先日、ラジオを聴きながら作業をしていましたらね。初代のホンダトゥデイのコマーシャルに使われていた曲が流れて来まして、あっ、懐かしいなぁと思っていたら、「岡村孝子というアーチストのはぐれそうな天使」という曲紹介をしていたので、YouTubeで検索したら出て来ました。へぇ、こんな人が歌っていたんだぁ。私、音楽界のこと知らないからね。コマーシャル用に作られた曲だと思ってました。初代のトゥデイはホンダZの再来かと思ってディーラーに見に行ったのですけど、丸目がカッコ悪いので買うのを止めた記憶があります。この方、若い頃よりあとの方が美人ですね。http://www.youtube.com/watch?v=N3v2xtdBuWg
で、お仕事。PEN-F2台とFT1台、それぞれにレンズ付きで、何セットもサブ機をお持ちなんですね。基本はO/Hですけど、それでは、一番症状が悪化しているPEN-F #2439XXからやりましょうかね。この個体、巻上げもシャッターも切れないという状態ですが、原因は・・・
巻上げがこの位置で固着していますね。本来は、ピンセット先の隙間分だけ巻上げが進むわけなんです。原因は、ブレーキのOリングの劣化です。ゴムが硬化をして柔軟性を失ったために最後のひと巻きが出来ないので、チャージが完了せず、シャッターも切れません。これは交換することになりますね。
もう一曲。今日のラジオから私の好きな鬼平犯科帳の後テーマ曲が流れて来まして、ジプシーキングのインスピレーションと言う曲だそうです。時代劇なのに不思議に雰囲気がマッチしています。中村吉右衛門の存在感は圧倒的で、脇役も味のある役者ぞろい。今度終了する水戸黄門の里見浩太郎とは雲泥の差ですね。
http://www.youtube.com/watch?v=uwLJTs3y7hw&feature=related
で、PEN-Fですが、先に本体の洗浄と巻上げ機構を組立てておきます。復元レバーがやけに錆びていますね。スプール軸の駒数板と接する部分が異常に荒れており、復帰不良のトラブルともなりますから研磨をしておきます。
ブレーキですけど、現存の個体は大体こんな状態ですが、この個体はOリングがセットされるフランジ内の錆がひどいですね。湿気が溜まるためか、Oリングのゴムにニッケルメッキなどを腐食させる性質があるのか? 上のブレーキリングはバイクで言えばブレーキのライニングに当りますが、こちらにも錆が発生しています。こちらも完全に平滑面としておかなければなりません。錆の発生によって、Oリングのセット位置が錆による膨張で、押し上げられていますから、ブレーキの固着という症状が現れます。
フランジ内は完全に錆を落として磨き上げておきます。厳密に言うと内径は少し小さくなっている訳ですけど、Oリング側で調整することになります。
シャッターを作動させて見ますと、どうもシャッタースプリングのテンションが低めです。スローも安定しませんので、スローガバナーを点検メンテナンスをします。スローガバナーは時計と同じ原理なのですけど、潤滑が無い状態で長期に作動させているため、不調のものが多いのです。幸い、歯車の損傷などは認められません(磨耗はあります)ので、このユニットであれば正常に作動するはずです。
結局、シャッタースプリングのヘタリですね。#2439XXと、初期型ではないのですが、チャージをした状態で長期に放置されたような過去があるのでは? 私は、極力、テンションは上げない調整を心がけていますが今回は少しだけ上げました。調子は良好。オーナーさんの指示書では、リターンミラーすり傷で交換となっていましたが、この程度はきれいな方で、リターンミラーのすり傷は写りませんから交換はしません。何でも新しく交換することが良いとは限りません。重要な部分は、なるべくオリジナルを維持すべきです。それが私の考え方です。
これはもう1台のPEN-F #2553XXですが、同じ頃の個体ですから仕様はほぼ一緒です。スプロケットの滑りがあるようです。右がこの個体にセットされていたスプロケットとクラッチですが、巻き戻しボタンを僅かに押し込んだ状態でクラッチが解除されてしまいます。工場での調整で、下のクラッチの寸法をプレスして長く調整した形跡がありますね。これは、組み上がった寸法差で巻き戻しボタンの解除される位置が異なるのを調整したためです。ちょっとクラッチを長くし過ぎた結果、スプロケットとクラッチの掛かりが浅くなって磨耗をしてしまったものでしょう。左の良品セットと交換しておきます。(クラッチの長さに注意) この頃は、まだ調整組みが必要だったのです。FTでプレス調整されたものに出会ったことがありません。たぶん・・・
すみませんね。師走が近づいて他の仕事も忙しくなって、バタバタしています。2台目のPEN-Fはスプール以外は、1台目と同じ作業でブレーキのOリングの交換、全反射ミラーの交換で完了しています。3台目のPEN-FTですが、こちらも画像を撮る暇も無く必死で完成に近いところまで終っています。オーナーさんからは露出計の針の指示不安定のご指摘があって、FV仕様のご希望がありましたが、新規に組立た結果、正常に作動しますので、オリジナルのFT仕様としてハーフミラーを交換してあります。ダイカストボディーは#2728XXと後期のタイプですので、底部のリード線の通る逃げの溝がついたタイプです。全体的には良い個体だと思います。
で、忙しい中、左の時計が来ましたよ。右の51系亀戸の機械と同じ機械を搭載したセイコー5 DX 5139-7040 27石で、マニア中では「座布団」と言う変形ケースのモデルになります。これが意外に程度か良くて、精度も申し分ありません。文字盤や針の腐食も無いですね。右の時計の部品取りとして入手したのですが、もったいないですね。右の時計も今だ未オーバーホールですが、精度も良好で、ゼンマイの持続時間も長いです。この亀戸の51系は非常に優秀なキャリバーのようですね。ちょっと大柄で重いのが難点ですが、昔は、このぐらいの重さはなんとも感じませんでした。時代を感じるのは、曜日の表示で、70年代の56系などでは、土曜日は青表示で日曜は赤表示ですが、この時計の60年代では土曜日までは他の曜日と同一の黒表示になっています。会社は週休二日では無かった頃のなごりですね。ゼンマイの持続時間も当時では問題は感じなかったのですが、週休二日の現代では、放置をすると月曜日の朝には止まっているというケースも出てきます。現代の高級機械式時計では、ゼンマイを工夫して長時間の作動を保証しています。(セイコー5搭載の機械は手巻き機構は省略されています)
カメラ3台は全て終了で、一緒に来ているレンズを見ます。100mm f3.5は、手頃で使いやすいレンズ。この個体は殆ど使用されませんでしたね。しかし、カビが発生し易いのも特徴です。幸い、コーティングの損傷はなく、きれいになりましたね。
メンテナンスを終えたFTに装着します。オーナーさんによって、カメラやレンズの状態が分かれるのも面白いところ。機能が完璧であれば外観はどうでも良いという実用派の方もいらっしゃいますけど、この方のように、3セットとも素晴らしいコンディションの個体を所有されている方もいらっしゃいますね。私は、どちらのタイプも理解出来ますよぉ・・。この個体はオークション入手だそうですが、素性の良い個体に当りましたね。