昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

「祭りの夜(改)」 三

2013-06-14 22:29:23 | 時事問題

(三)


母親が止めに入らなければ、いつまでも続いていただろう他愛もない口げんかだ。
私と連れの彼女は、顔を見合わせてくすりと笑った。

いやいや、私たちだけではない。
取り囲んで見守る人たちも、そして父親の隣で銃を打ち続ける青年もまた、くすりと笑った。

しかし当の父親だけは、真剣な顔をして打ち続けている。
今まさに、男の子が欲しがるウルトラマン人形に向けて、何発も何発もだ。

「やったぞ! 悟、落としたぞ。
どうだ、凄いだろ。」

苦笑いの店の親父から受け取る際の子どもの笑顔は、大きく鼻を膨らませて得意満面だった。

「あなた、いくら使ったの。
随分と使ったんじゃない? 
ひょっとして買ったほうが安いんじゃないの。」

半ば詰るような母親の言葉に
「まあな。しかし父親の威厳が、この程度で買えれば安いもんだ。
見ろよ、悟の喜ぶ顔を。
店で買っても、こんなには喜ばないぞ。」
と、喜色満面に答えていた。

*わたしの一番好きなシーンです。

自分で言うのも何ですが、いけてると思うのですが…

昨今、父権の失墜が言われて久しいですが、昔の父親(筆者の父も含めて)は、結構威張っていました。

お母さんたち、ご不満もあるでしょうが、父親に空威張りをさせてやってもらえませんか?


最新の画像もっと見る

コメントを投稿