今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

ひたすらコンパクトPENの巻

2022年08月03日 20時20分00秒 | ブログ

9月1日から松屋銀座にて「世界の中古カメラ市」が行われますけど、そこに出品になるかなぁ。コンパクトPENがしばらく続きます。あぁ、今日は750SSと一緒にCB72が並んでいます。まずはPEN-S #2673XXで、PEN-Sの発売は1960年6月とのことですが、この個体は1962年6月製と生産開始からちょうど2年後の製造となる前期型ですね。その割には消耗は少ないのですが、長期保管によるメッキの劣化部分があるのは惜しいところです。まぁ、交換出来ない部品ではありませんので欠点にはなりませんが・・

ヘリコイドネジのスリ割りですが、ここに止まらなくてもと言う意地悪な個体は意外に多いです。横にカシメピンがあるので工具が入らないのです。

 

対物レンズに変な生成物が着いています。

 

 

これが原因か? ファインダーのダイカストが腐食して盛り上がっています。へぇ、こんなところがね。平面に削り取っておきます。

 

このままでは、前面から塗装剥離が見えてしまう可能性があるので艶消し黒で補修をしてから対物レンズを接着します。

 

シャッターはやっと動く状態。初期型の部品構成ですが、消耗は無く良好に仕上がりました。本体に搭載してシボ革を貼ります。

 

巻き止めロックの噛み合わせを調整しています。

 

 

今日はここまで。レンズは明日やります。

 

 

このレンズは後玉コーティングが劣化(曇り)し易いですが、意外にそれは無く汚れがある程度。清掃の結果、ほぼ満点のきれいなレンズでした。生産の古い前期型としては少し驚きです。保管された条件差もあるのでしょうが、レンズの場合、製造時のロットの差も大きいように思います。

メッキのインナー部の腐食が惜しいですが、将来交換は出来ますのでね。ピントリングの色入れが痛んでいましたので入れ直しておきました。他は裏蓋のモルトを貼って終了です。

 

次は、PEN-D3 #2520XX ですけど、シャッターは辛うじて動いています。と言うことは過去に修理歴があるでしょう。

 

悪いところだけ書きますよ。「男のカメラ」として販売されただけあって、重量が重いですから落とすと吊環部がかなり陥没します。

 

修正はしますけど完全は無理です。

 

 

D系のメーターガラス周辺は設計に無理があると書いていますが、前が大きく開口して、こんなに細いリブでは強度が足りません。で、樹脂ガラス接着部が陥没するのです。

 

やはり過去に分解を受けていますが、リングナットを緩めるだけに、なんでこんなに傷だらけにするんでしょう? センスが無いから止めた方が・・

 

そもそもシボ革の再接着時、古い接着剤を清掃していない。私はこのような組立は気持ち悪くて出来ません。で、工数増加を覚悟で清掃するのです。

 

古いモルトを完全に清掃しない状態で、両面テープ貼りのモルトを貼って、それも擦れて無くなったと見た。

 

裏蓋ロックがスムーズでないので点検すると・・あれロック鍵が裏表逆に組み立てられています。仮に間違って組んでも本体に取付けてみればわかるだろうに・・

 

シャッターユニットとヘリコイド部を留めるリングナットのスリ割りがかなり痛んでいます。レンズはカビが見られます。

 

シャッターを分解しました。前回の分解で部品の洗浄がされていないため、油汚れが目立ちます。また、シャッター羽根は5枚仕様ですが、2枚に軽微な折キズがありました。前回の分解が乱暴だったのでしょう。すべて洗浄してヘリコイド部のグリスを交換して組みます。

 

本体とシャッターユニットの位置決めピンが欠落しています。過去に分解歴のある個体は、この部品を無くして来る個体が多いです。無くしたことさえ知らずに組んだのでしょう。在庫機から分解調達も面倒なので製作して取り付けました。

 

シャッターユニットを搭載しました。シボ革を貼ります。

 

 

ファインダーを清掃しました。露出計は感度低下がありますので明日見ます。

 

残念ながらCdsの劣化ですね。D3のCdsは専用設計で、汎用品の流用には研究が必要です。

 

前回の分解がアレだと修復に手間が掛かるという見本。

 

 

これはPEN-S #2661XXと前期型の個体ですが、流石に古いので駒数ガラスの接着剤が接着力を無くして外れています。

 

ダイカストボディーの巻き戻し軸部分は、設計変更前のタイプです。巻き戻しダイヤルのガタを調整ワッシャーの厚みで調整するタイプ。

 

ファインダーの前面ガラスと対物レンズも接着剥がれで脱落しています。

 

これで完成。もう少しコンパクトPENが続きます。

 

 

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故障のデパートローライ35の巻

2022年08月01日 10時30分00秒 | ブログ

修理カルテに故障内容を書ききれないほどのローライ35ドイツ製が来ました。現状はシャッターも切れない沈胴も出来ない・・観察すると、トンネル部分に内面反射防止と思われる材料が貼られています。マニアさんの中ではローライ35の内面反射対策が研究されているようですので、各部の分解具合からしてマニアさんがバラシて組もうとして組めなかった? と言うような個体です。

電池を入れてみると露出計の針が受光窓を塞いでも左端に戻りません。これは初期型に多くなっているCdsの劣化です。Cdsを交換する必要があります。

 

トップカバーを開けてみると・・巻上げギヤの地板の留めネジが緩んでギヤが外れています。ここはネジロックをしておかないと緩むのです。この時は単純にギヤのタイミングを合わせれば正常に作動すると思ったのですが、それは甘かったのです。

そもそも二重巻上防止のロック機構が動いていません。これは前板を分離して調べる必要があります。

 

スローガバナーのリターンスプリングはゼンマイ式のものです。しかし、作動が粘ってゆっくりとしか動きません。洗浄します。これでチャージとシャッターは切れると思いましたがまだダメです。じつはスプールの巻上げカムとの連動が狂っています。タイミングを修正します。

次は絞りとシャッターダイヤルの回転が異常に重い。フィルムインジケーターも動きません。

 

固着の原因はシャッターカムと接するピンの錆による固着でした。研磨して潤滑をします。初期型ですのでカム位置の調整用偏心ネジが付いています。

 

作業は明日と思いましたが、修理内容が多いので頑張ってCdsの交換まで行って今日は終了しました。明日完成するか・・

 

それではシャッターとレンズ。前面の化粧リングは白化しているだけではなく、すり鉢状に変形しています。これの修正は非常に困難ですので別の部品を使う予定です。どなたか有効な修正方法をご存じの方は教えてください。

沈胴スリーブの裏側トンネルには内面反射防止と思われる植毛のようなものが接着されていましたので取り除きました。また、黒マジックのようなものでトンネル部も塗ってありましてので清掃をしました。沈胴がスムーズでないのでフェルトも調整してあります。

レンズにはカビがありましたが清掃しました。ヘリコイドグリスを交換した前玉を付けて本体に取り付けます。

 

初期型ですので巻き戻しダイヤル部は金属製ですが、古いグリスが粘ってスムーズに回転しません。

 

分解は4本のネジですので以後の樹脂部品のCリング留めより分解は楽です。古いグリスを清掃します。

 

これで終わってくれると助かるのですが終わりません。フィルムカウンターが全く動きません。

 

初期型はカウンターダイヤルの回転を止める爪に補助バネが入っていませんので、樹脂のバネ性が無くなり、ダイヤルの逆転を止められないのです。カウンター不良については、他にも原因があり、複合的に作用しているものもあります。

化粧リングは他の良品と交換しました。

 

 

最後にレバーアテの取付と右の欠落していた化粧ネジを取付けてやっと終了かな?いくつの不具合がありましたかね? すでに圧板は改良タイプとなっています。

 

なかなか良い初期型となりました。

 

 

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