今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
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プーケット帰りの元箱D3の巻

2019年08月02日 09時21分44秒 | ブログ

いつの間にか梅雨が明けていて猛暑が続いていますね。私もさすがに扇風機では熱中症になるのでエアコンが必要になりました。で、そんな中、「遅れて来たペンマニア」さんは捜索の手を緩めませんよ。今回はなんとタイ国のプーケット島から救出してこられたというPEN-D3-ELですよ。保証書他の書類は国内用なので正規に輸出されたものではないようですね。

少し使って仕舞い込まれていたような個体でコンディションは良いと思います。ただし・・

 

 

まず、お約束の電池の液漏れがあります。すでに電池は取り除かれていましたが、内部には液体が付着している状態。電池蓋のメッキ剥がれやネジ部の腐食があります。

 

 

電池室の腐食がリード線を伝わって露出計基板を侵すことがありますが、幸い露出計は生きていました。

 

 

一番の問題はレンズです。バルサム剥がれが確認出来ます。

 

 

前玉を分離して見ました。その後ろのレンズは2枚貼り合わせでホルダーにカシメられているのです。

 

 

の部分からバルサムが剥がれています。これは珍しい劣化ですけどね。さて、どうするか? 撮影が出来ない訳ではありませんけどね。

 

 

D3のレンズは後にして、シャッターをO/Hしておきましょう。地板は非常にきれいでクラックはありません。

 

 

絞り羽根の作動環には薄くダンパーグリスを塗布します。

 

 

良く写りませんけど、後玉にカビの劣化が点々とあります。

 

 

まぁ、軽微ですのでそのまま組み込みました。ヘリコイドグリスを入れ替えてシャッターとドッキングします。

 

 

液漏れを起こした電池室からのリード線は芯線が侵されていて、半田が乗らず強度も無いので新しいリード線と交換します。

 

 

元々、PEN-Dには電池は必要がないため、リード線の取り回しなどは初期設計の段階では考慮されていない訳です。かなり苦しいところを配線しているのが分かりますか?

 

 

D系の場合、トップカバーを留めるネジはサイドに3本しかなく、中央部分は露出計のボタン座で持たせる構造ですが、実際には強度がありません。よって、カバーが圧迫されると露出計の留めネジの頭に押されてカバーが凸状態になります。

 

 電池室は水銀電池ではなく、スペーサーを入れて普通のボタン電池仕様となっています。水銀電池用で出荷された個体はSSで改造を受け付けていたようです。

 

 

ファインダーを清掃して本体に取り付けました。洗浄済みの絞り、シャッターリングを取り付けます。

 

 

残るは前玉ですが、そのまま使用することになると思います。

 

 

 じつはオーナーさんがレンズ交換用の個体を用意して頂いたのですが、残念ながらそちらの方が程度が悪かったという顛末でして。。今回はオリジナルで組んであります。この個体#290XXは1966-5月にシャッター完成、翌月の6月に製品完成となっています。販売したお店は千葉の(有)技術堂写真機店のようですね。イラストはミノルタのSR-1のようです。

こういう資料が重要なんです。購入者は愛用者カードをメーカーに送っていないようです。オリンパスカメラクラブの会費が7月1日から変わっています。とのチラシが入っていますので、実際に販売されたのは7月に入ってからなのでしょう。

 

取扱説明書は下のものは私の資料用です。下段に価格が追加されています。

 

 

上は「0366 10MB」ですから1966年3月印刷 10,000部で下は「0967 8MB」ですから1967年9月印刷 8,000部ということでしょうかね? 確証はありません。

 

 

まぁ、千葉のお店から販売されたカメラが、どうした事情でタイ国のプーケットに有ったものか? 数奇な運命のカメラです。また楽しませてください。

http://www.tomys800.sakura.ne.jp/