少年の目は、ふたりに移った。
が、そこにはもうふたりの姿はなく、背の高いがっしりとした男がひとり、踊り狂っていた。
慌てた少年は、キョロキョロと見回した。
と、少年の肩をポン! と叩く者があり、と共にプーンと甘い香りが少年を包んだ。
「また来たの? 坊や」
「あ、いえ。…あの、……いえ…」
しどろもどろに答える少年だ。
「フフフ……、いつまでも子供ね。コーラなんか飲んで、純情でかわいいわ」
耳元でささやき、体をすりよせてくるその女に、少年ははじかれるように身を引いた。
そして、しげしげと女を見つめた。
うす茶色に染められた髪を中央でふたつに分け、後ろでいっぽんに束ねている。
描かれた眉毛は細く、なめらかだった。
その下の瞳には、ブルーのコンタクトレンズが入っている。
つけまつ毛がとても長く、スラリと伸びた鼻と呼応して、エキゾチックさをかもし出している。
そして唇は、真っ赤に塗りたくられている。
そのくせ能面のように無表情だ。
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