昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第二部~ (六十四) 二

2013-08-02 21:46:29 | 時事問題
(二)

大婆のひと声には、誰も逆らえない。
一人の例外、茂作を除いては。

唯それが為に、縁者からの白い目にさらされてはいたが。
しかし本日ただ今よりは、それも笑い話と化してしまうことに。

「先ずもって、村を代表してお礼を言わせてもらいます。
多額の寄付金にとどまらず、奨学金制度まで考えていただいて。
ありがたくお受けさせていただきます。」

顔を赤くして謝辞を述べる助役。
武蔵に酒を勧めた後、今度は大婆に深々とお辞儀をする。

「婆さま、実におめでたいことで。
これで、繁蔵さんの村長就任も決まったようなものですわ。」

「なんの、なんの。
日本一のお婿さんのお陰じゃて。

そんなお婿さんを見つけてきた小夜子のお手柄じゃ。
のぉ、繁蔵。」

皺だらけの顔を、更にくしゃくしゃにしている大婆に、
「村を出ると聞いた時には、澄江の二の舞にならねば良いがと心配しましたがの。

まさかこんなことになるとは。」
と、相好を崩す繁蔵だ。


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