室
電話: 03-6550-0424 FAX: 03-6551-0424

前田 武志
参議院議員会館715号室
電話: 03-6550-0715 FAX: 03-6551-0715

田中 直紀 (新潟)
部屋番号: 参議院議員会館306号室
電話: 03-6550-0306 FAX: 03-6551-0306

原口 一博(佐賀)
部屋番号: 衆議院第1議員会館307号室
電話: 03-3508-7238 FAX: 03-3508-3238

幹事長代行 中川 正春(三重)
部屋番号: 衆議院第1議員会館519号室
電話: 03-3508-7128 FAX: 03-3508-3428

-------------------------------------------------

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

明日に向けて(811)ああベラルーシ、ああウクライナ(中)

2014年04月02日 08時00分00秒 | 明日に向けて(801)~(900)

守田です。(20140402 08:00)

ベラルーシ訪問の続きです。

4日目はミンスク市からゴメリ市への旅でした。この旅もとても印象深かった。バスで4時間ほど揺られてゴメリに向かったのですが、その車中で、ベラルーシにもう20年近く毎年通い続けているIPPNWドイツ支部のシーデントップさんが、この国の概要を教えて下さいました。
僕にとってとてもショックだったのは、この国がソ連時代の対ナチス戦のもっとも激しい攻防地点であり、町々がナチスによって壊滅的な被害を受けたということでした。
ナチスは1941年6月に、それまでの「独ソ不可侵条約」を破り、一斉にソ連領土への侵攻を開始しました。「バルバロッサ作戦」と命名された侵略でしたが、そのとき侵攻は大きく三つにわけて行われました。
北方軍集団が、バルト三国を経てレニングラード攻略を目指したのに対し、最も大規模だった中央軍集団が、ベラルーシを横断して西にある首都のモスクワ攻略を目指しました。南方軍集団は、ソ連の穀倉地帯だったウクライナの制圧を目指しました。

当初、ソ連赤軍はドイツ軍の侵攻の可能性を過小評価していたため、多大な犠牲を出しつつ攻め込まれてしまいましたが、それこそミンスク付近で反撃に転じ、壮絶な戦闘を繰り返します。これに対してドイツは占領地で激しい略奪や殺戮を行い、撤退する時には焦土作戦を敢行しました。
まさにベラルーシは、モスクワを守るための盾となり、ナチスの攻撃を一身に受けてたくさんの血を流したのでした。多くの街が壊滅し、蹂躙されてしまいました。
ウクライナも同じです。現在の首都のキエフでの攻防が最も激しく、業を煮やしたヒトラーはモスクワに進撃する中央軍集団を途中からキエフに振り向けさせました。結局、ドイツ軍はキエフを落せず、この町は後にソ連政府から「英雄都市」の称号をもらったのだそうです。
ナチスによってさんざんに攻撃され、蹂躙され、たくさんの血を流したベラルーシとウクライナ。その戦争の傷跡から町を作り直し、戦後40年かけてもう一度、豊かさを取り戻しつつあったときに、この地域はチェルノブイリ事故に襲われたのでした。何ということでしょうか。

特にゴメリの町は汚染が激しく、舗装などされていなかった道路を通じて、どんどん汚染が拡大したため、当時のソ連政府がリクビダートルや住民を動員して、真っ先に道路の舗装化を行ったのだそうです。そのための工事のときに、土の中からナチスのヘルメットやたくさんの遺体が次々と出てきたそうです。
さて、そのゴメリでも病院に案内されました。ここは子どもだけでなく、リクビダートルの方たちも専門的にみている病院でした。病院の中を案内されて、幾人かの医師に質問をすることができました。
しかし何とも言えなかったのは、子どもたちの白血病を含めて、明らかに放射線障害ではないかと思われる多くの症例に対して、医師たちが決まったように放射能との因果関係は分からない。証明されていないと答えたことでした。
前掲の書物を紐解いても同じような見解が載せられています。「今日までの調査研究では、甲状腺がん以外の悪性腫瘍の発生頻度の増加と原発事故による放射線の因果関係は証明されていない」(同書p54)

小児白血病への対策などは手厚いものがあるものの、この国の政府も医師たちも、放射能と健康被害との関係では、ICRP(国際放射線防護委員会)など、非常に被害を過小評価する国際機関と変わらない見解を述べているのです。
どうしてこうなるのでしょうか。まだまだ多くのことを分析しなければなりませんが、それでもシーデントップさんの解説等も通じて見えてきたのは、まずはソ連のもとで「社会主義体制」をとってきたこの国が、今、プライバタイゼーション(私有化)の劇的な進行過程にあるということです。
社会主義から資本主義に変わりつつあるわけですが、しかしその場合の資本主義とは、社会保障制度などを手厚くしようとした、第二次世界大戦後の自由主義各国が採用したケインズ主義的資本主義ではなく、弱肉強食の論理にもとづいた新自由主義の資本主義です。
しかも社会資本の多くが国有財産だったこの国の新自由主義化とは、公共財のもぎ取り合戦を意味しています。旧来の社会主義的官僚制の下で力を持っていた人々が、真っ先に新自由主義化し、公共財の私物化を始めたのです。

ではどのような人々が力を持っているのか。この国の体制がしばしば「独裁」と呼ばれるように、もともと旧体制の高官だった一部の人たちが実権を握っているわけですが、実は国外にも大きな勢力がある。ロシアで「資本家化」した人々です。これらの人々が「投資」を名目に、ベラルーシの公共財もどんどん私物化している。
例えば、私たちが泊まったIBBミンスクの宿舎の周りは、開発地域で、どんどんと高層マンションが建てられている最中でした。そのうちの一室に住む方が、会議のアテンドにきてくださったのですが、彼女が住まうその高層マンションのオーナーは、なんと現ロシア市長婦人なのだそうです。
そのように多くのロシア資本がこの国に入り込んできている。政府もロシア資本と密接な関係を保っていて、例えばロシアの車を買うと税が安く、ヨーロッパの他の国の車を買うと100%もの税がかけられてしまうのだそうです。中古になると免税されるそうですが、中古という規定は10年以上経たないと得られないのだとか。
放射線障害に関する評価がどのような仕組みの下で、決められているかまでは分かりませんが、ロシアの「資本家」に強い影響を受けているこの国の公的医療機関で、なるほど、放射線障害をきちんと表に出すことなどとてもできないことは容易に理解できました。
そもそもこの国は、ゴメリ大学で放射線障害を積極的に明らかにしようとしたバンダジェフスキー博士も、でっち上げの罪によって投獄しています。ロシアとの連携のもとに、放射線障害の実相を隠そうとしてきたのがこの国のあり方なのだと思われます。

そうした国の、公共機関を訪ねて、それでこちらが思うような答えがすんなり帰ってくることなど当然、あり得ません。ではどうして私たちはここに訪ねたのか。この企画を練り上げたドイツの方たちは何を実現したかったのか。
そこで見えてきたのは、ベラルーシの国家体制がどうあろうとも、チェルノブイリ事故の犠牲者を助けたいと願うヨーロッパの人々の思いでした。中でも一番、深みを持っているのはドイツの方たちであるように僕には思えました。
この理由も単純ではありません。二つの視座があります。なぜか。ドイツ自身が1989年まで東西に分断された国家だったからです。このうち西ドイツの側は、ナチスの侵略への深い反省を社会的に深めてきていて、その思いからも、かつてのナチスとの激戦区だった地域の人々を救わねばと思っている。
実際、旧西ドイツやオーストリアはベラルーシの病院などに多大な寄付もしてきています。

一方で、東ドイツの側は、社会主義時代に、さまざまな形でロシアとの協力関係もありました。とくに科学者たちは、博士になるにはロシア語が使えなければなりませんでした。そのため旧東ドイツ側のインテリは、ロシア語を話せる人が多いのです。
その典型の1人がドイツ放射線防護協会のセバスチャン・プフルークバイル博士です。彼はロシアへのアンビバレントな感情を教えてくれて、次のように語っていました。
「まず第一にロシアはわれわれにとって占領国だ。ロシア語を学ばなければならないのは悔しいことだった。」「しかしわれわれは社会主義建設で協力もしあった。社会主義は確かに矛盾に満ちていたが、しかし弱肉強食のアメリカなんかに文句を言われたくはない。それよりはまだロシアの人々の方にシンパシイを感じるのだ」と。
そのため、チェルノブイリ原発事故があったとき、東ドイツ市民は、チェルノブイリの子どもたちの救済に乗り出した博士たちの事業に、いくらでもカンパをしてくれたと言います。

この旧東ドイツの人々にロシア語を話せる人がとても多く、もともとさまざまな人的交流の素地があったこと。ここに旧西ドイツの人々が合流し、ドイツからチェルノブイリの被害を手助けしようとする深いパイプが作られてきたこと。
そしてまたベラルーシが独裁的であろうとも、このような人道的援助の連なりは否定できなかったこと。そのためにIPPNWドイツ支部の医師たちなどが、頻繁にベラルーシを訪れ、現地との協力体制を積み上げてきたものがあるのだと思えます。
そうして今回、ドイツの人々は、ベラルーシのたくさんの医師や研究者も招き、福島事故後の日本の私たちも招いて下さって、大きな医師協議会を開催してくれた。人的な交流が深まる中でこそ、さまざまな国の事情を越えて、放射線防護の厚みのある広がりが作られていくことを期待したのだと思います。
その意味で、今回の国際医師協議会は、歴史の厚みに支えられた企画でした。ヨーロッパにおける長い交流の蓄積無くして、日本人である僕が、ベラルーシの病院を訪れることなどできるはずがなかった。その点で僕は深い感謝の念を抱いています。

続く

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

明日に向けて(810)ああベラルーシ、ああウクライナ(上)

2014年04月01日 21時30分00秒 | 明日に向けて(801)~(900)

守田です。(20140401 21:30)

旅の報告の続編を書きたいと思います。

先にも述べましたが、今回の旅は大きく二つの企画に呼ばれてのものでした。前半はドイツを中心とする国際医師協議会。後半はやはりドイツを中心とするヨーロッパ・アクション・ウィークで、僕がおもむいたのはトルコでした。
前半の企画は、ドイツ・日本・ベラルーシの医師たちを中心としたもので、まずはドイツに集合したのちに、ベラルーシへと向かいました。今日はこの点をクローズアップしたいと思います。

ご存知のようにベラルーシは、チェルノブイリの北側に位置する国です。首都はミンスク。そこから南に下っていくとゴメリと言う町がありますが、チェルノブイリ原発事故で激しく汚染されたところです。
チェルノブイリ自身はベラルーシの南側に位置するウクライナの北の端に位置しています。国境まではわずか12キロですが、事故で飛び出した放射能はより多くベラルーシを汚染しました。ウクライナとの比は7対3ぐらいでしょうか。ベラルーシは最も激しい汚染を受けた国であるわけです。
もちろん他の国々と比べるならば、ウクライナも非常に大きな汚染を被りました。首都のキエフまでは130キロ。事故当初、ソ連政府は日本政府と同じように情報を隠蔽しました。そのため事故5日後の5月1日には、放射能の降る中、メーデーの行進が行われてしまった。そうしたことも含めてウクライナの人々も大きな被曝を被ったのでした。
さらに今、ウクライナはご存知のように南部のクリミア半島をロシアに制圧され、編入を宣言されてしまっています。僕がベラルーシを訪問したのは、ロシア軍によるクリミアへの進撃が始まるまさにその時でした。

2月26日、フランクフルト空港にベラルーシを訪問する一行が集まりました。日本からは関西医療研究会の高松医師、入江医師、山本医師、山本医師のお連れ合いの由子さん、東京から来られたおしどりマコさんケンさん。週刊MSD記者の豊田さん、そして僕が参加しました。
ドイツからの参加は、IPPNW(核戦争防止国際医師会議)ドイツ支部からデルテ・シーデントップさん、アンゲリカ・クラウセンさん、バーバラ・ホエベンナーさん他数名。ほとんどが女性の医師たちです。その他、物理学者のアルフレッド・ケルブレインさん。ドイツプロテスタント教会の方などでした。
まずはミンスクのIBBという組織のホテルに宿泊。IBBとはドイツ語の頭文字をとった名ですが、英語で表現するとAssociation for International Education and Exchangeとなります。国際的な教育と交流の場とでもなるでしょうか。
IBBはヨーロッパ・アクション・ウィークの企画母体の団体でもあります。核のない世の中、平和な世の中を求めて、1970年代に学生たち6人が集まって立ち上げ、大きくなってきた社会的組織です。

初めて訪れたミンスクの町はとても美しく思えました。夕方について夜の街並みをバスに揺られて移動しましたが、メインストリートはどこもきれいにライトアップされています。
まるで統一した企画のもとに作ったように、きれいに照らされた町並みがどこまでも続いていくのです。暫く見とれていましたが、しかしここまで美観が統一されているのが何か奇妙な感じもしてきました。世界のどの町にいっても見受けられる都市特有の雑然とした感じがない。人々の生活感があまり伝わってこない。
いったん宿舎についてから夜の町を食事に出かけました。地下鉄に乗りましたが、ここで驚いたのはものすごく美しい若い男女が歩いていること。まるでファッション雑誌の中からそのまま飛び出てきたような感じのハイセンスな若者が多いのです。これまで訪れたどの国でも感じることのなかったことです。
一方で地下鉄は古びていて、鉄の焼けるような強い匂いがする。列車の揺れも激しい。町のあまりにも統一された美しさ。町を歩く若者の一群があまの美しさ。そしていかにも古びた地下鉄。これらを統一して捉えることができず、なんとも混沌とした印象が僕の中に残りました。

翌日、IBBのホテルにある会議室で、ベラルーシの医師たち、医学生たちを交えて会議が始まりました。それぞれの医師たちが、放射線障害に関する報告を持ち寄り、次々とプレゼンしていきます。
日本から参加した医師たちは、福島原発事故後に福島の子どもたちに広がりつつある甲状腺がんについて発表し、大きな注目を集めました。とくにドイツの物理学者のケルブレインさんが興味を示してくれて、以降、日本の医師たちとケルブレインさんは何度も意見交換をしていくことになります。
僕もミンスクでの会議の一番最後に発言の機会を与えてもらいました。僕は福島の暮らしの現状の一端と、福島後に日本各地で起こっているデモについての紹介を行いましたが、大きな共感を得ることができました。みなさん、日本の民衆の今を知りたがっているのです。
ここでの発表は、そののちのゴメリ市に移っての会議、そしてドイツに戻りフランクフルト郊外で行われた会議へと連なっていくのですが、発表数が多く内容も多岐にわたっていて、まだ消化ができていません。今後、時間をかけてご紹介させていただきたいと思います。

3日目にミンスクの放射線防護の研究機関と、小児白血病を扱っている病院を訪問しました。非常に深い印象を受けたのは、病院への訪問でした。端的に言って、素晴らしい治療体制が作られていた。
まずは病院の作り自身が子どもへの配慮に満ちていました。同行した関西の医師たちに小児科の医師が多く、病院の作り方を羨んでいました。また病院だけでなく、その周りに各地から診察を受けにきた親子が、そのまま寝泊りできる瀟洒な家が建っている。
場合によってはそこで一月ぐらい暮らしながら、ゆっくりと診察を受け、判断を聞き、治療方針を相談することなどができるのです。子どもが入院した後も、親が来た時に寝泊りができます。これらが無料で補償されています。
どうして財政的にこのようなことが可能なのか。国が手厚い補償を行っているうえに、ヨーロッパ各国からの大きな支援があるからだそうです。

帰国後になりますが、この点を『チェルノブイリ事故・ベラルーシ政府報告書』(産学社)で調べてみると次のような記述がありました。
「(汚染地域に暮らす子どもの)健康増進の観点から重要な役割を担っているのは、サナトリウム・保養施設における被災者の療養である。17万人以上が治療や療養を無料で受ける権利を持ち、そのうち16万5000人が子どもや未成年者となっている」(同書p40)
実際、ここで供与されている権利は素晴らしい。子どもが白血病にかかってしまうこと自身は大きな悲劇ですが、しかしここには悲劇に遭遇した子どもたち、親たちを助けようとする仕組みがしっかりと存在している。凄いものだと思いました。
さらに驚いたのは、親子が診察を受けるために宿泊できる家の周りに、孤児たちを集め、仮のお母さんをおいて育てている家もあることでした。

この家に近づくと、子どもたちが飛んできました。かわいい子たちですが、「オー、フレンズ、カモーン」と英語で話しかけてくる。そして私たちを自分たちの家にひっぱっていくのです。
家に入ると、仮のお母さんが出迎えてくれました。家の中に入ると温かさと優しさが沸き立っているように感じました。子どもたちがここで手厚く保護されながら育っているのが分かります。
ところが同行した通訳(ベラルーシ語―英語)の若い女性の顔が、家の中で説明を受けている間、だんだんに曇っていきました。「これは何かある」と感じて、家を出てから質問すると彼女はこう言うのです。「かわいいこどもたちですよね。でもあの子たちはここを出たらほとんど確実に刑務所に行くんです!」
なぜ?答えはアルコール中毒とドラックだそうです。もともとここに来る子どもたちは、親たちがアルコールやドラックにはまり、DVをふるい、親と住めなくなった子たちが多い。そうしてその子たちもかなりの確率で同じ道を歩んでしまうのだとか。

そもそもベラルーシ社会にはドラックが蔓延していて、子どもでも12歳を過ぎるぐらいから容易に手に入れることができるそうなのです。通訳者の彼女自身、小さいころから近寄ってくる麻薬への拒絶を貫かねばならなかったそうです。
一方での子どもや親への無償の医療や保養の提供。他方でのアルコール中毒やドラックの蔓延。僕は、ベラルーシという国をどうとらえていいのか分からなくなりました。
もとよりわずか数日の訪問で、しかも事前の調査もほとんどできていない僕に、この国の概要をつかむことすら難しいのは承知で、そのためこの報告もまだまだ僕がみたベラルーシのごく一部を切り取ったものでしかないことをお断りしておく必要があります。
それでも感じたのは、僕が理解できないだけでなく、社会そのものに巨大な混沌があるのではないかということでした。放射線障害と闘うのと同時に、いやある意味ではその前にアルコール中毒やドラックとも闘う必要がある。それをもたらしている社会的要因を正すべき必然性にこの国は置かれている・・・そのことを強く感じました。

続く

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする