今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
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残念なことに・・三光ペンの巻

2017年08月19日 10時42分27秒 | ブログ

瞬間的に「これは何?」と思ってしまいました。一応「三光ペン」なんですね。それを上下カバーをウレタン塗料で塗装してあります。恐ろしいことを・・。

 

あまり他人様の批判はしたくないのですが、なぜ塗装をしようと思い立ったかを聞いてみたい気がします。この個体は数年前に行きつけの中古カメラ屋さんから勧められて購入されたとのことです。しかし、それでも買うかなぁ? カバーは分解せずに三脚ネジ座やリベットも塗装されています。メッキも剥離しておらず、ペーパーを当てているので平面がダレています。

お手紙にはレリーズボタンの不具合とレンズの曇りが指摘されています。

 

 

レリーズボタンがこのように押し込まれてしまいます。通常ではこのようになりませんので何か原因があるはずです。

 

分解してみると・・レリーズボタンとシャッターユニットを連動させるロッドが正規の部品ではなくネジをカットして代用されています。不具合や紛失の可能性は、ほぼ無い部品なのに何があったのでしょう?

 

内部は古い油とホコリでドロドロ状態ですけど、分解はされています。後玉も分解の痕が確認できます。

 

例によってズイコーレンズの後玉です。コーティングの劣化から腐食へと移行しているようです。すでに拭き上げた形跡があります。さて、どうするかな? メッキにペーパーが当てられていなければ塗料を剥離して原状回復が出来ますが、それは不可能ですので、うちの三光ペンの部品を使ってオリジナルに戻すかなぁ?。しかし、黒いのが気に入って購入されたのでしょうからね・・

洗浄をしてみるとシボ革は一度剥離をして、再接着をされていますね。

 

 

本体側も同じです。一部欠損をして剥がれかかっています。

 

 

まぁ、仕方がない。修正をしながら組み立てて行きましょう。

 

 

三光の頃は、スプールのスリップはスプール内に嵌っている板バネによって固定されています。現存の個体では、疲労によりかなりの確率でスプールにクラックが入っていますが、この個体は大丈夫でした。

 

と思ったら重大な問題が発生しました。そもそも、このシャッターは4年後に生産されたシャッターユニットと換装されていましたが、問題は地板にクラックが入っていることです。手前のガバナー歯車が上に抜けないので確認をして発見しました。これはレンズのヘリコイドの雌ねじ側をねじ込む時に、力任せに締め込んだことが原因です。さて、万事休す。そもそも、オーナーさんは三光ペンであることもご存じなく購入されたとのことですが、それにしてもこの個体を大2枚で販売したそうですから、私からすると殆ど◯◯に近いです。

さて、どうしたものか? 交換部品はありますけど、果たしてシャッターユニットまで交換して、この個体を生かす必然性があるのか? と言う問題があります。そこで、オーナーさんのご希望をお聞きしました。結論的には「費用が掛かっても撮影が出来るようにして欲しい」とのことでしたので、それではと適合するユニットを選定しました。しかし、うちのストックを仕上げてお出しした方が早い気も・・

対物レンズはガラス製となっていますが、#1340XXがプラ製と確認していますので、ファインダーも少し後のものと交換されている可能性があります。樹脂も劣化をして白化していますので、研磨をしておきます。

 

交換用のユニットはO/H済みですが、スローガバナー部分は洗浄をしておきます。しかし、シンクロのターミナル組立はリード線を通す穴の前にダボが有ったりで、組立の作業性は非常に悪いユニットです。

 

今回追加交換するレリーズシャフト、ホルダー、バネ。ボタンはその後のタイプより一回り小さいのが分かりますか?

 

カム板押えを留める薄ナットを緩めるために、ピンセットで傷だらけにしていますね。私には考えられません。絶対に分解傷を付けないという心構えが出来ていない証拠。

 

ファインダーのダストカバー紙は新しく作っておきます。

 

 

同じ三光ペンのレリーズボタンでも、微妙に金型が変わっています。この個体は左側ですが、左右両端中央の出っ張りが小さいため、トップカバー穴から上に飛び出してくる不具合があり、右側のように出っ張りを大きく修正しているようです。

いやはや、当初はどうなるかと思いましたが、幸い、やさしいオーナーさんに救われたために、生き延びることが出来たという個体でしょうね。本来なら諦める状態でした。元々、三光ペンの頃は、製造時期が少し違っただけで部品の変更や仕上がり寸法が変わっていたりで、別の個体から部品を調達しても調整が必要なケースが多いのが厄介です。

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