今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

SEIKO 電磁テンプEL-370が2つもの巻

2017年01月12日 13時08分02秒 | ブログ

九州のご常連さんからセイコーのEL370のオーバーホールが来ています。クォーツ腕時計が発売される前の数年間だけ製造された電池の力でテンプを作動させる電磁式の時計ですね。型番は3703-8010ですから、文字板系38mmで010はカレンダー付ということになります。製造年は1971年。

同じ型番の個体が2つですが、どちらもケースの傷が多く、研磨をご希望です。但し、研磨工場のような大型研磨機も技術もありません。小型のリューターなど電動工具も使用しますが、小径のバフで研磨力が強いと平面性が維持できません。試行錯誤の結果、手磨きしか方法がないと判断しています。問題は、ケース1つ磨くのに数日の工数を要するので、採算的に見合わないということです。基本的には自分の所有機のみでの作業としたいのです。

 水ペーパーの番手を順に上げて1500番の研磨が終わったところ。深い傷が一点ほど残っていますが、これを消そうとするとオリジナルのデザインが変わってしまうので、ほどほどのところで止めておきます。そもそも、再研磨は削りしろの無い部分を無理に削るという引き算の作業ですので、なるべく削り量は少なくしたいのです。

軽くリューターで研磨をしてデッドストックの純正ガラス風防を圧入したところ。完璧を目指すといくら時間を掛けても終わりませんね。ほどほどにしておきます。

 

機械は370Aで、ゴールドの基板が高級感がありますね。コイルの基板を外したところ。

 

磁石の力でテンプを駆動して、アンクルを経てメカを動かします。電池、基板、テンプを覗くとメカは非常にシンプルですね。

 

電池をセットしてテンプが動き始めました。過去に分解整備を受けている個体ですが、調整はかなり外れています。

 

一応、文字盤側です。特に面白いところはありません。

 

 

コンデジでは、どうも光物が良く写りません。ケーシングをしたところ。普通の機械式に電池と基板を追加したような構造ですが、とにかく厚みがありますね。

 

同じモデルの2つ目は精神的につらい・・。しかも、こちらの方が程度が悪いと来たもんだ。裏蓋をリングナットで留める方式はネジ部が錆びやすく固着ぎみです。少し緩めるとこの汚れが出て来ます。

 

これだもんなぁ。結構つらい。

 

 

傷が深くて取り切れませんよ。

 

 

 浅い傷はまだ良いのですが、打痕が困るのです。この個体は非常に乱暴に使われた個体で、本来は研磨をすべき個体ではありませんでした。まぁ、とにかく荒磨きは終了。オーナーさんが見つけて来た純正品の風防ガラスを取り付けますが、これがこの個体のオリジナルは僅かに中央が高いほぼフラットガラスですが、カットガラスに交換のご指示です。よく規格が分かりましたね。

 これがオリジナルの風防ガラスです。腕時計組立ファンのご常連さんからは、「よくもあんなに傷だらけに出来るものだ」とメールを頂きましたが、本当ですね。ベゼルの傷も多いですが、かと言ってベゼルは圧入でストレスが掛かるので、どこまでも削って良いという訳にはいきません。実用品とはいえ、当時の価格で38,000円ほどする高級機ですけどね。親から物を大切にしろと言われて育った私としても、理解できませんね。まぁ、メーカーさんとしては消費してもらわないと製品が売れませんけどね。

カットガラス風防は、取り付ける角度があるので圧入には神経を使います。観察すると外周のカット量に差があるようでしたので、上下にバランスするようにしてあります。

 

オリジナルでも厚いケースですが、カットガラスの風防にすると、16mmに近いです。これ、腕にしますかね?

 

 2つ目なのでサクサクと組んで行きます。輪列部分は非常に簡単な構造ですね。テンプ受けの下にスペーサーが入ります。

 

 

 で、最後に純正のステンレスベルトの研磨とヘアラインを入れて、油脂汚れを超音波洗浄できれいにしてからケースにセットして終了。あ~終わった~。風防ガラスのカットが変わると時計の表情が変わるものですね。

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Fと来れば次はFTでしょうの巻

2017年01月09日 10時02分50秒 | ブログ

譲って頂いたPEN-FT #3324XXだそうです。良い頃の個体ですがシャッタースピードが変化しませんね。

 

シャッタースピードが変化しない故障の原因はピンセット先のコントロールレバーが金属疲労で折れてしまった場合ですが、この個体は幸い折れていませんね。折れていると厄介なんですね。

 

コントロールしているのに変化をしないということはスローガバナーに問題があるのです。観察すると、ガンギ車やアンクルが動いていません。原因はピンセット先の歯車のカシメられている大小歯車のカシメが不良で動力が伝わっていないのでした。

作業の前にアップルパイが来ちゃったので我慢が出来ません・・

 

 

では再開。この歯車ね。オリンパスはカシメの不良が多いと感じます。

 

 

スローガバナーは使用されるバネが多く組立は困難ですので、みなさんは分解されない方が無難です。

 

再カシメをしておきますが、2回のカシメは強く固定できない傾向にあります。

 

 

露出計は作動していますが、33万台としてはハーフミラーの劣化は進んでいます。これは交換します。

 

裏蓋を閉めても「パカパカ」する感じで、巻上げダイヤルの引き上げが異常に重い。そのため強く引っ張ったようでラッチのピンセット部分が上方に曲がっています。それによってラッチが完全に降下しないようです。

 

本来は直角に曲げられている部品です。角度を修正してスムーズに作動するように洗浄グリス塗布をします。

 

それにしても「パカパカ」感が残っていますよ。観察すると、ラッチを故意に硬いもので広げられているようです。(本体側にも傷がありますね)他人様のおやりになることは理解できません。

 

緩んでいますね。それまでの製造個体はチャージギヤはカシメによって組み立てられていましたが、この頃から真鍮のナットによっての組立式になりました。カシメ式では分解が出来ずチャージギヤなどの交換が出来ないのでそれの対応でしょう。使用が進むと地板の孔が拡大して偏心して回転するようになり、シャッターの作動が不正確になります。しかし、組立式はナットの緩みという新たな問題が発生するようになりました。

シャッタースピードは正常にコントロールされています。プリズムのコーティングは通常33万台でしたら良好なはずですが、この個体は劣化していました。ハーフミラーも標準より劣化が認めれましたので、保存は良くなかった可能性があります。

 メカの組立完成。巻き戻し軸は完全に降下しています。

 

 

基本的に悪い個体ではありませんでしたが、接眼プリズムのコーティングは全滅で、33万台としては異例の劣化具合でした。また、露出計の感度も2段程度低下しており、これもこの頃のユニットとしては劣化していました。Cdsも湿気の多い場所の保管では劣化が進んでしまうようです。あとはレンズの清掃があります。

レンズは38mmと100mmをメンテナンスしておきましたが、完成画像を撮り忘れました。元々は悪くはない個体でしたが、保管が良くなかったもので、光学系のダメージが多かったですね。シャッターが故障したので放置されたのでしょうけどね。

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新年最初はPEN-Fからの巻

2017年01月04日 21時56分29秒 | ブログ

今年のお正月休みは短くて、4日から仕事始めの企業が多いようですね。では、こちらも作業を始めましょうか。新年最初はPEN-Fですが#1374XXと初期型ですね。その割にはコンディションは悪くはないとは思うのですが、古いので汚れがはげしいです。

トップカバーは開けられていますが、完全な分解は受けていません。では、分解をして行きます。

 

初期型の巻上げ爪を抑えるスプリングは板バネですが、すぐにコイルスプリングに設計変更されます。板バネは耐久性と接触部の摩耗の問題があったからでしょう。で、初期型の板バネを固定する板バネ抑え(ネジ)ですが、この頃は強い緩み止めが塗布されていて、M1.7のネジとしては頭(スリ割)が大きく、不用意に緩めようとすると簡単にねじ切ってしまう確率が高いのです。この個体も簡単には緩みそうもありませんよ。しかし、ホコリの混入がすごいですね。

慎重にトルクを掛けて無事緩めることに成功しました。

 

 

汚れは激しいですが、特に不具合の部分はないようです。どんどん分解をして行きます。

 

 初期型ですが、あまり使用されていないユニットで、程度は良いですね。ブレーキの利き具合を点検しますが、こちらも少し弱いですが初期型としては珍しく利いていますね。今回はこのまま再使用とします。

 

すべて洗浄のうえ注油をして行きます。テンション軸を取り付けます。

 

 

このバネは知らない間に飛ばしてしまうことがあるので注意です。巻き止め機構は変更を受けていく部分です。

 

各部品を洗浄磨き出しのうえ組み立てて行きます。

 

 

底部もこのようにきれいになっています。

 

 

 年始回りもあって、中々作業が進みません。前板関係を組みます。洗浄、注油をしたミラーユニットを取り付けます。

 

PEN-Fの初期型としては珍しくプリズムの腐食がありません。多くの個体には黒点の腐食が発生しています。

 

シャッターボタンを押すと左端のレバーがリンケージを押して右側のレバーがシャッターを走らせます。しかし、リンケージに長さの調整をする部分が無く、ストロークが短い場合にはリンケージの先端部分を潰して長くするという原始的な方法を採ります。これでは量産に適さないため、後期型では以後のFTと同様の調整機構付きに変更になります。

シャッターのテンションは変更していませんが、分解前より巻き上げが軽くなりました。これでメカ部分は終了で、光学系を取り付けて完成させます。

 

 全反射ミラーは見にくい腐食はありませんが、反射率は低下していますので新品と交換します。

 

接眼枠の取付の片方が折れています。今回は交換せず接着で対応しておきますので、アクセサリーの取付はしないでくださいね。また、表面の傷が目立ちますので、研磨をしておきます。

 

ふぅ、最後に来て中々終わらない個体です。裏蓋を見るとへこんでいますね。この程度では外側のシボ革からは分からないのです。もう一度分離して、できるだけ修正をしておきます。

 

やっと完成しましたね。しかし、レンズマウントのロックがやけに緩くてレンズの回転と一緒に回ってしまいます。よくよく見ると、マウント面が取付けネジ部で曲がっていて平滑ではありません。一度分解をされているようです。

 

定盤に当ててみると、取付けネジ部でくの字形に変形しています。これは本体との平滑を確認せずに取り付けた場合に起きます。(シボ革の挟み込みなど)

 

マウントのロックが緩いのは3つのバネを故意に緩めたためです。取付けネジのスリ割が笑っています。工場では、このような組立はしません。マウントの平滑を修正してから、バネの強さをオリジナルに戻して組みます。

 

トップカバーの色入れが抜けています。特にFの花文字は金色ですので、塗料の顔料(真鍮粉)が酸化をして緑青に変化をしています。これも入れ直しておきます。

 

新年最初の個体は、素性は悪くはないのですが、細かなところに問題が多かったですね。しかし、巻上げも軽快でシャッターの調子も良好な好ましい個体となりました。

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今年もよろしくお願いします

2017年01月01日 10時35分54秒 | ブログ

明けましておめでとうございます。

旧年中は当ブログをご覧頂きましてありがとうございました。本年もよろしくお願い致します。作業はお休みしていますが気が向いたらUPしますね。

正月休みと言うのはあっという間に過ぎていきますね。元日から腕時計のケースを磨いていました。セイコーのスポーツマチックですが、入手した時にすでに研磨をされていまして、エッジも無くなっているひどい状態でしたので、何とか復活していと思っていたのでした。ラグの研磨が僅かに異なる同型のジャンクを入手して交換してやろうという魂胆です。しかし、当時の若者が使った普及クラスの時計ですので、こちらも元のコンディションは良くありません。我々素人が研磨をすると、どうしてもエッジが丸くなってしまうのですが、かと言って、本職さんのような大型のバフも所有していませんし、研磨技術もありません。電動工具を使用する場合もありますが、今回は、完全手磨きで、どうしたらエッジを再現できるかの研究をしていました。まぁ、それは元々無理な話なんですけどね。エッジが消えるのは、研磨のヤスリ面がぶれるためですので、どうしたらなるべくぶれずに磨くことが出来るのかを試行錯誤で考えます。特に今回のようにラグ部が三面カットになっているものは難易度が高いです。画像は完成ではありませんが、ほぼ形にしたところ。やはりエッジが丸くなりますが、何とか三面カットには見えます。簡単な治具の製作で手ぶれを少なくする方法などを思案中です。

で、例年の初詣は、混雑を避けて少し遅らせて行くのですが、今年は今日3日に行ってみました。やはり込んでいましたね。氏神様の立川の諏訪神社です。子供のころはそれほど初詣に来る人は多くなかったと思いますが、最近は参拝者が増えているように感じますね。

並んでからやっと山門をこぐってもうすぐですね。ここまで45分掛かりました。他に目の神様のお社にもお賽銭を上げて参拝しました。私の仕事は目が命ですからね。

 

毎年お約束の腕時計は昨年末に仕上げたセイコー・新10Aです。風防が光ってしまって、針が見えるのはこの1枚だけでした。この時計、終戦直後の昭和20年代製としては日差+15秒程度と驚異的な精度で動いています。

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