今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
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美品のPENその他の巻

2017年08月10日 19時32分18秒 | ブログ

ご常連さんから来ています。随分と美品のPENですね。PENは1959年に発売されましたので、古いという先入観がありますが、PEN-Sが発売されてからも併売されていたわけで、この個体のように#4648XXと1964-11月製の後期製造の個体もあるわけです。しかし、きれいで使用された形跡もあまりありません。作動に問題はなく、このままでも良いのではとも思います。

トップカバーを分離します。ファインダーのカバーが黒い遮光紙ではなく、PEN-Sと同様にアルミ製となっています。

 

とは言っても、カバーを外すとレンズやガラスの接着剤は機能しておらず、パラパラと落ちて来ました。

 

シャッターも全く問題はありません。すべて超音波洗浄をして組み立てます。

 

 

シンクロターミナルの接片は半田が剥離しているものが多いです。

 

 

本体も洗浄済みでスプロケット軸とスプール軸を組み立てます。

 

 

唯一残念なところはシャッターリングの一部に腐食があることです。これがなければ完璧なのに・・しかし、使用による磨滅などは殆ど無く、洗浄後はピカピカです。

 

PENでこのタイプは少ないです。巻き戻し軸はカラーを入れるPEN-Sでも途中から変更になったタイプと同じ仕様になっています。

 

PENの場合、後玉のコーティング劣化や曇りが多いのですが、新しい?ので、まったく劣化がありません。コーティングに傷をつけないように軽く拭き上げておきます。

 

PEN-FT用のレンズも来ていますが、70mmですよ。外観などはきれいですが、前群後ろ側に曇りがあります。

 

ここの曇りは古くなるとガラスが曇って清掃出来なくなりますが、殆ど清掃が出来ました。

 

これも状態の良い25mmです。しかし、観察すると前玉外周にイヤな傷のようなものがありますね。プレートでレンズを押えている構造なので、分解したらレンズかバラバラなんてことにならないように証拠写真を撮っておきましたよ。(嘘)

 

幸いレンズはバラバラになりませんでした。ホッ。その他は問題のない良いレンズです。

 

最後に点検。スプロケットはプラ製黒の後期仕様になっています。

 

 

ファインダーの樹脂に多少の劣化(白化)はありますが、研磨するほどでもなく、オリジナルが大切ですのでそのままとしています。PEN-Sが発売されてからは販売量は落ちていたでしょうから、意外に後期で美品の個体は少ないのかも知れませんね。しかし、状態の良いものを見つけるのが上手な方です。

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WAKMANN航空時計のジャンクの巻

2017年08月06日 20時25分35秒 | ブログ

九州のご常連さんから珍しい時計が来ましたよ。BREITLING WAKMANNというブライトリング社との合併企業で、航空機の計器(時計)を作っていたメーカーだそうで、ヒコーキ好きとしては、実際に計器パネルに嵌め込まれていた計器には魅力を感じますね。昔、環八のスクラップ屋さんにB29の残骸が入っていて、計器もあったんですよね。二度ほど見に行ったのですが買わずに帰ったのを後悔しています。で、このクロックはかなりの重症で動きません。まずケースから分離して不具合個所を特定することから始めます。

クロック用の工具なんて持っていないのですね。流石に振動などでの脱落を防止するため、針はがっちりと嵌っています。

 

ケースの中から弓状金属片と小さな金属片が出て来ましたが、さてどこの部品かな? 弓状の金属片はコハゼバネのようですね。前面右上のノブを回してもゼンマイが少し巻くと滑って解放されてしまいます。ゼンマイ切れかも知れません。

受けを分解したところ。腕時計に慣れているので、クロックサイズは全然精密感は感じません。しかし、地板も厚くがっちりとした設計で、振動や衝撃に対応した設計がされているようです。

 

ゼンマイの入っている香箱を分解してみますが、その前に。ゼンマイを巻き上げる角穴車がすごいですね。合計9歯も折れていて修理の「入れ歯」をされています。よくよく点検すると・・・

 

あ~、小さな金属片は角穴車の歯だったんだぁ・・。入れ歯をしなくてはいけませんが材料が無い~。

 

ゼンマイ切れもありますが、ゼンマイの先端が開いていて香箱真と噛み合っていません。3つの不具合を総合的に判断すると、どうも巻上げノブを逆に回した(巻いた)のではないか? 正規の巻上げは反時計回りですが、巻上げノブの⤴彫刻の色入れが抜けていて見にくいため、パイロットか逆に回して破損させたのではないか? 逆転防止の機能は無いみたいです。

折れたコハゼバネを繋げて、元の形状とコハゼとの連動を見ます。

 

 

で、カーボンスチール板から切り出して複製を作ろうかと考えましたが、弓の部分が長いため、均一に焼入れ、焼きなましが出来ないと折れる可能性があると判断して、バネ線を曲げて熱処理をしてみました。

 

取付のネジ穴がないので、このような形状に曲げています。これで上手く機能しなければカーボーンスチール板から製作します。

 

迷走台風5号は最後はしっかり日本列島を縦断するコースを辿るようですが、私の印象では、偶然は分かっていますが、最近関東地方に接近した台風は、殆ど夜半に来襲しているような印象です。被害が出ないことを願うしかありません。

で、各穴車の「入れ歯」を作ります。若い頃技工士になりたかったんですね。関係ないか・・。歯車は素材の硬度も高いですし熱処理されていますからヤスリで簡単に削るというわけにはいきません。入れ歯をするところを正確に削っておいて、はめ込む方の入れ歯はなんとPEN-FTから調達しました。

12時位置が圧入したところ。これからポンス台でカシメてから歯を成形します。ここまでやって、じつはガンギ車に問題があることが分かりました。香箱(ゼンマイ)も良くありませんので、交換部品が見つかってから作業を継続することにします。

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巻上げゴリゴリのPEN-FTの巻

2017年08月03日 17時44分02秒 | ブログ

私が、いつ頃の個体が良いと軽率に言うのは悪影響もあるかなとも思うのですが、PEN-FT #1804XXは微妙な頃の個体ですね。気になったのは、巻上げのゴリツキがかなり大きくて、5段階評価の4ぐらい悪いです。カバーを取ってみると、過去にリターンミラーユニットまで分解を受けています。実は、巻上げのゴリツキの半分ぐらいはリターンミラーユニットが影響を及ぼしているのです。

分解をしてみると、この個体はSSか同等の修理屋さんで修理されていますね。10万台ですから露出計はきびしくて、この個体もダウンしています。オーナーさんのご希望もあって、当方のストックと交換することにしましたので、電池室の配線も新製しておきます。

洗浄をした本体に巻上げ関係を組み立てて行きます。特に問題はありません。

 

 

ははぁ、シャッターユニットも分解を受けています。何が不良だったのでしょうね。

 

テンションハンマーのスリ割りネジが痛んでいます。

 

 

チャージギヤ軸に偏摩耗があります。右半分が摩耗していることが分かりますね。巻上げレバーを巻くと、チャージギヤはカメラの前面から後ろ側に強い力で抑え込まれます。潤滑がないと摩耗が進んでしまいます。この程度ですと、まだ二回巻き上げなどの不具合は出ませんが、巻上げのフィーリングには悪影響を与える場合があります。

オーバーホールを終えましたが、このユニットはチャージギヤ軸の摩耗だけでなく、テンションハンマーの回転にガタがあります。これは地板の孔が摩耗をして拡大しているためです。現状の程度では問題はありません。

 

リターンミラーユニットはあまり分解するユニットではありませんが、何が問題だったのでしょう? ネジのスリ割りも痛んでいます。この頃は改良前のユニットですから、使い込まれて摩耗をすると作動の信頼性が怪しくなります

 

左端のギヤは分解出来ませんが、使い込まれて摩耗が進んだユニットは、巻上げフィーリングに大きく影響を与えます。作動をミスするようなら交換ですが、今回は再使用としますが、本当は交換したい・・

 

セルフタイマーユニットの取付方法については、製造時期によって、かなり試行錯誤をした形跡があり、いろいろなタイプがありますが、こんなのは見たことないと思いました。ピンセット先の部分は、ユニットに取り付けられたネジを締め込むことで、ユニットの位置を調整するためですが、この個体は孔開けとタップが切ってあって、このネジでユニットを留めています。前板に付いているネジは本来は、このネジでユニットを留めるはずが、短いネジに変えられていて接着剤で留めているだけの意味のないダミーです。なんで??

分かった。この補修用パーツは最後期型のユニットで、取付け孔位置が微妙に異なるのです。推理はこうです。SSでセルフタイマーの作動不良を直すために交換用のユニットをセットしたら孔位置が違って取り付かない。それではと、ユニット位置決め用のネジを利用して、本体側にタップを切って取り付けた。なら、元のユニットを修理すれば良かったんじゃないの? ダミーのネジまで接着をしてご苦労さんなこと・・

18万台ですと、この個体に付いていたユニットは改良前の巻上げるとジッジッジッというやつのはず。今回は、その後の生産に使われていた孔位置は同じで改良型のユニットに交換します。適合しないユニットを無理に付けようとするから、色々ごまかしをしなければいけなくなる。正規に戻せばよいのです。

セルフユニットを交換しているので、タイマーレバーの水平を調整しておきます。組立は、ほぼ完成。露出計ユニット、ハーフミラー、セルフタイマーユニットを交換しています。

 

 付属の40mmはF用ですね。過去に分解歴があって、後玉のコーティング一部剥離しているのと、かなりのオーバーインフになります。内部はヘリコイドグリスの流化と汚れが多くあります。前回の分解時に、きれいに清掃されていないようです。また、絞り羽根に若干の変形があって、作動が重い感じですね。

完全に清掃とヘリコイドグリスを入れて、レンズを磨いておしまい。FT本体のセルフタイマーは、ユニットが正規の位置に収まったため、トップカバーのレバー孔の内周に接触するという不具合は解消されています。しかし、手慣れた改造でしたので、標準作業になっていたのでしょうかね? 後継互換を取っていない部品は、最終仕様が補修用としてストックされるのでしょうから・・。あとは100mmがあります。

 あまり使用されなかった個体で、レンズの状態も含めて非常にきれいです。問題は、ヘリコイドの回転が異常に重くなること。グリスを柔らかいタイプに交換しています。

 

40mm+100mmはコンパクトで使いやすいセットですね。色々と過去の歴史を持った個体でしたが、リカバリーは出来たと思います。

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生きた化石PEN-EMの巻

2017年08月01日 10時54分02秒 | ブログ

ウチのご常連さんの愛機。ヤダって言ったんですけどね。来ちゃいました。PEN-EMです。昔ね、使用されているトランジスタがパンクしていて、秋葉原のジャンク街を探し回ったのが20年ぐらい前の話です。第一世代のトランジスタだからね。小型軽量がコンセプトのハーフカメラを高級化、電動化して行くと、気が着いたら本来の位置づけとは違ったところに来てしまったという感じですかね。大手電機メーカーに勤務している友人に聞きましたら「電気素子なんで10年以上は性能保証なんでできないよ」ということだそうで、このカメラは1965年ぐらいの製造でしょ。まぁ、直せるところは直しますけどね。で、シャッターを切っても巻き上げがしない。とのこと。EMの電池室は液漏れしているものが多く、接点が損傷していて導通不良になっている個体もありますね。この接点は何かへんだなぁ?

接点に半田メッキしてありますね。過去に修理を受けています。電池との接触を確実にするため、ゴム片が挟まれています。電池蓋のロックが掛かりずらかったのはこれが原因です。撤去します。

 

液漏れのガスが裏側まで腐食させています。この基板は折れているものが多いのですが、この個体はクラックはありますが、辛うじてセーフ。本来でしたら接点の作り直しをした方がよさそうですけど、取りあえず研磨で対応してみます。

発売当時はマンガン電池でしたから単三2本(3V)では巻き上げは厳しいですね。調整の結果、正常に巻上げられています。

 

それでは、ファインダーも曇っていますので清掃をしておきます。PEN-D系と同様なファインダー。

 

ここも過去に清掃を受けていて、遮光紙が破れていますので新しく製作して接着します。

 

ファインダーを組み込んで、各部の作動をチェックします。

 

 

カバーを取り付けて完成。しかし、重いですね。電池装備で595gでした。巻上げレバーを取り去るだけに、これだけ重いカラクリが必要なのかは今となっては疑問のところですが、当時は電動化のコンセプトで市場に投入することが命題だったのでしょうね。生きた化石で撮影を続けておられる方が約1名・・

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