最近、時計の方は、途中仕掛かり状態のものが増えていましてまともに完成していません。そこで、私と同じ歳のセイコー・スーパーを仕上げておきます。機械のエージングは終っていますので、文字盤を取付けてケースに収めます。セイコー・スーパーは1950年7月から製造されたようですが、この個体は1953-1月の製造です。機械は、まだ初期型の10石で耐震装置はありません。落下は厳禁です。この当時としては珍しいステンレスケースですので、ケースの状態は良い方ですが、文字盤は年月を感じますね。清掃はしましたが、黄ばみと過去の分解で付けられた、外周部分のキズ汚れが残念ですね。新品時はホワイトゴールドに輝いて、豪華な雰囲気の文字盤だったと思います。じつは、針はセットで別の個体から移植しました。元の長短針はコンパウンドで研磨したところ、簡単に金めっきが剥離し、秒針は、先端の部分もすでにカットされていることが判明したためです。茶色の塗装も半艶でやり直してあります。
次は風防ですが、オリジナルの風防は黄ばみと細かなクラックが入っていますので交換したいところですが、現在、入手出来る風防はドームの高さや形状が微妙に異なりますので、黄ばみだけなら再使用したいところでした。厚みがかなり厚いことが分かりますね。実測で4.05mmでしたが、ドンピタの風防は手に入りません。
そこで、オークションなどで、デッドストックを探すわけですが、私のところにも沢山在庫はあるのですが、僅かな寸法差で使えるものが限られるため、これだけあっても合わないのです。これは、同じ時計であっても、ケースの種類はさまざまなことと、ベセルの内径の仕上がり寸法によっても適合する風防が変わってきます。因みに、元のオリジナルは外径28.25mmですが、画像の282では小さく、283では大きいという具合です。
283でトライしてみましたが、やはり大きいため、今回は仮に282を接着併用で付けておきます。厚みも気に入らないので・・
やっと、時計としては組み上がりましたね。時計バンドですが、私が愛用しているイタリアのモレラートには取付け幅16mmで、この時計に似合う選択肢が無いので、松重商店のオリジナル品をチョイスしました。取付け幅と尾錠幅共に16mmのバンドは意外に少ないのです。色は秒針に合わせて茶色です。このバンド。ビックリするような安さでバネ棒付きで千円代でした。中国製だから実現している価格ですが、残念なことは、バンドを差し込む定革と遊革の折り曲げ部分にひび割れがあること。ローコストのバンドは革の品質が劣るのですね。折角、良い企画の商品なのですから、もう少しコストを掛けても誰も文句はないと思いますよ。モレラートの1/4程度の価格ですからねぇ。
これは、ちょっと黄ばみすぎの画像ですが、アンティークの(50年を超えるとアンティークだそうで、私も同じなんだなぁ)良い雰囲気を出しています。国産の時計も、何かホッとする良い雰囲気の製品はこの後のマーベルぐらいまでで、60年代後半からは、確かに合理的な設計で高性能の量産品ばかりになって行きます。この辺りはカメラも同じようなことが言えるのではないでしょうか? さて、同期の腕時計は元気になったので、私も頑張らないと・・・
50年代から60年代は高度経済成長期ですから、働けば明日は今日よりも良い生活が出来るという希望があった時代。「大きいことは良いことだ」と森永エールチョコレートも言ってましたね。そんなバイタリティーの時代ですから、腕時計も大きくがっちりとしたものが流行します。画像でケースの大型化が分かりますね。中央は60年初期のセイコークラウン15002ですが15003ではもう一回り大きくなります。右側はセイコーマチックで64年製ですが、ここからは防水ケースになりますので、余計にケースが大型化して行きます。しかし、時計を付ける腕のサイズは変わらないのにどこまで大きくなって行くのでしょう。最近の若者にはもっとデカ時計が流行っていますね。裏蓋を開けて見ると、おにぎりの梅干みたいに真ん中に小さなおんな持ち用の実質500円程度のムーブメントが入っているだけなんですけどね。現代の若者は外見の見た目やファッションとして時計を見ているのでしょう。欲しくても高価で簡単には買えなかった昔の人間とは、時計に対する思い入れが違いますね。携帯があれば時計なんて要らないしね。1964年の東京オリンピック当時のコマーシャル。「♪S・E・I・K・Oセイコー、輝く世界記録ここにセイコー、S・E・I・K・Oセイコー、セイコー。精工舎の時計が七時をお知らせします。ポッポッポーン」まだ記憶してるんだ。
恐れていた事態発生。ゼンマイの足し巻きをしましたら、一杯まで巻き上がったので机に置いておきましたら・・あらら、止まっていました。リューズを巻いてみると抵抗感が無い。「あっ、やっちゃった!」ゼンマイが切れてしまいました。この頃はまだ切れないゼンマイは無くて鋼製のゼンマイでしょう。腕時計に限らず、古い車やバイクをレストアして走り始めると、最初のうちは次から次と壊れるものです。一通り不具合が出尽くすとしばらくは安定して動いてくれます。これは、使われない間にも材質などは確実に劣化をしており、再び現役復帰をさせると耐えられずに壊れてしまうのでしょう。カメラだって同じことが言えるのです。今回は、ゼンマイが何巻き巻けるのかを把握しておらず、一杯に巻いてしまったのが直接の原因でしょう。で、カメラの作業をしながら、応急でゼンマイの交換をしました。最初は、香箱ごと移植と思いましたが、微妙にホゾ穴が変更されており互換がない。細かな設計変更を受けているのですね。それではと、ゼンマイを取り出して交換しました。この頃は、ゼンマイがまだS字カーブになっていませんね。以後のゼンマイは、解ける時に各部が受ける力を均等にする目的でS字にカーブしています。ゼンマイのデッドストック探しておかなくっちゃ。