もう何年前になるでしょうか、生まれ故郷である伊万里市に帰ってみたいなと思いはじめたのは。
きっかけは「まるでちがう街みたいだったぞ」という兄のひと言でした。
いえ、正直に言いましょう。
あることを確かめたくて――本人の口から直接聞くことができれば、それが一番なのですが。
いまどこで何をしているやら。いや、おそらくはもうこの世には居ないでしょう。
そもそも小説をもろもろの賞に応募しているのは、その人に気づいてもらいたいということなのです。
あなたが捨てたわたしは、ここに居ます。
そしてこんなわたしになりました、と知らしめたいのですから。
そのためにも、わたしがわたし自身をより強く知らねばならぬと思っているのです。
恥をさらすようですが、人間としての資質に疑問を抱いているのです。
失礼、だれのことなのかを説明していませんでした。
ああ、お分かりですか、もう。
そうなのです、わたし自身のことなのです。
片端者じゃないかと、身体のことではなく精神的になのですが。
どうにも常識というものに欠けているのではないかと、考えてしまうのです。
反社会的な考え方をしているといったことではなく、感謝の心、協調性がない……、いやちがうな。
すみませんね、混乱のきわみ状態におちいってしまいました、わたし。
いや、これもまた欺瞞だ。基本的に、わたしはうそ吐きなんです。
本心をあかすことがすくなく、むろん本音をかたるというか口をすべらせるというか、それは多々あります。
が、うそを吐くのです。当たり障りのないこたえをだしてしまうのです。
相手が喜びそうなこたえを口にしてしまうのです。
うわすべりのことばを口にしたり、文字にしたりします。
そう、そうなんです。文字がうそを吐くときのツールになるのです。
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